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2020.08.28

ワインはカクテルの材料になれる? なれない?

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・図解/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

今年の夏も暑かったですね。私は8月の半分くらいは軽井沢で過ごしました。例年ですとシーズンのピークで大混雑なのですが、今年はそれほどでもありませんでした。9月以降の残暑も油断せず、熱中症には気をつけましょう。

さて、今回はワインを使ったカクテルについてです。私、ワイン以外のお酒も大好き。カクテルもよく飲むし、自分でも作ります。夏の間にホームバーで「ワインを使ったカクテルってそんなにないなあ?」と思ったことが本テーマのきっかけとなりました。

モテるワイン道入門~ワインとカクテル

そもそもカクテルとは何でしょうか? 一般的には「ベースとなるお酒に、他のお酒や果汁などを混ぜて作ったアルコール飲料」と言ってよいと思います。最近では健康上・宗教上の理由でお酒を飲まない人向けのノンアルコールカクテルもあります。カクテルは総じて見た目も華やか、かつお洒落なので、お酒に強くない人や飲まない人が雰囲気の良いレストランでアペリティフとして頼んだり、バーでくつろぐ際にも便利なドリンクだと言ってよいでしょう。

カクテルに使われる代表的なお酒と言えば、何と言ってもジン、ウォッカ、ラム、テキーラの「4大スピリッツ」が有名です。他にも、ベースとなるお酒としてウィスキーやブランデーがありますが、ワインを使ったカクテルにはあまりお目にかかりません。どうしてなのでしょうか? 私なりに理由を考えてみたところ、いくつか思い当たることがありました。
✔ ワインは元々のアルコール度数がそんなに高くないお酒である。

ワインは醸造酒でもあり、そんなに強いお酒ではありません。アルコール度数は12〜14%とビール(5%程度)よりは高いものの、日本酒(15〜17%)よりも低く、前述したカクテルに使われる代表的なスピリッツ(いずれも40%以上)に比べると格段に低いです。従って、ワインを「割る」かたちでのカクテルはアルコールが低くなりすぎるのではないでしょうか?           

✔ ワインはやはりそのままの姿で飲むものである。

こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、ワインほど生産地やブドウの種類、畑の名前・区画、ヴィンテージなどに細かくこだわって造られるお酒は他にないでしょう。特にワイピの皆さまの飲んでいるファインワインの場合、ヴィンテージ違いや同じ畑のブドウで造られた生産者違いのワインを「比較テイスティング」するケースもよくあります。やっぱり何も足さず、混ぜずにそのまま飲みたいと思う人が多くても不思議はありませんね。

また、カクテルに使う副材料の代表的なものはフルーツやハーブですが、ワインはものもとその香りや味わいにこれらのニュアンスを含んでいることも多いので、「今さら加えなくてもよい」との考えもあるのかも知れません。もっとも、中世ヨーロッパではワインを水で割って飲んでいたとの記録もあるようです。これはカクテルとして楽しむと言うよりは、衛生的に問題があった水をワインと混ぜて飲むことで殺菌する目的だったのでしょうか?
✔ 一度抜栓したワインの長期保存は難しいから。

これはカクテルを提供するバーなど飲食店側の事情だと思うのですが、スピリッツやウイスキー、ブランデーなどのハードリカーは一度抜栓しても普通に蓋をしておけば常温で長期に保存できます。これに対して、ワインは一度コルクを抜いて空気に触れてしまうと、そんなに長くはもちません。大抵の飲食店ではグラスワイン用に抜栓したワインボトルを翌日に持ち越す場合、しっかり密封する、窒素ガスなどを注入して酸化を防ぐ、冷蔵庫で保管するなどの酸化防止対策に万全を期していると思いますが、それでも数日ももたないのではないでしょうか? さらに、シャンパーニュなどのスパークリングワインを使用する場合にはいくら固く栓をしても泡が抜けてしまいます。

これらのことからすると、やはりワインはボトルでオーダーして飲み切ってしまうのが一番。グラスワイン用のボトルも極力翌日以降には持ち越さないのが望ましいお酒なので、カクテルには不向きなのかも知れません。そう考えると、シェリーやポルトのような酒精強化ワイン、ベルモットのようなフレーヴァードワイン(*1)は比較的保存が効くのでカクテルに使用されることが多いのも納得できます。もっとも最近はコラヴァン(coravin、*2)のように、コルクを抜かずにワインを注ぐ装置もありますので、将来的には変わってくる可能性も考えられますね。

 次回はワインを使ったカクテルの代表例をご紹介してまいります。
PAGE 2

(*1)

ワインに薬草・果実・甘味・エッセンスなどを加えて独特な風味を添えたもの。代表的なものにベルモットやリレがある。ベルモットはマティーニ、ネグロー二、マンハッタンなどの定番カクテルの材料。

(*2)

 細いニードル(針)をコルクに差し込むことにより、キャップシールをカットしたり、コルクを抜くことなく、ボトルの中のワインを注ぐことができる装置(写真は筆者所有)。
ワインを注いだ分だけの高いアルゴンや窒素などのガスがボトル内に注入され、ニードルを抜いても天然コルクが自然に穴を封止するので、ワインは酸素に触れることがない。そのためボトル内のワインはその後も自然に醸成を続けるとされる。

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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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