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2020.07.15

ソムリエたちの頂上決戦! ソムリエコンクールとは何か。

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・図解/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

本格的な夏を間近に控えているいま、本来であれば東京2020オリンピックの開会式直前だったと考えると世の中の変わり様に驚いてしまいます。

今回のテーマはスポーツではなくワインの世界の競技、ソムリエコンクールです。8月4日(火)には再延期された全日本最優秀ソムリエコンクールのファイナル・グランドファイナルが開催されますので、タイムリーな話題でもありますね。

モテるワイン道入門~ソムリエ界のオリンピック! ソムリエコンクールとは? 

みなさまはソムリエコンクールをご覧になったことがありますか?  聞いたことはあっても見たことがある人はそう多くないのでは? 
実際に会場で見たことがあるというあなたは相当なワイピですね! ソムリエコンクールとはソムリエがその知識・技量を競う競技会だと言ってよいでしょう。俗にいう「ソムリエ日本一」を決定するコンクールは3年に一度、一般社団法人日本ソムリエ協会の主催で開催され、今回で第9回になります(*1)。

ではこのソムリエコンクール、一体どのようなものなのでしょうか? 
コンクール観戦のベテランである私がご案内しましょう(*2)。
▲2018年10月に京都で開催された第4回A.S.I.アジアオセアニア最優秀ソムリエコンクールで優勝した岩田 渉選手(中央)。左はAndreas Rosberg国際ソムリエ協会(A.S.I.)会長、右は田崎真也日本ソムリエ協会会長。撮影/吉川慎二
まず基本的なコンクールの進行ですが、予選、準決勝、決勝と進み、最後に優勝者が決まるという点では他のスポーツ大会などと同様です。選手に課される課題がワインをはじめとする飲料に関する知識や技量を問うものだというだけです。しかし大きな特徴がひとつ。なんとコンクールの競技の大部分は外国語で行われます(*3)。したがって、多くの日本人選手にとっては語学力も成績を大きく左右する要因になります。

参加人数が多い予選では筆記試験やブラインドテイスティングが中心ですが、準決勝・決勝(ファイナル)になると選手の数も絞られるので課題の中身は濃く、難易度は高く、多岐にわたります。決勝に進出する選手の数はたいてい3〜5名、観客に公開された会場にステージを設けて行われます。スポットライトを浴びるファイナリストのソムリエは拍手喝采を浴びて、まるで歌手や舞台俳優のようです。

ここで、通常の競技会では見られない独特のしきたりがひとつあります。こういう場合、普通は「選ばれし者」の名前を発表しますが、ソムリエコンクールはその逆です。

たとえば決勝進出者を発表する場合、準決勝に進出した選手全員が名前を紹介されて登壇し、その集団の中から落選した人の名前がひとりずつ呼ばれ降壇して行き、次第に人数が減っていきます。そして最後に残った人達(たいていの場合3~5名)がファイナル進出となるのです。壇上の選手たちは「どうか自分の名前が呼ばれませんように!」という気持ちでいることでしょう。

敗者の名前をコールするのはいかがかとのご意見もあるでしょうが、ソムリエは人気商売の側面もあります。「決勝進出の可能性がある選手」のひとりとして華々しく登壇し、名前と顔を覚えてもらった方がよいという主催者の思いやりなのでしょう。
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▲「どうか私の名前が呼ばれませんように」と祈るソムリエたち。
さて、発表後はいよいよファイナルの始まりです。たいていの場合は、選手がひとりずつ順番に登場して行うタイプの課題をまず行い、その後に全選手が揃って同じ課題を一斉同時に行うタイプの課題を実施します。

ひとりずつ行うタイプの課題では、演技順をくじ引で決めて、演技しない選手は別室に移動し課題の内容が判らないように隔離されます。当然外部との連絡も一切禁止で携帯電話などの連絡手段も預けることになります。

イベントの進め方やルールだけでもユニークなソムリエコンクール。次回はファイナルでよく出る課題の具体的な内容について解説してみたいと思います。

(*1)

記載のとおり。8月3日(月)に準々決勝・準決勝、8月4日(火)にファイナル・グランドファイナルがいずれも東京都目黒区のホテル雅叙園東京にて開催される。今回は新型コロナウイルス感染症の関係もあり、グランドファイナルのみ公開にて行われる予定(ライブ配信もあり)。優勝者は、「第9回全日本最優秀ソムリエ」のタイトルならびに、「第5回A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール」(2021年にオーストラリアで開催)の出場権、以降の「A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール」(次回は2022年にフランス パリで開催)の「日本代表選考会」の参加資格を得ることができる。また、2位の選手は「第5回A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール」の出場権を得られる。くわしくは、https://www.sommelier.jp/topics/view/9th_bestsommelierofjapan202008

また、このほかにも特定のワイン生産国・生産地にテーマを絞ったコンクールや若手ソムリエの育成目的で開催されるコンクールがある。たとえば、Wines of Portugal Japanese Sommelier of the Year (ポルトガルワイン)、ボルドー&ボルドーシュペリュールワイン ソムリエコンクール、若手ソムリエ育成目的のJ.S.A.ソムリエスカラシップなど。

(*2)

筆者は、下記のコンクールを観戦しているほか、全日本大会の審判を務めた経験もある。

1.全日本最優秀ソムリエコンクール2回:2014年(福岡)、2017年(東京)
2. A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール3回:2012年(韓国 テジョン)、2015年(香港)、2018年(京都)
3.A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール:2013年(東京)、2016(アルゼンチン メンドーサ)、2019(アントワープ)

(*3)

代表的な国際ソムリエ協会(A.S.I.)ルールに則ったコンクールの場合、選択言語は英語、フランス語、スペイン語のいずれか。実際には英語を選択する選手が大半(8割以上)で、スペイン語選択は稀である。ただし、母国語は選択不可となっているので、たとえばフランス人選手はフランス語を選択できない。

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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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