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2020.05.16

ワインの達人が教える、WEB飲みを楽しむコツとは?

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・図解/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

東京では依然、緊急事態宣言が続いてますね。いつになったら正常化するのか?  それとも、まさか、この状態が我々の今後の日常的なライフスタイルになってしまうのか?  考えだすとキリがありませんね。

さて、今回はステイホーム運動が広がるなか、ワイピの間で流行っているというオンラインワイン会について考察します。皆さんはオンラインワイン会、もう体験されましたか?  既に何度もこなしているオンライン・ワイピも、未経験の方も、一緒に考えていきましょう。

モテるワイン道入門~オンラインワイン会

オンラインワイン会ってどんなものでしょうか? 
定義するならば、参加者が物理的に一同に会することなく、ビデオ会議ソフトなどのオンライン通信手段で繋がって、コミュニケーションしながら進行するワイン会、とでも言いましょうか?  時間は共有、映像も音声もほぼ共有、しかし空間は共有せず。だからこそ、当たり前のことですが、新型コロナウイルスの感染防止に有効ということでブレイクしているわけですね。それでは、他にどういった特徴があるのか考えていきましょう。
【メリット1:時間】
メリットのナンバーワンは何と言ってもこの点でしょう。特に遠方の人にとっては往復の時間が大幅に節約になるうえ、終電を気にする必要もありません。盛り上がったならば時間を気にせず宴を続けられます。また、遅刻・早退に関してもリアルなワイン会に比せば大目に見てもらえそうです。

【メリット2:服装】
メンバーのいる場所は基本自宅。ドレスコードもないのでカジュアルな服装でも問題ありません。実際に筆者も部屋着で参加することが多く、楽ちんでした。また、逆にテーマを決めてコスプレワイン会も可能で、その場合でも、ご近所や電車の中の目を気にする必要がありません。

【メリット3:運営の柔軟性】
リアルなワイン会に比べてドタキャンや直前参加申込に対する対応力が高いように思います。面識ない人の参加のハードルも下がりそうです。ワインも各自が好きなものを飲んで紹介し合う形式が多いようなので、好きなものが飲めますし、料理やおつまみに関しても同様です。逆の見方をすれば、飲むワインや食べる料理次第なのでリアルワイン会のような一律の会費という概念がありません。
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そうは言っても、やはりオンライン。リアルな世界にはかなわない部分もあります。マイナス面はどのような点でしょうか?

【デメリット1:アイコンタクト】
筆者が一番不満を感じるのはこの点です。
大抵の場合、画面の上の部分にカメラがあるため、相手の目を見て話すことができません。自分が画面上で相手の目を見ると、それを映すカメラに対しては視線がズレます。その結果、相手には視線をそむけている自分の姿が配信されます。また、カメラを正面から見ると相手は目線があった感覚を得ますが、自分は相手の目を見ることが出来ません。

自然なアイコンタクトに見せる工夫としては、自分の目とカメラを結んだ線(送信側の目線)と画面に映る相手の目と自分の目を結んだ線(受信側の目線)の角度の差を極小化する方法がありますが、資金潤沢な会社のTV会議システムならともかく、家庭でスマホやタブレット端末を使用する場合には無理があります。これは今後の課題だと考えますが、例えば相手を自然にスマホの画面に写した場合の眉間の位置にカメラがある(スクリーンのほぼ中心部に埋め込まれている)機種が出来れば問題は解決するような気がしています。今後の製品に期待しましょう。
▲筆者が自ら図解してくれた、オンライン飲み会でのアイコンタクトのズレ。
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【デメリット2:発言のストレス 】
メッセージソフトのビデオ通話機能を使用した場合はもちろんのこと、ビデオ会議専用ソフトを使ったとしても、リアルなワイン会の会話の自然さにはかないません。使用ソフトや接続の回線速度によっては会話が途切れてストレスになる場合がありますし、リアルワイン会で比較的大人数の場合に自然発生する複数の会話(*1)も体験できません。一度10人を超える大人数でオンラインワイン会をしましたが、自分が発言できる順番がなかなか回ってこなくて大変でした。

【デメリット3:ワイン・料理の限界】
当然と言えば当然なのですが、オンラインワイン会ではお互いのワインをシェアできません。なので複数のアイテムを比較して楽しみ、その感想を参加者同士で交換するというリアルワイン会に比べるとどうしても限界があります。単に仲間と会話を楽しむだけならばともかく、ワインを極めたいガチワイピには少し物足りなく感じられるかも知れません。また、スマホやタブレットの前にいるので本格的な料理を食べながらの進行にも無理がありそうです。

【デメリット4:飲み過ぎる】
メリット1の裏返しで、かつ、デメリット3とも関連しますが、自宅で自分だけが飲むボトルを開けてしまうことが多く、時間も気にしないので、ついつい飲み過ぎてしまいがちです。自分の経験では間違いなくそうですし、私の周りの人も同様の意見でした。
以上のことからすると、オンラインワイン会いろんな課題がありそうです。ただ、飲食店にて一同に会するリアルワイン会を開催しにくい現在の状況からすれば、ワイピ達にとって有力な代替手段となり得ることは間違いなさそうです。最後に筆者が経験したユニークなオンラインワイン会をご紹介しましょう。
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【ケース1:オペラ・オンラインワイン会】

今、海外の有名オペラハウスや劇場がステイホームの一助として無料で公演を配信しているケースがあります(*2)。参加者全員でタイミングを合わせて同じ演目のオペラを同時にストリーミング再生するとともに、ワインも事前に打ち合わせして同じ銘柄のシャンパーニュにすることにより、全員でオペラ鑑賞に行った雰囲気を味わいました。

【ケース2:シャンパーニュのテイスティング会】

オンラインワイン会というよりも、テイスティング・セッションといった方が良いかもしれませんが、有名シャンパーニュブランドのドン ペリニヨンが4月末にオンラインイベントを開催しました。同ブランドのアンバサダーを務めるソムリエが自宅でドン ペリニヨンを開けて飲みながら、カジュアルな雰囲気で参加者に話しかけて、ワインについてのコメントや造り手を訪問した際の話を紹介するもので、楽しめました。人数の関係から双方向ではなく、もっぱら発信者から参加者に向けての一方向のコミュニケーションでした(*3)が、映像・音楽共に工夫されておりなかなかのクオリティでした。

【ケース3: ブラインド・オンラインワイン会】

おそらくは初の試みであろうオンラインでのブラインド・テイスティングです。参加を申し込んだ全員に、主催者が番号を付したテイスティングアイテムを約100ml容量の小瓶に入れて事前に配送しておき、オンラインの場で全員がテイスティングしながら順番に意見を述べて、最後に正解が開示されるというワイン会です。小分けや配送のコストと手間がかかりますが、この状況でもどうしてもブラインドテイスティングをやりたくてうずうずしているワイピが多いのか大盛況でした。会の性質上参加者は最大で8名程度(750mlボトルだと8人で約100ml弱)となり、大人数では難しそうです。

オンラインワイン会のアレコレはいかがでしたか?  このような厳しい状況でも、ワインを楽しもうと工夫してやまないワイピの皆さまには脱帽です。え? オンラインワイン会で気に入った女子を二次会に誘うにはどうすればいいかって?  それはまた別の機会に考察しましょう(笑)。

(*1)
米国オクラホマ州立大学で心理学を専攻するJamie Krems助教授の研究によればグループが5名以上になると会話が複数に分裂する傾向にあるという。
Krems, Jaimie & Wilkes, Jason. (2018). Why are conversations limited to about four people? A theoretical exploration of the conversation size constraint. Evolution and Human Behavior. 10.1016/j.evolhumbehav.2018.09.004.

(*2)
ロシアボリショイ劇場:https://www.bolshoi.ru/en/about/press/articles/none/2020-05-04-broadcast/

NYメトロポリタン・オペラ:https://www.metopera.org/user-information/nightly-met-opera-streams/

(*3)
音声や画像を配信することができるのはホスト側の関係者に限られており、参加者が質問したい場合にはチャット機能で連絡する形式でした。

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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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