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2020.03.31

ワインの栓、コルクのほかに幾つ言えますか?

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

本コラムも今回でスタートから1周年を迎えることが出来ました。ここまで続いているのもひとえに読者の皆さまのおかげ、この場を借りて御礼を申し上げます。

今回はワインの「栓」(=クロージャー)についてご紹介していきたいと思います。
ご存知の通り、ワインの栓の中でもっとも一般的なのはコルクですが、一口にコルクと言っても色々な種類があります。

1.天然コルク

いわゆる普通のコルクです。コルク樫という木の樹皮を剥がし、縦方向にくり抜いて製造します(写真上)。植樹してからコルクが採れるような木に生育するまで30年近くを要します。コルク樫の寿命は長いもので200年近く。伐採せずに繰り返し採取出来るので、地球環境にやさしい製品と言えるでしょう。ポルトガルが産地として有名で全世界の約半分のシェアを占めます。起源は16~17世紀と言われており、それ以来ガラス製の瓶(ボトル)とともにワイン容器としての不動の地位を築き、現在も主流です。

天然コルクの問題点は2点あります。ひとつはワインの代表的な不快臭としてこのコラムでも繰り返し取り上げてきた「ブショネ」の原因となるTCAを発生させるリスクがあることです。最近は生産者やコルクメーカーの努力により発生率は格段に下がった(*1)と言われていますが、それでもゼロにはなりません。
もうひとつは耐久性。高級ワインの場合、飲まれるまで数十年の年月を経るのも珍しくありませんが、その間にボロボロになってしまうことがあります。
長期保存される確率が高い高級ワインの生産者は上質で長さのあるコルクを使用していますが、それでも時間の経過には勝てません。かつてボルドーのシャトーでは所有者のリクエストに応じて、コルクを新しいものに打ち直し、場合によっては目減りしたワインを注ぎ足す「リコルク」という作業を行なっていました。最近ではもうやっていないところが多いようです。
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2.圧縮コルク

圧縮コルクよりDIAM5とDIAM30。
この天然コルクの問題点を解決したものに圧縮コルクがあります。天然コルクを破砕して圧縮・接着させたもので、フランスのディアム・コルク(Diam)が代表的です。二酸化炭素による特殊処理でブショネの原因であるTCAを始め150種類以上の臭気分子をも除去するとされています。耐久年数(品質保証期間)によりDIAM2、DIAM3などランク分けされており、最長はDIAM30(30年の熟成に耐える)まであります。
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3.合成コルク

樹脂やプラスチックなどの材料を射出または成型してコルクの形にしたものです。比較的低価格のものが多く、カジュアルなワインに使用されることが多いものです。

コルク以外のタイプもご紹介しておきますと……

4.スクリューキャップ

コルク以外のクロージャーで代表的なものと言えば、まず浮かぶのがスクリューキャップです。
アルミニウム製の栓を手で回して開けるので道具を必要としません。代表的なものに上のSTELVINがあります。ブショネの原因となるTCA発生の余地がないことがメリット。

また、天然コルクよりも気密性があり酸素を遮断出来るため、ワインの品質保持に重要とされる酸化防止には有効とされています。ニュージーランドやオーストラリアでは、このスクリューキャップがクロージャーの主流。

一方で、酸化は防止できるが従来の天然コルクによるような自然な熟成が行われないとの意見もあり、ワイン評論家の間ではさまざまな論争が続いています。また「高級ワインにはやはり天然コルク」という、依然とした保守的な消費者意識も無視できないところです。
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5.その他

数は少ないものの、ガラス栓のVinoLock(ヴィノロック)やZork(ゾーク)、ビール瓶などでよく目にする王冠などもあります。
時代の流れなのか天然コルクの使用比率は次第に減少傾向にある一方で、印象に残ったワインのコルクを記念に取っておくのもワイピの楽しみのひとつでもありますね。
私はそれほど熱狂的なコルク・コレクターではありませんが例外がひとつだけ。3年ほど前にブルゴーニュ地方Vosne-Romanee(ヴォ―ヌ・ロマネ)村の一級畑Cros Parantoux(クロ・パラントゥ)を8アイテム一度に飲み比べたことがあり、その時のコルクはフレーミングして飾ってあります(*2)。

ワインの栓のさまざま、いかがでしたか? ワイン会やワインショップで、栓に注目してみるのも面白いかもしれません。

(*1) 
ロマネ・コンティで有名なブルゴーニュのDRCでは、コルクを打栓する前に180℃近くまで加熱し、人間がその臭いをチェックすることによりTCAの発生を防止するという品質管理をしているそうです。

(*2) 
写真のコルクは左から順に、
Meo-Camuzet Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Meo-Camuzet Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1995
Meo-Camuset Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1989
Henri Jayer Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Henri Jayer Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1980
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1998
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1989

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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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