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2020.08.14

女性3人のワイン会に男はひとり。さて、どんなワインを持っていく?

5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。

CREDIT :

文・図解/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)

8月ですが、高校野球もブラスバンドがいないと何だか寂しいですね。今年はいろんな意味で今までとは大きく違った夏になりました。でも、南半球の収穫はまずまずだったみたいですから、北半球のブドウも秋の収穫まで問題なく生育してくれるといいですね。

今回は少し趣向を変えて「ケーススタディ」をやってみたいと思います。きっかけは、先日ある持ち寄りワイン会に自分自身が持参するワイン選びの思考過程をSNSにて呟いたところ、思いのほか反響がありました。担当編集者のM女史からも「コラムで取り上げましょう」とのご提案をいただき、事例研究として振り返ってみたいと思います。

いままでこのコラムでは、極力特定のワインの銘柄や造り手の推奨につながるような記述は避けて参りましたし、今後もその基本方針は維持していくつもりですが、今回は事例研究でもあり、固有名詞が登場しますことをご了承ください。ただし、決して推奨の趣旨で取り上げるものではないので、ご理解をお願いします。

モテるワイン道入門~持ち寄りワイン会のワインはどう選ぶか

ワイン会に持っていくワインの選び方については、このコラムの最初の方で何回かにわたって取り上げましたね。これらはいわゆる教科書に書いてある公式のようなもの。実践で通用させるには失敗と成功を繰り返し、経験を積むしかありません。私自身の事例を以下に紹介しますので、ご参考になれば幸いです。
まず、ワイン会の前提条件は以下の通りです。

✔ メンバー総勢4名。女子3名と男子1名(筆者)
✔  女子3名はワインの経験値が非常に高い。特にシャンパーニュについては秀逸。どのくらいスゴいかと言うと、テイスティングレポートを専門誌に寄稿したり、毎年のように生産者を訪問したり、超人気生産者のシャンパーニュをブレイクする前から愛飲していて今でも幻のようなコレクションを所蔵しているくらい……要するに、最上級ワイピ。
✔ 会場はミシュラン星付きの予約困難店。ジャンルは和食で、メニューは季節の食材を中心としたおまかせコース。料理だけで3万円前後の高級店。
✔ 筆者自身は過去に数回訪問した経験はあるものの、そこまで親しくはなく常連客であるとは言えないお店
✔  女子3名はいずれもシャンパーニュを各1本ずつ持参するとのことで、私へのリクエストはスティルワイン。できればブルゴーニュの赤、とのこと。
そこで、ワイン選考にあたっては次のようなことを考えました。

✔ 料理の味付けは繊細。それに合うようなやさしいニュアンスで、かつ複雑味のあるものが良いだろう。
✔  高級店なので持ち込みワインもそれなりのグレードにすべき。かつ、女性陣よりもちょっとグレードが高いものにするのがエチケット。
✔ でもDRC(*1)とか5大シャトー(*2)とかベタな銘柄は最上級ワイピ女子には通用しなさそう。それに、お店のワインリストともカブりそうで、その場合はお店に申し訳ない。やはりレアでマニアックなものが良いか?
✔ 自分を含めメンバーが最近飲んだワインとの重複は極力避けたい。やっぱりサプライズ感があるものが理想的。メンバー女子3名ともにSNSでも交流があるので最近の動向をチェック!
✔ 先述のように開催が常連店ではないことから、事前配送は自粛。従って当日のハンドキャリーに耐えられる必要がある。よって澱が舞うような赤ワイン(特に古酒)は適さない。
✔ とは言ってもあまりに新しいヴィンテージだと、お店のワインリストとカブるリスクが高くなる上に、いかにも「ワインショップで買ってきたました」オーラ満載で初心者感丸出し、イケてない。
✔  「モテるワイン道入門」のコラム筆者としては、ここでそれなりの選択を見せないとワイン会がどーのこーのと偉そうに書けなくなってしまう(汗)。

PAGE 2
いろいろ悩んだ末にブルゴーニュの赤と白を1本ずつ2本持ち込むことにしました。具体的な銘柄は、下記です。

【白】 Domaine Ramonet Bienvenue Batard Montrachet 1994
【赤】 Domaine Meo-Camuzet Richebourg 1998

こういう結論になった理由は次のとおりです。

✔ 前述の思考過程を経たこと。とりわけ、どちらのヴィンテージも優しいニュアンスとされており、かつ、両方ともに生産量が極端に少なく、一期一会のワインとして楽しめると思った。
✔ これらのワインを所蔵していたこと。当たり前にように思われるかもしれませんが、新規に購入ことも選択肢に入れていれば違った結果になったかも知れません。
▲(編集部調べ)ショッピングサイト等で検索しても、ここまで古いヴィンテージは見つからない。参考までに最近のヴィンテージでは、Ramonetが10万円前後、Meo-Camuzetが20万円前後で取引されている模様。高級レストランのワインリストではもちろんもっと高くなります。
最初にお話しした通り、このワイン選考についてはSNS上にて公開(ただし友人に限定)しました。それに対する反応は概ねポジティブなもの、具体的には「持ち寄りワインの選考にここまで思考を巡らすのは素晴らしい」と評価していただく趣旨のものが多かったように思います。もっとも、なかには「やり過ぎだ!」とのネガティヴなご意見をくださった方もいらっしゃいました。何が「やり過ぎ」なのかは明確でなかったので真意は不明ですが「こんなにいろいろ考えを巡らせるなんてやり過ぎだ!」ということではなさそうなので、おそらくは「高級なワインを選択し過ぎだ!」との意図ではないかと推察しました。確かに、結果論として比較的高価なワインを選択することになったので、このようなご批判も理解できなくはありません。毎回こんなワインを持参していたら、普通はお財布がいくつあっても足りず、財政破綻への道まっしぐらです。

しかし、私が何よりもお伝えしたかったのは、
✔  選考に当たってどのようなポイントを考慮したか?
✔  その結果、上記のワインを持参することになったが、皆さんならどうしていたか?
✔  皆さんがワインを持ち寄る際に参考にできる点はないか?
です。

選んだワインの価格は重要ではありません。いやむしろこのコラムのテーマ「モテるワイン道入門」の観点からすれば、価格を気にすることこそ「モテない典型的なパターン」だと感じた次第でした。

初のケーススタディでしたが、いかがでしたか? 今後も時々お送りしたいと思います。

(*1)

DRCはDomaine de la Romanee Conti社の略。ロマネ・コンティをはじめ、高品質で高級なブルゴーニュワインの代名詞。

(*2)

「5大シャトー」とは、1855年のパリ万国博覧会において、フランスのボルドー・メドック地区の格付けで“第一級”の称号を与えられた4つのシャトー醸造所(Chateau Latour、Chateau Lafite Rothschild、Chateau Margaux、Chateau Haut-Brion)と、1973年に昇格になったChateu Mouton Rothschildの5つ。
ブルゴーニュのGrand Cruとは、ブドウ畑単位で格付けをするフランス・ブルゴーニュ地方の最上級「特級」ワイン。その生産量は、全体のわずか1.5%と稀少。
いずれも世界トップクラスのワインの代名詞。

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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa

1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。

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