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2018.07.12

ナイキがスニーカーシーンで王座に君臨するワケとは?【後編】

スニーカーのテクノロジーやデザインで常に時代をリードしてきたナイキ。その理由を、歴史を振り返りながら紐解いてみました。いつだってナイキは、スポーツブランドの枠を超えた“革命児”だったのです。

CREDIT :

写真/島本一男(BAARL) スタイリング/髙塩崇宏 文/南井正弘 編集/長谷川茂雄

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足へのフィッティングも群を抜いて革新的

ナイキは、前編でお伝えしたエア マックスに代表されるクッション性だけでなく、シューズと足のフィッティングに関してもエポックメイキングなアイデアを発表してきました。1991年にはメキシコの伝統的なサンダルであるワラーチから命名されたハラチフィットを発表。

これはナイキの著名なデザイナー、ティンカー・ハットフィールドが、以前ナイキの本社を訪れた際のプレゼンテーションで「水上スキーのネオプレン製ブーティからインスピレーションを受けた」と話していました。

伸縮性に優れた素材を駆使し、ブーティ構造とミックスしたことにより得られるフィット感は、それまでのスポーツシューズにはない履き心地を実現しました。そのユニークなアイデアは、世界中のユーザーを魅了したのです。
ハラチフィットは、伸縮性に優れた素材をブーティ構造にすることで、快適なフィット感を追求しました。
ハラチフィットは、伸縮性に優れた素材をブーティ構造にすることで、快適なフィット感を追求しました。 写真提供/ナイキ ジャパン
またランニング後に足をリラックスさせるアフターランモデルとして2000年にリリースされたエア プレストでは、S,M,L,XLといったアパレルサイジングを採用。ストレッチ性に優れたナイロンメッシュを使用することで、26cm~27cmというように、サイズに幅を持たせた適応能力の高さに注目が集まりました。
伸縮性のあるナイロンメッシュをいち早くアッパーに採用したエア プレスト。S,M,L,XLといったアパレルサイジングは画期的でした。
伸縮性のあるナイロンメッシュをいち早くアッパーに採用したエア プレスト。S,M,L,XLといったアパレルサイジングは画期的でした。 写真提供/ナイキ ジャパン
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人間本来の潜在能力を引き出したナイキ フリー

2004年になると、ナイキはこれまでとはまったく異なったアプローチのシューズを発表しました。それがナイキ フリーです。これは、あえてクッション性を抑えたり、ソールの屈曲性を向上させたりすることで、裸足に近い感覚の履き心地を追求したモデルです。

ナイキの開発スタッフチームが、2001年にスタンフォード大学へと調査に訪れた際に目の当たりにしたのは、同チームのコーチであるビン・ラナナ氏が実践していたゴルフコースの芝生の上を素足で走るトレーニングでした。

彼には「素足で走るトレーニングがランナーの足を強くし、パフォーマンスを向上させる」という持論がありましたが、ナイキ フリーはそこから着想を得たのです。

2004年に最初のモデルとなるナイキ フリー5.0がリリースされた際、日本では「足本来が持つ『ハダシのチカラ』を呼び覚ます」というキャッチフレーズが採用されました。

そんな印象的なプロモーションも功を奏し、ナイキ フリーは、安全かつ効率よく足を鍛えられる新たなシューズとして確固たるポジションを築きました。現在では、あらゆるタイプのユーザーにマッチすべく、豊富なラインナップが展開されています。
2004年に発表されたナイキ フリー5.0。履き心地を裸足に近づけるというまったく新しい価値観を追求したモデルです。
2004年に発表されたナイキ フリー5.0。履き心地を裸足に近づけるというまったく新しい価値観を追求したモデルです。 写真提供/ナイキ ジャパン
2004年に発表されたナイキ フリー5.0。履き心地を裸足に近づけるというまったく新しい価値観を追求したモデルです。
写真提供/ナイキ ジャパン
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あらゆるタイプのランナーに1足で対応する時代へ

2008年になると、ナイキはルナロンという新たなミッドソールシステムを発表しました。このシステムは、柔軟かつ反発性に優れたフォームコア(クッション材)が、衝撃力を広範囲に分散します。しかも、その周囲に硬めのフォームを配置して柔らかいコアを固定しているのが特徴です。

位置が安定することで、コアはまっすぐに跳ね返るため、高い反発力を生み出します。簡単にいえば、二種類のミッドソールが連携して、軽量で柔らかく、しかも反発力が高い、これまでにない履き心地を実現したわけです。

さらに翌2009年には、ルナロンにダイナミックサポートというテクノロジーを組み合わせたランニングシューズ、ルナグライド+が登場しました。

少し専門的な話ですが、このシューズは、かかとの外側で足が着地して、かかとが過度に内側に倒れこむオーバープロネーションという症状をもつランナーと、その傾向のないニュートラルランナーの両方に対応します。

中央部の柔らかい角度のついたウェッジ形フォームを、外側の硬度の高いフォームキャリッジで覆うダイナミックサポートという構造が、性質の違うランナーを1足でサポートするというのは、かなり革新的です。
1足で走り方の異なるランナーを無理なくサポートしてくれるルナグライド+。ランニング初心者からフルマラソンに出場する上級者まで、安心して履けるモデルです。
1足で走り方の異なるランナーを無理なくサポートしてくれるルナグライド+。ランニング初心者からフルマラソンに出場する上級者まで、安心して履けるモデルです。 写真提供/ナイキ ジャパン
例えば、フルマラソンを走っていると後半になるにつれ、足の着地する部分が変わり、かかとが内側に倒れこむ走り方になってしまうランナーは、少なくありません。そんな時もルナグライド+は、スマートに対応してくれるのです。

私も3時間56分9秒でゴールし、初のサブ4を達成した2011年1月の湘南国際マラソンで履いていたのが、まさにルナグライド+でした。35km以降にオーバープロネーション(かかとの外側が着地する走り方)になってしまいましたが、ダイナミックサポートが、それを是正してくれました。
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格の違う機能を備えたスニーカー界の“王座”

このようにナイキはいつの時代も機能に関する革新を止めないブランドです。2017年にはポリウレタンやEVAといった発泡材を使わずに、ナイキ エアだけでソールユニットを構成したナイキ エア ヴェイパーマックスを発表したのも記憶に新しいはずです。
一般的なフォームなどの発泡素材を使わず、ナイキ エアのみでソールユニットを構成したナイキ エア ヴェイパーマックス。見た目も斬新です。ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
一般的なフォームなどの発泡素材を使わず、ナイキ エアのみでソールユニットを構成したナイキ エア ヴェイパーマックス フライニット 2。見た目も斬新です。2万円/ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
さらにフルマラソンで2時間の壁を破るプロジェクト“Breaking2”でお披露目された厚底のナイキ ヴェイパーフライ エリートは、レーシングシューズは薄底という概念を覆しました。

2018年に入ってからは、これまで同時に確保することが困難であった「クッション性」「反発性」「軽量性」「耐久性」の4機能を備えたナイキ リアクトを発表したりと、ナイキは、革新を求め続けるというブランドのスローガン“There is no finish line”をいまも体現しています。
ナイキは、フルマラソンなどロードレースの上級者向けモデル=薄底という常識を覆しました。こちらは、大迫 傑選手や設楽悠太選手といった一流ランナーも愛用しているナイキ ズームヴェイパーフライ。
ナイキは、フルマラソンなどロードレースの上級者向けモデル=薄底という常識を覆しました。こちらは、大迫 傑選手や設楽悠太選手といった一流ランナーも愛用しているナイキ ズームヴェイパーフライ。 写真提供/ナイキ ジャパン
「クッション性」「反発性」「軽量性」「耐久性」のすべてを満たしたシリーズとして登場したのが、“ナイキ リアクト”です。こちらは、より都会的なデザインが目を引くエピック リアクト フライニット。ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
「クッション性」「反発性」「軽量性」「耐久性」のすべてを満たしたシリーズとして登場したのが、“ナイキ リアクト”です。こちらは、より都会的なデザインが目を引くナイキ エピック リアクト フライニット。1万5000円/ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
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こちらもナイキ リアクトのソールユニットを採用したナイキ オデッセイ リアクト。都会派の大人ランナーにも支持される最新モデルです。ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
こちらもナイキ リアクトのソールユニットを採用したナイキ グライド リアクト。都会派の大人ランナーにも支持される最新モデルです。1万2000円/ナイキ スポーツウェア(ナイキ カスタマーサービス)
結局のところ、ナイキがスニーカーシーンで王座に君臨する大きな理由は、驚くべき機能を備えたスポーツシューズを常にクリエイトし続ける力、それに尽きます。いつの時代も、デザインだけそれっぽく見せたものや、中途半端な機能を備えたものとは明らかに一線を画したモデルを生み出しているのです。

日常でナイキのスニーカーを履くということは、フェラーリやポルシェ、マセラッティのような本格的なスポーツカーを、街で乗る感覚に近いのかもしれません。

● 南井正弘(みない まさひろ)

フリーライター、ランナーズパルス編集長。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。「フイナム」「ランニングスタイル」「スポーツナビDo」「SHOES MASTER」「デジモノステーション」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆している。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナーで、ランニングギアマガジンとウェブサイトの「ランナーズパルス」の編集長も務める。ベストタイムはフルマラソンが3時間56分09秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。

※掲載商品はすべて税抜き価格です
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