2025.05.15
【Q5】海外出張での時差ボケ対策を教えて
寝ても疲れがとれない、起きたい時間よりも早く目が覚める。年齢を重ねて、睡眠にまつわるお悩みが増えたのでは? そこで、オヤジさんも多く訪れるという『眠りと咳のクリニック虎ノ門』の柳原万里子院長に、さまざまな疑問に答えていただきました。
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イラスト/STOMACHACHE. 文/大塚綾子 編集/菊地奈緒(Web LEON)
A.無理に現地時間に合わせない。機内で寝不足を解消し滞在先でのパフォーマンスを確保!
柳原先生(以下、柳原) どのくらいの期間滞在するかによって対策が変わりますが、数日~1週間ほどの出張であれば、体内時計のリズムを滞在先の現地の時計に無理に合わせようとすることは避け、当日のパフォーマンスを確保できるようその場その場で対処するほうがよいと思われます。
というのも私たちの体内時計は時差が大きければ大きいほど、それに合わせるのに日数が必要です。時差の大きい地域への短期の出張で無理に現地の昼夜に合わせようとすると、滞在中には間に合わず、帰国してまた日本の時計に合わせようと苦しむことになりかねません。
現地の日中の眠気にはカフェインなどで覚醒を促し、夜は明日に支障がないくらいの睡眠時間の確保に努める。どうしても眠れない時には睡眠薬を使って寝てしまうも1つの手です。ただしこの場合の睡眠薬の処方は保険診療では難しいかもしれません。市販の睡眠改善薬やメラトニンのサプリメントを利用されている方もいます。
帰りの飛行機では現地で貯めた睡眠不足を解消するためにやはりしっかりと寝て、帰国後のスケジュールに備える。睡眠の貯金はできませんが借金はできます。現地で貯めた睡眠不足を帰路の飛行機や帰国後に日本で返済するイメージです。
2週間以上の長期間の出張の場合には、出発の1週間ほど前の日本にいる間から徐々に現地の昼夜に寄せる形で睡眠時間帯の工夫をしておく。機内での睡眠もなるべく滞在先の昼夜に合わせた時間にとるように工夫しておくと、現地の時計になじみやすくより早く時差ボケから解放されますよ。

パワーナップ前にコーヒーを1杯飲んでおくと、ちょうど起きたい頃合いにカフェインの覚醒効果が出てくるので、気持ちよく目覚めやすくなりますよ。
── 最後に、睡眠外来を受診したほうがいい基準を教えてください。
柳原 上手く眠れず疲れがとれない、睡眠時間はとっているのに日中に眠い、朝起きられない、寝ようとすると体に違和感を生じる、などなど睡眠のお悩みはさまざまです。悩みがある場合にはぜひ睡眠外来を訪ねてみてください。
また、寝ている間のことは自分ではわかりません。大きないびきをかく、寝言を言って暴れることがある、無意識にものを食べるなど、睡眠中の異常を周囲から心配された時も受診のタイミングです。
睡眠は日中のパフォーマンスと若さ、将来の健康寿命を守るために大切な時間です。睡眠外来では原因の特定と解決を目指せます。お困りの際にはぜひご相談ください。

● 柳原万里子(やなぎはら・まりこ)
医学博士。日本睡眠学会総合専門医・指導医。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。公益財団法人神経研究所睡眠健康推進機構学校訪問型睡眠講座・出張睡眠市民講座事業登録講師。筑波大学附属病院睡眠呼吸障害診療科講師、東京医科大学睡眠学寄附講座客員講師を経て2022年11月に「眠りと咳のクリニック虎ノ門」を開院。皆さまの睡眠と健康寿命を守る、をモットーに女性ならではの丁寧な視点で多岐にわたる睡眠障害の診療と臨床研究、啓蒙活動を行う。著書に「臨床医のための疾病と自動車運転(三輪書店)」「診断と治療のABC 睡眠時無呼吸症候群(最新医学社)」など。

■ 眠りと咳のクリニック虎ノ門
住所/東京都港区虎ノ門1-1-18 ヒューリック虎ノ門ビル1F メディカルスクエア虎ノ門内
TEL/03-6205-7541
診療時間/月・火・木・金曜10:00〜14:00、16:00〜20:00(水曜は不定期) ※受付時間は診療終了の30分前まで
休診/土・日曜・祝日
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