2025.05.07

【Q2】「寝溜め」はできますか?

寝ても疲れがとれない、起きたい時間よりも早く目が覚める。年齢を重ねて、睡眠にまつわるお悩みが増えたのでは? そこで、オヤジさんも多く訪れるという『眠りと咳のクリニック虎ノ門』の柳原万里子院長に、さまざまな疑問に答えていただきました。

CREDIT :

イラスト/STOMACHACHE. 文/大塚綾子 編集/菊地奈緒(Web LEON)

A.休日に普段より長く寝てしまうのは睡眠不足の反動。「寝溜め」はできません!

【Q2】「寝溜め」はできますか?
「春眠暁を覚えず」と言いますが、近頃ぐっすり眠れていますか? 日々のパフォーマンスと若さを保つために欠かせない睡眠ですが、毎日の睡眠に不満を覚えるオヤジさんも多いかと。そこで、ビジネスパーソンが抱える睡眠の悩みと日々向き合っている『眠りと咳のクリニック虎ノ門』院長の柳原万里子先生にお話をうかがいました。

── 最近「睡眠の質」という言葉を耳にしますが、睡眠は量より質なのですか?

柳原先生(以下、柳原) 量と質のどちらも大切です。たとえぐっすりと質のいい睡眠をとれていたとしても、さすがに毎日2時間の睡眠ではつらいですよね。「睡眠の量」とはグラフの横軸を時間、縦軸を眠りの深さ(質)にした時の横軸×縦軸の面積としてイメージしていただければわかりやすいかもしれません。
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睡眠時間と眠りの深さにプラスして、もう1つ重要なのが睡眠のリズムです。これは体内時計と呼ばれるものになりますが、日中は起きて活動し、夜になると眠るという体の1日の周期のことを言います。この体内時計に従って自律神経の働きやホルモンの分泌が調整され、日中は活発に活動しやすく夜には落ち着いて眠りやすくなるように体温や血圧、血糖値などが昼夜で変化するんです。

体内時計を良好に保つためには、毎日決まった時刻に睡眠・覚醒することと、昼夜のメリハリのある生活を送ることが大切です。朝は太陽の光を浴びて日中は積極的に頭と体を使って活動する。そして寝る前には心拍数を上げるような考えごとや激しい運動は避け、照明も落としてリラックスして安心して心地よく休める環境を整える。

体内時計は原始時代に近い生活をイメージして再現すれば、間違いなく整うと思うんです。眩しい朝陽で目覚め、日中は頭と体をフルに使って森で食べ物を集め、狩や漁をし、夜になったら獣に襲われない安全な場所に身を潜めて眠る。昼と夜のメリハリがはっきりしていて、運動量が多いと睡眠はよくなります。LEON世代の不眠症や起床困難の7〜8割はこれでよくなるのではないかと思っています。
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── 実際に睡眠に悩みを抱えるオヤジ世代は増えているんですか?

柳原 睡眠も体と同じように歳をとります。子どもの頃や若い頃と同じようにぐっすりとは眠れません。年齢によるガタは現れ始めます。しかし近年になり、睡眠障害が増加している原因は加齢以外にあると私は考えています。

日本は社会の近代化により昼夜を問わず明るくなりました。特に都市部では深夜まで営業している店や交通機関が増え、通信環境も整っており、何時まででも仕事や趣味に活動ができてしまいます。コンビニやネットで簡単にものが手に入るため運動量も減ってしまう。昼夜のメリハリが失われて睡眠のリズムが崩れるうえに、睡眠時間と運動量も減るとさすがに問題が出てしまいます。

矢野経済研究所が2022年に行った調査では、スリープテック市場規模は2022年時点で60億円、2025年には105億円に達することが予測されています。近年になり睡眠にまつわる乳製品やサプリメント、アプリやガジェットが注目されている理由はおそらくこうした環境の近代化に対して人間が動物として合わせられる限界を迎え、その弊害が睡眠障害の症状として出てきているからではないかと思っています。質のいい睡眠を手に入れたいなら、人間は野生に帰るのが一番なのかもしれません。
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── なるほど。では寝溜めはできますか?

柳原 残念ながらできません。十分に寝足りると私たちは自然に目が覚めてしまいます。逆に言うと休日に普段より2時間以上長く眠れてしまう場合は、睡眠不足が溜まっているサイン。睡眠不足を補うために反動で眠れているだけで、寝溜めできているわけではありません。

ただし寝だめはできなくても、溜めた睡眠不足の解消には役立ちます。日中のパフォーマンスや若さを保つためにも、長く寝られる日に睡眠の借金を返済しておくのはありだと思います。
柳原万里子(やなぎはら・まりこ)

● 柳原万里子(やなぎはら・まりこ)

医学博士。日本睡眠学会総合専門医・指導医。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。公益財団法人神経研究所睡眠健康推進機構学校訪問型睡眠講座・出張睡眠市民講座事業登録講師。筑波大学附属病院睡眠呼吸障害診療科講師、東京医科大学睡眠学寄附講座客員講師を経て2022年11月に「眠りと咳のクリニック虎ノ門」を開院。皆さまの睡眠と健康寿命を守る、をモットーに女性ならではの丁寧な視点で多岐にわたる睡眠障害の診療と臨床研究、啓蒙活動を行う。著書に「臨床医のための疾病と自動車運転(三輪書店)」「診断と治療のABC 睡眠時無呼吸症候群(最新医学社)」など。

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眠りと咳のクリニック虎ノ門

■ 眠りと咳のクリニック虎ノ門

住所/東京都港区虎ノ門1-1-18 ヒューリック虎ノ門ビル1F メディカルスクエア虎ノ門内
TEL/03-6205-7541
診療時間/月・火・木・金曜10:00〜14:00、16:00〜20:00(水曜は不定期) ※受付時間は診療終了の30分前まで
休診/土・日曜・祝日
HP/https://sleep-toranomon.com

「睡眠」が気になったら

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