2026.04.30
バーテンダー後閑信吾×シェフ米澤文雄
世界No.1バーテンダーとトップシェフが語る「飲食業界未来予想図」
ニューヨークで出会い、それぞれの道を歩んできた後閑信吾さんと米澤文雄さん。あれから20年——飲食業界を取り巻く環境は大きく変わりました。 テクノロジーの進化、人手不足、そして人材の海外流出。最前線にいるふたりの眼に今、飲食の未来はどう見えているのでしょうか。
- CREDIT :
写真/筒井義昭
後閑信吾(バーテンダー)×米澤文雄(料理人)
バーとレストランのトップランナーが飲食業界の未来を予想

▲ 20年前にニューヨークで出会い、今もなお親交が深い後閑信吾さん(左)と米澤文雄さん(右)。
2006年、ニューヨークでの出会いから始まった後閑信吾さんと米澤文雄さんの物語をたどった前編では、共同生活や、料理とカクテルを持ち寄った夜の記憶が語られました。無名時代の試行錯誤のなかで生まれた一皿と一杯が、やがてそれぞれのスタンダードへと昇華されているのがおわかりいただけたことかと思います。そして、そんなふたりの原点を味わえる特別な一夜限りのイベントも開催されることに!

◆イベント
「あれから20年~バーテンダー後閑信吾×シェフ米澤文雄」
ニューヨークで出会ってから、20年。
それぞれの道を極めてきたふたりが、再び交差する。
本記事のなかで語られた「あの一皿」と「あの一杯」を始め、ふたりの思い出を料理とカクテルとして再構築。
ふたりの20年という時間の移ろいを楽しめる一夜に。
日程/2026年5月13日(水)
時間/17:00~、20:00~(予約制)
会場/ゑすじ郎(SG Low)
東京都渋谷区神南1-9-4 NCビル 2F
料金/1万1000円(イベントにつき、料理/飲み物はこの日限定メニューのコースとなります。通常メニューの提供はありません)
予約はコチラから
あれから20年……最前線に立つふたりは今、何を見ているのでしょうか。バーとレストラン、それぞれのジャンルで世界を知る彼らが、これからの飲食業について語ります。変わり続ける時代のなかで、店は、そして人は、どこへ向かうのでしょう。
これから生き残るのはどんな店?

▲ 今秋には米国移住も予定しており、ますますグローバルに活躍する料理人、米澤文雄さん。 自身がオーナーを務めるレストラン「No Code」にて。
前編では米澤さんが後閑さんのバー「The SG Club 参階 - Sangai」を訪ねましたが、今回は後閑さんが米澤さんのレストラン「No Code」を訪問。20年前に初めて出会ったニューヨークでの思い出の料理を味わいながら、これからの飲食業界について語ります。まず、これからの日本で生き残るのはどんな飲食店?
米澤 日本は世界のなかでも最大級に飲食店が多いし、比較的簡単に開業できてしまいます。だから常に人手不足で猫の手も借りたいくらい。だけど今後は店が減っていくだろうし、それはある種、自然な淘汰なのかなとも思っています。
後閑 我々の業界もAIの影響を受けて効率化が進んできました。たとえばレシピ管理や在庫、オペレーションの部分は、これからどんどんAIの力を借りていくと思うけど、肝心のカクテルや料理を作ったり、人をもてなすというサービス面はAIにとって変わられない独自な領域。
米澤 我々の業界はAIが一番入りづらい領域なんじゃない? ロボットでカバーできるような低価格の店と、人が料理やお酒をつくり、人がもてなすという高級店の二極化が進んでいくことで、結果として人手不足は解消していくんじゃないかな。AIが進化すればするほど、高級店はその価値を増していくわけだから。
後閑 これからは、(ロボットではなく)人が作って、人が運んで、人が説明するということが自体がプレミアムな価値になる時代になるでしょう。 人による高級店と、ロボットによる低価格店という二極化が進むなかで、可能性があるのは個人経営による小規模なお店かな。
米澤 昔、飲食業はハイリスク・ハイリターンと言われていたけど、いまはハイリスク・ローリターンだから(笑)、大箱より小箱が増えていくでしょう。そこがいちばん面白いだろうね。あと、デスティネーション・レストランの流れもあって、地方はどんどん魅力を増していく。
後閑 食材も豊富だし、東京にいなくてもお客さんを呼べる時代。そこにストーリーが乗っかれば、地方にもチャンスが広がっています。
リアルな環境に身を置くことの価値

▲ 20年前の初対面から不思議にウマがあったというふたり。昔話にも花が咲く。
20年前の2006年にふたりは初めてニューヨークで出会ったわけですが、この20年間の変化をどのように捉えていますか?
後閑 劇的に変わりましたね。ぼくがニューヨークに行った頃って、まだ情報も限られていて、現地に行かないとわからないことが多かった。でも今はSNSもあるし、世界のどこにいてもある程度の情報は入ってくる。いい面もあるけど、体験の価値は逆に薄れやすくなっている気がします。
米澤 ぼくたちにとっては‟いい店に行く”ってこと自体が、ひとつの勉強だったんですよね。時間もお金もかけて自分で体験し、そこで何かを持ち帰る。でも今は、写真や動画である程度わかった気になれてしまう。その分、実際に現場に立ったときのギャップはむしろ大きくなっていると思います。
その中で、若者の海外志向も変化していますか?
米澤 (海外へ出る人は)増えているとは思う。ただ、昔とは“覚悟”のレベルが違うかな。僕らの頃は覚悟を決めて行って、何もわからないまま自力でなんとかするしかなかった。今は事前にたくさんリサ―チできて、フラッと行けるし、ダメならすぐ帰ってきちゃう。
後閑 今は選択肢が多いから、逆に迷いやすいのかもしれない。でもやっぱり、どこかのタイミングで環境に飛び込まないと見えないものはあると思うから、その場に実際に身を置くというのは大切なんでしょうね。ぼく自身も、あの時ニューヨークに行ってなかったら、今はまったく違うことをしていたと思います。
求められるスキルの変化
米澤 人材に求めるスキルも変化しているよね。
後閑 重要なのはコミュニケーションスキル。やはり言語は不可欠だから、まずは英語力。さらにSNSに対応できる個人としての魅力や発信力も欲しい。
米澤 ぼくが大切だと思っているのは“空間認識力”。たとえば厨房にいて、仲間が今何をやっているのか。お客さんは今何を食べているのか。自分の作業だけに没頭するのではなく、次に何が必要とされるか、空間を意識できる人は成長していきます。
後閑 仕事を点ではなく、流れで捉えられる人ということ。想像力とも言い換えられるかもしれないけど。

▲ 20年ぶりに“ニューヨーク第一夜の味”に出会えてうれしそうな後閑信吾さん。
若い世代へ伝えたいことは?
それぞれにバーやレストランをオープンさせ、現場に立ち続けた20年……ふたりが見てきたのは成功の瞬間だけではありません。選択に悩み、思うようにいかない時間を重ねてきたからこそ、現在の立ち位置があるのでしょう。では、これからこの世界を目指す若い世代にアドバイスをお願いします。一見、遠回りにも見える時間をどう捉えるべきですか?
米澤 まず伝えたいのは、環境の重要性ですね。どこに身を置くかで、見える景色も、得られる経験もまったく変わってくる。迷っているなら、一度は外に出てみたほうがいいと思います。海外でなくてもいいけれど、自分が今いる場所とは違う環境に身を置くことで、初めて気づけることがあるはずです。そのうえで、日本でやるのか、海外でやるのかは、その人自身が選べばいい。どちらが正解ということではなく、自分で選んだ場所でどうやるかが大事だと思います。
後閑 あとはやっぱり、続けることですよね(笑)。せっかく外に出ても、すぐに帰ってきてしまったら意味がない。海外で過ごすことで、自分の基準値は確実に上がるし、周りと比べたときの立ち位置も見えてくる。でもそれって、短期間ではなかなかわからないんです。結果もすぐには出ないし、むしろ出ない時間のほうが長い。でも、続けていればどこかで必ずつながる瞬間が来る。そのときに初めて、あの時間が意味を持つんだと思います。

No Code(ノー・コード)
米澤文雄さんの右腕として長年活躍してきた末松暉典さんによる、新感覚の「メキシカン・フレンチ」を提供するイノベーティブ・レストラン。当初は紹介制でしたが、、2025年6月より一般予約が解禁され、食の概念(コード)にとらわれない独創的なコース料理で人気を集めています。
住所/東京都港区西麻布2-25-31 クオーレ西麻布 2F
TEL/050-5456-6777
営業/17:00~19:30、19:45~22:15(2部制、各回一斉スタート)
定休/日曜・月曜
今夜はお酒が飲みたい気分?




















