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2025.10.31

【前編】知られざるワイン産地への旅

アルト・アディジェで365種のワインを飲む「ワインサミット」開催

イタリアとオーストリアの国境に位置する小さな街、ボルツァーノを中心とした「アルト・アディジェ」地方。そこは、まだまだ知られざる美味ワインの産地なのでした。

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文・編集/秋山 都(編集者・ライター)
CREDIT :

取材協力/アルト・アディジェ・ワイン協会

イタリアなのにイタリア語が通じない⁉

アルト・アディジェ ワイン 
▲ イタリア北西部トレンティーノ・アルト・アディジェ州にある、アルト・アディジェ。
久々に降り立ったミラノ・マルペンサ空港にて、迎えに来てくれたドライバーさんに「ボンジョルノ~」とご挨拶。少しばかりできるイタリア語でおしゃべりしようかなと思ったら、なんと彼、ほとんどイタリア語がしゃべれませんでした。では何語でお話しましょうか? と聞いたら、「テデスコ」とのこと。何それ? と調べてみますと、ドイツ語のことでした。ミラノからドライブすること4時間……今回のデスティネーションであるアルト・アディジェは、イタリアにありながらイタリア語が話せない人もいる、ユニークなカルチャーをもつエリアなのでした。
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アルト・アディジェ ワイン 
▲ アルト・アディジェの中心都市であるボルツァーノのワインショップ。左にドイツ語、右にイタリア語で併記されています。
なぜイタリア語が通じないのか? そこにはアルト・アディジェの地理的環境と歴史が大きく関係しています。イタリアの北東部にあり、オーストリアと国境を接しているアルト・アディジェは第一次世界大戦まではオーストリア=ハンガリー帝国の領土でもあったことから、現在もドイツ語を母国語とする人が7割いるとのこと……だからドライバーさんもイタリア語が不得意だったんですね。学校での教育やテレビ放送もドイツ語が選べるんだそうです。日本に暮らしていると、日本人は日本語が出来て当たり前と思いがちですが、世界は必ずしもそうではない。高市総理大臣のもとで外国人との共生を模索する日本にあって、多様性ということを改めて考えさせられる経験でした。
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アルト・アディジェ ワイン 
▲ DOCアルト・アディジェを証明するキャップシール。Südtirolとは南チロルの意味です。©Florian-Andergassen
と、のっけから結論じみてしまいましたが、アルト・アディジェに出かけたのは政策を構想するためではありません(当然ながら)。目的としていたのは、1にワイン、2にワイン、3、4がなくて5にワイン。ひたすらワインを飲むためです。ここアルト・アディジェでは紀元前500年からブドウが栽培されており、標高200~1000mの山岳地帯は日中の寒暖差が激しく、年間の日照時間、降雨量の観点からも、ワイン用のブドウ栽培にはほぼ理想的な環境なのだとか。この辺り、「知られざるワイン産地『アルト・アディジェ』」でもまとめておりますので、ぜひご一読ください。
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ワインサミットに日本代表(笑)として参加

そんなアルト・アディジェのワインを学ぶために……まずはワインサミットに参加してきました。こちらは「アルト・アディジェ・ワイン協会」が2年に一度開催する大規模なワインイベントでして、 この地で生産されるワインを知ってもらおうとさまざまなプログラムが展開されています。なかでも目玉となるのがこのテイスティングセッション。
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今回はスパークリング、白、赤、そしてデザートワインまでなんと365種のワインが飲み放題、いえ、テイスティングし放題。私は自分なりにテーマを決めて60種ほど、5時間をかけて試飲しましたが、飲めば飲むほどにアルト・アディジェのワインの多様性を知り、もっともっとと深堀りしたくなるひと時でした(単に酔っぱらってただけかもしれませんが)。
そんなアルト・アディジェ産ワインの魅力はどこから生まれるのか? 私なりに分析してみますと、それは「北アルプスの冷涼な気候× 地中海的な日照 × 標高差」という3要素の掛け合わせにヒミツがあるように思えます。
アルト・アディジェ ワイン 
▲ なだらかな傾斜から、けわしい斜面まで、多様性に富むアルト・アディジェの地形。©Florian-Andergassen
つまり、隣接するアルプスから冷たい風が吹くことで、とくに夜間の気温が下がり、昼夜の寒暖差があること。これにより白ワイン品種のブドウ(ピノ・ビアンコ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなど)にはフレッシュな酸が与えられるなど好影響が期待できます。
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次に、地中海からの温風が吹くことでブドウを充分に成熟させること。また日照も年300日程度と充分すぎるほどあり、果実の香りや糖度は高くなります。

さらに、山に囲まれている地形から、ブドウ畑の標高が200~1000mとバラエティに富んでいること。低地はラグレインやメルローなどの赤ワイン品種、高地はピノ・ビアンコやリースリングなど白ワイン品種に適していることから、多彩なワインが生産できるというわけ。

この他にも、土壌が石灰岩、粘土質、砂質などさまざまあり、それらが小さくモザイク状になっていることがさまざまなワインの魅力にもつながっているのですが、そこはちょっと専門的になりすぎるので割愛します。

アルト・アディジェの料理と言えば?

さて、すばらしいワインのあるところには、もちろんおいしい料理があります。アルト・アディジェは長くオーストリア=ハンガリー帝国の一部であり、第一次世界大戦後にイタリアに編入しているため、食文化はイタリアというよりむしろオーストリア、ハンガリーなど中欧ヨーロッパ寄り。燻製肉、ジャガイモ、キャベツ、バター、パンなどが中心です。
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その代表と言えるのは、固くなったパンに卵・ミルク・ハーブ・ベーコンなどを混ぜて団子にし、スープで煮たクネーデル、生ハムを燻製したスペック、リンゴを薄い生地で包んで焼いたシュトゥルーデルなど。
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▲ 私がどうしても食べたい!と主張してオーダーした「ヴィッテロ・トンナート」。トリュフがのっている豪華版でした。
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私には偏執的なこだわりがあり、メニューにそれがあったら頼まずにいられない料理がいくつかあるのですが、そのひとつである「ヴィッテロ・トンナート」(仔牛肉のツナソース)にも出会えました。本来、ピエモンテ料理ではありますが、私にとってはこれが北イタリアの味なんですよね。
と、ここまでアルト・アディジェの概要とワインについてお伝えしてまいりましたが、いよいよ後編では私のおすすめワイナリーを巡る旅に出かけます。後編もお楽しみに!

食欲が導く旅へ出かけよう!

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