• TOP
  • STAY&TRAVEL
  • 世界三大料理って、フランスと中国と……あと、どこだった?

2025.09.19

【トルコ美食紀行・前編】

世界三大料理って、フランスと中国と……あと、どこだった?

世界三大料理は? と聞かれて「フランス料理、中華料理……」と挙げながら、最後のひとつが思い出せない人、多いのでは。正解は「トルコ料理」とのことですが、そもそもトルコ料理ってどんなもの? 1週間かの地で煩悩のままに食べまくってきた筆者が5つのキーワードから解説します。

BY :

文・編集/秋山 都(編集者・ライター)
CREDIT :

取材協力/ターキッシュエアラインズ

今、トルコ料理が面白い5つの理由とは?

ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ ブルーモスクの愛称で知られる「スルタンアフメット・ジャーミィ」はイスタンブールのランドマーク。
日々、人気ランキングやガイドブックなどに情報を求めがちの私たちですが、「世界三大~」「五大~」と、一種のカテゴリーを作り納得したくなる整理癖もあるようで。たとえば世界三大珍味と言えば、キャビア、トリュフ、フォワグラ。フランスはボルドーの五大シャトーワインと言えば、マルゴー、ムートン・ロートシルト、ラトゥール、ラフィット・ロートシルト、オー・ブリオン……と、このあたりは有名ですよね。

では、世界三大料理は? と聞かれて「フランス料理、中華料理……」と挙げながら、最後のひとつが思い出せない人、多いのでは。私的には日本料理と言いたいところですが、正解は「トルコ料理」とのこと。なんか意外な感じですよね。残念ながらトルコ料理はケバブくらいしか知らない私、これはきちんと食べてみたい……と、俄然興味が湧いてきました。
PAGE 2
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ 陸では東はジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン、イラン、イラク、シリア,西はブルガリア、ギリシャと接しているトルコ。イラスト地図/筆者
まずトルコについての基礎知識を……と念のために地図を確認して驚きました。トルコってこんなカタチだったっけ? まさにヨーロッパとアジアの交差点に位置しており、北は黒海、南は地中海、西はエーゲ海に接しています。細長い日本でも日本海と太平洋側では気象や生態系が異なるのですから、3つの海に接し、ヨーロッパとロシア、中東とアジアの狭間にあるトルコでは、さまざまな文化が交錯しながら発展してきたことは想像に難くありません。

紀元前にはヒッタイト王国(私はマンガ*で読んだ知識しかありません)があったのもこの辺りですし、それ以前にはチグリス川、ユーフラテス川の流域で花開いた古代メソポタミア文明の影響も大いに残っていたことでしょう。高校時代には日本史を選択していたため、世界の歴史に疎い私ですが、トルコがなんだかすごい国だというのはおぼろげながら見えてきました。やっぱりこれは実際に行ってみないといけませんね。百聞は一見に如かず。
*篠原千絵さんによる「天は赤い河のほとり』は、現代に生きる少女がヒッタイト王国へタイムトリップし、ヒッタイト皇妃となるまでの物語。ほかに、細川智栄子さんの「王家の紋章」にもヒッタイトのイズミル王子が登場していました。古代ロマン、好き。
PAGE 3
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ ヨーグルトをたっぷり使うトルコの食卓。「メゼ」と呼ばれる前菜をみんなで分け合っていただきます。
ということで、旅してきました、トルコ。世界三大料理って本当? とやや懐疑的な気持ちを持ちながらの1週間ほどの滞在でしたが、実際に食してみて納得しました。うん、トルコ料理ってなにより歴史に裏打ちされた奥深さがあり、そして意外にヘルシーでおいしい。

現代のトルコ料理の起源は14~15世紀のオスマン帝国にさかのぼるそうですが、当時は毎夜、美食が並ぶ宴席を繰り返し、健康を害するスルタン(皇帝)が続出していたことから、それを心配した宮廷の医師と料理人が健康維持とアンチエイジングに重きを置き、考案した料理がまだ多く残っているのだとか。

なるほど、たっぷりの野菜にフレッシュなハーブやスパイスを合わせ、ソースにはヨーグルトを多く使うおかげか、軽い食べ心地です。インド料理ほど刺激が強くなく、フランス料理のように重たくない、まさに東西文化の融合といえる料理といえるでしょう。そこで本記事では、私が魅せられた現代トルコ料理の魅力を5つのキーワードから解説したいと思います。

PAGE 4

01.酒呑みにはたまらない前菜文化「メゼ」

まずはトルコでレストランに入ると誰もが気づく、冷蔵ケース。中を覗くと、ヨーグルトとハーブを合わせた冷菜、ナスやパプリカを使ったペースト、豆料理、オリーブオイルでマリネした野菜、チーズやシーフードまで実に多彩なお惣菜が所狭しと置かれています。これらを大皿に少しずつ盛り、仲間や家族とシェアするのが、トルコ料理に欠かせない「メゼ(Meze)」。

これは前菜や小皿料理の総称で、食卓を彩る多彩な小品を指すのだそう。ギリシャや中東にも似た文化がありますが、トルコのメゼはさらにバリエーションが豊か。アルコール、特にトルコの国民的な蒸留酒ラク(Raki)との相性も抜群で、酒席の楽しみを盛り上げてくれます。アペタイザーとしてメイン料理の前に食欲を刺激する役割を果たすだけでなく、会話を弾ませ、人と人とをつなぐ役割も担ってくれているようでした。トルコ料理を理解するうえで、メゼは欠かせないエッセンスと言えるでしょう。
PAGE 5

02.世界各国の料理の起源がここに?

イスタンブールの「Seraf Vadi」は伝統的なアナトリア(トルコのアジア部分)料理をモダンなアプローチで供するレストランですが、ここで出会ったのは小麦生地を丸く伸ばして、上にトマト主体の野菜のソースを塗って焼いた「ラフマージョン」というお料理。パリパリの薄い生地はそれだけで食べてもあっさりと軽いんですが、そこへさらにイタリアンパセリやハーブを乗せて、レモンをギュッと搾れば……1枚ペロリと食べちゃう。しかしこれ、何かに似ていませんか?
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ イタリアのピザの原型と言われるトルコ料理の「ラフマージョン」。
そう、ピザ。イタリアではナポリ発祥と言われるピザですが、実はこの「ラフマージョン」は「ピデ」と呼ばれる小麦料理の一種でして、この「ピデ」とピザは同じ古代アナトリアや中東のフラットブレッドに端を発しているのだとか。
PAGE 6
ほかにもトルコ由来と言われる料理はたくさんあって、例えばロールキャベツやピラフ、そしてヨーグルトも。
ユーラシアから中央アジアへと南下してきた遊牧民族だったトルコ人たちが、牛や水牛の乳を桶や革袋に入れて保存していたところへ偶然乳酸菌が入り、発酵した「ヨーウルト(トルコ語でヨーグルトの意)」が起源だと言われています。

私たちにとって馴染み深いヨーグルトといえばブルガリアですが、調べたところこの歴史は意外に浅く、1970年に開催された大阪万博に出展していた「ブルガリア館」で、明治乳業の社員がプレーンヨーグルトを試食したことが開発のきっかけとなったのだそうです。本来なら商品名は「トルコヨーグルト」であるべきだったのかも、なんて考えるとちょっと面白いですよね。
PAGE 7

03.女性シェフの台頭

さて、トルコの大多数の国民はムスリムですが、初代大統領ケマル・アタルチュルクによって1923年にトルコ共和国が建国された際、政教分離と民主主義が掲げられました。つまり、イスラム教の教えにある禁酒や断食など厳しい戒律を守るかどうかは個人の自由とのことで、街中でも女性はスカーフをせずに歩くことができます。が、それでもやはり他国と比べれば、外で目にするのは圧倒的に男性が多い印象。
そんななかでも今回は多くの女性シェフに出会えました。どのレストランもミシュランやゴ・エ・ミヨなど有名ガイドブックでアワードを受賞している有名店です。トルコ料理の伝統を大切にしながら、現代的な料理へと昇華させる、言わばモダン・ターキッシュなスタイルが印象的でした。
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ 「ターキッシュエアラインズ」のフライングシェフも女性でした!
今回、東京とイスタンブールを往復する際に利用したのは「ターキッシュエアラインズ」のビジネスクラスでしたが、ここにはフライングシェフが常駐して、機内食をただ温めて提供するのではなく、食事を仕上げ、盛り付け、コース仕立てでサーブしてくれます。そしてこのフライングシェフもまた、女性でした。
PAGE 8

04.華麗なるストリートフード

さて、トルコの食事が素晴らしいのはファインダイニングに限った話ではありません。わずかなお金で楽しめるストリートフードも充実しており、どれもおいしいからぜひお試しいただきたい。
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ トルコ語でドルマは詰め物、ムディがムール貝の意味です。
イスタンブールやイズミル、エーゲ海沿岸の町の屋台で売られている「Midye Dolma(ドルマ・ムディ)」は、ムール貝に米を詰め、スパイスや松の実、パセリ、オリーブオイル、玉ねぎなどで味付けした料理。ひとつから買えるから気安く、レモンをチュッと搾っていただきます。温かいほうがおいしいので、ぜひ出来たてを。
PAGE 9
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ ニンニクが濃厚に香りますが、卓上でさらにニンニクを加えていただきます。
今回食べたなかで最も強烈な味わいだったのが「İşkembe Çorbası(イシュケンベ・チョルバス)」というスープ。これは牛の胃袋を丁寧に下処理してやわらかく煮込んだスープに、大量のニンニクが入っています。お好みで食べる前にさらに酢やニンニクを加えていただくのですが、まあなんというか……キョ―レツ。私はこの味わいから夜中のホープ軒*を思い出しましたが、トルコの人たちもこのスープを飲酒後の〆や、二日酔い対策として飲む人が多いんですって。お酒を飲んだ後にニンニクたっぷりの汁ものが欲しくなるのは万国共通なのかもしれません。
*東京・千駄ヶ谷で昭和35年創業のラーメン店。24時間営業。
PAGE 10
ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ 焼いた鯖の切り身をどんとサンドし、キャベツやニンジンなど野菜を添えたイスタンブール名物「鯖サンド」。
ストリートフードの最後を飾るのは、イスタンブール名物の「Balık Ekmek(鯖サンド)」。これはイスタンブールに行く前に、私の父が「昔、ガラタ橋のたもとで鯖のサンドイッチを食べたんだけど、まだあるかな」と話していたので、土産話にしようと食べてみたのですが、味は……。まあ名物に美味いものなし、って言いますもんね。察してください。
PAGE 11

05.食中に飲む「Raki(ラク)」のおいしさ

ターキッシュエアラインズ トルコ
▲ ブドウの蒸留酒にアニスの香りをつけた「Raki(ラク)」。
前に、トルコでは禁酒や断食などイスラム教の厳しい戒律を守るかどうかは個人の自由だと書きましたが、そういうわけでこの国ではお酒を飲むのも、つくるのも許されています。私もありがたく毎晩飲みましたが、トルコ産ワインも悪くない。

でも、国民酒と言われる「Raki(ラク)」がおいしくて、トルコ料理にも合うと感じました。水を入れると白濁するので「ライオンのミルク」とも呼ばれているそうですが、同じようなタイプのお酒にフランスのパスティスやギリシャのウゾ、イラクやシリアのアラックがあります。パスティスやウゾはどちらかというと昼下がりに飲むイメージですが、この「Raki」は食事しながら飲むのがおすすめ。「メゼ」と一緒にちびちびやるのがいいですね。
PAGE 12
……というわけでトルコ料理の魅力を5つのキーワードで解説してきましたが、ひと言で言うならその魅力は「地域・民族の融合」。かつてオスマン帝国は北はハンガリー、南はエジプトからイエメン、東はインド、西はアルジェリアと3大陸にわたって領土を広げていたのだとか。さまざまな地域・民族からもたらされた食材・文化が融合し、ユニークな食文化が確立されたトルコはまだまだ書き尽くすことができません。本記事、後編ではおすすめのレストランと遺跡、またお得な行き方についてもくわしく解説します。
参考:「トルコ料理大全」(誠文堂新光社)、「トルコを知るための53章」(明石書店)
ターキッシュエアラインズ トルコ

■ ターキッシュエアラインズ

旅したい気分ならこちらもどうぞ!

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        世界三大料理って、フランスと中国と……あと、どこだった? | 旅行 | LEON レオン オフィシャルWebサイト