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2018.04.14

自動車写真家が撮る、美しいクルマ【5】

自動車も女性も、自分から被写体に踏み込まないといい写真にはなりません

日本における自動車写真の第一人者として、雑誌をはじめとするメディアや広告の世界で活躍する小川義文氏。圧倒的なクオリティを誇る作品の背後にあるポイントについてお話しいただきました。

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写真/小川義文 文/南陽一浩

造形で捉えるクルマもあれば、ステアリングを握ることで初めて見えてくる存在感をレンズにおさめるべきクルマもある。圧倒的な存在感を持つロールス・ロイスは後者の典型です

被写体に向き合って一歩踏み込む作業こそが、写真表現の理解を深めるのです

一台のクルマを美しいと感じる“感じ方”は、いつも同じではない、と小川義文さんはいう。

「造形美で捉えるクルマもありますが、ロールス・ロイスのような超越的な存在感は、ステアリングを自分で握って考えて、初めて見えてくる。自分にとってどういうものか? そんなクルマと自分の関係性を意識すると、ポルシェと同じには撮れないし、街のキレイな場所に置くだけの撮り方もできなくなる」

第一印象のみで美しいと思えるクルマだけが、美しいクルマではないのだ。

「例えば女性モデルを撮る時、容姿や性格にピンと来なくても、美しく撮ろうと決めたら、もうほふく前進です。色々な角度から眺めて、美しさを引き出します。

クルマでもよくあるじゃないですか、“乗ってみたらよかった”って。誤解ないようにいいますけど、一定以上の時間をかけてつき合ってみること。すると写真の出来も、表面的なだけのものと、まったく変わってきます」

被写体に向き合って一歩、自ら踏み込む作業こそが、写真表現の理解を深めるものであり、自分にとって「このクルマは何か」ということをつきつめないと、意味を持った自動車写真にならないのだ。 
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自らの記憶に刻まれたイメージが写真表現を豊かにします

僕が撮る911のイメージは、幼少の頃に街角で眺めていたポルシェのまま。911に憧れると同時に、911を駆る大人の自分という夢を抱いていた。これまで6台の911を乗り継いできました。

ライカのカメラに通じる空冷911の精緻なイメージを意識しました

このカットは911誕生50周年を記念し、ポルシェミュージアムから世界を巡った1967年式の911の内装。日本では僕が撮影を担当しました。空冷911は、ライカのレンジファインダー式カメラに通じるところがあります。

幼少期の原体験が、現在の作品にも生きています

小さい頃、お世話になった近所の小児科の先生がジャガー「Mk-II」をもっていて、先生のクルマはどんな?と聞いたら、喜んで乗せてくれた。それが僕の初めてのジャガー体験です。父のクラウンとは違う、甘い匂いを強烈に憶えています。
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「横顔の美」を高コントラストのモノクロで表現しました

クルマの“美の神髄”は真横アングル。デザイナーがホイール位置とフォルムを決めて描くのも、真横からです。アルファロメオ「2000スポルティーバ」の「横顔の美」を、高コントラストのモノクロで表現した一枚です。

被写体に触発され夢中でシャッターを切ることも大切です

964世代のポルシェ・ターボの美しさは「造形美」と「機能美」。張り出したリアフェンダーに照射された強い光を目にして、突然その超絶パワーのイメージが浮かび、夢中で切ったカット。自分でも納得の、会心の作です。

繊細かつ生命力あふれるデザインを一枚の写真で追及しました

マツダのコンセプトカー、「RXヴィジョン」です。採石場跡地の地中奥深くで、次世代スポーツカーの繊細かつ生命力あふれるデザインを、CGではなく一枚の写真で追及するという、じつに挑戦的な仕事でした。
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東京の猥雑な雰囲気とミニのある生活の楽しさをレンズにおさめました

昔、キラー通りにミュージシャンのかまやつひろし氏の「ミニ・カントリーマン」がよく停まっていて、荷室にギターケースを積んで、それがカッコよくてね。東京の猥雑な雰囲気とミニのある生活の楽しさは、決して矛盾しないと感じます。

ロールス・ロイスの唯一無二の世界観を、富士山と対峙させることで表現しました

日本におけるロールス・ロイスの広報写真として撮った一枚。夜明け前の瑠璃色の空の下、人工的な造形の力を一切借りず、富士山に堂々と対峙している。畏敬の念を抱かせるほどの存在感。これがロールス・ロイスのもつ唯一無二の世界です。

● 小川義文

「NAVI」のメインフォトグラファーとして長らく作品を発表し、日本雑誌広告賞など受賞歴多数。クルマの文化的コンテクストや背景に踏み込む写真術が内外で高く評価される。著書に「写真家の引き出し」、写真集に「小川義文 自動車」、「小川義文写真集 MOMENT OF THE TRUTH」など。

この記事が気になった方は、こちらもどうぞ。

『自動車写真家が撮る、美しいクルマ』

【1】クラシックカーは、自然な光を意識することでさらに美しくなります
写真家の奥村純一氏はヒストリックカーを中心に、それらを時にはノスタルジックに、時にはアバンギャルドな被写体として表現する第一人者だ。そんな写真を撮るうえで心がけていること、そしてポイントは? 作品を例に具体的に解説していただいた。

【2】クルマの走行シーンの撮影は、脳内シミュレーションが大切です
自動車専門誌のみならず、ファッション誌や音楽関係の撮影もこなす柏田芳敬氏。特に躍動感溢れる走りの写真には定評があります。そんな彼が、走りの撮影を中心に、そのポイントを教えてくれました。

【3】クルマの写真はコントラストが効いている方が格好よく見えます
広告写真やポートレートの世界でキャリアをスタートさせ、今でも仕事の主軸はそちらだという峯竜也氏。クルマを撮影する際にも、フィルムカメラのネガ現像や焼き込みと同様の発想でデジタル処理に時間をかけるという。持ち味であるコントラストの効いた作品を作例にしながら、専門の自動車写家とは異なる視点で、撮影の心得を語ってもらった。

【4】クルマの写真はあくまで自然な光の方が、ドラマ性が強調されます
日本レース写真家協会の会長を務める小林稔氏。ル・マン24時間をはじめ、シズル感溢れるレース写真に定評がある。いわば、レース写真界の巨匠だ。今回はレース写真のほかにプロダクトカーの作品も織り交ぜつつ、撮影のポイントについてそのヒントを伺った。

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