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2018.04.12

自動車写真家が撮る、美しいクルマ【1】

クラシックカーは、自然な光を意識することでさらに美しくなります

写真家の奥村純一氏はヒストリックカーを中心に、それらを時にはノスタルジックに、時にはアバンギャルドな被写体として表現する第一人者だ。そんな写真を撮るうえで心がけていること、そしてポイントは? 作品を例に具体的に解説していただいた。

CREDIT :

写真/奥村純一 文/南陽一浩

フィアット「シアータ508バリラ・スポーツ」という戦前車で、手作業による一点モノのボディが際立つリアアングル。早朝でメインライトは街灯ですが、オレンジ色がカブり過ぎるので同じ方向からストロボを入れています
クルマはフィアット「シアータ508バリラ・スポーツ」という戦前のヒストリックカー。手作業による一点モノのボディが際立つリアアングルから撮りました。早朝でメインライトは街灯ですが、オレンジ色がカブり過ぎるので同じ方向からストロボを入れています

旧車ならではの魅力を引き出すために心がけていること

週末の路上やサーキットを生き生きと走るヒストリックカーを追いかけて20数年。そんな奥村さんが、旧いクルマならではの魅力を引き出すために心がけていることは?

「そのクルマやオーナーさんにとって、いちばん素敵なところを撮りたいですから、とにかく色々な視線を考えること。上がったり下がったり、左右から覗き直したり」

具体的に、カッコよく見える視点とは?

「今は雑誌の屋外ロケでもストロボが案外使われることが多いようですが、自分自身が元々スタジオマンだったせいか、ただ光を当てただけとか、影の部分を起こしただけという感じの点光源は、暴力的で好きではありません。

もちろん、硬めの光で撮る表現はありますし、その手法そのものを否定するわけではありませんが。でも、僕はできるだけ面光源に近づけることで、ヒストリックカー独特の丸いボディだからこそ現れるグラデーションや映り込みを大切にしています。

ただその一方で、凝り過ぎたライティングの写真は、飽きるのも早いんですね。そこは旧いクルマと一緒で、眺めて飽きの来ない自然なライティングを意識しつつ、かつワンパターンに陥らないことを目指しています」
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ラテン系デザインから来る、南国の空気感を演出

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1964年型トライアンフ「スピットファイアMk.I」をオーナーの近所の畑で夕刻に撮りました。背景は栗の木です。結果的にラテン系デザインの英国車であるスピットファイアにある、南国風の空気感が出たと思います。

あえて画面をグリーンで統一しました

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手前からオースチン「ミニ・カントリーマン」とモーリス「ミニ・トラベラー」。同じに見えるグリーンのボディ色でも少しニュアンスが違う。そこで、あえて緑の中で撮って、後で画像処理の段階で、緑を強めています。

フロントスクリーンのハイライトと木のラインを活かしました

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ミニのパワートレインを前後逆に積んで、わずか75台が作られたユニパワーGT。1968年型でした。フロントスクリーンのハイライトと土手の斜めの線が、ほどよく入るところに置いて、ボディ側面にはレフ版に反射させたストロボ光を入れています。
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ラリー仕様風のオースチンA35を春先の半逆光の春の光で優しく

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1958年式オースチンA35で、ラリー仕様風にモディファイされた一台。フォグランプの黄色が印象的でした。地面はアスファルトでなく土のイメージがいいと思い林の中に入れてみました。季節は春先、ちょうどいい半逆光で撮れた一枚です。

クルマを表現するために小道具に語らせました

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ビスポークサービスがテーマの一枚。イニシャルとストライプを入れたグローブトロッターのスーツケースが主役で、背景は同じく一台一台がビスポークに近かったロールス・ロイス。犬の視線にこだわって何枚も切った末の一枚です。

当時のレースシーンを現在に再現してみました

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ジャガー「Mk.II」とオースチン「A35」のカフェレーサー仕様を早朝の国道246号で。クラスも排気量も異なる2台ですが、当時のサルーンカーレースではライバル同士。そこでストリートでも張り合う、そんなイメージです。
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自然に見える光をストロボ3灯で作りました

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1994年型で、メーカー自身がリプロダクトしたオースチン「ヒーレー・スーパー・スプライトMk-I」。ストロボ2灯にディフューザーをつけて右側面、左からもう1灯で色を出しつつ、駐車場の白線が目立つのでローアングルで狙いました。

街灯にストロボ光を被せて色調整をしています

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クルマはフィアット「シアータ508バリラ・スポーツ」という戦前のヒストリックカー。手作業による一点モノのボディが際立つリアアングルから撮りました。早朝でメインライトは街灯ですが、オレンジ色がカブり過ぎるので同じ方向からストロボを入れています。

貴重な当時のタイヤのトレッドをポイントに

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1965年のBSCC(ブリティッシュ・サルーン・カー・チャンピオンシップ)を闘ったワークスカー。そのツワモノ感を強調するために黒バックで。当時のワークス仕様のタイヤは資料として貴重なので、トレッドが見えるよう別のライトでおこしています。
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バウンスで光を集める場所を変えてます

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こちらはワークスの「クーパーS」の後ろ7:3カット。狭いスタジオとはいえ使用料金を思えば時間との勝負。2灯ほど追加して、バウンスで光を集める場所を変えて、グラデーションの映り込みを調整しました。

凝った造形を引き立てるためのライティング

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1967年型ハンバー「セプター」という、当時の英国のミドルアッパー・サルーンのリア周りのアップです。凝った造形を際立たせるために、レフ板バウンスのグラデを屋外で映し込んで、ディティールに寄った一枚です。

ボディラインを強調するためのグラデーション

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いかにも50年代らしいボルボ「544」のフェンダーの盛り上がり、ボディラインが映えるよう、朝日と空のグラデーションを見込んでクルマを配置して撮った一枚。森の映り込みもちょっと北欧っぽいかな。

● 奥村純一

「ティーポ」や「オクタン・ジャパン」といった専門誌で作品を発表するカメラマンである一方、シトロエン「SM」など不動車を含め10数台を所有するコレクターでもある。日本中のイベントやクラブ、ガレージを取材し、最近は季刊誌「ヴィンテージ・ホイールズ」の責任編集も務める。

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