2026.01.28
いまディーゼルを選ぶ意味はあるのか? フォルクスワーゲンTDIモデルを検証する
フォルクスワーゲンが、ディーゼルエンジン搭載モデル(TDI)にスポットライトをあてた試乗会を九州・宮崎にて開催した。2025−26インポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した話題の「ID.Buzz」や「ID.4」など電気自動車の普及を進める一方で、ディーゼルにも注力しているという。はたしてその魅力とはなんなのか、あらためて検証してみた。
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写真/藤野太一 編集/森本 泉(Web LEON)
2035年も内燃エンジン車は終わらない……

写真/郡 大二郎
世界的に電気自動車のセールスが伸び悩んでいる。2025年12月、欧州委員会はこれまで掲げてきた2035年のエンジン車新車販売禁止方針を事実上撤回することを発表した。これまで同様にCO2排出量の削減は条件として課せられるが、それをクリアすればエンジン車が継続販売できることを意味する。また米国でもトランプ政権はエンジン車回帰に拍車をかけている。
実はCO2排出量においては、ガソリン車よりもディーゼル車のほうが少ない傾向にある。また燃料が軽油のため燃料費が安く、着火性がよいため低速トルクが太く、燃費に優れるといったメリットがある。
一方でCO2排出量をおさえるとNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)の排出量が増えてしまうという相反する課題がある。近年はこれをクリーンディーゼル技術の進化によってクリアしてきた。ただし触媒など排気ガス浄化装置にコストがかかるため、ガソリン車に比べて車両価格が高くなるというデメリットがある。
日本市場においてはいまトヨタを筆頭にガソリン車ベースのハイブリッドカーが大半を占めている。しかし、VWはディーゼルを諦めたわけではなかった。現行ラインアップにおいてもSUVの「T-Roc」と「Tiguan」、ハッチバックの「ゴルフ」と、そしてステーションワゴンの「ゴルフヴァリアント」と「パサート」にディーゼルモデルを用意する。
最新ディーゼル+4WDになったゴルフのSUV版

▲ スポーティ仕様の「R-Line」をベースに、内外装の加飾やホイールに黒基調のパーツを用いた特別仕様車「Black Style」。
今回の試乗車は、MQBプラットフォームを採用する、いわゆるゴルフサイズのコンパクトSUV「T-Roc」だった。T-Rocは2020年に国内導入が開始され、一時は国内での輸入SUVセールスNo.1を記録した人気のモデル。2022年に現行型へとマイナーチェンジし、2025年の仕様変更で、それまでのFF(前輪駆動)から4WDとなり、ディーゼルエンジンは最新世代へとアップデイトされている。
グレードはスポーティ仕様の「R-Line」をベースに、フロントグリルやウインドウフレーム、ルーフレールなどを黒で仕立てた「Black Style」という特別仕様車だった。

▲ 独立したエアコンの操作パネルやシフトノブなど、最新世代ではなくなってしまったエレメントが残されたインテリア。こちらのほうが使い勝手は良いという声も。

▲ オプションのチタンブラック表皮のレザーシート。R-Lineのロゴが配されている。
インテリアは、9.2インチサイズのタッチ式スクリーンをダッシュボード中央に配置。そのまわりのTの字のように光沢のあるブラックパネルよって加飾されている。シートはオプションのレザーシートパッケージによって、チタンブラック表皮の電動シートとなっている。
エンジンは最新世代の2ℓ4気筒ターボディーゼル「2.0 TDI」で、従来よりも多くNOxを浄化するツインドージングシステムを採用しFF仕様のものと比べて最大トルクを20Nm増強している。トランスミッションは7速AT(DSG)で、駆動方式は4WD(4MOTION)だ。

▲ 足回りには、オプションのアダプティブシャシーコントロール“DCC”が採用されており、SUVとは思えないほど軽快な走りをみせる。
エンジン始動時は、その音からわずかにディーゼルであることを感じるものの、走り出してしまえばそれも気にならなくなる。宮崎市内から海沿いの一般道を南下してみたが、クルマ通りも信号も少ない道を、わずか1600回転で360Nmを発揮するパワフルなトルク特性をいかして軽快に走る。足回りには可変ダンピングシステムを備えたアダプティブシャシーコントロール“DCC”と19インチタイヤ&ホイールを組み合わせたオプションを採用していた。
タイヤには「ブリヂストン・ポテンザS001」なんてプレミアムスポーティな銘柄が奢られており、たびたびあらわれたワインディング路もひらりひらりとこなす。2時間ほど走行して、燃費はカタログ値の17.0km/L(WLTCモード)を大きく上回る18.2km/Lを表示していた。

▲ 試乗コースにあった日南海岸特定公園・都井岬には国の天然記念物に指定されている野生馬「御崎馬」が生息しており、ドライブ中に遭遇することも。
ゴルフはいまも世界のベンチマークなのか

▲ ゴルフのステーションワゴンである「ゴルフヴァリアント」。ボディサイズは、全長4640mm、全幅1790mm、全高1485mm。ホイールベース2670mmとハッチバックのゴルフよりもホイールベースを50mmも延長しており、この長いホイールベースを生かし、後席はベースのゴルフより広いレッグルームを確保。
後半はゴルフの最新型、ゴルフ8.5をベースとしたステーションワゴン「ゴルフヴァリアントTDI R-Line」にも試乗した。

▲ 12.9インチの大型ディスプレイをセンターに配置。独立したエアコンの操作パネルや、最近のデザイントレンドに則りいわゆるシフトノブは廃されている。
ゴルフは先代8から8.5へとアップデイトされたこともあり、インテリアデザインなどは先のT-Rocと比べるとひと世代新しい、最新のものとなっている。タッチ式のセンターディスプレイは12.9インチへとサイズアップ。エアコン操作用の物理スイッチは廃され、ディスプレイ下部にタッチスライダーバーを配置している。
こちらでも流れのよい海岸線の一般道や山岳路、そして帰路は高速道路も含めてさまざまな道を走行したが、動き出しからストローク感のあるサスペンションは実にしなやか。ディーゼルエンジンも音振対策が効いており、その存在を忘れてしまうくらいだった。さすがは長年Cセグメントのベンチマークと言われ続けているゴルフだと唸らされる出来だった。
約2時間半の試乗を終えて燃費はカタログ値20.1km/L(WLTCモード)のところ高速区間であれば25km/Lオーバーを記録。ほとんどの区間が一般道ながら最終的にはメーターは18km/Lを表示していた。

これまでディーゼルは車重が重い、価格が高いなどと言われてきたが、電動化が進むにつれてBEVやPHEVなど車重が2トンを超えるクルマも珍しくなくなってしまった。今回の2モデルの車検証上の車両重量をみればT-Rocは1530kg、ゴルフヴァリアントは1510kgである。今となっては軽いと言ってもいいくらいで、性能と価格を考慮すればとてもリーズナブルに思える。
BEVかガソリンかディーゼルかの答えは1つではないし、ライフスタイルに合わせて選べばいい。少し極端かもしれないけど1000kmノンストップで給油や充電へのストレスなく走りたい、例えばそんな希望を叶えるにはいまだディーゼルは最適な選択肢だと思う。

▲ 荷室容量は5人乗車時で611リッターを確保、後席格納した状態では1642リッターにまで拡大する。
VOLKSWAGEN T-Roc TDI 4MOTION R-Line Black Style
全長×全幅×全高/4245×1825×1590mm
ホイールベース/2590mm
車両重量/1530kg
エンジン/1968cc 直列4気筒
最高出力/150PS/3000-4200rpm
最大トルク/360Nm/1600-2750rpm
駆動方式/4WD
燃料消費率(WLTCモード)/17.0km/L
乗車定員/5
車両本体価格/564万5000円
VOLKSWAGEN Golf Variant TDI R-Line
全長×全幅×全高/4640×1790×1485mm
ホイールベース/2670mm
車両重量/1510kg
エンジン/1968cc 直列4気筒
最高出力/150PS/3000-4200rpm
最大トルク/360Nm/1600-2750rpm
駆動方式/FWD
燃料消費率(WLTCモード)/20.1km/L
乗車定員/5
車両本体価格/485万6000円
■ 公式サイト

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