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2026.01.18

自然吸気エンジンってやっぱり気持ちいい。唯一無二のポルシェ911「GT3」

ポルシェ911シリーズにおいてサーキットにおけるパフォーマンスを追求した、マニア垂涎のモデルが「GT3」。ベースモデルが最新の992.2型にモデルチェンジしたのに伴いGT3も最新モデルへとアップデイトされた。911シリーズのほとんどがターボ化、ハイブリッド化するなかで、自然吸気エンジンへとこだわる最新「GT3」のフィーリングを味わってみた。

BY :

文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

編集/森本 泉(Web LEON)

25周年を迎えたレーシングカー直系の911

カレラ、カレラS、カレラGTS、ターボSなど、いま(2026年1月現在)ポルシェの公式HPに掲載されている911モデルを数えてみると、そのバリエーションは22にもなる。


その中で、サーキットでのパフォーマンスを主眼にレーシングカー直系の専用のシャシー、空力パーツ、そして貴重な自然吸気の水平対向エンジンを採用するのが「GT3」モデルだ。


GT3は1999年、水冷エンジンになった996型(5代目)の時代に初代がデビュー。このたび25周年を迎え、現行992の後期型992.2をベースとしたGT3としては8代目モデルとなる最新モデルが登場した。バリエーションは2モデルで、大きなリアウイングが特徴的な標準車と、そのリアウイングを省いた控えめなスタイリングの「GT3ツーリングパッケージ」がある。

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リアウイングのないGT3ツーリングパッケージ(左)と大型リアウイングが特徴の標準車

▲ リアウイングのないGT3ツーリングパッケージ(左)と大型リアウイングが特徴の標準車。

今回はいち早く納車されたオーナーの協力のもと、標準車にGT3に初めて採用されたオプションのヴァイザッハパッケージを装着したモデルに試乗することができた。


ちなみにヴァイザッハパッケージとは、フロントリッド、ルーフ、リアウィングをはじめインテリアにもカーボンパーツを多用した軽量仕様でそのオプション価格は約270万円〜。


これに加えてさらにマグネシウム鍛造ホイールや軽量スポーツバケットシートといったアイテムを組み合わせることもできる。

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排ガス規制をクリアしながら出力を維持する難題に挑む

水平基調でデザインされたインテリア。遊びココロにあふれておりシンプルで機能的なもの。

▲ オプションのヴァイザッハパッケージを装着するとフロントリッドやルーフ、ミラーなどがカーボン製に。

GT3の特徴である大型のリアウイング。新型ではサイドプレートがL字型に折れ曲がった形状になった。

▲ GT3の特徴である大型のリアウイング。新型ではサイドプレートがL字型に折れ曲がった形状になった。

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前期型とのわかりやすい違いは、フロントバンパーからデイタイムなどの補助ライトがなくなったこと。ウインカーなども含めてLEDマトリックスヘッドライトがすべての機能を兼ね備える。


またフロントディフュ−ザー、リップスポイラーの形状が変更されており、またアンダーボディのフィンを改良することで空力性能を改善している。


リアまわりでもディフューザー、エアインレット、リアリッドのデザインが変更されている。特徴的な大型のリアウイングには新しくL字形状になったサイドプレートが装着された。

インテリアは最新のデジタルメーターになったものの、エンジンの始動はノブをひねる従来の方式を踏襲。またPDK仕様でもシフトノブが残されている。

▲ インテリアは最新のデジタルメーターになったものの、エンジンの始動はノブをひねる従来の方式を踏襲。またPDK仕様でもシフトノブが残されている。

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インテリアでは他の992.2と同様メーターが全面デジタルスクリーンになった。しかし、GT3らしくアナログなエレメントが残されたのはうれしいところ。エンジン始動はスタート/ストップボタンではなく、従来のキーシリンダーのようなスイッチをひねるタイプのものを採用。またトランスミッションは6速MTか7速PDKが選択可能なのだが、PDKでも従来のような立派なシフトノブで操作を行う。


いまGT3が抱える最大の課題が年々厳しくなる排ガス規制に対応すること。カレラはターボ化、GTSはハイブリッド化して、性能アップと規制クリアを両立させているが、自然吸気エンジンでこれを成立させるのは難題である。4ℓ水平対向6気筒エンジンは、粒子状物質を除去する2つのパティキュレートフィルターと4つの触媒コンバーターを装備。これによって生じるパワーロスを、911 GT3 RS譲りのカムシャフト、そしてスロットルバルブとオイルクーラーの最適化によって最高出力510PS、最大トルク450Nmを絞り出している。


実は前期型と比較してみると最高出力はキープしているが、最大トルクはわずかに20Nmダウンとなっている。新型にモデルチェンジして出力が落ちるという結果はポルシェのエンジニアにとって相当に歯がゆいことだと想像されるが、そこはPDKとMTのいずれも最終減速比を先代モデルよりも8%短縮することでカバーしており、PDK仕様車は0−100km/h加速3.4秒と前期型と同タイムを維持している(MT仕様車は3.9秒)。

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オプションのマグネシム鍛造ホイールやカーボンブレーキなどを装着した仕様。

▲ オプションのマグネシム鍛造ホイールやカーボンブレーキなどを装着した仕様。

いまどき9000回転まで一気にまわるエンジンに笑うほかない

911の伝統にのっとりノブをひねる儀式によってエンジンを始動する。4ℓ水平対向6気筒エンジンは瞬時に目覚め、いかにも自然吸気らしいサウンドと鼓動に身体が包まれる。


Dレンジに入れて走りだすと、ステアリングを通して軽さが伝わってくる。想像していたよりも乗り心地も快適なもの。低中速域でもサスペンションがしっかりとストロークし跳ねるような挙動はまったくみられない。これなら街乗りも不満なくこなせる。

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シャシーもきっちりと改良が施されている。992前期型よりGT3においてはフロントサスペンションがダブルウィッシュボーン形式となっているが、これに専用開発のティアドロップ型トレーリングアームを採用することで高速走行時のホイールアーチのダウンフォース増加とブレーキ冷却効率の改善を果たしている。


また高速からのブレーキング時にはピッチングを低減する効果を発揮する。こうした徹底した改良は、コンマ数秒のタイムを削ることに心血を注ぐレーシングカーさながらの探究心の結果である。

改良されたダブルウィッシュボーン形式のフロントサスペンションによってコーナリング時には軽快かつ安定感のあるステアリングフィールを味わわせてくれる。

▲ 改良されたダブルウィッシュボーン形式のフロントサスペンションによってコーナリング時には軽快かつ安定感のあるステアリングフィールを味わわせてくれる。

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高速道路にのると、折をみてスポーツモードに切り替えアクセルペダルに力を込めてみる。レッドゾーンの9000回転まで一気に吹け上がる。それと同時に高まるエグゾーストノートに思わず笑ってしまう。オーナーもこの音を聞く度、買ってよかったと感じると話していた。排ガス規制だけでなく、騒音規制も厳しくなるなかでこの音を実現できていることにポルシェの執念のようなものを感じる。


この日、比較車両として911カレラGTSも用意していた。システム最高出力541PS、最大トルク610Nm、0−100km/h加速3.0秒と、スペックにおいてはすべてGT3を上回っている。


実際にドライブしてみてもGTSは速い。しかしGT3とは異質の速さである。それはやはり車両重量によるところが大きい。GT3が1490kgなのに対して、GTSは1630kgとGT3は140kgも軽いのだ。しかもさきのダブルウィッシュボーンサスペンションによって、軽快さを損なうことなく安定感を増している。GT3はいうなれば自然吸気エンジンと軽量ボディという自動車における根源的な要素を備えることによって、911がずっと持ち続けているピュアな運転の楽しさを体現しつづけている唯一無二の存在といえる。例えスペックでGTSが勝ろうともGT3の代替役にはなり得ないと思うのだ。

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噂ではこれが最後の自然吸気エンジンのGT3になるなんていう話も聞こえていたが、2025年12月、欧州委員会はこれまで掲げてきた2035年のエンジン車新車販売禁止方針を事実上撤回することを発表した。もちろんこれまで同様にCO2排出量の削減は条件として課せられるが、それをクリアすればエンジン車が継続販売できるということになる。あくまで想像だけれど、ポルシェならきっと開発をやめないでいてくれるはずだ。

■ PORSCHE 911 GT3

全長×全幅×全高/4570×1852×1279mm

ホイールベース/2457mm

車両重量/1460kg

エンジン/3996cc

水平対向6気筒

エンジン最高出力/510PS/8500rpm

エンジン最大トルク/450Nm/6250rpm

駆動方式/RR

乗車定員/2

車両本体価格/2868万円


■ 公式サイト

HP/https://www.porsche.com/japan/jp

藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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