2026.04.02
チェコの世界遺産都市「プラハ」で千年王国を支えた「ボヘミアン」の風を味わう旅
第二次世界大戦の戦禍を奇跡的に逃れ、築後500年を数えるような貴重な建造物の宝庫として知られるチェコのプラハ。「ボヘミア」と呼ばれるこの地域の歴史と文化を象徴する人気スポットをご紹介します。
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文・写真/岩佐史絵 編集/森本 泉(Web LEON)

歴史的建造物が溢れる世界遺産都市プラハの観光&グルメスポットを紹介
旅好きの皆さまでも訪れる機会がそう多くないのが中欧の国々かと。前回は19世紀の街並みが残るハンガリーの古都ブダペストをご紹介しましたが(こちら)、今回は足を延ばして中世の街・チェコのプラハへ、鉄道で約7時間をかけて移動します。まるでタイムスリップしたかのような錯覚さえおぼえるこの街には、街が歩んできた道のりがすべて刻み込まれひっそりと生活の中に息づいています。そんな唯一無二の素敵スポットで愛する人と、ボヘミアンな町散歩を楽しみましょう。

▲ 建設は1402年というカレル橋(手前)とプラハ城。ヴルタヴァ川はチェコ出身の作曲家スメタナが題材にした「モルダウ川」のことで、川のほとりにはスメタナミュージアムも。
千年都市にタイムスリップ
「ボヘミアン」と聞くと、オヤジさんもX世代も「んママ~ぁっ ンンン~♪」とあの名曲が脳内で自動再生されてしまうのではないかと思いますが、ボヘミアとはチェコの中西部地方を指す言葉。近代ではボヘミアンは「自由奔放に生きる人」といった意味もあり、日本の歌謡曲のタイトルにもなっていましたね。それに、映画にもなったのでよく知られている『存在の耐えられない軽さ』というドンファンな男性が主人公の小説も、舞台はプラハ。恋するふたりがボヘミアを目指すというのは、まるでなにかの符丁のようではありませんか。

▲ 歴史地区の中心地、大学や天文塔や礼拝堂などの複合施設クレメンティヌムには起源を14世紀までさかのぼることができる中央図書館が。バロック建築が息をのむ美しさ 。
話がだいぶそれましたが、そんなボヘミア地方の中心都市プラハは、歴史建造物の美しさで有名です。同じ中欧の主要都市ブダペストと異なるのは中世からの建造物が数多く残されていること。第二次世界大戦の戦禍を奇跡的に逃れ、築後500年を数えるような貴重な建造物の宝庫です。起源から1000年もの間栄えた「千年都市」でもあり、歴史と人類の栄華を今に伝え、当然のごとく街全体が世界遺産に認定されています。
あてもなく歩いていても、次々に美しい建造物に出合い、聞けばなにかしら歴史的事件に関連がある、まるで町全体が博物館のようです。

▲ カレル橋には全部で30体の銅像があり、中でも聖ヤン・ネポムツキー像は右側のレリーフに描かれた赤ちゃんに触れると幸運が訪れるといわれている。もうひとつのレリーフは触ると不幸が訪れるとか。気を付けて!
歩き回ってお腹が空いたら、ぜひ立ち寄りたいレストラン、その名は「420」。チェコの国番号という、覚えやすいシンプルな名前ながらミシュランスターシェフのラデク・カシュパレクとマレク・コミネクによるモダンなチェコ料理のお店です。15世紀に建設された建物をそのまま使用していて、天井から自然光が降り注ぐ気持ちのよい空間。ちょうど旧市街広場の天文時計の真ん前という好ロケーションにあるのですが、お昼時に訪れてみると天文時計を見ようと集まる大勢の人にびっくり。

▲ 製造は1410年という、現在稼働しているものとしては世界最古の天文時計。600年以上も時を刻み続けるその姿をひと目見ようと観光客が集まる。
正午近くはお店の前がひとだかりで入店にひと苦労、ということもあるので、早めに予約して到着するのがおすすめです。
▲ 「レストラン420」は15世紀のゴシック建築の中庭部分をレストランに改装。かわいらしいツバメのオブジェが飛び交う開放的な空間。
▲ メインコースの「グースのモツ入りグリル パプリカソース」。肉の食感を損なわないよう、ソースを目の前で注いでくれるスタイル。
▲ 地下にはレストランでも供される自家製ソーセージやパンを売るグローサリーが。ふらりと立ち寄るのも楽しい。

▲ 「レストラン420」は15世紀のゴシック建築の中庭部分をレストランに改装。かわいらしいツバメのオブジェが飛び交う開放的な空間。

▲ メインコースの「グースのモツ入りグリル パプリカソース」。肉の食感を損なわないよう、ソースを目の前で注いでくれるスタイル。

▲ 地下にはレストランでも供される自家製ソーセージやパンを売るグローサリーが。ふらりと立ち寄るのも楽しい。
Restaurant420
住所/Staroměstské náměstí480/24
電話/+420 722 420 099
営業時間/月曜~日曜 11:30~22:30
チェコのアールヌーボーに触れて
プラハでいま最もホットなスポットといえば、昨年オープンしたばかりの「ミュシャ美術館」。アルフォンス・ミュシャはアールヌーボーを代表する芸術家で、優美な女性を描いたポスター風のイラストが特に有名です。日本でもかなり人気がありますが、実はチェコ出身というのは意外と知られていないのでは。パリで有名になったためフランス風に「ミュシャ」と呼ばれることが多いですが、チェコでは本来「ムハ」と発音します。
新市街にあるミュシャ美術館はミュシャのオリジナル作品だけを展示し、その生涯にスポットを当てた世界唯一の公式美術館。18世紀にドイツ人建築家キリアン・イグナーツ・ディエンツェンホーファー (※でもプラハ生まれ。当時「ボヘミア王国」と呼ばれていたエリアにおけるドイツ系住民という意味らしい。ややこしい!)によって設計された美しいバロック建築のサヴァリン宮殿内にあり、チェコの歴史と文化を象徴する場所でもあります。

▲ サヴァリン宮殿の正面入り口にはオリジナルのバロック彫刻もあり、ここだけでもゆっくり眺めたい優雅さ。
なにがすごいって、中庭を囲んで4つの区画に分かれている宮殿をひとつの複合施設に改修する計画があり、ゆくゆくは地下を含む広大なショッピングモールになるそう。これまでもカジノがあったりマクドナルドがあったりしたそうですが、バロック様式はそのまま残しつつ市民にとって利便性の高い施設に生まれ変わるとあって、だいぶ期待されているもよう。
改修され進化してもなお生活の中にホンモノのバロック美がとけこみ、千年都市の栄華はまだまだ続いているのだなと深くうなずいてしまいます。

▲ 明治時代の日本でもオマージュ作品が登場したというほど、日本でも古くから人気があったミュシャのポスター。ミュシャ好きにはたまらない美術館。
そんなミュシャ美術館。やはり見どころはミュシャを一躍有名にした『ジスモンダ(Gismonda)』でしょう。誰もが「見たことある!」と思うであろう、超有名なミュシャの代表作のひとつです。
多くの芸術家がパリを目指した時代。ミュシャもまた、パリでイラストレーターとして働きながら腕を磨いていました。1894年の12月26日、たまたま年末で休みをとっていた知人の代わりに印刷所で働いていたところ、ベル・エポックの代名詞と名高い大女優サラ・ベルナールのポスターを正月までに制作して、という無茶ぶりを引き受けたことからミュシャ成功譚が始まります。

▲ 『スラヴ叙事詩』のメイキング。モデルを入れて描写していったことがわかる。ゴート族の襲撃におびえながら隠れる男女が描かれているが、その恐怖におののく表情のリアルさに思わず息をのむ。
『ジスモンダ』のデザイン草案をベルナールに見せたとたん、その後6年間にわたる専属イラストレーターとして起用されたのです。まさに一夜にして有名になったシンデレラストーリー。
チェコに帰国した後期に描かれた20連から成る大作『スラヴ叙事詩』の一部もそのメイキングの様子から展示されていて、ミュシャのスラヴ民族としての誇りと故郷への想いがぐっと伝わってきます。ポスターなどとは異なり古典的な手法で描かれているため、これもミュシャなのか、と新鮮な驚きも。ミュシャの魅力を存分に堪能することができます。

▲ お土産屋さんも完備。ほしいものがたくさんありすぎて迷います。右奥に昔ながらのストーブがあるところが宮殿の名残か。
そういえば、「ボヘミアン」という言葉が「型破りで自由な」といった意味をもつようになったのは19世紀後半から20世紀初頭のベル・エポックのパリが起源だそう。ミュシャがこれまでになかったようなイラストレーションでセンセーションを巻き起こしたように、ボヘミア地方から多くの芸術家や知識人がパリで活躍していた時期とも重なっていて、彼らの活動がボヘミア人のイメージを作り上げ、それがひとつの形容詞となっていったと想像できます。地味なようでいて、実は影響力がすごいボヘミア人なのでした。
The Mucha Museum in Savarin Palace
アールヌーボーの雰囲気をもっと楽しみたいね、となったら次に向かうべきは市庁舎(Obecní důmオベツニー・ドーム)です。ここはコンサートホールの「スメタナホール」などもある複合施設で、可憐なアールヌーボー様式の建築は遠くからでも目を引きます。

▲ ガラスのドーム、カレル・シュピナー作のモザイク画、ラディスラフ・シャローン作の銅像と、正面にはチェコの芸術家の手になる作品が配されている。ミュシャの作品はスメタナホールに展示されており、ガイドツアーで見学可。
1912年に完成したというこの市庁舎、ベル・エポックに活躍した芸術家の作品が一堂に会する堂々たるもの。中に入ると左右の翼にそれぞれ瀟洒なカフェとフレンチレストラン、正面にコンサートホール、そして地下にはビアホールのような大衆的なレストランもあります。チェコといえばビールの国ですから、コンサートのあとはビール、が定番なのかも? 館内をめぐるガイドツアーもあるので、ちょっと時間を作ってゆっくり見てみたいアトラクションです。

▲ 日中、レストランは開店前だったが、カフェはほぼ満席という人気ぶり。内装は同じで、どちらもプラハで最も美しいと評されている。ここでのディナーは絶対ロマンティック!

▲ 地下のパブへのアプローチが気になる! アールヌーボーだけれど、どこか温かみと親しみやすさがあるのはパブという場所がらだろうか。
Obecní dům
住所/Obecní dům, a.s.náměstí Republiky 1090/ 5
HP/https://www.obecnidum.cz/?language=en
カフェ https://www.kavarnaod.cz/en/introduction
ビール文化を楽しむ
街のそこかしこでビアホールを見かけると、ビールが飲みたくなってきませんか。先述のとおり、チェコはビール大国なんです。なにしろ国民1人あたりのビールの消費量が152リットル(2024年のデータ)と、30年以上も連続で世界一を記録するほど。

▲ キュビズム建築の大家ヨセフ・ゴチャールによってデザインされた空間に、地下から天井まで届くビアタンクが。醸造所から直送される新鮮なビールが詰められている。
日本でもよく飲まれているピルスナータイプのビールはボヘミア西部のプルゼニュ (ピルゼン)地方が発祥。チェコでもやはり基本のキは「ピルスナー・ウルケル」で、注ぎ方によって味わいが異なるのだとか。というわけで、そんなビールを楽しめるレストラン『チェルヴェニー・イェレン(Červený Jelen)』へ。

▲ コクとキレのあるピルスナー・ウルケルを、定番の注ぎ方「フラディンカ」(右)と、泡を楽しむための「ムリーコ(ミルクという意味)」(左)。ムリーコは泡がなくなる前に飲まないと、単なる量が少ないビールになってしまう。
ビールはピルスナー・ウルケルのみ! というピルスナー・ウルケルに命を懸けたレストランで、キュビズム=モダニズム建築の元銀行というカッコいい建物内に、ビール&グリル料理、ファインダイニング、ナイトクラブ、ラウンジと用途に合わせた4つのセクションがあります。

▲ チェコの伝統料理や、モダンなアレンジが勢ぞろい。シェフおすすめの「スタッフドポーク」(真ん中)、「ディアロイン」(右)、「ディアレッグ」(右上)など肉料理のオンパレードなのは内陸国ならでは。
ビールに合う食事といえばグリル。広大な自然保護区クリヴォクラツコの森のブナとオークを9カ月間保存した木だけで加熱しているそう。シェフのマレク・フィヒトナー氏は料理番組の審査員や、料理アカデミーで講師を務める有名人。ときには海外からミシュランスターシェフなどを招いて期間限定コラボディナーを開催することもあるので、訪れる際にはぜひウェブサイトでチェックを。もちろん、ディナーのお伴はビールですよ。
Červený Jelen
住所/Hybernská 1034/5
営業時間/月曜~金曜 11:30~23:00
土曜 12:00~23:00
日曜 12:00~22:00
広大すぎる? 驚きのラウンジ
ブダペストから始まりプラハで終える中欧の旅。ちょっと駆け足でしたが、19世紀の街並みから中世のロマネスクやゴシック建築へ、そしてアールヌーボーへと歴史と建築美を渡り歩くような素晴らしい体験でした。中心部だけでもこんなにゆったりと楽しめるプラハからの帰りのフライトもまた、ターキッシュエアラインズでイスタンブールを経由します。

▲ ピアノ演奏で迎えられるエクスクルーシブ感。とにかく広い!
ターキッシュ エアラインズのプラハ/イスタンブール便は1日に3便もあり、所要時間はわずか3時間弱。羽田空港や関空便に乗り継ぐ場合、出発時間が朝の2時なので、夕方までプラハで過ごしてからゆっくり空港へ、イスタンブールでターキッシュ エアラインズのビジネスラウンジでのんびりフライトを待つ、というのが正解でしょう。

▲ テーブル席、ソファ席、リラックスゾーンとさまざまなスタイルで過ごすことができる。のんびりしすぎて乗り遅れないように!
なにしろこのラウンジが世界一では? というほどの広さを誇り、真夜中といえども活気が絶えないハブ空港のオアシスなのです。これはわざわざ時間を作ってでも滞在したいかもという居心地のよさ。疲れ知らずですこやかな時を過ごすことができてこそ、完璧な旅といえるのではないでしょうか。
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