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2024.02.09

【トルコの旅 後編】

文明史を覆すかもしれないトルコの謎の史跡に行ってみた!

世界第3位の観光国なのに、なぜか日本人があまり訪れていない国、トルコ。異国情緒に溢れ、気候は温暖、物価は安く親日的ということナシ。コロナ禍を抜けた新たな海外旅行の目的地としてぜひオススメなんです。前編に続き後編では南東部の遺跡を訪れました。

CREDIT :

文・写真/木村千鶴

トルコ LEON.JP 遺跡
トルコ旅第一弾のイスタンブル(記事はこちら)に引き続き、第二弾では南東アナトリア地方をご紹介します。南東アナトリア地方といっても日本人の我々には馴染みが薄い土地ですから、少々説明を。位置的には文字通りトルコ南東部、シリアの国境に面した辺りです。
現地ガイドさんによると、南東アナトリア地方には世界遺産となっているネムルート山や、歴史を覆すかもしれないと注目されているギョべクリテぺ遺跡(後述します!)、預言者アブラハムの生誕の地とされているシャンルウルファ市など、見どころがてんこ盛りなのだそう。

やはり、旅に出たら見たことのない景色を見て、知らないことを知り、体験したことのない冒険をしたいですよね! というわけで期待に胸を膨らまし、行って参りました南東アナトリア地方! まずは山の頂にある謎の遺跡、ネムルート山からレポートします。
トルコ LEON.JP 遺跡

山頂に造られた天空のピラミッド・ネムルート山

ネムルート山へ向かうため、イスタンブル空港より空路でトルコ東部の都市、マラティヤへ。そこから距離にして約135キロ、約2時間半の道のりをバスで移動します。街の景色を抜けると、この辺りの名産であるアンズやオリーブなどの果樹園が、その向こうには見渡す限りの山なみが続きます。

ガイドさんの話ではこのあたりもかつてシルクロードだったとか(諸説あります)。私たちは舗装された道を快適にバスで移動できますが、当時は今とはだいぶ事情も違ったでしょう。それでも、馬やラクダで交易品を運んだ人たちときっと同じ山並みを見ているんだろうな、などと想像しているうちにネムルート山の麓に到着。

そこからはミニバスに乗り換え、山頂の遺跡を目指します。砂利道を行くミニバスのサスペンションは日本のクルマに慣れ親しんだ私の腰には衝撃が強く、ドライバーは現地の人らしく自信にみなぎる飛ばし方で(笑)、終始足を踏ん張り山頂に到着。
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トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 西側のテラスから見たピラミッドと巨像。頭部が上に載っているものは一つもない。
山頂では強風が吹いていました。ネムルート山の標高は2135メートル、周辺の山の中では一番高く、当時の人々はその頂こそ王が眠るに相応しい地だと感じたのでしょうか。遺跡は古代コンマゲネ王国の王様であったアンティオコス1世(紀元前69〜31)を祀ったものとされていて、山の頂の部分は人工的に小石を積み上げて造った、高さ約50メートル、直径約150メートルのピラミッド状の墳墓になっています。

その東西にテラスのような場があり、そこにはギリシャ神話の神々を形どった大きな石像が並んでいますが、並んでいるのは台座と胴体部分のみ。なぜか頭部は無造作に下に転がっているのです。

頭部が下にある理由については諸説あり、地震で落ちたとも、偶像崇拝を嫌って後に落とされたとも言われていますが真相はわかりません。遺跡はヘレニズム時代の特異な文化や芸術を示し、歴史的な価値が高いことから、1987年に世界遺産に登録されました。

ピラミッドは崩落しやすい構造になっているために、直接の調査もできない代わりに盗掘の被害に遭わなかったとのことで、謎は謎のまま、内部に残されています。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 雲ひとつない青空と遺跡のコントラストが美しかった。
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遺跡を見たあとは、西側のテラスから他の観光客に混ざってサンセットを待ちました。ここは東側のサンライズ、西側のサンセットが見事なことで有名で、その時間に合わせて登頂する人が多いそうです。

イスタンブルから訪れているトルコ人の女性グループに「日本から来たのか」と声をかけられましたが、トルコ語ができないために大したコミュニケーションが取れず、女性たちも残念そうにしていました。この旅では何度もそうしたことが起こり、親日国の“看板に偽り無し”を実感しています。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 巨像たちと一緒にサンセットを待つ。
陽が傾いて来ました。荒涼とした山々に沈んでゆく太陽、夕陽に照らされて表情を変える巨像たち、まさに絶景です。約2000年前にここまで王の亡骸を運び、石像を作り、小石を積み上げる。どれだけの人が、どれくらいの年数をかけこのピラミッドを造ったのでしょう。まだまだ謎の多い遺跡ですが、何でもわかってしまいがちな現代において、知らないことがあること自体とても貴重に思えたのでした。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 樹木ひとつない山あいに夕陽が沈む。
下山してまた同じ道を戻りマラティヤへ。疲れた体を癒してくれる今夜の宿は、「モーヴェンピック・マラティヤホテル」。プールやフィットネスジムもある設備の整った5つ星ホテルです。マラティヤはトルコ・シリア地震の影響のあった場所でもあるのですが、こちらのホテルは日本の建築を参考にした耐震設計となっていたため、被害がなかったとのこと。食事もとても美味しく、落ち着きのあるホテルでした。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 厳重なセキュリティと堅牢な造り、厚いもてなしで、安心感が大きかった「モーヴェンピック・マラティヤホテル」。
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世紀の大発見、ギョべクリテぺ遺跡とは何か

翌日マラティヤを出発して、次のお目当てギョベクリテペ遺跡へ、またまたバスで向かいます。ギョベクリテペ遺跡があるのは、マラティヤからさらに南に267kmほど下った、シャンルウルファ市にほど近い丘陵です。実はこちら、「新石器時代に狩猟採集民によって建造された世界最古の神殿」と言われていて、そのことにより歴史をひっくり返す大発見になるだろうと考古学的に最重要視されている遺跡なのです。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 石柱がサークル状に幾重にも配置されている。
これまで文明の始まりは農耕からとされてきました。農作物を育てるため、定住しながら他者と協力することで社会ができ、死者を悼み、豊穣を祈るための信仰が生まれたというのが定説です。世界史で習ったのもメソポタミア文明が最古の文明だったはず。

ですが、ギョべクリテぺ遺跡は放射線炭素年代測定の結果、メソポタミアより7000年も前の新石器時代のものだということが分かり、今も調査が続けられているのです。この近辺にはその頃に人が定住していた形跡がなく、どこから誰がやってきてこの施設を造ったのかは分かっていません。
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トルコ LEON.JP 遺跡
 ▲ 鳥葬の様子が描かれた石柱。中央の丸い玉は魂が上昇している様子を表しているとのこと。
遺跡の規模は大きく、T字型の巨大な石柱には動物や鳥葬の様子のレリーフが施され、積み上げられた石の壁と共にサークル状に設置されています。この規模の施設を建設するにはかなりの人数が必要で、食料を賄うため、少数で移動を繰り返しながら暮らしていたはずの狩猟採集民が単独で建てたとは考えにくい。すると既に他者と協力し合う社会ができ始めていたのではないか、とのこと。
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 中央にはきつねのような動物が。獲物を表したのだろうか。
もしかすると、お隣さん感覚で交流しながら食料調達の情報を交換したり、ときには協力しあって狩猟をし、祈りを捧げたりしたのかも、などど想像は膨らむばかりでした。まだ発掘は数パーセントしか進んでいないため、日々新たな発見も生まれています。ゆったりと見学するのは、発掘途中の今がチャンスかもしれません!
トルコ LEON.JP 遺跡
▲ 発掘現場には屋根や通路が設けられているため見学しやすい。
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トルコ人の聖地があるシャンルウルファ

翌日はシャンルウルファに移動し市内を観光。この街は紀元前4世紀にセレウコス朝シリアの都市として建設されたという古い歴史をもっています。街を見下ろす丘の上にウルファ城跡があり、城下にある公園は市民の憩いの場となっていました。とても広々として雰囲気がよく、まるでリゾート地のよう。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 公園から見たウルファ城壁。遠くに見える2本の石柱はヒッタイト時代のもの。
公園の敷地内には、ノア・モーセ・イエス・ムハンマドと共に5大預言者とされている“アブラハム”が生誕したとの伝承がある洞窟があり、ムスリムの人々にとっての聖地となっているようでした。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 洞窟を内部に取り囲むようにモスクがあり、内部がガラス張りになっているため洞窟を見ることができる。写真左手が入り口。
洞窟のすぐそばには「聖なる魚の池」があります。ここはアブラハムが、支配者のニムロットに火の中に投げ込まれた瞬間、その火が水に変わったとされている池です。魚がたくさん泳いでいるのですが、白い魚を見つけた人は天国に行けるとも言われているそうです。惜しくも見つけることはできませんでしたが(笑)。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 神聖な場所とはいえ、ロマンティックなムード満点の聖なる魚の池。
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シャンルウルファの旧市街は、もちろん観光地ではありますが、とても生活感のある街でもありました。バザールにも活気があり、地元の人たちも日常的に利用している様子です。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 旧市街の街並み。この街に酒類を出す店はないので、談笑するオヤジさんたちが手にしているのはほとんどチャイだった。
こちらは食べ物が美味しいと評判の街だそうで、イスタンブルからわざわざ食事に来る人も多いようです。シンプルな味わいのウルファ・ケバブももちろん美味しいですが、個人的なイチオシは、「ティリッティリ・キョフテ」という、牛肉(あるいは羊肉)や豆、小麦粉を練ったボールが入ったスープ。身体に染み入る感動的な旨さです。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ バザール内部の乾物屋の店先。ナッツにスパイス、乾燥野菜、ドライフルーツなどがグラム売りされていた。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ こちらがイチオシの「ティリッティリ・キョフテ」。牛肉(あるいは羊肉)や豆、小麦粉を練ったボールが入ったスープ。
そしてナッツの入った甘いデザート、「シュッルック」も素朴な味わいで、一切れでやめるつもりが、手が止まらない美味しさでした。
▲ 見た目は地味だが、味わい深かったデザート「シュッルック」。
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シャンルウルファでの宿泊は、「ダブルツリー・バイ・ヒルトン・シャンルウルファ」。市内にはオリエンタルな雰囲気のホテルも多いのですが、宿泊はグローバルスタンダードを求めるという人にはピッタリのホテルだと思います。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 安心して泊まれるグローバルスタンダードのホテル「ダブルツリー・バイ・ヒルトン・シャンルウルファ」。
スパやジムの設備が抜群に充実しているので、旅の疲れをリフレッシュできること間違いなし。朝食はビュッフェスタイルで、「こんなに種類があるの⁉」と戸惑うくらいに充実していてびっくり! やはりトルコはもてなしの篤い国、これでもかと提供してくれます。美味し過ぎて止まらず、つい食べ過ぎてしまったらジムへ直行してください(笑)。
トルコ LEON.JP シャンルウルファ
▲ 摂取したカロリーを消費するための設備も充実!
イスタンブルと南東アナトリア地方を、7日間かけて巡ったトルコの旅で一番印象的だったのは、月並みですが人々の笑顔でした。少しぶつかっただけなのに、大袈裟なボディランゲージで「すまない」と言ってくれるオヤジさんの笑顔、日本人を珍しがって見に来たシャンルウルファの人懐こい子供たち、ホテルインスペクションで案内してくれた女性のはにかむような笑顔、どれも親しみに溢れていて居心地が良かった。トルコ、おすすめです!
今回の旅ではすべての空路でターキッシュエアラインズを利用しました。成田・羽田からは毎日、関西国際空港からは週4で直行便が就航しています。機内食も美味しく、日本語のでのサービスを提供してくれるCAさんもいて安心です。
そして最後に、快適で安全な旅ができたのは、知識の豊富な頼もしいガイドさんがついていてくれたからこそのことだったと思います。イスタンブルなど都市部の観光にガイドは必要ないかもしれませんが、足を伸ばして地方に行く場合は、信頼できる現地ガイドをつけることをおすすめします。

それではみなさま、ホシュチャカルン!(さようなら)
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