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LEON.JP 矢吹紘子 海外富裕層ツーリスト
▲インバウンドの聖地・京都は今年春頃から旅行者数が日に日に増加中。(写真)shutterstock

2023.12.29

日本人の知らない日本の魅力を知っている⁉ 海外の富裕層ツーリストは何を求めて日本に来るのか?

コロナ禍を経てインバウンドは完全復調目前。そこで注目したいのが旅慣れた富裕層のツーリストたち。なぜなら彼らの動向には我々日本人、とりわけモテたいオヤジさんたちも学ぶべきところが多いから。最新のラグジュアリー系インバウンドに関するリアルな情報をリポートします。

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編集・文/矢吹紘子

コロナ禍を経てインバウンドは完全復調目前。今や東京も京都も、日本中に海外からやってきた旅行者で溢れんばかり。懐かしの、あの日常が数年ぶりに戻ってきました! そんななかLEON読者に注目してほしいのが、旅慣れた富裕層のツーリストたち。なぜなら彼らの動向には我々日本人、とりわけモテたいオヤジさんたちも学ぶべきところが多いのです。

そこでライター業のかたわら、通訳案内士としてVIPゲストのアテンドを行なっている筆者が、ビジネスパートナーであるハイクラス向け旅行エージェントに取材。最新のラグジュアリー系インバウンドに関するあれこれや隠れたスポット、裏話までリアルな情報をリポートします。

海外富裕層の動向を追うことで、満足度が高い穴場を見つけることができる

思えば安倍政権が“観光立国”を掲げ、インバウンドを成長戦略に組み込んだ2010年代、日本は旅行者歓迎ムードに包まれていました。そして突然やってきたパンデミック。当然旅行業界は急ブレーキ、「Go To」キャンペーンでひたすら国内にシフトしていたわけですが、ここへきて不死鳥のごとく復活しているのはご存知のとおり。2023年8月の訪日外客数は、2019年の同月比85.6%の2,156,900人にまで回復しました。
こういった情報はLEON読者のみなさんにはそれほど関係ないように思われるかもしれませんが、プライベート通訳として数々の富裕層旅行者をアテンドしている私からすると、みすみす聞き流すのはもったいない! 彼らは教育水準が高く知的好奇心が旺盛、さらに富裕層同士のネットワークを通じて情報交換をしているため、日本人が知らないようなスポットにも精通しているのです。

つまり彼らの動向を追うことで、私たちにとっても非常に満足度が高い穴場を見つけることができるというわけ。さらには日頃から一流の場所やモノに触れているだけあり、旅先でも本物を探す目利きであり、次にブレイクしそうな人やビジネスを見つける目もさすがのもの。

とりわけLEON世代のビジネスパーソンにも有益な情報をくれるソースでもあるのです。そこで今回は日頃からお世話になっている海外ラグジュアリー層向けの紹介制トラベルエージェンシー「ROJY」代表の山田ひろみさんにお話を伺いつつ、知られざるその実態と注目すべきポイントをレポートします。
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自然に囲まれ心を豊かに。影には富裕層ならではの“癒され願望”が!?

いわゆる富裕層のゲストは、実のところ今日本で何を求めているのか? 自身の経験と山田さんへの取材から浮かび上がってきたのは、ズバリ以下のポイントです。

【1】自然の中で癒されるアクティビティ
【2】味に加え地元との一体感がある飲食店
【3】異なる“レベル”で日本らしい宿選び
【4】人との触れ合いや、地元との一体感
【5】ニッチな分野の知識やオプション

まずは【1】の「自然を感じられるアクティビティ」について。お金持ちはクルマ移動が当たり前、公共交通機関なんて使わないというイメージがありますが、実は旅先では必ずしもそうとは限りません。むしろ東京や京都などの都市部では、あえて車を使わずに歩きたいというリクエストも多いくらい。

その理由はというと、子供の社会見学のために電車や地下鉄の切符を買うところから体験したい、といった“異文化学習”マインドのほか、パンデミックの影響も大。「コロナ後は全体的に自然を求める傾向が強くなっていて、軽めの山歩きやハイキングがトレンドです。東京近郊だと伊豆の達磨山が密かに人気。トータルで3時間ほどというほどよい距離感に加え、山頂から富士山が綺麗に見える穴場なんです」(山田さん)
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▲達磨山から見た富士山。達磨山は沼津市と伊豆市との境にあり、標高982m。座禅中の達磨大師にその姿が似ていることが名前の由来。(写真)shutterstock
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そもそも日頃からジムで汗を流すなど健康志向の彼ら。京都で伏見稲荷大社が絶大な人気を誇るのは、決して千本鳥居の“映え力”だけではなく、稲荷山を登りながら心地よい汗をかくことができるからでもあるのです。同じく京都ではパワースポットとして知られる鞍馬寺から貴船神社まで、約2.5キロの山道を歩くハイキングコースがあり、観光客もやや少なめとあって熱い視線が注がれています。
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▲鞍馬寺と貴船神社の間には、神秘的な雰囲気が漂う「木の根道」が。杉の大木の根が地表に露出したもので、牛若丸が跳躍の練習をしたという言い伝えが残る。(写真)shutterstock
同様の理由から外せないのが屋外のミュージアム。東京からのアクセスがいい箱根や伊豆エリアはまさにうってつけのロケーションで、ご存知「箱根彫刻の森ミュージアム」のほか、現代美術作家・杉本博司が設計した「江之浦測候所」は、アート好きの富裕層にブレイク中です。

さらに富裕層ゲストはビジネスなどを通じて人と交流する機会が極端に多かったり、さまざまな社会環境に置かれているため、「人疲れ傾向」が顕著に見られると山田さんは指摘します。そのため禅寺で瞑想をしたり、日本庭園で庭を眺めるといったウェルネス系の需要は常に高め。1358年に京都で創建された臨済宗寺院「両足院」でのプライベートメディテーションは、今やインバウンド御用達となっています。
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「江之浦測候所」は公益財団法人小田原文化財団の文化施設として2017年に開館。ギャラリー棟、石舞台、茶室、庭園などからなり、相模湾を望む絶景とアートを満喫できる。©小田原文化財団
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▲これぞ和!な日本庭園を独り占めできる「両足院」の予約制プライベート瞑想セッションが大人気。同院は普段非公開だが、現代アートのエキシビションなどイベント会期中に特別公開される。
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訪日富裕層の食の動向を追えば今行くべき店も穴場も丸わかり

アメリカの大都市圏やヨーロッパの高級店に行き慣れている訪日富裕層への食のアテンドは、なかなかハードルが高いもの。山田さんは「Fancy(ミシュラン星付きなどのキラキラ系)とLocal(地元の人気店)」をうまくミックスするのがそのコツだといいます。

「初日におすすめすることが多いのが『青山鮨かねさか』。ここは系列店の中でも比較的若手の職人が寿司を握るのが特徴で、シェフとしては駆け出しの彼らが心を込めて握った寿司を食するというストーリー性が、ゲストの心を絶妙にくすぐるんですね。他店と同レベルの食材を使っているのに価格帯がやや低めで、予約がとりやすいというブッキング側の理由もあります」
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▲ミシュラン二つ星の「かねさか」系列の中でも穴場と言える「青山鮨かねさか」。ハイエンドなホテルの中というロケーションも、とりわけ滞在日数が浅い旅行者には安心できるポイントだ。
必ずしもお高い店ではなくとも、街の空気感が伝わってくる店が喜ばれるという意外な傾向も。西麻布の「笄鮨(こうがいずし)」は、通りに面したドアを開けるとすぐにカウンターが配置されたレイアウトで、とにかく外との距離が近いのが意外な利点に。

「店主が通りを歩く近所の子供に気さくに声をかけていたり、街の人の息遣いが伝わるような感じ。こういう地元との“近さ”のある店は、その新鮮さもあってより心に深く刻まれるようです」(山田さん)
▲ 扉を開けるとすぐにカウンター。地元感満載の佇まいが異彩を放つ「笄鮨」。もちろんその味も、舌の肥えた欧米のゲストも納得のレベル。
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「和牛ステーキサンドがインバウンド客の間でブレイクしている日本橋の『西洋料理 島』は、大島シェフ父子の温かい人柄と、誰かの家に招かれたような店の雰囲気が好評ですし。それに日本人の解釈した“西洋”が、彼らにとってノスタルジックなのかもしれません」(山田さん)
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▲日本橋の「西洋料理 島」は、名物のステーキに加え、マダムのセレクトした絵画が飾られた、どこか“親戚の家感”のある雰囲気が海外ゲストの心を掴んでいる。
なるほど、味のレベルの高さを大前提としながらも、街のバイブスが伝わるロケーションや間取り、アットホーム感といったプラスαの盛り上げ要素が必要なのですね。LEON読者にとっても、ここぞという時の会食のセッティングや、デートの店選びの参考にもなるはず。

それにしても海外富裕層の旅路を追うと、わたしたちが思い描く“観光客”の固定概念を軽々と覆してくるな〜とつくづく実感させられますよね。後編では気になる宿選びや、その他の見逃せないポイントを分析・レポートします。

※後編こちらに続きます。
LEON.JP 矢吹紘子 海外富裕層ツーリスト 山田ひろみ

● 山田ひろみ (Romy)

紹介制のトラベルエージェンシー「ROJY」ファウンダー、CEO。幼少期をLAで過ごし、MTVやAppleなどの米国系企業でマーケティングに携わる。海外富裕層、クリエイター、デザイナー、ハイブランド企業等向けのキュレーション、企画、イベント運営、コンサルティングを専門とする同社を設立。
HP/https://rojy.tokyo

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● 矢吹紘子(やぶき・ひろこ)

ライター、編集者、通訳案内士。小誌のほか『BRUTUS』『POPEYE』などライフスタイル誌を中心に記事を執筆・編集。ロンドン大学で修士課程修了後、プライベート通訳としても活動。京都を拠点に海外からのVIPゲストのアテンドや旅のキュレーションを行なっている。
Instagram/@tokyoai_hiroko

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