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2023.04.26

これも“大人向け”!? 味わい深〜いマンガ5作品

年齢を重ねてから気づく美味があるように、マンガにも“大人向け”というジャンルが存在します。それはシュールであったり、大人の悲哀を描いていたり、知識の宝庫であったり。各分野に造形の深い著名人が愛読するマンガを教えていただきました。

CREDIT :

文・編集/岸澤美希(LEON.JP) 

“大人向けマンガ”と言っても、“成人向け”ではありません。確かに、昭和の時代にはマンガは“子ども向けの読み物”だと思われていたでしょう。ですが現在は、大人も満足できるストーリーのマンガが数々登場しています。

そんな中でも特に、「大人だからこそ魅力がわかるマンガ」を、各分野に造形の深い著名人にリコメンドいただきました。方向性は違えど、読んだら思わず「う〜ん…‥」と唸ってしまう作品が揃っています!

選者は、メディアアーティスト・落合陽一さん、音楽プロデューサー/選曲家・田中知之さん、著作家・中野香織さんの3名です。

メディアアーティスト・落合陽一さんが選ぶのは……

メディアアーティストとして、教壇からメディア出演まで幅広く活躍される落合陽一さん。「マンガはデジタルネイチャー(※)とアナログ文化とが交差する表現の楽園です」とのこと。
※計算機自然。落合さんは「人・モノ・自然・計算機・データが接続され脱構築された新しい自然」と述べる。

その1 

働くことへの葛藤を描いた『女子攻兵』

▲ 『女子攻兵』(松本次郎・新潮社)
▲ 『女子攻兵』(松本次郎、新潮社)
未来を舞台に、異次元空間の新世界の住民と地球連合軍の間に起きた戦争を描いた本作。女子高生型のコックピットに人間の男性が乗って操縦する「女子攻兵」が戦線に投入されるという一風変わったSFです。

「単なるグロさやエロスだけでなく、作品に含まれる大人の疲労とギャルを目指すオジサマたちの悲哀が大人向けだといえるでしょう。途中から主人公たちが中年男性であったことを忘れてしまう。

そこで女子高生としての主人公たち、彼女たちが抱える心の傷や葛藤も丁寧に描かれています。また、作品全体を通じて描かれる虚無感と、その上で仕事を続ける主人公の葛藤は、自分自身の問題として興味深く読むことができました。ネタバレなので書きませんが、ラストシーンでは、仕事に向かう・人生に向かう気持ちを作ってくれます」(落合陽一さん、以下同)
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その2 

『ポム・プリゾニエール』

『ポム・プリゾニエール』(鶴田謙二、白泉社) ©鶴田謙二/「楽園」/白泉社
▲ 『ポム・プリゾニエール』(鶴田謙二、白泉社) ©鶴田謙二/「楽園」/白泉社
廃墟、猫、裸を主なモチーフに据え、静かに物語を紡ぎ出すショートコミック集。

「とにかく猫と美少女が可愛いです。作者の美術的な表現力は、とても重要な魅力の一つ。印象的なのが、宝箱を取ろうとして黒猫にまみれる主人公。作品中に登場する絵画的風景描写や、夢の中のように描かれる景色など、美しいイラストが数多く描かれています」
落合陽一(おちあい・よういち) 

● 落合陽一(おちあい・よういち) 

メディアアーティスト。1987年生まれ、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターセンター長、准教授・JSTCRESTxDiversityプロジェクト研究代表。IPA認定スーパークリエータ/天才プログラマー。ピクシーダスト テクノロジーズ代表取締役。

PHOTO/©中川容邦/KADOKAWA 

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音楽プロデューサー/選曲家・田中知之さんが選ぶのは……

DJや音楽プロデューサーとして活躍する田中知之さん。LEONのイベントでもお馴染みの御仁です。音楽だけでなく、ヴィンテージ・ウエアや食、時計、クルマなどにも精通した田中さんが選ぶ大人向けマンガは意外にも……?

『容赦ない和田ラヂヲ』

『容赦ない和田ラヂヲ』(和田ラヂヲ、イースト・プレス)
▲ 『容赦ない和田ラヂヲ』(和田ラヂヲ、イースト・プレス)
シュールなギャグと味わいのある絵で人気を集めるマンガ家・和田ラヂヲさんの4コママンガ集。

「和田ラジヲさんの四コママンガすべてに言えることだが、時に徳のある高僧の法話を聴いたような、時にキツネに摘ままれたような、時に大きな耳垢がごそっと取れたような……つまりは、大人ならではの日々の面倒臭いことや、くよくよと悩んでいたことが、もうどうでも良くなるという効能があります。

和田ラジヲさんの四コママンガは、人生の師かな。ご本人もとても素敵な方で、ずっと故郷の愛媛県の松山に住まわれています」(田中知之さん)
田中知之(たなか・ともゆき) 

● 田中知之(たなか・ともゆき) 

音楽プロデューサー/選曲家として国内外で活躍。FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリース。多数のアーティストの楽曲プロデュースやRemixも手掛け、TVCM音楽、全米映画や海外ドラマ、演劇作品への楽曲提供も多数。商業施設や飲食店の音楽ディレクションも手掛ける。東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。昨年度より洗足学園音楽大学”音楽・音響デザインコース”の客員教授に就任。

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著作家・中野香織さんが選ぶのは……

服飾史をはじめ、ラグジュアリー領域を中心に研究や執筆・講演などを行う著作家・中野香織さん。意外にもマンガはお好きだそうで「世界の新しい見方を教えてくれる無限のインスピレーションの泉」だと語ります。

その1

『キングダム』

『キングダム』(原泰久、集英社) ©原泰久/集英社
▲ 『キングダム』(原泰久、集英社) ©原泰久/集英社
「中国の春秋戦国時代を背景にした漫画で、乱世の「なんでもあり」な極限状況ならではの人間の生き方や考え方が随所に描かれます。現役のビジネスパーソンにとっては組織論、リーダーシップ論、戦略論としても十分、学びどころが多いはず。

私はとりわけ王騎にはまっていて、ルックスやしゃべり方の妖しいギャップもさることながら、度はずれた強さ、視野の広さ、志の高さ、体躯とハートの大きさ、人情の厚さ、神出鬼没の行動力、人望、カリスマ性に魅了され、あんな人になりたいと心のお手本になっています」(中野香織さん、以下同)
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その2 

『王様の仕立て屋 サルト・フィニート』

『王様の仕立て屋~サルト・フィニート~』(大河原遁/集英社)©大河原遁/集英社 ※遁は正しくは一点しんにょう。
▲ 『王様の仕立て屋~サルト・フィニート~』(大河原遁/集英社)©大河原遁/集英社 ※遁は正しくは一点しんにょう。
「主人公はナポリで仕立て屋を開く日本人の職人の青年。紳士服全般のコンテクストやディテール、表現力の勉強になります。

イギリスや日本との仕立ての違い、生地の見方、色やパーツの組み合わせ方、巧みに作られたスーツが現実に及ぼす効果にいたるまで、男性が服を作り、着て、生きることに関する基本的考え方からニッチな薀蓄に至るまで、視界が広がる情報が楽しく詰まっていて、学びどころ尽きません」

● 中野香織(なかの・かおり) 

ファッション史を軸に芸術誌からビジネス誌までカバーする著作家。

著書『「イノベーター」で読むアパレル全史』(日本実業出版社)、『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』(安西洋之氏との共著、クロスメディア)、『英国王室とエリザベス女王の100年』(君塚直隆氏との共著、宝島社)ほか多数。
HP/www.kaori-nakano.com
Twitter/kaorimode1 
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