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2023.04.25

マンガのプロが選定! 大人にこそ薦めたい「目ウロコなマンガ」3作品

「大人もマンガから学べることは無数にある」と話すのが、マンガ文化の育成・発展をプロデュースする会社レインボーバード代表を務める山内康裕さん。仕事に活かせる・価値観を見直す・気持ちを切り替える……といった観点で、大人向けのマンガ3作品を選んでいただきました。

CREDIT :

文/浜野雪江 編集/岸澤美希(LEON.JP)

大人だからこそ沁みる・学べるマンガ3冊をリコメンド

「大人もマンガから学べることは無数にある」と話すのが、マンガ文化の育成・発展をプロデュースする会社レインボーバード代表を務める山内康裕さん

前編では、近年のマンガの潮流や、大人がマンガを読む意義について伺いました。後編では、現在、星の数ほどあるマンガの中で、大人にこそオススメしたいマンガ作品を紹介していただきます。

個人と組織の成長をリアルに学べる『アオアシ』

▲ 『アオアシ』(小林有吾・小学館)
▲ 『アオアシ』(小林有吾・小学館)
── LEON.JPの読者は40〜50代がメインですが、オススメのマンガを3つ挙げるなら、どのような作品を選びますか?

山内康裕さん(以下、山内) まずは、サッカーマンガの『アオアシ』です。これは、サッカーのユース(高校生年代)チームを題材にした作品で、徹底した取材をもとに、今のサッカー業界の仕組みや、プロのサッカー選手になるための道筋がリアルに描かれています。

『キャプテン翼』(高橋陽一、集英社)が夢を与えるファンタジーだったのに対し、『アオアシ』は夢を持ってサッカー選手になることの解像度を上げられる作品です。

目の前の目標を達成するうえで、自分をどうポジショニングして成長していけば良いかが、物語を通して丁寧に描かれますが、この作品の面白いところは、それを個人と組織、両方の側面から描いているところです。「できること・したいこと・すべきこと」の3つのステージに分けて、目指すべきところを示す分析をマンガで展開してくれる。とても勉強になると思います。

── それは、プロサッカー選手になりたい子どもたちだけでなく、大人も仕事に役に立ちますよね。LEON世代なら後輩に薦めるのもアリかも?

山内 そう思います。ビジネス書でよくあるような分析を、物語の中で具体的に見せてくれますから。ちなみに、プロのサッカー選手たちにもよく読まれているんですよ。
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現在の社会常識を問い直す『望郷太郎』

▲ 『望郷太郎』(山田芳裕、講談社)
▲ 『望郷太郎』(山田芳裕、講談社)
── オススメ作品の2作目はいかがでしょう?

山内 『望郷太郎』は500年後の未来を描いたSFですが、未曽有の大寒波襲来で人類と文明が途絶え、初期化した世界でもう一度文明をつくり、そこで生き抜くという“タイムスリップの未来もの”です。

主人公の舞鶴太郎はイラクに住むやり手のビジネスマンで、家族と一緒に人工冬眠によって自然災害を乗り切ろうとしますが、失敗。自分だけ奇跡的に500年後に蘇り、荒廃した世界に踏み出して、日本を目指すところから物語がスタートします。

── 1話がウエブで試し読みできますが、衝撃的なスタートですよね。

山内 そこから太郎は、古代の狩猟民族レベルの人や、弥生時代レベルの人など、いろんなステージの文明の人に出会い、そこで生き抜くための智恵や技術を身に着けます。

なかでも興味深いのは、資本やお金がどういう形で社会のルールとして成り立っていくかを非常に丁寧に紐解いているところ。たとえば、貨幣の始まりは“信用”を形にしたものです。その信用が貨幣になった社会とならなかった社会とがそれぞれどうなるかなどを、あらゆる切り口で見せてくれる。

太郎が直面する出来事を通して、読み手自身が、現代社会や資本主義について根本から考え直すきっかけにもなる作品です。

── 主人公が、旅の途中でさまざまな人物や集団と対峙し、数々の危機を乗り越えながら祖国を目指すという設定は、ロールプレイングゲーム的な楽しさもありそうです。

山内 そうですね。そのサバイバルを、太郎は現代で身に着けた知識や経験を持って進めていこうとしますが、それだけではままならないことがあります。あらゆる時代を生き抜くには、主人公が独自に培ってきたものだけでなく、人間がもともと持っている動物の本能的な要求や、生き抜く力としてのパッションの両方が必要なんです。

あるいは、固定概念をゼロにして、すべてを根本から考えていかなければならない局面も出てきます。近年のビジネスではゼロベース思考の大切さがよく言われますが、真のゼロベースってこういうことなんだ、というのがわかる作品にもなっています。それらの展開も含め、マンガとしてめちゃくちゃ面白いです。
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一息つきたい時には……『ひらやすみ』

▲ 『ひらやすみ』(真造圭伍、小学館)
▲ 『ひらやすみ』(真造圭伍、小学館)
── では、オススメ作品の3作目は?

山内 29歳のフリーターが主人公の『ひらやすみ』というマンガです。“丁寧な暮らし”とか“丁寧に生きる”というのはここ数年よく聞く表現で、若干手垢がついている感もありますが、このマンガを読むと、「あ、これが丁寧に生きることなんだ」と腑に落ちる作品です。

主人公は、定職につかず、恋人もいない気楽な自由人ですが、片肘張らずに今を生きることを実践していて、それがとても幸せな感じに描かれています。ひょんなことから意気投合したお婆さんから、古い平屋建てを譲り受け、いろんな登場人物と関わりながら過ごす日々はある意味ファンタジーです。

けれど、読み進めるうちに、丁寧に生きるというのは特別なことではなく、どこにいてもできることだと気づかされたり、それを作品の中で味わうことによって優しい気持ちになれる、小休止としての価値の高い作品なんです。

── タイトルのひらやすみとは、どういう意味でしょう。

山内 平屋に住むという意味や、ひたすらに休むというような、複数の意味が込められているようです。ただ、終始ほのぼのしたシーンが続くわけではなく、野心家のキャラクターも多く出てきます。なので、おそらくLEON.JPの読者の皆さんは、主人公以外の登場人物により感情移入できると思います。そのキャラを通して主人公を見て、気持ちを休ませるという感じになるのではないでしょうか。

ひらやすみは永遠には続かないけれど、ひと息つきたい時や、モードチェンジをしたい時に、手にとってみると良いと思います。

── それぞれ違う魅力のある3作品をありがとうございます。
山内康裕(やまうち・やすひろ)

● 山内康裕(やまうち・やすひろ)

一般社団法人マンガナイト代表理事。「マンガと学び」の普及推進事業などを展開する。"マンガ"を領域とした企画会社レインボーバード合同会社代表社員、さいとう・たかを劇画文化財団理事長、東京工芸大学芸術学部マンガ学科非常勤講師他を務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方』(集英社)など。

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