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2022.05.22

【第8回】「東池袋 大勝軒」(東池袋)「松戸富田麺絆」(東京駅)

ラーメンの常識的概念を破った「つけそば」人気の始祖「東池袋 大勝軒」

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

▲ 池袋大勝軒の「特製もりそば」(800円)。
「つけそば」をはじめて食べたのは、東池袋にあった「大勝軒」の「特製もりそば」だった。1980年か81年頃のことである。この店も連載第1回で紹介した銀座「共楽」同様、雑誌「あさめし、ひるめし、ばんめし」の小宮山博さんのラーメン特集に掲載されていた。私の初めての飲食店ガイドブック「東京・味のグランプリ200」(1982年/講談社刊)で次のように評した。
主人はいつもタオルで鉢巻きをしながら、めんを打ち、そばを茹で、中華そばを手際よくつくってゆく。めんに限っていえば、この店に匹敵するものがないと思われるほど、ツルツルしていてコシがあって見事である。本当にこのめんの味には比類がない。このめんのうまさを生かした特製もりそばが中華そばより人気がある。めんが新しいところへもってきて、丁寧に茹で上げるから、水でさらしためんを、コクのあるスープにつけて食べるうまさはこたえられない。そのスープに入るチャーシューのうまさも特筆ものである。
▲ 東池袋 大勝軒はつけそばの始祖。
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文中「タオルで鉢巻き」していたご主人が今なおラーメン界のレジェンドと言われる山岸一雄さんである。私の評価では、都内で三本の指に入るラーメン専門店だった。東池袋「大勝軒」は現在まで続く「つけそば」人気の始祖と言って間違いない。

「つけそば」は茹で上げた麺を水で締め、温かい濃いめのスープにつけて食べる。「冷・温」を口の中で同居させ、調和をとるラーメンである。ラーメンは熱いものだという常識的概念を破った画期的なラーメン。おそらく原型は、「てんぷら」と「せいろそば」を組み合わせた「天もり」「天ざる」とも呼ばれたりするてんぷらそばではなかろうか。

20世紀最後から21世紀初頭にかけて、一世を風靡したスペインはカタルーニャの「エルブリ」で、わざわざ冷凍したフォアグラを新鋭調理機器で粉砕し、そこへ熱々のコンソメをかけて食べさせる料理に出会ったとき、日本では20年以上前から「つけそば」で冷温料理はやっているとテーブルを囲んだ仲間たちに話題を提供したことを覚えている。

「甘・酸・辛」の味付けをベースにしたスープが特徴

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東池袋「大勝軒」は1934年生まれの山岸一雄さんが1961年に創業したが、2007年立ち退きで閉店の後、2008年「東池袋 大勝軒」本店として復活、山岸さんは2015年に亡くなられたが、その後も直系弟子の飯野敏彦さんが店を継いでいる。
▲ 池袋大勝軒の「もりメンマ」(1100円)。
その「東池袋 大勝軒」本店は、南池袋サンロード商店街にある。「甘・酸・辛」の味付けをベースにしたスープが特徴で、これに中細の麺をつけて食べる。ボリュームたっぷりの麺だから、食べ進むうちにスープは次第に温度が下がり、はじめの冷温のコントラストは影を潜めはじめ、麺と同調してしまうのは致し方ないことか。メンマはしっかりと味がしみ込み、チャーシューはかつての「大勝軒」の美味しさを思い出させるのに十分な出来栄えである。
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麺は人と人との心をつなぐ見えない糸

「東池袋 大勝軒」同様、山岸一雄さんに敬意を払い続ける一軒が東京駅から地下通路でつながる「KITTE」の地階にある「松戸富田麺絆」。
▲ 松戸富田麺絆の「濃厚つけ麵」(並920円)。
松戸に本店があり、私はまだ出かけたことはないが、店主の富田さんは直弟子ではないものの、ラーメンの世界に飛び込むきっかけになったのが、山岸一雄さんのラーメンに出会ったことだそうで、こちらにも「東池袋大勝軒」と同じく、店内にレジェンドの写真が飾ってある。

山岸さんの言葉で大切にしているのが「麺絆」で、「麺は人と人との心をつなぐ見えない糸」という意味合いがあるという。栄枯盛衰が激しいラーメン界で、東池袋「大勝軒」の仕事を踏襲しながら、独自の味を追求しているのが頼もしい。
▲ 松戸富田麺絆の店内に飾られていた山岸さんの写真。
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※次回は6月12日予定です。

東池袋 大勝軒

住所/東京都豊島区南池袋2-42-8
営業時間/11:00~22:00
※スープがなくなり次第終了
定休日/水曜
TEL/03-3981-9360
HP/元祖つけ麺 東池袋大勝軒 オフィシャルサイト 

松戸富田麺絆

住所/東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE丸の内 キッテグランシェ内
営業時間/月~金 11:00~22:00 土・日・祝 ~21:00(現在短縮営業のため11:00~21:00(L.O20:30)
定休日/なし
TEL/03-6259-1133
HP/松戸富田麺絆公式サイト (tomita-cocoro.jp)

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

山本益博さんがYouTubeを始めました!

日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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