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2022.04.24

【第6回】「麺屋武蔵」(新宿ほか)

数々の挑戦でラーメン界に革命を起こし続けてきた「麺屋武蔵」

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

ラーメン界では「96年組」という言葉があるという。1996年に創業した中野「青葉」横浜「くじら軒」青山「麵屋武蔵」の3軒を指し、味、内装、接客など、その後のラーメン店に多大な影響を与えたとのことである。当時の「青葉」も「くじら軒」も知らなかったが、青山の「麺屋武蔵」には出かけていた。
「ダイブル山本益博の東京横浜たべあるき2001年版」では、青山ではなく新宿に移ったばかりの「麺屋武蔵」を次のように紹介した。

「麵屋武蔵新宿店:開店と同時に満席となる都内屈指の人気店。さんま干し、羅臼昆布ほか、吟味された素材を惜しげもなく使ったスープは、甘い香りが漂い、様々なうま味要素がバランスよく溶け込んだ、穏やかな口当たりと深い滋味に富む。そこに粉のうま味を感じさせるもっちりとした中太麺が絡み、互いに味を高めていく。煮豚、メンマもすばらしい出来。毎年考案される夏の冷やし麺、秋の塩ラーメンも傑作。隅々まで清掃の行き届いた店内も実に快適」
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師匠なし、すべて独学で、生涯負けなしの宮本武蔵が店名の由来

▲ 「神田  麵屋武蔵  神山」の「神山つけ麵」(1180円)。
「麵屋武蔵」の創始者は山田雄さんでアパレルの出身。青山の店にふらりと出かけた際、挨拶された。フランス料理店ならまだしも、ラーメン屋で声をかけられたことはほとんどなく、後から伺って山田さんがアパレル出身のフランス料理好きだったから、顔が割れていたのだろう。

2007年に新潟中越沖地震が起こった際、私はホテルのフランス料理のシェフ、街場のパティシエ、鮨職人に声をかけ「料理ボランティアの会」を立ち上げた。そして、翌2008年新潟の被災地へ出かける時、カレーの「中村屋」さん、イタリアンの「サルヴァトーレ」さん、ラーメンの「麵屋武蔵」さんにボランティア参加のお声がけをし、皆さん前日から下拵えした食材をバスにのせ、料理人の混成チームで出かけていった。

このとき以来、「麵屋武蔵」さんは、東京で開かれた「料理ボランティアの会」で、毎回ボランティアに因んだラーメンを創作してくださり、それを味わった。いま「麵屋武蔵」でいただけるラーメンとは一味違ったもので、2011年の東北大震災ときは、石巻で魚のあらからスープをとったクリアな「あら~麺」を作って喝采を浴びた。店を休んでまで「料理ボランティア」に参加することについて、現在の矢都木社長は「ボランティアへの参加は、最高の社員研修、なぜなら、一緒に参加している名だたるホテルの総料理長さんたちに食べていただけるのですから」という。
▲ 「吉祥寺  麵屋武蔵  虎洞」の「虎洞つけ麺」(1120円)。
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「麺屋武蔵」はラーメン屋で屋号に「麺屋」と名付けた最初の店として知られているが、「武蔵」の由来は、宮本武蔵が、師匠なし、すべて独学で、生涯負けなしであるところから、初代のオーナー山田さんが名付けた。

2代目のオーナー矢都木二郎さんは1976年埼玉の生まれ、ラーメンより「つけ麺」にはまって、2001年「麺屋武蔵」に入り、2014年2代目の社長に就任した。

石巻のさんまの煮干しがベースであることは全店共通で、スープの味が濃いというよりうま味が強いが、現在都内に15店舗ある店の味はすべて違うとのこと。脱「セントラルキッチン」で、味、値付けは店長が決めるのだという。
▲ 「新宿  創始  麺屋武蔵」の「武蔵ら~麺」(1000円)。
青山の店から出発し、98年5月に新宿に「創始  麺屋武蔵」を構える。

私は、神田「神山(かんざん)」六本木「虎嘯」吉祥寺「虎洞」しか知らないが、吉祥寺「虎洞」では、自家製のソーセージが売りでユニークである。そのソーセージ、スパイシーでハーブの香りが漂う。

「麵屋武蔵」はこれまでの数々の改革でブームというより、革命を起こしてきたと言ってよい。今でも「金乃武蔵」というユニークなラーメンを発表し続けている。店内にはジャズが流れ、つけ麺中心に若者たちに受けている。
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※次回は5月8日予定です。

新宿   創始   麺屋武蔵

住所/東京都新宿区西新宿 7-2-6 西新宿K-1ビル1F
営業時間/11:00〜22:30
定休日/なし
TEL/03-3363-4634
HP/麺屋武蔵 (menya634.co.jp)

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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