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2022.05.08

【第7回】「多賀野」(荏原中延)

素晴らしいスープ! 偉大なる街場のラーメン屋「多賀野」

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

▲ 多賀野の「中華そば」(800円)+煮玉子(150円)。
「多賀野」へ初めて出かけたのは、まったくの偶然だった。わが娘が小学校受験をするために個人塾に通っていたのだが、それが大井町にあり、西荻窪から娘を迎えに行った帰り道、お腹が空いたので、店を探しながら車を走らせていた。そこで、目に留まったのが「多賀野」だった。

店に入ったとたん、「スープが売り切れまして、申し訳ございません。ごまの辛いそばなら、お作りすることができます」との声が返ってきた。1999年のことである。
これが、大正解だった!  改めて出かけて念願の「中華そば」を注文し、以後、ときどき思い出しては出かけて行った。そして、当時、毎年出版していた東京のレストランガイド「ダイブル」(昭文社)の2001年版に「多賀野」を掲載させていただいた。

「ダイブル」(昭文社)2001年版より

「多賀野」:庶民的で静かな商店街の中、この店だけに列ができている。その人気の秘密はスープ。うま味調味料を使わず、ゲンコツ、鶏、煮干しを中心としたダシに、厳選した塩としょう油を合わせたスープは澄んだ味わいで、うま味が丸い。コシの強い中細ストレート麺、具のチャーシュー、メンマ、のりも申し分ない。実に完成度が高いが、押し付けがましくないやさしい味わいである。ゴマの甘みと辣油の辛さが溶け合う、ごまの辛いそばや味噌もいい。サービスも快適。中華そば600円特製みそらあめん700円ごまの辛いそば800円「スリーダイヤモンド」(料理、居心地、値頃感)

「スリーダイヤモンド」とは、星ではなく、「料理、居心地、値頃感」の優れた店に「ダイヤモンド」を献上し、その満点が「スリーダイヤモンド」だった。
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「粟国の塩そば」は私が知る「塩そば」の最高峰のひとつ

▲ 「多賀野」のご主人とおかみさん。
「多賀野」は、前回の連載でご紹介した「麵屋武蔵」と同じく、1996年の創業である。「96年組」と一緒にならないのは、目立った改革をしてラーメン界に多大な影響を与えたわけでないからで、はじめから夫婦二人でいわば「街場のラーメン屋」を貫いてきたからだろう。

中延から五反田線「荏原中延」駅まえに移転してからの繁盛ぶりは尋常ではない。いまでは、受付の予約表で待ち時間を確認してから、券売機で食券を買うシステム。中華そば800円、粟国の塩そば850円、酸辛担麺850円、ごまの辛いそば900円が基本メニュー。
▲ 「粟国の塩そば」(850円)+煮玉子(150円)。
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ご主人の高野正弘さん(1955年生まれ)がスープを調味し、麺を茹で上げる。その際、スープに「追いがつお」ならぬ「追い煮干し」をして、スープの味を引き立てている。どんぶりに具材をすべてまとめる際に、おかみさんと二人がかりで仕上げをする。このところ、出かけると醤油味の「中華そば」ばかりを注文していたが、先日、「粟国の塩」に魅かれて、「粟国の塩そば」の食券を購入し、出来上がりを待った。

これが素晴らしかった!  どこにも「塩味」を感じさせず、丸みがあって、口の中で大きく広がってゆく。これを「甘露」と呼びたい。私が知る「塩そば」の最高峰のひとつ。電車に乗って五反田駅まで戻っても、喉はまったく乾かず、「甘露」のみが残っていた。
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※次回は5月22日予定です。

中華そば専門  多賀野

住所/東京都品川区中延2−15−10
営業時間/11:30〜14:30
定休日/日曜
TEL/03-3787-2100
HP/中華そば 多賀野 ラーメン

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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日本初の料理評論家、山本益博さんが、美味しいものを食べるより、ものを美味しく食べたい! をテーマに、「食べる名人」を目指します。どうぞご覧ください!
YouTube/MASUHIROのうまいのなんの!

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