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2017.11.26

“ファッションが売れない”は本当か? #2

ECサイトの好調が聞こえてくる中、一方で、実店舗では洋服やモノが売れないと聞こえてくるのもまた事実。ファッションは今、本当に売れない時代なのだろうか?

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写真/福本和也(MAETTICO) 文/池田保行(04)

日経ビジネスの連載記事『誰がアパレルを殺すのか』が書籍になり、ベストセラーになった2017年。その影響か、ファッションが売れない、モノが売れない、そんな悲嘆の声を聞くことも多くなった。10年以上にわたりミラノとパリのメンズコレクション取材を続けているWWD JAPAN.com編集長・村上要が語る。

モノを売る構造はデジタルが支配している?

「ミレニアルズを捕まえなさい!(Catch the millennials!)」が、ワールドワイドなファッションブランドのミッションになっています。とくにラグジュアリーブランドにとっては重要な課題。そもそも海外には裕福層の二世、三世で生まれながらにお金持ちなミレニアルズが大勢います。ラグジュアリーブランドのターゲットに相応しい人たちです。彼らをキャッチするためには、デジタライズが必須です」

「ミレニアルズ」には、いくつかの定義があるようだが、1980年代から2000年に生まれた世代の総称で、幼少からパソコンやスマートフォンに慣れ親しんだ世代で現在の20代が主軸。そんな世代にアピールする戦略に舵を切るブランドが世界で続々出現している。

「近年、ミレニアルズシフトに成功したブランドはグッチや、ポロ ラルフ ローレンをはじめ少なくありません。ミレニアルズを招待するパーティを開催し時には衣装さえ提供し、SNSに投稿してもらって、フォロワーの“いつかこのブランドが欲しい。この世界やコミュニティの一員になりたい”という憧れを喚起させる戦略が特に海外では大きな成果をあげています」
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冷酷無比なNYのファッション小売り事情

一方でリアルショップはどうか。ECの台頭が著しいアメリカ、NYのショッピングモールはかなり厳しいようで、アメリカを代表するメイシーズなどの百貨店は総崩れで近年赤字に転落。日曜日の午後でさえ、店内はガラガラで誰もいないという状況。しかも、数十年前はマジョリティだった中間層の減少も手伝い、顧客層が低所得者層に移行している。

その一方で人だかりができている店舗も。デザイナーズブランドの商品が借りられるオンラインサービスとしてスタートした、Rent the Runwayのリアル店舗は、大いに賑わいをみせている。決定的な違いは、消費者にデジタル体験を含めモノではなくコト消費を提供できているか、という点。もはやピカピカの店内に最新コレクションを並べて売るだけでは、消費者は満足してくれないのだ。

若い世代はパソコンやスマートフォンに慣れているので、デジタルシフトが有効とも考えられるが、大人世代はファッションとどうつき合っているのだろうか。

富裕層の大人もデジタル化が加速している

「アメリカは富裕層こそ、デジタルシフトしています。彼らは仕事やプライベートが充実しているので、リアル店舗で服を買う時間がありません。ですが自分で商品を選ぶ力があるのでECの利用も慣れれば平気。夜8時に閉店間際のショップに駆け込むよりも、深夜2時でもECでオーダーすれば、次の日の朝外出して自宅に戻るまでに商品は届きます。となれば断然、便利なECに消費が流れて当然です」

「加えてハイブランドを扱うECは、『今、すぐ欲しい』とワガママな富裕層の期待に応えるべく、デリバリーがとても早い。例えばヨーロッパのNET-A-PORTERMATCHESFASHION.COMは欧州なら24時間以内にデリバリーしますし、ラグジュアリーブランドも迅速な配送に協力的です。中国のEC最大手アリババは向こう5年以内に世界のどこでも72時間で届ける配送網を整えると発表しました。ロジスティクス(生産・物流・販売)もきちんと整えなくてはならない時代です」
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本でのミレニアルズ戦略は、ローカライズが成功の鍵か

「世界的にミレニアルズを捕まえることがラグジュアリーブランドのミッションになっていますが、このミレニアルズ戦略は、かならずしもそのまま日本に当てはまるとは思いません。日本向けにローカライズする必要がある。というのも日本のマーケットは特殊です。1980年以降、中流階級がこれほどまでにラグジュアリー市場において存在感を発揮し続ける国は、世界で見ても希有でした。ですからその子供達は、必ずしも富裕とはかぎりません。“日本のミレニアルズ”をどう捕まえるかというミッションを成功させるには、いかに日本風にアレンジするかを考える必要があります」

ファッションはもちろん、メディアもデジタルで選別される時代へ

村上は、先日のNYコレクションで、あるブランドがプレス向けのショーの前にゲリラ的なショーを行い、その時間と場所はインスタグラム上でしか発表しなかったことを例に挙げ、ソーシャルネットワークにリーチしていないと、メディアすら振り落とされてしまうことに危機感を感じたという。

デジタルマーケティングに遅れを取っているブランドは、インスタグラムでもツイッターでも、フェイスブックでもユーザーのタイムラインに登場できず、結果彼らの生活圏にすら入っていけない。同時にデジタライズされていないユーザーは、今後最新のファッションにありつけなくなってしまうのもまた事実のようだ(文中敬称略)。
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● 村上 要 / WWD JAPAN.com 編集長

1977年静岡県生まれ。東北大学教育学部卒業後、静岡新聞社編集局社会部に勤務。退社後、NY州立ファッション工科大学へ留学。現地での“プラダを着た悪魔”生活を経て、INFASパブリケーションズに入社。年2回のミラノとパリのメンズ・コレクション取材は10年以上続けている。

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