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2017.10.10

ファッションデザイナーの新しい形とは?

ファッションデザイナーと呼ばれる仕事が、いま多様化している。そんなファッションデザイナーの仕事の現状を、今世界でも注目を集めるホワイトマウンテニアリングのデザイナーである相澤陽介へのインタビューと、さまざまなブランドのプロジェクトで考察してみた。

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写真/プロフィール・福本和洋(MAETTICO)
文/東山 始
ファッションブランドとデザイナーの関係は時代とともに変化している。一般的にファッションデザイナーといえば、ブランドとデザイナーの名が一致する、ジョルジオ・アルマーニやラルフ・ローレン、ヴィヴィアン・ウエストウッドなど、現在も活躍するスターデザイナーが好例と言える。
左●ジョルジオ・アルマーニ 2015ミラノファッションウィークにて 右●ラルフ・ローレン 2016ニューヨークファッションウィークにて
スターデザイナーたちはセカンドライン、デニムラインなどレーベルを拡充し、世界中で大規模に展開することでブランドを作り上げてきた。彼らが作り上げるようなブランドはまさに帝国ともいうべきもの。これには莫大な資本力が必要で、小規模の若手デザイナーのビジネスとは明らかに異なるものだ。

デザイナーはブランドの活性剤

一方、老舗メゾンでは大物から中堅実力派、斬新な若手など、個々にデザイナーと契約を行い、時にはブランドそのものの方向性までを決定させる、クリエイティブディレクターを任せることもしばしば見受けられる。

むしろこの20年ほどの間にスターデザイナーとして台頭してきたのは外部から招聘された、そんなデザイナーやクリエイティブディレクターたちだ。いまやスポーツブランドなどにおいてもスター性のあるデザイナー起用の傾向がみられる。
 
若手デザイナーの起用の一番の目的は“ブランドの活性化”にある。が、時代の変化とともにファッションデザイナーの役割は細分化し、これまでにない視点も求められていると聞く。では、いまブランドはデザイナーに何を求め、何を期待しているのか。デザイナーとブランドの今後はどうなっていくのだろう。

相澤陽介は、2006年に自身のブランド「ホワイトマウンテニアリング」(以下WM)をスタート。アウトドアを切り口に、実用性、機能性、デザインを備えた提案は評価が高く、さまざまな著名ブランドから、デザイナーとしてオファーが殺到する人物だ。

自分のブランドを展開しながら、他社のブランドにいくつも携わる彼のスタイルは、まさに現代的なデザイナーのあり方といっていい。
ホワイトマウンテニアリング 2017AWコレクション
相澤の仕事のスタイルは大きく3つに分けられる。まず一つ目は自身のブランドWMの運営だ。コンセプト、プロダクトデザイン、イメージコントロール、生産、販売まですべてに気を配り、綜合的なディレクションを行なっている。
 
2つ目は他社のプロダクトデザイン。他社ブランドとコラボレートによるレーベルのプロダクトを、他社とともに開発するのだ。無論、これは他社の要求にも耳を傾けながらの共同作業になる。彼の仕事でいえば、モンクレール W(現在は展開終了)、バートン サーティーン、アディダス オリジナルス バイ ホワイトマウンテニアリング、バブアーとのコラボレーションなどがこれにあたる。

3つ目がブランドのコンセプトワーク。相澤はハンティング・ワールドのクリエイティブディレクターに任命されており、2018年春夏コレクションではランウェイショーを発表した。ハンティング・ワールドとの仕事が、まさにこのケース。

彼によれば
「良いプロダクトを作るという事だけでなく、ブランドの将来的な方向性やお客様にどのように届けるのかなどデザイン以外の部分まで多岐にわたる監修を求められている」とのこと。
ハンティング・ワールド 2018SSコレクション

ファッションデザインは何を核にしてるのか?

いろいろなブランドと関わっていると、アイデアが混乱しそうに思える。相澤はどのように、頭を切り替えて複数のブランドに関わっているのか。
 
「すべてWMを基準として考えています。自分にとっての武器とでもいいましょうか、仕事をする基準は今までの経験を元にオファーを頂いているのかが重要です。いろいろなことをやっていると思われがちですが、実はジャンルが違うことはしていません。WMの核になっているのは2つ。アウトドアの歴史を紐解くことと、フューチャリスティック(未来的)な機能をファッションに付随させていくこと。WMは、この両軸を核にしているので、どちらかの琴線に触れるオファーしか引き受けていません」

彼自身は1960~70年代のヘビーデューティーなアウトドアウェアが好きだという。一例だが、2014-15春夏コレクションから始まったバブアーとのコラボでは、ブランドの本来の持ち味を現代風にアレンジしているそうだ。

また、スノーボードに打ち込んでいることもあって、バートンからの依頼はスムーズに引き受けることが出来たとも語る。

「自分自身の趣味が核になっているので、かっちりとしたスーツを作ることはないし、“ロック”をテーマにしたブランドに関わることもほぼないでしょう。いまはWMにリンクして、ブランドに歴史とアーカイブと強い信念があるものと取り組ませてもらっています」

ブランドと組むことで新しいチャレンジが可能になる

では、どのような場合に、ブランドはデザイナーを起用するのだろうか。無論、一番の目的はビジネス拡大にほかならない。その前提のもと、両社の考えに共通する点があり、親和性、新たな発展性が見込める場合であろう。ブランドの成否において、デザイナーと企業の力関係について、相澤は「6:4で企業のアイデアが成功している」と回答する。
 
例に上ったのはステラ・マッカートニーだ。彼女はアディダス バイ ステラ マッカートニーを長年デザインし、2012年のロンドン五輪、2016年のリオ五輪で、英国チームの公式ユニフォームを任されるまでになっている。2016年11月には初のメンズコレクションも発表するなど、いま注目度も非常に高い。
アディダス バイ ステラ マッカートニー ロンドンオリンピック、英国選手団公式ユニフォーム発表会場にて。
「アディダスから得たスポーツの機能性を自身のコレクションにも反映しているように見えるし、オリンピックではファッションデザイナーという枠を飛び越えて、イギリスという国の方向性というかアイデンティティまで表現する事に成功していたように見えます。こうした関係は何より企業のサポートがないとうまくいきません。デザイナーにすごい才能があっても力量が発揮されませんから。企業の考え方が優れていて、そこにデザイナーの考え方がフィットして優れた商品ができあがるのは当然です」
 
相澤によれば、アディダスは山本耀司やステラ・マッカートニーなどをはじめ、最初から継続的に定着できるレーベルの開発を目指しており、その姿勢に共感できるという。
 
「デザイナーという職業は、ひとくくりにされますが、そのデザイナーは何に秀でているのか明確に答えを出している人は多くはないように思います。自分自身、素材やスポーツ、アウトドアウェアに対しての理解度や考えをずっと表現してきたので、おそらく依頼する側もその分野を期待してもらっていると思っています。当たり前のようでいて、実はこれがデザイナーにとってすごく大事な部分で、各自のテイストがブランドにフィットすると、ブランド側も時流を読みながら、デザイナーにブランドの今後を託していけますから」

デジタル時代の“デザイナー”

デザイナーではないものの、外部とのコラボレーションの例には別のケースが考えられる。それは即効性のある話題づくり。

今年9月にリーボックがシンガーソングライターのアリアナ・グランデをブランドアンバサダーに任命したほか、プーマもシンガーソングライター兼モデルのリアーナとのコラボレートコレクションを展開中。カニエ・ウエストは以前にナイキと契約していたほか、現在はアディダス オリジナルスとのコラボレートを行なっている。
左●Kanye West for Adidas 2015-16秋冬ニューヨークコレクションより 右●Fenty Puma by Rihanna 2018春夏ニューヨークコレクションより
相澤はこうしたケースについて

「お互いが情報発信のツールとして相乗効果を生んでいる気がします」

と話す。アリアナ・グランデのインスタグラムのフォロワー数は1億1400万人。SNSでとてつもないフォロワーを抱える彼らの情報発信力を武器に、瞬発的な売れ行きやイメージアップをブランドが期待するのも当然だろう。

現代のデザイナーに求められる条件

ファッションデザイナーと聞くと、頑なに自分の理想を突き進む芸術家のようなイメージをもつ人も多いのではないだろうか。ところが、現代のデザイナーは他社と仕事をするうえで、柔軟性を求められているように思える。
 
相澤からもアディダスとの仕事についてこんなコメントが。

「要求を100%反映するわけではありませんが、納得できた場合には与えられた状況下で最大限の力を発揮したい」、「彼らの開発している技術などに、僕たちが寄り添っていくこともすごく大切だと思います」
 
また、今後のファッションデザイナーに求められる仕事については次のように答えている。
 
 「あくまでも僕の考えですが、これからの時代、良いプロダクトを作れるという考え方だけでは埋もれていってしまうと思っています。そうならない為に、なぜ新しい試みをするのかというコンセプトワークを提案できる事が一番重要でしょう。ある程度納得ができるコンセプトの元、デザインをしていかないと価値のあるものを提案する事はできません」
 
プロダクト開発やブランディング以外にも、現場ではデザイナーの仕事が増えている。その理由の一つがスマホをはじめとするデジタルツールによる情報伝達方法とスピード化の発達。その影響はさまざまな場面にすでに表れている。

デジタル映えを要求する消費者に応えるプロダクト開発はもちろん、デザイナー自らがSNSを通じて情報発信することも珍しくなくなった。マイケル・コースは、自分自身が頻繁にインスタグラムに登場し、ルイ・ヴィトンを手掛けるキム・ジョーンズは自分のプロダクトを携えて旅をする様子を自分の日常の一部としてアップしている。クリエイションに没頭していたいデザイナーもいるだろうが、いまやSNSを拒否ばかりしていられない時代というのが実情である。

今後のブランドとデザイナーの関係は?

これまでに述べたようにデザイナーとブランドの関わり方は千差万別だ。が、他社と関わることでデザイナー自身が刺激を受けたり、自分のコレクションに知識や経験、テクノロジーなどをフィードバックできることに意味がある。これを次のステップへのエネルギーに変えられるデザイナーが、新時代のスタイルと言えるのではないだろうか。(文中敬称略)

相澤陽介

1977年生まれ。多摩美術大学染織科を卒業後、2006年にホワイトマウンテニアリングをスタート。これまでにモンクレールW、バートン サーティーン、アディダス オリジナルス バイ ホワイトマウンテニアリングなど様々なブランドのデザインを手がける。2018SSシーズンからは、ハンティング ワールドのクリエイティブディレクターに就任。その他、金沢美術工芸大学の非常勤講師も勤める。

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