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2025.10.15

誰がために走るのか!? FIA世界耐久選手権100戦目となる「富士6時間耐久レース」

9月26〜28日、静岡県の富士スピードウェイでFIA世界耐久選手権の第7戦『富士6時間耐久レース』が行われた。3日間を通して過去最多となる6万6400人の観客が来場した。その人気の秘密はいったいなんなのか? 現場からリポートする。

BY :

文/藤野太一(自動車ジャーナリスト)
CREDIT :

写真協力/FIA WEC、DPPI、トヨタ自動車、Stellantis ジャパン 編集/森本 泉(Web LEON)

世界の8メーカーが参戦、耐久レースナンバー1決定戦

富士6時間耐久レース
WECとは、「FIA World Endurance Championship」の略称。フォーミュラカーレースのナンバーワンがF1、ラリーカーのナンバーワンがWRC、そして耐久レースのナンバーワン決定戦がこのWECだ。レースを主催するのは、フランス西部自動車クラブ(ACO)で、シリーズは年間8戦で行われ、その第4戦にあたるのがフランスで行われる「ルマン24時間」。観客動員数は30万人を超える世界でもっとも集客力のあるレースのひとつであり、WECに参戦しているチームのほとんどがここで勝利することを最大の目標としている。

レースは純レーシングカーの「ハイパーカー」と、市販車をベースとした「GTカー」の2クラスが混走する形式で行われる。上位カテゴリーのハイパーカーにとっては、いかにロスなくGTカーをパスしていくか、下位カテゴリーのGTカーにとってはどのタイミングでハイパーカーに抜かせるか、その駆け引きも重要な鍵となる。
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GTカークラスのスタートシーン。トップを走るのがマクラーレン720S LM GT3エボ。
▲ GTカークラスのスタートシーン。トップを走るのがマクラーレン720S LM GT3エボ。
近年、このレースが盛り上がっている理由のひとつに参戦メーカーの増加がある。今シーズンのハイパーカークラスにはトヨタをはじめ、ポルシェ、フェラーリ、BMW、キャデラック、プジョー、アルピーヌ、アストン・マーティンの8メーカー、18台の車両が、またGTカークラスにはレクサスをはじめ、メルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ、フェラーリ、フォード、シボレー、アストン・マーティン、マクラーレンと9メーカー、18台がエントリーしている。
TOYOTA GAZOO Racingのハイパーカー、トヨタGR010ハイブリッドと、レクサスのGTカー、レクサスRC F LMGT3。
▲ TOYOTA GAZOO Racingのハイパーカー、トヨタGR010ハイブリッドと、レクサスのGTカー、レクサスRC F LMGT3。
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元F1ワールドチャンピオンであり、日本でもスーパーGTでタイトルを獲得し絶大な人気を誇るジェンソン・バトン選手。今シーズンでWECからの卒業を表明している。
▲ 元F1ワールドチャンピオンであり、日本でもスーパーGTでタイトルを獲得し絶大な人気を誇るジェンソン・バトン選手。今シーズンでWECからの卒業を表明している。
もうひとつの人気の理由に人気ドライバーが多く参戦していることが挙げられる。トヨタの小林可夢偉選手をはじめ、ケビン・マグヌッセン、ミック・シューマッハ、ストフェル・バンドーン、ロバート・クビサそしてジェンソン・バトンなどなど元F1ドライバーがずらりと顔を並べる。

さらに昨年から二輪の世界選手権MotoGPで9度のタイトルを獲得した伝説のライダー、ヴァレンティーノ・ロッシが自らのチームで、ステアリングを握り、GTカークラスに参戦をはじめたことから人気に拍車がかかった。今回もたくさんのロッシファンが富士スピードウェイに訪れていた。
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MotoGPの伝説のワールドチャンピオン、ヴァレンティーノ・ロッシ選手がドライブするのは、BMW M4 LMGT3。
▲ MotoGPの伝説のワールドチャンピオン、ヴァレンティーノ・ロッシ選手がドライブするのは、BMW M4 LMGT3。

レースとはマーケティングであり、サーキットは実験場である

そもそも自動車メーカーは何のためにレースをするのか。これまでさまざまなブランドの担当者にこの質問を投げかけてきたが、おおむね以下のような回答に集約される。
WEC富士のタイミングにあわせて、プジョーのCEO・アラン・ファヴェ氏が来日。プジョーの新型EV「E-208 GTi」を日本初公開。205GTiの血統を受け継ぐ、純粋なドライビングプレジャーを提供するモデルだと語った。
▲ WEC富士のタイミングにあわせて、プジョーのCEO・アラン・ファヴェ氏が来日。プジョーの新型EV「E-208 GTi」を日本初公開。205GTiの血統を受け継ぐ、純粋なドライビングプレジャーを提供するモデルだと語った。
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マーケティングと広告効果

グローバルなマーケティング活動の一環として。レースでの勝利はメーカーの技術力や信頼性の高さを示し、認知向上につながる。またブランド力の向上、ファン層の拡大といった効果が見込める。

技術開発と実験場としての役割

先進技術を極限の環境であるレースの現場で試し、のちの量産車開発に活かす。これは自動車メーカーのみならず、タイヤメーカー(ハイパーカーはミシュラン、GTカーはグッドイヤーのワンメイクとなっている)にとっても同様。

人材育成

チーム運営をとおしてマネジメントやエンジニア、ドライバーなどの人材育成を行う。レーシングチームと市販車開発チームの人材交流を行うなどして、将来の開発につなげていく。
セーフティカーも重要なマーケティングツールのひとつ。近年のWECではポルシェ911がその役を担っており、今大会では100回記念カラーリングをまとっていた。
▲ セーフティカーも重要なマーケティングツールのひとつ。近年のWECではポルシェ911がその役を担っており、今大会では100回記念カラーリングをまとっていた。
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なかでもフェラーリは特別な存在だ。テレビCMのようなマス広告を使っての宣伝活動を行わないことで有名で、F1をはじめとするレース活動こそが最大の宣伝活動であるとしている。そうした企業としての伝統や精神性にまたファンも共感を覚えるというわけだ。
ランドセルまで・・・老若男女に愛されるブランドの代表格がフェラーリ。レース活動こそが最大の宣伝活動であるという。
▲ ランドセルまで……老若男女に愛されるブランドの代表格がフェラーリ。レース活動こそが最大の宣伝活動であるという。

WRCに続いてWECにも参戦。ヒョンデの台頭

レースの予選はハイパーカークラスでは、キャデラックが1−2、アストン・マーティンが3番手に。GTクラスではマクラーレンが1―2、アストン・マーティンが3番手につけた。決勝レースではスタート直後から激しいバトルが繰り広げられ、接触も相つぐなど目まぐるしく順位が入れ替わる展開に。ハイパーカークラスでは、アルピーヌが初優勝、プジョーが2位とフランス勢のワンツーに。WECの100回記念レースにふさわしい結果となった。
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初優勝を遂げたアルピーヌ。WECはそもそもフランス主催のシリーズ戦だけに喜びもひと しお。
▲ 初優勝を遂げたアルピーヌ。WECはそもそもフランス主催のシリーズ戦だけに喜びもひとしお。
かつては耐久の王者と呼ばれたプジョーも、WECに復帰して以来の最高位2位に。 GTカークラスでは、シボレー・コルベットが優勝、フェラーリが2位、BMWが3位に。ヴァレンティーノ・ロッシ率いるチームは4位と惜しくも表彰台を逃した。
▲ かつては耐久の王者と呼ばれたプジョーも、WECに復帰して以来の最高位2位に。GTカークラスでは、シボレー・コルベットが優勝、フェラーリが2位、BMWが3位に。ヴァレンティーノ・ロッシ率いるチームは4位と惜しくも表彰台を逃した。
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GTカークラスの優勝車は黄色のシボレーコルベットZ06 LMGT3.R。
▲ GTカークラスの優勝車は黄色のシボレーコルベットZ06 LMGT3.R。
次戦は11月6~8日、中東のバーレーンにて2025年シーズンの最終戦となる「バーレーン8時間レース」が行われる。そして、来年にはヒョンデが、自社の高級車ブランド“ジェネシス”としてハイパーカークラスに参戦予定。WRCに続いて世界戦への挑戦となる。2027年にはマクラーレンとフォードもハイパーカークラスへの参戦を表明しており、WECはますます盛り上がりをみせそうだ。
藤野太一(自動車ジャーナリスト)
大学卒業後、自動車情報誌「カーセンサー」、「カーセンサーエッジ」の編集デスクを経てフリーの編集者兼ライターに。最新の電気自動車からクラシックカーまで幅広い解説をはじめ、自動車関連のビジネスマンを取材する機会も多くビジネス誌やライフスタイル誌にも寄稿する。またマーケティングの観点からレース取材なども積極的に行う。JMS(日本モータースポーツ記者会)所属。写真/安井宏充

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