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2019.09.25

腕時計のアノ常識は、いまや非常識だった!?

腕時計の技術が進歩して、その楽しみ方もより多彩になったいま、腕時計の常識も着々と変化しつつあります。あなたの知っている常識は時代遅れになってはいませんか?

CREDIT :

文/篠田哲生(時計ライター) イラスト/林田秀一

腕時計はデザインもスペックもさまざまで、価格だって数千円からいまや億越えのものまで本当にバラエティ豊かだ。本来「時を知る」という目的のためのツールでありながら、これだけ選択肢があるから迷ってしまうのは仕方のないこと。そのうえ、扱い方・選び方・買い方などさまざまな観点で「これ、常識でしょ」があるからさらにややこしい。

でもちょっと待っていただきたい。あなたの知っている常識は、もう時代遅れかもしれない。

── というのも、腕時計の技術は革新され、かつ楽しみ方も以前より多彩になっているから。そんな潮流があるいまこそ、新しい常識を知っておくことがこれからの時計選びを左右するポイントとなるのだ。
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● 新常識 01 

水よりも、とにかく磁石に注意せよ!

かつて修理に持ち込まれる時計の大半は、内部に水が浸入していたという。その原因はさまざまで、リュウズの締め忘れや防水スペック以上の扱いをする“うっかり系”だけでなく、防水パッキンの劣化の場合も。また、アンティークウォッチはそもそも非防水のものだって多い。しかしメーカー側はパッキンの性能やケース・リュウズの構造を進化させることで、防水の基礎性能を格段に向上させた。その結果、防水トラブルはみるみる減少中だ。

しかしその代わりに増えているのが、「磁気帯びトラブル」である。スチール系のパーツが多い機械式ムーブメントは、強い磁気を受けると磁化して精度を劣化させてしまうのだ。磁気を発するものとしてパソコンなどの電子機器をイメージする人が多いだろうが、本当に危険なのは、スマホカバーやバッグの留め金。ここには驚くほど強い磁石が使われており、一発アウトの危険さえあるのだ。少しずつ耐磁モデルも増えているが、「とにかく磁石には気を付けろ!」。それが新しい常識となっている。
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● 新常識 02 

クオーツだって凄い!

一般的にクオーツ式ムーブメントは、機械式ムーブメントよりも格が劣るとされてきた。確かに機械式ムーブメントの方が歴史は長いし、製造工程に必ず人手が必要なのでコストもかかる。それゆえ高価になるのだ。

一方クオーツ式ムーブメントは、誕生した1969年当時は機械式ムーブメントを凌駕するほど高価だったが、オートメーションによる製造技術が極限まで高度化した結果、コストが下がり数千円レベルまで価格が低下した。それゆえクオーツウォッチが下に見られてしまうのは否めない。

だがここ数年、日本だけでなくロンジンなどのスイスブランドからも、ハイエンドなクオーツウォッチが増え始めている。そもそもクオーツ式には圧倒的高精度という揺るぎない価値があり、しかも数年単位で止まらずに駆動し続ける。つまり実用性は機械式よりも上なのだ。しかも価格は控えめながら、外装デザインは機械式と同レベル。それゆえ賢い時計愛好家の中には、あえて「実用時計はハイエンドなクオーツウォッチを選ぶ」という人もいるとか。一流ブランドを選べば、もちろんメンテナンス体制は万全であり、長く使っても問題はないだろう。

● 常識 03 

メンテナンスの煩しさから解放される!?

機械式時計は金属パーツがたくさん使われているので、摩擦を軽減させるために潤滑油をさしている。しかし潤滑油は徐々に劣化していくため、定期的にメンテナンスに出す必要がある。不具合を起こしたとしても、ムーブメントをすべてばらして洗浄し、組み立て再度注油をすれば、時計は快調に動き始めるだろう。しかしこの作業は時計メーカーにとっては大きな負担でもある。戻ってきた時計に対しては、ユーザーが気づいていない問題点がないかをチェックしなければいけないし、再組立ても簡単ではない。

そのためメーカーでは、メンテナンス時期の長期化を目指している。オメガは摩擦の少ない機構を考案してメンテナンス期間を4年に延ばし、パネライは完全無注油のムーブメントの開発によって50年間メンテナンス不要の時計を作りだした。ユーザーにとってもメンテナンス回数が少ない方が、費用も軽減されるのだからメリットは大きい。「メンテナンス期間の長期化」が、今後の常識となるだろう。
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● 新常識 04 

ドレスウォッチだけじゃない! オンこそ時計で自己主張

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ビジネススタイルといえば、まずはスーツ。スーツはサイジングが命なのだから、合わせる時計はシャツの袖口に干渉しないサイズが重要であり、大きすぎるクロノグラフやブ厚いダイバーズは不向きとされてきた。しかし昨今はクールビスやジャケパンなど、ビジネススタイルの振り幅が大きくなっているので、必ずしも端正なドレッシーウォッチが正解とは言えなくなりつつある。

むしろ初対面の相手への自己アピールのために趣味性の高いモデルを選んだり、色で遊んだりするのも効果的だ。さらに時計上級者ともなると、時計のサイズに合わせてシャツをオーダーするツワモノもいる。こうなると大き目のクロノグラフであっても腕元はスマートにまとまる。ジャストサイズの綺麗なスーツの着こなしでありながら自己主張も完璧となれば、ドレスウォッチよりも効果があるかもしれない。いまや「オンこそ時計で自己アピールする」というのが、大正解なのである。

● 新常識 05

メタルブレスから、着脱ラクチンなレザーストラップへ

そもそも時計は冷涼なヨーロッパで発達したものなので、レザーストラップ仕様こそが本流である。しかし日本の場合は、高温多湿の夏を中心に考えてメタルブレスレットを選ぶのが普通の考え方とされていた。たしかにレザーストラップは水や汗に弱くて夏は不向き。その点メタルブレスレットなら水洗いもできるし、サッと拭くだけでメンテナンスも楽。冬はちょっとひんやりするが、一年通してオンもオフも使えるという点ではとにかく便利だ。

しかしレザーストラップであっても「オーダーストラップ」なら通年で楽しめる。メタルブレスと違って着脱が簡単なので、夏は裏にラバーを張って耐汗効果を高めたもので乗り切れるし、春はホワイトで爽やかに、秋はグレーでシックにといった具合でシーズンごとの使い分けだって可能。つまり「オーダーストラップで遊ぶ」ほうが、実はメタルブレスレットよりも多様に楽しめるのだ。
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● 新常識 06 

男性モデルは小型化、女性モデルは大型化

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平均的な体格に明確な差があるのだから、男性用と女性用の時計は、大きさが異なるのは当たり前。さらには時計に求める要素も、男性であれば機能性やストーリー的価値を好む一方で、女性であればアクセサリー的な価値を重視するのでデザインも異なる。それが常識だった。

しかし昨今は、小振りでエレガントなデザインの時計を好む男性が増えており、“大きめのレディスウォッチ”として発売されたモデルを男性たちが狙うようになっている。その一方で時計メーカーは、小型の機械式ムーブメント開発に力を入れており、本格的な機械式女性モデルもかなり増えている。つまり両者の好みが徐々に接近しているのだ。

その結果、遂には「シェアウォッチ」という文化も生まれた。これはパートナー同士で時計をシェアするというスタイルであり、ジャガー・ルクルトやIWCのような知的なデザインの時計が好まれるようだ。今や時計は、ジェンダーで選ぶ時代ではないのである。

● 新常識 07 

男性だってダイヤ時計を

性差を超えた時計の選び方として、もうひとつ注目されているのがジュエリーウォッチ。今も昔もほとんどが女性用の時計として生み出されているが、宝石の王様であるダイヤモンドだけは話が別。そもそも地球上で最も硬くて傷つけることができないダイヤモンドには、霊的な力があるとされ男性の権力者に好まれてきた。それゆえ、男性も積極的にダイヤモンドウォッチに挑戦し始めているのだ。

特に堅調なのが“キング・オブ・ダイヤモンド”ことハリー・ウィンストンで、普通の金無垢ケースよりも圧倒的にダイヤモンドケースのモデルの方が、男性人気が高いそうだ。ちなみにどのブランドの場合も、使用されるダイヤモンドはバゲットカットが好まれている。ダイヤモンドを一粒使いをしているモデルだとより手を出しやすいので、初めての一本に選んでみてはいかがだろうか。
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● 新常識 08 

一生モノの一本!から複数所有が当たり前に

かつての時計特集では“一生モノを手に入れる”というタイトルがよく使われていたが、最近はとんと見かけなくなった。というのも、高級時計ユーザーの多くが“リピーター”、つまりは複数所有者となっているからだ。かつての高級時計は実用的なステイタスアイテムだったので、一本持っていれば十分だった。

しかし今はむしろアクセサリー的な価値を重視されるので、TPOに合わない時計をつけていることは、時計の価格やブランドバリューに関係なく恥ずかしいことなのだ。そのため多様化するライフスタイルに応じて時計を買い求めるようになり、その結果“一生モノ”という考え方は、もはや機能しなくなった。むしろ一般的には、スーツ用、カジュアル用、休日用の3パターンは用意すべきで、それと同時に高級時計が正義なのではなく、使い方のセンスが問われる時代となったのだ。

● 新常識 09 

「いつかはパテック」から「いきなりパテック」

「いつかはクラウン」という名コピーが存在したように、時計愛好家から「いつかはパテック」と羨望のまなざしで見つめられていたのが、最高峰ブランドであるパテック フィリップ。実際にはクラウンではなくロールス・ロイス級ではあるが、いつかそこに到達したいと願いながら、中堅ブランドや良作マニュファクチュールを手に入れ(そして手放し)、そして十分に経験を積んだ証として、最後の一本にパテック フィリップを選ぶというのが、愛好家のなかでお決まりのステップアップだった。

ところが最近は、いきなりパテック フィリップを購入する剛の者が増えているらしい。これはパテック フィリップの敷居が下がったのではなく、時計に対する考え方が変化したから。素晴らしいモノに早めに触れることで感性を磨き、より良い審美眼を得ようと考える人が増えているのだ。もちろん良いものは長く使えるので、結果として費用対効果も優れている。そういった合理的な考え方も手伝って、現在パテック フィリップは若者からも支持を得ている。
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● 新常識 10 

購入は、お店で悩んで……ではなくネットでポチッと

時計を購入する際は、ブティックであれ、正規時計店であれ、好みの時計に出合うために何度も足を運ぶのがセオリー。何本か選んで時計を試着し、いったん家に帰ってじっくり悩み、また店頭に出向いて試着し、あれこれと逡巡した末に時計を選ぶからこそ、その経験自体が得難い思い出になるのだ。

ところが先日銀座にオープンした「タグ・ホイヤー 銀座 ブティック」は、「モジュラー」という最先端のコンセプトを取り入れており、店頭にあるタブレットで時計を選択すると回転式のディスプレイ台が回わって、時計が現れる仕組みになっている。

しかもその時計を外して試着するのではなく、自分のスマートフォンにデータを転送して持ち帰り、家で悩み、そのままオンラインで購入できるという仕組みだ。これはデジタルネイティブであるミレニアル世代に向けて、“新しい経験”を提供する場所として考案されたもの。時計購入にまつわる常識さえも、少しずつ変化し始めているのだ。

● 篠田哲生(時計ライター)

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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