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2018.06.25

ところで、高級時計の定義はご存知ですか?

よく耳にする“高級時計”というワード、どういう意味かご存知ですか。「プライスの0の数がいくつから?」「どんなデザインと素材で……」いえいえ、そういう訳ではないんです。

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文/鈴木裕之(時計ライター) イラスト/林田秀一

高価な時計= 高級時計 なの?

日本では機械式時計をはじめとする“本格派の時計”を指して、高級時計と呼ぶのが一般的だ。じゃあ、高級時計ってなに? と聞かれても、答えに詰まる人が大半だろう。そもそも高級時計ってコトバ自体が曖昧だし、もちろん定義もない。

そのくせ時計の専門用語は難解で、一般的には意味不明なモノばかりだから、ちょっと検索したくらいでは、よく分からない。でも時計専門誌とやらは、“もちろん分かってるよね”を前提にして書くから、おいてけぼりも大多数のはずだ。ということで「何を買ったらよいか分からない」という時計ビギナーさんが大量生産されることになる。

だけど、知りたいことの本質なんて決まっている。ロレックスってカッコ良いけど、それホントに買っても大丈夫? カルティエってデザインは素敵だけど、詳しい人から見たらどう思われるんだろう? オメガってなんか凄そうだけど、ホントに凄いの? そもそもそれって、高級時計なの? まぁ、こんなところだろう。

海外には“高級時計”というワードはない!? 

まず高級時計というコトバは、おそらく仏語の「オートオルロジュリー」からの直訳だ。オートは「高価な」「高級な」という意味の形容詞「オー」の女性形。オルロジュリーはそのまま「時計」でよいから、決して間違っているわけではない。しかしオートオルロジュリーに対する英訳は「ハイオロロジー」や「ハイウォッチメイキング」であり、英語圏では「高度な時計学」や「高度な時計製造術」といった意味になる。

もちろんこちらのほうが、本来の意味に近い気がする。ところが日本語で“高級時計”って言ってしまうと、その裏側には“高級じゃない時計”の存在をどうしても想像してしまうし、選んだ時計がそっちだったらどうしようって思うのも当たり前。もしも区別がつかなかったら、もうプライスタグのゼロの数くらいしか判断材料がなくなってしまう。

だから日本語の“高級時計”は、いつまでたっても“高価な時計”の意味しかもてなくて、実際に買う方は“ホントに大丈夫?”っていつもビクビクしてなきゃならないのだ。
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いまの高級時計とは、実用時計 or 趣味の時計

では「高度な時計製造術」が意味するほうの高級時計を、いま別のコトバで言い換えたら何になるだろう? おそらく、“実用時計”が一番ピッタリくる気がする。現代における実用時計の代表格と言えば、ロレックスやオメガ、日本ならグランドセイコーだ。

実用時計の条件をリストアップすれば、まずは高精度。さらに何も気にせず使い倒せるだけの耐衝撃性(これはぶつけても大丈夫って意味ではない)。さらに電化製品で溢れている現代だからこその耐磁性と、3日間くらいのパワーリザーブ。そして、ある程度の大量生産が見込めることだ。

上記の条件で選んでゆくと、やっぱりロレックスやオメガが筆頭に挙がってくる。ロレックスは「32系」という新ムーブメントに変わってから、パワーリザーブが約70時間に伸びたし、非磁性パーツもふんだんに使っている。オメガは「マスター クロノメーター」という高耐磁を前提とした精度基準を独自に設けていて、さらにお値段のほうもお手頃。これはビッグブランドなればこその量産効果の賜物だ。決して品質が悪いわけではなく、むしろ良すぎるくらいなのである。

小さなブランドがいくら頑張ったって、こうしたコストパフォーマンスの高さは絶対に超えられない。だから、現代的に進化した高級時計の最先端は、実際のところ大手の実用時計に落ち着くわけで、特に今年はこうした実用時計のヴィンテージイヤーだ。

"0の数"は人の作業量に関係する……?

では、こうした“実用時計”の存在を踏まえたうえで、もういちど“高級時計”を再定義してみるとどうなるだろう? おそらくそれは、“趣味の時計”ということになるだろう。もっと言い換えれば“伝統工芸品”だ。

趣味で持つのだから、他とは違っていて欲しいし、ならばたくさん作られていては面白くない。それには大量生産できない理由が必要になるわけで、ひとりの職人がこれでもかと歯車を磨き倒すとか、ひとりで全部組み立てるとか、最終的には“人の手がどれだけかかっているか”がポイントになってくる。労働力にはもちろん対価が必要だから、数が作れなくて人の手がかかっていると、当然のようにプライスが跳ね上がる。

そこに悦びを見出して、実際に高いお金を払えるかどうかが、“ちょっとイイ時計が欲しい一般人”か、“ズブズブの時計趣味人”かの分水嶺だ。もちろん後者は、他人(特に女子)には分かってもらえないから、そっち方面を目指すなら、ひたすら自己満足に徹し切るメンタルの強さも必要だ。当然、“コレ買って大丈夫?”なんて、疑問に思ってもいけない(笑)。
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もうひとつ。現代の高級時計が“伝統工芸品”ならば、そのスタイリングがクラシック寄りになってくるのも当たり前。例えばブレゲの「クラシック」やパテック フィリップの「カラトラバ」、ピアジェの「アルティプラノ」などが筆頭だろう。さらにパテックやブレゲともなれば、名前の破壊力は実用時計のビッグブランドよりも数ランク格が上だ。

これらのスモールセコンドや、ドレスウォッチお決まりの秒針ナシ・ノンデイトモデルは、確かに“実用的”ではないかもしれない。しかしスリムでドレッシーなケースは魅力的だし、ちょっとフォーマルにドレスアップしたい時には、2針は欠かせない存在だ。1本目には選びにくいとしても、2本目や3本目にはやっぱり欲しくなるもの。ファッションも結局は趣味なのだから、それに合わせて選ぶ時計はやっぱり“趣味の時計”で間違いない。ただしドレスウォッチのケースは最低でもゴールドがデフォルトだから、お値段のほうもゼロひとつくらい多いことは覚悟しておいていただきたいが ……。

ほかにも、パテック フィリップやオーデマ ピゲには、機能的には“実用時計”に括ってもよいような、“ラグジュアリースポーツ”なるジャンルがあるけれど、そもそも実用時計ほどは大量生産していない。入手難易度を比べたらやはり別格だろう。

結論を言えば、1本目を無難に探すなら、“実用時計”から選べば間違いない。現代ならどれでも性能は抜群だし、滅多なことでは壊れない(ここ重要。機械式時計は修理が一番高いのだ!)。それでもし物足りなくなったら、今度は“趣味の時計”を探せばいい。趣味なのだから、チョイスは何でも良い。他人の目なんて決して気にしない。時計選びに正解はなし。つまり、何を選んでも正解ということだ。

■ 鈴木裕之(時計ライター)

1972年、東京都出身。時計バイヤーズガイド誌から『クロノス日本版』を経て、フリーに。工房取材をメインとしたスイス取材歴は15年ほど。共著に『リシャール・ミルが凄すぎる理由 62』(幻冬舎)がある。

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