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2018.06.28

日本の高級腕時計は世界のバトルに勝てるのか?

有名かつ長い歴史をもつヨーロッパの機械式時計ブランドに比べ、ニッポンの時計は劣っているのだろうか? 日欧の時計の技術対決、ここに開幕!

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文/篠田哲生(時計ライター) イラスト/キクカワアキト

日本の時計と世界の時計、どちらがすごい?

「高級時計」「本格時計」と聞くと、まず海外ブランドの名を思い浮かべる方が圧倒的に多いだろう。確かに、ヨーロッパには18世紀から始まり、現代に至るまで培われた腕時計作りの歴史がある。しかし、日本にはその歴史をもしのぐ最先端の技術があるのをご存知だろうか。今回は5つの観点から、海外と日本の時計の技術を比べてみたい。いわば「日欧時計対決」である!

● Round 01 『ムーブメント』

ハイブリッドなメカニズム
グランドセイコー「スプリングドライブ」

時計を動かす機構のほとんどは、動力ゼンマイを駆動源とし脱進機で針の速度をコントロールする「機械式ムーブメント」と、電気でモーターを動かし、水晶振動子で導き出した正確なタイミングでモーターを動かす「クオーツ式ムーブメント」のいずれかである。しかし日本には第三のムーブメントがある。
スプリングドライブ式ムーブメント「9R86」
それが、セイコーが1999年に発表した「スプリングドライブ式ムーブメント」だ。巻き上げた動力ゼンマイが歯車を回転させる際に発電し、その電力でIC(集積回路)を動かして正しいタイミングでブレーキをかけるという仕組み、いうなれば“機械式”と“クオーツ式”のハイブリッドだ。これによって機械式のアナログな味わいと、クオーツ式レベルの超高精度を一挙両得してしまった。
ケースとブレスレット両方にセラミックとブライトチタンを初採用したモデル。セラミックの耐擦傷性とチタンの軽量さを両得している。シースルーのケースバックからはムーブメントを確認できるのもこだわりだ。「スプリングドライブ クロノグラフ」自動巻き、セラミックス×Tiケース(46.4mm)・ブレスレット、10気圧防水。155万円/グランドセイコー(セイコーウオッチお客様相談室)
似たような技術をもつムーヴメントをスイスメーカーも作ってはいるのだが、こちらは数百万円もしくは限定品での使用に止まっている。一方セイコーは量産化しているのだから、この勝負は日本の勝ちと言えるだろう。その独自性は、世界が目を見張るレベルにある。
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● Round 02 『防水性能』

潜るだけではない実力
セイコー プロスペックス「1000m飽和潜水用防水」

ダイバーズウォッチの防水性能は、時計の能力を示す客観的な数値で、もちろん深く潜れるほど高評価となる。しかしその一方で防水能力をアピールするあまり、とんでもなく無骨な時計になりがち。やはり腕時計は手首の上に綺麗に収まるのが理想で正解だろうし、そのうえで高い防水性能を誇るという、バランスに優れていなければいけない。
防水の要「L字パッキン」
国産ダイバーズを牽引するセイコーでは、独自のL字パッキンを使うことで1000m防水を実現した。たかが1000mと侮るなかれ。ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)の基準を満たし、ダイバーズと銘打てるのは100m防水からと考えると、その潜水能力の高さがいかに高いものかわかっていただけるだろう。しかも、きわめて気密性に優れているため、飽和潜水というヘリウムガスを使った特殊な潜水方法でもケース内にガスが侵入しないのだ。
1978年に発売された世界初のクオーツ式600m飽和潜水用ダイバーズウオッチは、北極探検や有人潜水調査船での潜航(水深1062m)で採用され、無事帰還した歴史的なモデル。その40周年を讃えて作られたこちらは、オリジナルのディテールを可能な限り再現したうえで、スペックは大幅に向上させた夢の一本なのです。「1978 クオーツダイバーズ 復刻デザイン」自動巻き、セラミックス×Tiケース(49.4mm)、シリコンストラップ、1000m飽和潜水用防水。8月販売予定、世界限定1978本。24万円/セイコー(セイコーウオッチお客様相談室)
通常のハイスペックダイバーズには侵入したガスを抜くバルブを備えるが、それがないのは極めて異例。さりげなく高機能という奥ゆかしさがある。ということで、この勝負も日本の勝ちだろう。

● Round 03 『耐衝撃性能』

新たな概念を作ったタフ時計
カシオ「G-SHOCK」

1983年に誕生したG-SHOCKは、世界で初めての耐衝撃性能を軸とした時計だ。カシオはそれから35年かけて耐振動性能や耐遠心重力性能までも向上させた。その結果、本来衝撃を逃がしにくいメタルケースにもタフさを付与することに成功したのだ。
アーバンスポーツをテーマにした「ジー・スクワッド」の新作は、専用アプリやスマートフォンと連携させることで歩数測定や健康管理までも可能に。ヴィヴィッドな色彩はスポーツシーンにマッチするのはもちろんのこと、カジュアルスタイルの差し色にもなる。「ジー・スクワッド」クォーツ、樹脂ケース(54.1×48.6mm)・ストラップ、20気圧防水。1万6500円/カシオ(カシオお客様相談室)
しかし単に“超頑丈な時計”というだけで、これだけの地位を築いたのではない。G-SHOCKは時計を付けて外でアクティブに遊ぶという、新たな時計の楽しみ方を提案した。アクションスポーツや音楽フェス、アウトドアなどの屋外のユールカルチャーと連動したこと自体が新しかったのだ。

スイスにも当然頑強さに長けた時計はある。それらもさまざまなな耐久テストを通して圧倒的なスペックを実現してはいるが、“カルチャーとの融合”という点ではG-SHOCKには及ばない。なのでこの勝負も日本の勝ち。G-SHOCKはタフなだけでなく、人生を豊かにする時計なのだ。
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● Round 04 『薄型化』

アナログ式光発電ウオッチの世界最薄へ!
シチズン「エコ・ドライブ ワン」

時計技術の進化のベクトルはさまざまだが、そのひとつが薄さ競争。コンパクトなケースにたくさんのパーツを組み込むには、設計、パーツ加工、組み立てのすべてでハイレベルでなければいけないということだ。現在世界で最も薄いアナログ式光発電ウォッチは、シチズン「エコ・ドライブ ワン」である(2018年5月時点自社調べ)。
「エコ・ドライブ ワン」光発電エコ・ドライブ、SS(ベゼル:サーメット)ケース(39㎜)、ワニ革ストラップ。日常生活用防水。40万円/シチズン(シチズンお客様時計相談室)
光発電技術を使っておきながら、何とムーブメントの厚みは1㎜。これを実現するために全パーツを再設計し、ケース厚は2.98㎜(設計値)に収めている。ステンレスに表面硬化技術デュラテクトDLCを施した素材を採用しているので、薄いのに強度に優れている点も高評価だ。

しかし今年のS.I.H.H.では、スイス勢からも驚きの時計が誕生した。なんとケース厚は2㎜! 発電機能の有無があるとはいえ、これはアナログ時計としては、まさしく世界最薄だ。しかしながらこれはあくまでも“コンセプトウォッチ(商品化未定のモデル)”。市販化までの道のりはまだ遠いだろう。ということで、この対決は引き分けということにしておきたい。

● Round 05 『ケース構造』

ケース構造の概念を打ち破る
ミナセ「MORE構造」

時計ケースの構造で最も有名なのは、ロレックスの「オイスター」だろう。金属塊をくりぬいて水が浸入しないようにした頑強な時計ケースは、その後のケース設計に大きな影響を与え、時計ケースの構造はなるべくシンプルに徹するのがセオリーとなった。ところが日本の小規模ブランド「ミナセ」は考え方が違った。
「ファイブウィンドウズ」自動巻き、SSケース(38×46.5mm)・ブレスレット、5気圧防水。46万円/ミナセ(協和精工株式会社)
日本の伝統工芸である組木細工をヒントに考案された「MORE構造」は、多数のパーツを組み合わせて立体的なケースを作っている。全パーツに完璧な加工精度を求められるが、この構造のおかげでパーツの一部が傷ついたり破損したりした場合は、その部分だけを交換すればよい。つまり長く使うことを考えて生まれた構造なのだ。
「100年後も使える時計作り」を目標に、アフターメンテナンスの可能な時計をリリースする。分解できるブレスレットは経年によって遊びが大きくなりがちなので、他社は使いたがらない。しかし、ミナセは精密な加工・組み立て技術によって、程よい遊びと耐久性を兼備した分解可能ブレスレットを生み出した。
この大変珍しいケース作りの思想は、繊細かつ高度な技術があってこそ。となればこれは日本の勝ちだろう。その構造美を愉しみたいものだ。

以上の5項目の対決で、日本時計のスゴさを再確認していただけたのではないだろうか。歴史を補って余りある技術力の高さこそが日本時計の誇り。次の一本には日本の時計をぜひ候補に入れていただきたいものである。
※掲載商品はすべて税抜き価格です

■ お問い合わせ

カシオお客様相談室 03-5334-4869
協和精工株式会社 04-7142-7381
シチズンお客様時計相談室 0120-78-4807
セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012

● 篠田哲生(時計ライター)

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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