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2017.07.16

オーデマ ピゲの音色が最上級であるワケは!?【後半】

CREDIT :

写真/斎藤暁経 文/篠田哲生(時計ジャーナリスト)

創業当時から作り続けてきたミニッツリピーター機構を現代的な技術によって、更なる進化を遂げさせたのが、2015年にコンセプトモデルとして発表された“スーパーソヌリ”。そして翌年に「ロイヤル オーク コンセプト・スーパーソヌリ」として市販化され、2017年には「ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・スーパーソヌリ」が誕生した。

今回は“スーパーソヌリ”の実力を、グローバルブランド アンバサダーを務めるクローディオ・カヴァリエールと機構を担当したオーデマ ピゲ・ルノー エ パピのジュリオ・パピに語っていただこう。

※前回の「オーデマ ピゲの音色が最上級であるワケは!?【前半】」を見逃した方はコチラから。

脳で感じる美しい音を目指した

現代的なミニッツリピーターを作る上で、最も重視したのは“音色”だった。しかしこれはとても厄介である。そもそも超技術屋集団である「オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ」にとって、ミニッツリピーター機構自体を作るのはさほど困難ではない。それだけの経験があるからだ。しかし音色を追求することは困難を極めた。

「“スーパーソヌリ”の機構の仕組みや機構は、通常のミニッツリピーター機構とほとんど変わっていないので、製造自体のノウハウはあります。しかし音を追求することは難しい。それは耳という器官がとても繊細で優秀だからです。人間はリズムや音のちょっとしたズレも、きちんと聞き分けることができますし、耳では感知できない音さえも、脳の方で補完してしまう為、心地よい音色に調律するのがとても難しいのです」

とパピ氏。

しかも実用性を高めるために20m防水も兼ね備えることを目標とした。通常のミニッツリピーター機構は、時計内部から外へと音を出すために、非防水であることが多い。しかしオーデマ ピゲの場合は、防水性をもたせつつ、美しい音色を奏でたいと考えた。その二律背反する個性を実現させるのが、とても困難だったのだ。
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ジュリオ パピ_1965年生まれ。時計学校を卒業し、オーデマ ピゲに入社。1986年に独立し、時計工房「ルノー エ パピ」を設立。1992年にオーデマ ピゲが筆頭株主になったことで、社名を「オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ」としたが、他社の複雑機構も手掛けており、その実力はスイス時計業界でもトップクラスである。
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軸となったのは音色の解析

では“スーパーソヌリ”の開発プロセスについて、カヴァリエール氏に話を聞こう。

「夢の実現のために、2006年からローザンヌ工科大学と共同研究を開始しました。過去のオーデマ ピゲのミニッツリピーターから音量と音色の指針となるピースを定め、それをデジタル解析して理想の音を特定し、さらには楽器製造エンジニアの協力を仰ぎ、理想的な音色を奏でるための構造を探したのです」

その結果導き出されたのが、ゴングを音響板に取り付けるという構造だった。ムーブメント上のハンマーがゴンクを打つと、その振動が音響板に伝わり、音が広がるのだ。

「アコースティックギターと同じ構造です。ゴングがギターの弦で、音響板がギターのボディとなり、美しい音色が大きく響くのです。コンセプトモデルの音響板の素材は、教会の鐘にも使われるブロンズでしたが、酸化しやすく防水パッキンに悪影響を与えかねないので、チタンと銅の合金へと変更しています。

さらに雑音が出ないように、ガバナーの形状も変更しました。しかし時計に使用している素材は、いわゆる“特殊素材”ではありませんし、機構自体はあくまでも古典的。そのため十数年後に修理不能になるということもありません」

価値を永続させるのも、オーデマ ピゲにとっては大切なことなのだ。その姿勢は、音色を決める最終工程にも現れる。
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クローディオ・カヴァリエール_1972年生まれ。いくつかの時計ブランドでキャリアを積み上げ、2007年にオーデマ ピゲに入社。プロダクトやマーケティングのトップを経験し、2014年からは、ブランドの歴史や物語を伝える“グローバルブランド アンバサダー”に就任。
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永続できる技術を作る

「最終的に音を決めるのは、時計師による調律です。“スーパーソヌリ”を組み立てることができる時計師は15名いますが、調音は誰にでもできることではありません。

特に若手の時計師の場合は、テレビゲームやヘッドフォンの影響もあって、音の感じ方に差があるからです。そこでローザンヌ工科大学に、音を分析するソフトの製作を依頼しました。

このソフトを使えば、ゴングのどこを調整すれば理想的な音色になるかがわかり、理想の音質に近づけることができます。ただし最終チェックは、絶対音感をもった時計師が行います。どれだけデジタル技術が進化しても、“心地よさ”を聞き分けるのは、人間の耳じゃないと無理なのです」

伝統的な技術をベースに、革命的なケース構造とデジタルを融合させることで到達した“スーパーソヌリ”は、豊かで美しい音色で、周囲の人まで楽しませる“楽器”となった。これこそがミニッツリピーターの現代的価値なのだろう。

「ジュール オーデマ・ミニッツリピーター・スーパーソヌリ」

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ラウンドケースを用いた優美なモデル。ケースサイドのスライダーを操作すると、現在時刻を美しい音色で奏でる。心地よさを追求するため、クオーター(15分刻み)が鳴らない00分~14分という時間帯の場合は、間を空けずに分を鳴らすようにしている。ダイヤル素材はグラン・フー エナメル仕様。時計は下と同じ。
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ケースバック(この下に音響板がある)には時計師の姿をエングレービング。手巻き、PTケース(43mm)、アリゲーターストラップ。20m防水。ブティック限定モデル。時価/オーデマ ピゲ(オーデマ ピゲ ジャパン)
■お問い合わせ
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000

● 篠田哲生 

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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