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2017.07.14

オーデマ ピゲの音色が最上級であるワケは!?【前半】

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写真/斎藤暁経
文/篠田哲生(時計ジャーナリスト)
数ある複雑機構の中でも、特に価値が高いとされるのが「ミニッツリピーター」。これはケースサイドのスライダーを操作すると、内部のハンマーがゴングを打ち鳴らし、その音色で現在時間を知らせるというもの。このロマンティックな機構を得意としているのが、名門オーデマ ピゲである。

彼らはミニッツリピーターを現代的に進化させた“スーパーソヌリ”を考案し、愛好家を喜ばせた。その開発へと至った道筋を、オーデマ ピゲにてグローバル ブランド アンバサダーを務めるクローディオ・カヴァリエールと機構を担当したオーデマ ピゲ・ルノー エ パピのジュリオ・パピに話を聞いた。

歴史から生まれた複雑機構

優れた時計師として知られていたジュール=ルイ・オーデマが幼馴染のエドワール=オーギュスト・ピゲと工房を立ち上げたのが1875年。彼らが得意としていたのがミニッツリピーター機構だった。

「ミニッツリピーターの源流は、塔時計にあります。鐘を鳴らして時刻を知らせる機構を、小型化させて懐中時計に搭載したのです。その当時、暗闇でも時刻が分かるミニッツリピーターは実用機構であり、多くの人に愛用されていました。

オーデマ ピゲでは、1892年にミニッツリピーター付き懐中時計を発売しています。ここに用意した時計は、自社工房で完璧にレストアしたものです。ムーブメントが大きくて反響スペースも大きいため、豊かな音量の美しい音色を奏でてくれます。しかしその反面、ハンマーを規則的に動かすための“ガバナー”というパーツがジーッという雑音を作るという弱点がありました」

とカヴァリエール氏は語る。
クローディオ・カヴァリエール_1972年生まれ。いくつかの時計ブランドでキャリアを積み上げ、2007年にオーデマ ピゲに入社。プロダクトやマーケティングのトップを経験し、2014年からは、ブランドの歴史や物語を伝える“グローバルブランド アンバサダー”に就任。
1920年代に入り腕時計の需要が増えると、オーデマ ピゲでも腕時計型のミニッツリピーターを開発。1929年製モデルは、ハンマーもゴングも小さいためか、音もかなり小さい。しかし音色は澄んでおり、優雅で美しい。

現代的ミニッツリピーターの開発が始まる

1970年代のクオーツ革命によって、機械式時計の需要が激減。当然複雑機構も作られなくなった。しかし1980年代の後半になると、アナログの味わいを求める人が増え始め、スイス時計業界は徐々に息を吹き返す。この機械式時計の復興を、技術面で支えていたのがパピ氏である。

オーデマ ピゲの凄腕時計師だった彼は、同僚だったドミニク・ルノー氏と共に会社を辞め、1986年に時計工房「ルノー エ パピ」を立ち上げた。

「私のキャリアの大半は、ミニッツリピーター機構と共にあったといってもいいでしょう。なにせ独立後、初めてのオーダーは、IWCのミニッツリピーターでしたから。そして1992年にはオーデマ ピゲ『ジャンピングアワー・ミニッツリピーター』用のムーブメントを開発しました。

このモデルは1929年モデルのような角型ケースだったため、搭載するムーブメントを指輪程度のサイズにする必要があった。それが可能になったのは、オーデマ ピゲの過去のミニッツリピーター ムーブメントを研究することができたからです」

その後1995年には、ラウンドケース型のミニッツリピーターも誕生。このモデルに搭載したCal.2866は、長らくオーデマ ピゲの主力キャリバーとして活躍する。
ジュリオ・パピ_1965年生まれ。時計学校を卒業し、オーデマ ピゲに入社。1986年に独立し、時計工房「ルノー エ パピ」を設立。1992年にオーデマ ピゲが筆頭株主になったことで、社名を「オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ」としたが、他社の複雑機構も手掛けており、その実力はスイス時計業界でもトップクラスである。

積み上げた実績が“究極”を生み出した

「オーデマ ピゲのミニッツリピーターの特長は、ゴングにあります。ゴングは音を発する円型パーツと、それを支える支柱によって構成されていますが、オーデマ ピゲは一体形成している。そのため叩いた際のエネルギーが分散せず、音がクリアになるのです。しかも一体型なので耐衝撃性にも優れる。オーデマ ピゲのミニッツリピーターは、音色が美しいだけでなく、日常使いにも適しているのです」

とパピ氏は胸を張る。 ミニッツリピーターの名門オーデマ ピゲと技巧派時計工房が生み出した“スーパーソヌリ”は、数多くのミニッツリピーターを作ってきたという自信と積み重ねてきたノウハウによって導き出された、究極のミニッツリピーター機構といってもいいだろう。
その詳細は、【後半】で詳しく解説しよう。
左●チタンと銅の合金で作られた音響板に、直接ゴングを取り付けることで、防水性を高めても、音が外に広がるようになった。右●「ガバナー」はパーツの形状を変更。弾性の高い形状にすることで歯車との接触時の衝撃を吸収し、静かに回転させるのだ。これは特許取得技術である。
実際に音を鳴らしてもらったオーデマ ピゲのミニッツリピーターたち。左から1892年製の懐中時計、1929年製の腕時計、1995年製の腕時計(Cal.2866)、そして2017年の新作となる「ジュール オーデマ ミニッツリピーター・スーパーソヌリ」。

1892年製の懐中時計

1929年製の腕時計

1995年製の腕時計(Cal.2866)

■お問い合わせ
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000

●篠田哲生 

1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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