2017.07.15
オーデマ ピゲの音色が最上級であるワケは!?【前半】
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写真/斎藤暁経 文/篠田哲生(時計ジャーナリスト)
彼らはミニッツリピーターを現代的に進化させた“スーパーソヌリ”を考案し、愛好家を喜ばせた。その開発へと至った道筋を、オーデマ ピゲにてグローバル ブランド アンバサダーを務めるクローディオ・カヴァリエールと機構を担当したオーデマ ピゲ・ルノー エ パピのジュリオ・パピに話を聞いた。
歴史から生まれた複雑機構
「ミニッツリピーターの源流は、塔時計にあります。鐘を鳴らして時刻を知らせる機構を、小型化させて懐中時計に搭載したのです。その当時、暗闇でも時刻が分かるミニッツリピーターは実用機構であり、多くの人に愛用されていました。
オーデマ ピゲでは、1892年にミニッツリピーター付き懐中時計を発売しています。ここに用意した時計は、自社工房で完璧にレストアしたものです。ムーブメントが大きくて反響スペースも大きいため、豊かな音量の美しい音色を奏でてくれます。しかしその反面、ハンマーを規則的に動かすための“ガバナー”というパーツがジーッという雑音を作るという弱点がありました」
とカヴァリエール氏は語る。
現代的ミニッツリピーターの開発が始まる
オーデマ ピゲの凄腕時計師だった彼は、同僚だったドミニク・ルノー氏と共に会社を辞め、1986年に時計工房「ルノー エ パピ」を立ち上げた。
「私のキャリアの大半は、ミニッツリピーター機構と共にあったといってもいいでしょう。なにせ独立後、初めてのオーダーは、IWCのミニッツリピーターでしたから。そして1992年にはオーデマ ピゲ『ジャンピングアワー・ミニッツリピーター』用のムーブメントを開発しました。
このモデルは1929年モデルのような角型ケースだったため、搭載するムーブメントを指輪程度のサイズにする必要があった。それが可能になったのは、オーデマ ピゲの過去のミニッツリピーター ムーブメントを研究することができたからです」
その後1995年には、ラウンドケース型のミニッツリピーターも誕生。このモデルに搭載したCal.2866は、長らくオーデマ ピゲの主力キャリバーとして活躍する。
積み上げた実績が“究極”を生み出した
とパピ氏は胸を張る。 ミニッツリピーターの名門オーデマ ピゲと技巧派時計工房が生み出した“スーパーソヌリ”は、数多くのミニッツリピーターを作ってきたという自信と積み重ねてきたノウハウによって導き出された、究極のミニッツリピーター機構といってもいいだろう。
その詳細は、【後半】で詳しく解説しよう。
1892年製の懐中時計
1929年製の腕時計
1995年製の腕時計(Cal.2866)
オーデマ ピゲ ジャパン 03-6830-0000
● 篠田哲生
1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」を経て独立。専門誌やビジネス誌、ファッション誌など、40を超える雑誌やWEBで時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。