2026.02.11
第4回 「桜なべ 中江」
2026年の“肉初め”は東京最古の桜なべ専門店で百万馬力!
歌舞伎界のプリンスと呼ばれた時代を経て、現在は伝統芸能を超越したエンタテインメントとしての歌舞伎の未来も背負う存在となった十代目松本幸四郎さん(53歳)。毎月、数多くの舞台を踏む幸四郎さんが、パワーの源として愛してやまないのが肉料理! 王道レストランから本当は秘密にしておきたい行きつけの店、ちょいディープな穴場まで「こりゃいいや!」と太鼓判を押す、肉自慢の店へいざ!
- CREDIT :
写真/前田 晃(MAETTICO) 文/小寺慶子 スタイリング/坂井辰翁 ヘアメイク/RYO(tron) 編集/石井 洋(Web LEON)
とびきり“ウマい”鍋を求めてポン菓子片手に下町散策〜

▲ 風情ある町並みのなかで、ひと際目を引く店を発見。「噂に聞いていたウマい店というのはここのことかな」。ポン菓子を食べる手を止め、じっと様子をうかがう幸四郎さん。コート40万7000円/ジャンフランコ ボメザドリ(バインド ピーアール)、ジャケット7万5900円、パンツ4万8400円/ともにモンサオ、ニット3万9600円/レンコントラント(すべてHJM)、靴/スタイリスト私物

▲ ココは間違いない!とばかりにお店に入ろうとする幸四郎さん。を、引き留める腕がスッと伸びてきて。「またですか〜!? 時間ないんですから」とマネージャー。「大丈夫だって、俺、食べるの早いんだから!」と幸四郎さん。しばしの押し問答の末、強引に突破(笑)。
2026年は午年にして、60年に一度巡ってくる“丙午”。昔から火のエネルギーが最高潮に達する年と言われ、今年はとくに激動の一年になりそうと俄かに噂されておりますが、我らが幸四郎さんはいつも通りのマイペース。仕事の合間にポン菓子片手に「なんだかいいお肉の気が流れているなぁ〜」と。そんなご機嫌な幸四郎さんがやってきたのは、東京で100年以上の歴史を持つ『桜なべ 中江』です。

▲ 肉のため、とあれば、ご覧の通りのノリの良さ! 「丙午バージョンです」とパワーみなぎる姿を披露(笑)。
時は明治20年。新潟から上京してきた初代が、当時、大流行していた桜なべ専門店を開業。大正12年の関東大震災で倒壊してしまった店を、その翌年には再建し、あの武者小路実篤や岡本太郎もなじみ客として通った店を、現在は四代目の中江白志さんが切り盛りをしている「桜なべ中江」。その長い歴史に耳を傾け、「お店の構えにも歴史と味わいが感じられますね」と幸四郎さん。それでは新年の“肉初め“を祝して(!?)、見得を切っていただきましょう!
生粋の肉ラバーの幸四郎さん。こちらはなんのお店かお気づきです?
「もちろん! 桜なべといえば馬肉を使った鍋のことですよね。僕は牛も豚も鶏も大好きですが、なかでも馬肉が大好物なんです。家の近所に小さな馬肉専門店があって、そこでよく買わせていただいています。つい先日、そのお店がUberもやっているということが判明しましてね」
なるほど。ウーマーイーツ!
「あ、あ〜、馬だけにね……。高たんぱく質でヘルシーですし、いくらでも食べられますよね。でも、あまりお鍋でいただいたことはないかなぁ」
ならばさっそく、馬肉好きの幸四郎さんに、心行くまで“ウマい肉”を召し上がっていただくことにいたしましょう。

▲ 木札に書かれた人気メニューランキング。『中江』のためだけに特別に肥育された馬肉を使用していると聞けば、期待に胸がふくらみます!

▲ まずは人気の“前菜”から。「タロタロユッケ」(3880円)は、岡本太郎画伯のリクエストによって生まれたことから命名されたのだとか。
トップバッターはお店自慢のタロタロユッケ。なんでもコチラは「芸術は爆発だ!」の名言でも知られる岡本太郎氏の要望に応えて考案されたそう。幸四郎さん、お味はいかがです?
「肉とタレの旨みが口のなかで爆発しますね! 卵黄によく絡めていただくとスタミナが湧いてくる感じがします」

▲ 新年一発目ですし、少しお酒もいただきますか〜。「口のなかで馬肉がとろける感じがたまりませんねぇ」。幸四郎さん、早くも頬がほんのり桜色に?
フレッシュなユッケを味わっていると、お待ちかねの桜なべが登場。「馬肉は滋養に富んでいるので、吉原に出かける前や、その後に寄る男衆も多かったんですよ」とは店主の中江さん。百二十年以上ものあいだ受け継がれてきた味を想像しながら、幸四郎さんはいてもたってもいられない様子です。
「馬肉といえば、福岡ダイエーホークスでも活躍した、秋山幸二選手のエピソードを思い出します。秋山選手がデッドボールで怪我をされた時、当時の王貞治監督が、“患部に馬肉を湿布代わりにして貼っておくと治りが早い”ということで、お見舞いで馬肉を贈ったところ、秋山選手は“これで元気を出せということか〜”と、食べてしまったという(笑)。そりゃそうでしょうね〜。僕も貼るよりも食べたい派ですから(笑)」

▲ 店主との馬肉トークにも花が咲き。「しっかり煮たほうがいいんですか?」と幸四郎さん。「桜なべの極上桜肉は九州で長期肥育したものを冷凍せずに直接送ってもらっているので、あまり火を通しすぎないほうが美味しいですよ」。もう食べたくて仕方ない顔!

▲ 満面の笑顔で食べ頃を待つ幸四郎さん。「この匂いだけでもお酒がすすんでしまいそう」。時計194万1500円/ゼニス

▲ 桜なべ(極上ロース)3480円。極上ヒレや霜降りなども追加可能。通常は自分で鍋を仕上げるスタイル。お肉は少し赤身が残った状態がベストな食べ頃とのこと。
鍋がふつふつとしてきたら、いよいよ食べ頃。「水分が出てしまうので“ザク”はお肉を食べ終えた後に」というアドバイスにならい、早速お肉から。
それにしても、100年以上の歴史を刻んできた空間で、江戸の郷土料理を味わうというのは贅沢の極み。いきなり感想を聞くというのは野暮というもの。まずは幸四郎さんにじっくりと最高の桜なべを味わっていただきましょう。

▲ いざ実食! ゆっくりと肉を噛みしめる幸四郎さん。思わず言葉を失い「これは……、とんでもなくウマい! という言葉しか出てきませんね」

▲ 「栄養満点でヘルシーな馬肉はいくらでも食べられます。ほかの部位もいただいてみたい!」
鍋の中のお肉をひととおり食べ終えて。「馬肉を生で食べるのも大好きですが、鍋はまったく違う美味しさがありますね」と、すっかり店の味の虜に。お次は割下にザクや麩を入れて味がしみるまで、ちょっとだけお預けタイムです。

▲ ザク850円。しらたきやお麩、焼豆腐などに割下と味噌だれの味がしみこみ、これまた美味! ちなみにザクとはザク切りしたお野菜などを指す言葉です。

▲ 「これはついついお酒が進んでしまいますね」と上機嫌な幸四郎さん。『中江』は日本酒の種類も豊富なんです!
鍋の〆といえば雑炊か麺が定番ですが『中江』の品書きには「あとご飯」なるものが。「もちろん、いただきたいです」という幸四郎さんの目の前で中江さんが丁寧に調理をしてくださります。まずは鍋に溶き卵を入れて、ふんわりとしてきたところで、それをご飯にかけて食べる絶品の〆。卵だけに、これもタマらんですな〜。

▲ 『中江』の桜なべの締めといえば「あとご飯」(500円)。出来上がりを待つ幸四郎さん、まんま子どものよう(笑)。

▲ 桜肉の中落ちもたっぷりと。「中江で一番の美味はあとご飯」という常連客も多いそう。

▲ 「かなり満腹ですが、これは別腹。このために最初の鍋からもう一回始めたいくらい」と幸四郎さん。独り占め感がハンパないっす……(泣)。
「あとご飯」までしっかりといただき、幸四郎さんも満腹、満足。「桜肉の旨みが割下にたっぷりと溶け出しているので、この鍋をあますところなく味わいきったという感じですね。身体がぽかぽかと温まって、昔からスタミナ食と言われてきたのも心底納得できます」

▲ 幸四郎さんの見事な食べっぷりに、店主の中江さんもあんぐり。
「桜なべ用の特製の鉄鍋も作っておりますので、よろしかったら(笑)」と言う店主に「それはぜひ購入させていただかなくちゃ! それよりもやっぱりまたこちらに食べに来させていただきたいです。とても美味しい馬肉をいただいてエネルギー補給できました。おかげさまさまで百万馬力です!」と幸四郎さん。
続けて幸四郎さん。「あ、そうそう。馬の油は肌にもとてもいいと言いますが、僕も最近、和粋伝承人の島田史子さんととろみ水クレンジングという商品を作ったんです。5年かけて試行錯誤を繰り返した自信作でお肌のケアにぴったりなので、ぜひそちらもお試しいただけたらうれしいです!」。宣伝もばっちりやないですか〜(笑)。

▲ 撮影スタッフのこの顔……。どれだけ幸四郎さんがウマそうに食べていたかがわかりますね。
というわけで、幸四郎さん。2026年、午年も“ウマい肉”を目一杯、召し上がっていただきますからね。覚悟のほど〜!

■ 桜なべ 中江
住所/東京都台東区日本堤1-9-2
TEL/03-3872-5398
営業/平日17:00〜22:00(21:30L.O.)、土日祝11:30〜14:00(13:30L.O.)、16:00〜21:00(20:30L.O.)
定休日/月曜ほか(詳細は店舗サイトの営業カレンダーにて)

● 松本幸四郎(まつもと・こうしろう)
11月は『歌舞伎座 吉例顔見世大歌舞伎』に出演。夜の部において三谷幸喜さん作・演出“三谷かぶき”「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)」主演・狂言作者花桐冬五郎を勤める。12月は1日より京都・南座『吉例顔見世興行』に出演。昼の部「一條大蔵譚」一條大蔵長成、夜の部「口上」・「弁天娘女男白浪」日本駄右衛門。来年1月、歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』に出演。現・歌舞伎座で初上演の「女殺油地獄」河内屋与兵衛を勤める。「大阪・関西万博」アンバサダーも務めている。11月2日より『歌舞伎座 吉例顔見世大歌舞伎』に出演。昼の部では片岡愛之助さんの「御所五郎蔵」で甲屋与五郎役、夜の部では6年振りとなる三谷幸喜さん作・演出“三谷かぶき”「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)」主人公・狂言作者花桐冬五郎 役を勤める。12月は、京都・南座『當る午歳 吉例顔見世興行』に出演する。














