2025.12.28
成宮寛貴インタビュー【後編】「二巻目の人生では、すべて芝居に投影できる。どのような経験も前向きに生かせるのが役者」
成宮寛貴さんが、宮本亞門さん演出の舞台『サド侯爵夫人』で12年ぶりに舞台に主演として出演。出演の経緯や芸能界を離れた8年について語ってくれた前編に続き、後編では俳優・成宮寛貴の”新章”についてお話してくれました。
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文/浜野雪江 写真/内田裕介 スタイリング/杉長知美 ヘアメイク/INOMATA(&’s management) 編集/森本 泉(Web LEON)

今年、2025年3月に配信ドラマ「死ぬほど愛して」で8年ぶりに俳優に復帰した成宮寛貴さんが、宮本亞門さん演出の主演舞台『サド侯爵夫人』(2026年1月上演予定)で12年ぶりに舞台に出演します。
宮本亞門さんは、成宮さんが17歳で俳優デビューを飾った舞台『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』の演出家。インタビュー後編(前編はこちら)では、宮本さんとの交流と、稽古を控えた現在の心境、8年ぶりの活動再開で感じたことや、俳優・成宮寛貴の”新章”について語ってくれました。
亞門さんは、とんでもない高さから一緒に飛び降りる覚悟だと
── 宮本亞門さんとは実に25年ぶりのタッグとなりますが、その間も交流はあったのですか?
成宮寛貴さん(以下、成宮) 亞門さんとは一時期住んでいたマンションが偶然一緒だったり、プライベートでも親しい友人の1人でした。ただ、海岸で偶然お会いしたのはとても久しぶりのことでした。
亞門さんは僕の人生を変えてくれた方ですが、このようなタイミングで出会えてしまうのか、そして、また手を取りあってやりましょうと言ってくださるんだと、本当にうれしかったですし、運命的なものを感じています。
── プライベートと仕事場では関係性も異なると思いますが、演出家としての宮本さんはどんな方でしょう。
成宮 普段の亞門さんは、ワンちゃんをこよなく愛し、いつもニコニコしている方です。そして演出家としての亞門さんは、いろんなことを見抜ける方。僕が17歳の時の記憶ですが、例えば芝居が少しでも停滞していたら、「それが今うまくいかないのは、たぶんここが成立してないからかな」と、鋭く指摘してくださるような。
僕は芸能界に入って一番最初の仕事でご一緒しているので、あらゆることの良し悪しも、亞門さんとのお仕事を通して教えていただいたように思います。

── 稽古はまだこれから(※取材日は11月中旬)ですが、現時点で宮本さんからアドバイスや注文などもらっていることはありますか?
成宮 体は動かしておいてね、声も出るようにしといてね、というぐらいで、それ以外は何も言われていないです。でも強烈だよ、大変だよ、とは言われています(笑)。
亞門さんは、三島由紀夫オタクといっていいほどに三島由紀夫さんが大好きで、その中で亞門さんが、「成宮君に合うと思う」と言って僕のために選んでくださったのが『サド侯爵夫人』です。亞門さんは、途轍もない高さから一緒に飛び降りる覚悟だとおっしゃっていましたが、本当に命がけで挑むことになると思うので、ちゃんと生還できるように頑張りたいです。
── 亞門さんさんとの公式の対談動画でも、「限界まで行きましょう!」と話されていました。今は稽古を目前に控え、闘志を燃やしているところでしょうか。
成宮 意欲を燃え上がらせているというよりは、小さいけれどとても熱い青い炎を燃やしながら粛々と準備を整えている感覚です。体のストレッチを十分にしたり、インナーマッスルを鍛えたり。

── 8年ぶりに出演されたドラマ「死ぬほど愛して」(全8話)の撮影現場でも、感覚はすんなり戻りましたか?
成宮 いざやってみたら、意外と忘れていることもありました。アクションシーンでは、力任せに仕掛けるのではなく、こうするとリアルに見えつつ、相手へのダメージを最小限に抑えられる、というふうに。そのような自分なりの細かな工夫や、現場で培ってきた技術を少しずつ思い出しながら演じていました。
── ドラマが配信されると多くの反響がありましたが、久々の俳優仕事を終えた時はどんなお気持ちでしたか?
成宮 やり始めてくると、こんな作品に挑戦してみたい、この役を演じたから、次はこういう役にも挑みたい、という前向きな意欲がどんどん膨らんでいます。毎日、本当にあっという間に時間が過ぎて、こうした取材も含め、今はとても充実した時間を過ごさせてもらっています。
俳優は支えてくれる方々や受け入れてくれる場所があってはじめて活動ができるので、今後、様々な方に注目していただける自分になるためにも、今回の舞台は絶対に乗り越えなくてはいけないという思いがあります。

── 復帰にあたっては、待ってくれているファンの存在も励みになったのでは?
成宮 もちろんです。Instagramでたくさんの方がフォローしてくださり、応援の声を届けてくれたり、「あの作品を再放送してください!」と言っていただいたり。そのようなことを通して、とても伝わってきていましたし、励みになりました。
なので、良きオーディエンスがいてくれるからこそ自分が今ここに立てていると思うし、みなさんの存在が、自分が今ここにいる意味を感じられる大切な力になっていますね。
ここだけは譲れないという大切なものをちゃんと選び取れて今がある
── 今回の『サド侯爵夫人』は、成宮さん演じるサド侯爵の妻・ルネを含め、登場する6人の女性を全員男性が演じることも話題です。
成宮 この作品において、三島由紀夫さんは男性目線で女性を描いていると思うので、女性にはとても適わないと感じる部分をリスペクトする一方で、女性の少し嫌な部分も巧みな表現で書かれています。
それを男性陣が演じることによって、さらにねじれが生じるので、そのような意味でもとても面白い作品になるだろうなと思っています。
── ルネ(成宮)と激しく対立するルネの母役の加藤雅也さんをはじめ、共演の皆さんも錚々たる顔ぶれです。その中で主役を担う上で心がけていることはありますか?
成宮 主役というのは、実は全体をよく見て皆さんを引き立てる役でもあります。主役が「我が我が」と振る舞うと、場が乱れてしまいます。それは昔から動物的に感じ取っていることで、僕は自分が前面に出ようとするのではなく、あえて受け身でいいと思っています。そのようにすることで皆さんの良いところを伸ばし、お互いに高め合う形にしたいですね。

── 修辞を凝らしたセリフの応酬も大きな見どころですが、膨大なセリフはどうやって覚えるのでしょう。
成宮 今回ばかりはどのように覚えるのか、僕もわからないです(笑)。今回のセリフは古典的要素の強い言葉たちなので、理解するのにも時間がかかるし、日常的に使う言葉ではないぶん、やはり覚えづらいです。
もちろん、自分はこれまでにシェイクスピアの『ハムレット』と『お気に召すまま』に出演させていただいていて、あのセリフたちを自分の言葉にしていく大変さを知っています。今回は古典的な言い回しに加えてさらにセリフのボリュームがあるので、とても大変だろうなとは思ってます。
── 次々に新しい台本を覚えては撮影する連続ドラマのセリフ覚えとは、やり方が異なりますか?
成宮 作品にもよりますが、連続ドラマは毎週撮影があって、2週間で3話分ぐらいを撮るので、台本は舞台よりも厚いです。そう考えると、セリフ覚えに使える時間はドラマの方が少ないかもしれない。
演技自体も、ドラマはその場その場で瞬発力を発揮してワンシーンを撮っていき、舞台の場合は1カ月間しっかりと稽古をして、さまざまな方向性を試しながら本番を迎えるので大変さがまた違います。セリフ運びについても、舞台はかなり念入りにひとつのシーンを練習できるので、より良いチョイスをじっくりできるという感覚です。
ただ今回に関しては、文字通り全身全霊で立ち向かわないと自分のものにできないですし、心がとても震える作品になると思うので、ぜひ劇場で生で観ていただけたらうれしいです。

▲ ジャケット6万2700円、シャツ2万5300円、パンツ3万800円/すべてLAD MUSICIAN(LAD MUSICIAN HARAJUKU)、リング8万3600円/MARIHA
── 俳優活動の第二章では絶対に舞台も挑戦したいと話されましたが、何をもって第二章と謳い、どういう新章を思い描いているのでしょう。
成宮 今歩んでいる日々は一冊の中の区切りを超えた別物で、もはや二巻目という感じ。それは、やはり海外で生活した経験が大きいです。海外では、強盗に入られたこともあれば(笑)、日々の生活の中でも大変なことが数えきれないほどあって、でもこれだけは大切にしたいという信念を曲げずに生きることで、忍耐力も含めて非常に鍛えられ、人間的にも強くなれた気がします。
人は誰しも、信念として曲げたくない、自分の正義のようなものがあると思います。僕の中にも、自分がどんな状況でも、これだけは譲れないという大切なものがあって、それをしっかりと選ぶことが出来て今がある。
だから二巻目の人生では、すべて芝居に投影できる。どのような経験も前向きに生かせる仕事が役者なので、すべてを活かそうと思います。

● 成宮寛貴(なりみや・ひろき)
1987年9月14日生まれ。東京都出身。2000年に宮本亞門演出の舞台『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』でデビュー。主な出演作に、ドラマ「ごくせん」(02年)、「オレンジデイズ」(04年)、NHK大河ドラマ「功名が辻」(06年)、「ブラッディ・マンデイ」(08年)、映画『NANA』シリーズ、ドラマ「相棒」シリーズなど。2025年3月にABEMAオリジナルドラマ「死ぬほど愛して」にて8年ぶりの俳優復帰。2026年1月からは12年ぶりとなる舞台『サド侯爵夫人』に主演が決まっている。

『サド侯爵夫人』
『サド侯爵夫人』は三島由紀夫が友人である澁澤龍彦の著書「サド侯爵の生涯」に触発され創作した戯曲で、人間の心の強烈な欲望と道徳の規範を美しくも残酷な言葉で描き出した傑作。18世紀フランスを舞台に、「サディズム」の語源にもなった悪徳の限りを尽くすサド侯爵をめぐり、彼を待ち続ける貞淑な妻、ルネ夫人他5人の登場人物たちを中心に展開される会話劇。演出は『金閣寺』の舞台化、『ライ王のテラス』、オペラ『金閣寺』『午後への曳航』を手がけ、三島作品への深い洞察と独自の美学から、作品世界に常に息吹を与える宮本亞門。出演は成宮寛貴がルネ・サド侯爵夫人を演じるほか、東出昌大、三浦涼介、大鶴佐助、首藤康之、加藤雅也とすべて男性キャストが務める。
2026年1月8日(木)~2月1日(日) 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
2月5日(木)~8日(日) 森ノ宮ピロティホール
2月13日(金)・14日(土) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2月17日(火)・18日(水) 福岡市民ホール中ホール
■ お問い合わせ
LAD MUSICIAN HARAJUKU 03-3470-6760
MARIHA 03-6459-2572
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