2025.12.29
中島 歩インタビュー。「僕、あのちゃんにも嫉妬しますからね。なんであんなに売れてるんだよって」
数々の人気ドラマに独特の存在感で出演し注目を集める俳優・中島 歩さんが「俺たちバッドバーバーズ」(テレ東系)で初の連続ドラマ主演を務めます。自由に意見を言って自ら盛り上げてきたという現場の様子と仕事への熱い思いを語っていただきました。
- CREDIT :
文/木村千鶴 写真/興梠真穂 スタイリング/上野健太郎 ヘアメイク/小林雄美 編集/森本 泉(Web LEON)

NHKの朝ドラ「あんぱん」や昨年大ヒットした「不適切にもほどがある!」などいくつものドラマで印象に残る演技を披露し急速に注目を集めている俳優・中島 歩さんが、1月9日より放送されるドラマ25「俺たちバッドバーバーズ」(テレ東系)で初の連続ドラマ主演を務めます。
物語の舞台は田舎街に佇む「月白理容室」。表向きは普通の理容室、でも店主の月白 司(草川拓弥)には裏の顔があり、表社会では解決できないトラブルを力で解決する「裏用師(リヨウシ)」として活動しているのです。そこに見た目も中身も超個性的な元美容師の日暮 歩(中島歩)がひょんなことから辿り着き、互いに反発し合いながら徐々に仲を深め、さまざまな依頼を解決に導いていきます。
今作の監督は、独特な世界観で熱狂的なファンも多い「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの阪元裕吾さん。その阪元監督が作り出す注目のアクションコメディに中島さんはどう立ち向かうのか、お話を伺いました。
この役柄をやったことで見栄が流れ落ちていった気がした
── 中島さんは今作が連ドラ初主演とのことですが、最初に主演のオファーが来た時はどういうお気持ちでしたか?
中島 歩さん(以下、中島) オファーが来た時はやっぱりうれしかったですね。テレ東の深夜枠は新宿武蔵野館(※)とか小劇場周りの俳優や映画監督と縁が強く、僕もその一人でした。初めてテレビドラマに出たのもテレ東深夜でした。今回、まさにその深夜枠で主演のお話をいただけて、なんかこう、到達した感じはあります。監督も阪元さんで、願ったり叶ったりの機会だったなと。
※新宿にあるミニシアターの複合施設でアート系の作品や内外のB級映画と呼ばれる低予算作品も積極的に上映してきた。

── 主役のプレッシャーは大きいものでしたか?
中島 いやいや、そんなことはなかったです。本当に自由でいられました。怖い先輩とかベテランの俳優さんもいないし(笑)、気を遣う人がいなかったから。自由に意見が出せる現場だったので、思いついたことをその場で急に言っても、「じゃあやりましょう」と。
各部署のコミュニケーションがちゃんとできている作品で、スタッフも最高でした。みんな献身的だし、特に撮影部は素晴らしかったですね。そして部署って、境界線が曖昧なこともあるんです。だから僕は俳優部ではありますが、衣装とかも結局自分で持ってきちゃったし。
── ユニークな衣装だなと思ったんですけど、私服ですか⁉
中島 なんか“ダサカッコいい”みたいな感じにしたくて衣装は持っていっちゃいましたね。ほぼ自分の物です。
── 台本を読んで、ご自身が演じられる日暮 歩をどのように捉えましたか? キャラクターにはすんなり馴染めたのでしょうか。
中島 日暮の熱量がすごいので、置いてかれないようにエネルギーを出さないといけなかったんです。それで、そのユニークな衣装を着て、変な髪型にして、大きな声でセリフを言うことも相まってなのかもしれないけど、なんか無敵な気分になれたというか。
あの髪型にした日は車検で代車を借りていたので、軽自動車で家まで帰ったんです。そしたらなんていうのか、この役柄をやったことで見栄が流れ落ちていった感じがしたんです。「すごく格好つけていたな、俺は」って。今はいつも通りなんですけど、でもすごく役に影響された自分を見つけました。こんなことは今までありませんでした。
── 自由に意見が言える現場とのことですが、阪元監督とは良好な関係だったのですか。
中島 そうだと思います。でも監督も年下だったりするので、最初に言いました。「それはいらないよとか、思ったことは遠慮なく言ってください」と。すると「え、いいんですか?」と言っていたので、監督はめっちゃ気を遣われていたみたいです(笑)。

── 中島さんも思いついたことを言うから、監督もどんどん言ってほしいと。
中島 この作品にとっては、その方がいいなと思ったんです。自分がやりたかっただけなんでしょうけど、そういう気にさせられる台本でもあったと思うんです。子供の頃に友達とごっこ遊びをしているという感じで、自由でした。
── 特に中島さんの役柄はコメディ要素がたっぷりでしたね。演じられたご感想は?
中島 全部出し切ったぞみたいな感じです。自分は子供の頃から家でも学校でもずっとふざけてきた人生だったんで、その集大成みたいな感じでした。
ただずっと体調が悪かったですね(笑)。声も張るし、スケジュール的にも大変でしたけど、お芝居をしている時は楽しかったです。
── 今回はバディである月白役の草川拓弥さんとダブルで主演ということですが、草川さんとのコミュニケーションはいかがですか。
中島 最初はクルマの話とかをよくしてましたね。彼の好きなクルマがなんか変だったんで親近感が湧いて、それですごく好きになりました。「ヤバいなこいつ!」って(笑)。私服とかも個性的で、僕も天邪鬼だからそのちょっとずらしてる感じ、分かるなと。
映画でも演劇でも小劇場出身という気分でいます
── ドラマ「不適切にもほどがある!」に出演されていた時にも感じましたが、中島さんには独特の「間」があって、それが笑いに繋がるのかなと思うのですが、それは狙ってやっていることですか?
中島 狙ってるとは言いたくないですよね(笑)。でも普段からどうしたら楽しんでもらえるか、こういうインタビューの時にも、どうしたら聞いてもらえるかなとか、楽しい時間を過ごすための言い方や間は探っているんじゃないですかね。そういうのが芝居にも反映されているとは思うんです。

── それは大学生の時に入っていた落語研究会で、学んだことでもあるのでしょうか。
中島 落語はそれを本当に狙ってやる作業です。しかもその場の雰囲気と即興でセッションしながら。そういう意味では、“狙ってできるんだ、それが芸なんだ”という学びがありました。一方で、狙ってもできないこともいっぱいあるということも、落語をやって勉強になったところではあります。でも成功した時にはやっぱりすごく気持ちがいい、それが今の仕事を始めるきっかけになったと思います。
── 落研に入ってから技術が身についていったという感じですか。
中島 板の上に立ってどう言えば、お客さんがその言葉に引っかかりを持つか、そのためには前のセリフをどういう風に言うかとか、そういう「見せ方」みたいなものは、20代の頃に舞台で勉強してきた感じです。
── 先ほども仰っていましたが、中島さんご自身は小劇場出身という気持ちがあるんですか?
中島 ありますね。映画でも演劇でも小劇場出身という気分でいます。
── プロフィール上では最初から、美輪明宏の名舞台『黒蜥蜴』、NHKの連ドラ「花子とアン」に出演とあり華々しく、今日まで小劇場の人というイメージはありませんでした。
中島 いやいや、本当にそこまでは華々しくて(笑)、そこからどんどん尻すぼみになって、「ああ、もうこの仕事は続けられないな」ってくらいまで仕事がなくなりましたから。20代はきつかったですね。まあどの仕事をしていても20代ってつらい時期だとは思いますけど。
本当に「自分、何もできないじゃん、何も持ってないじゃん」という挫けから始まって、徐々にひとつずつ「そうやればできるようになるんだ」っていうのを勉強して、30代くらいから自分の表現になっていく、という感じで。
── 苦しかった時期を乗り越えることができた、俳優業を続けられた理由はなんでしょうか。
中島 事務所の支えはありました。なんとかなるかもしれないと思って籍を置かせてくれたから。あとは辞める勇気もなかったし、映画も演劇も観れば観るほど好きになるし。まあ芝居をしているのが好きだったっていうことに尽きると思うんです。
自分が出来なすぎて辛いんですけど、やっている時の楽しさは大きいので。というか、面白い人たちがいる場に行ってたんです、ずっと。そこで先輩俳優とか尊敬する演出家の人と過ごしていて。売れてない人もいっぱいいるけど確実に面白いし、なんかこれでもいいなみたいな(笑)。でもその後はみんな売れてるし、だから間違っていなかったなと。

本当に腹を割って芝居してる人とそうでない人、絶対みんな感じてる
── ご自身でも、いつか売れるという気持ちを持ち続けていた?
中島 そうですね。そもそもが「よし、有名になるぞ!」ってところから始まっているのでね、そういう気持ちはずっとありますよ。今もありますけど、もっと有名になるぞって。僕、あのちゃんにも嫉妬しますからね。なんであんなに売れてるんだよって。
── あのちゃんにもですか!(笑)
中島 そうなんですよ、これ本当にそうなんです。思っちゃっているんだからしょうがないですよね。
── 大学の卒論は自己顕著欲について書かれていたそうですね。自己顕示欲は自分に価値をつけるために大事なことだと思いますか?
中島 大事だと思いますけど、“源泉”というのかな。「お芝居が好き」という気持ちも源泉になり得るとは思いますけど、僕は二次的なものです。有名になりたい気持ちがあったからこそ、そこに繋がっていったわけだから。あとはなんか冒険したい気持ちもあるかな。
── 当たり前の人生にはしたくないという気持ちですか?
中島 そうです。なんかカッコつけたいっていうのもあるじゃないですか。「カッコいい人生にするぞ!」みたいな。

── とはいえ中島さんはまったくカッコつけることがなく、正直な気持ちを言葉にされますよね。
中島 正直でいることは大切にしています。これはずっと考えてきたことなんですけど、こうやってお話ししててもそうですが、腹の底が見えないと信頼してもらえないじゃないですか。映像を通してでも、舞台でも“こいつ小手先でやってんな”ってことは見えると思います。本当に腹を割って芝居してる人とそうでない人、絶対みんな感じてるから。正直に素直にやっている役者にはお客さんがついていくのが分かったので、そうであろうと思っています。
── 芝居でも映像でもそもそも台本があり、特に舞台は同じことを何度も繰り返し演じますよね。その状況で正直な気持ちでいる、腹を割って立つということはどういうことなのだろうと、とても不思議な感じがします。
中島 それをお芝居を通してやるってことが多分、こうやって話してることよりも全然難しくて。演技にももちろんテクニックがある。でも本当に心が通じ合っていることが見えた時に、すごくお客さんが感動するんです。
『ドライブ・マイ・カー』という映画がありましたけど、あの映画は“お芝居で本当のコミュニケーションは可能か”ということがテーマになっていると僕は思っています。セリフを通して本当に人は心を通じ合えるかっていうことを、毎テイク挑戦している。詰まるところ、相手とちゃんと話して、言ったことを聞く、ということなんです。
──シンプルだけど簡単ではないですね。
中島 難しいですけど、できると見ている人も面白いし、やっていても面白い。「今あったよな、コミュニケーション!」ってことを俳優同士で感じるし、演出家も見ていてわかる。

▲ シャツジャケット9万7900円/カレンテージ(メルローズ)、シャツ9万6800円、パンツ28万6000円/ともにフランク リーダー(マッハ55リミテッド )、スニーカーはスタイリスト私物
── それが伝わるから、今作のドラマを観ていると日暮という人物に引き込まれていく、同調して応援したくなるのかもしれません。
中島 そうだといいですね。芝居の中でコミュニケーションを取り、素直な自分自身を出すことはものすごい熱量がいるから、具合が悪くなったんでしょうけれど(笑)。でもそれは絶対必要だったし、そうすることでどんどん出てくる「自分の何か」がありました。
── では、最後に中島さんにとってのカッコいい大人とは?
中島 やっぱり楽しそうにしてる人ですかね、僕にとっては。でも厳しそうな人にもカッコいい人もメッチャいるな(笑)。そうなると、自分のやりたいこと、やるべきことを見つけてまっとうしてる人、ですかね。そういう人はカッコいいと思います。

● 中島 歩(なかじま・あゆむ)
1988年10月7日生まれ。宮城県出身。大学在学中からモデルとして活躍し、2013年、美輪明宏主演の舞台『黒蜥蜴』のオーディションで選ばれ、俳優デビュー。14年、NHK・連続テレビ小説「花子とアン」に出演。2019年には、中国映画『サタデー・フィクション』で海外進出を果たし、その後も数々のドラマ、映画に出演。近作に映画『ナミビアの砂漠』『敵』『ルノワール』『佐藤さんと佐藤さん』、ドラマ「不適切にもほどがある!」「海のはじまり」「愛の、がっこう。」など。2026年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」にも出演が決まっている。

ドラマ25『俺たちバッドバーバーズ』
熱狂的なファンを多く抱える「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの阪元裕吾監督とテレビ東京が組んで送る“理容師アクションコメディ”。舞台は田舎町にひっそり佇むレトロな雰囲気の月白理容室。一見、普通の理容室だが店主の月白司(草川拓弥)には裏の顔があった――。300万円で依頼人の乱れた人生を整え、髪を切るのが仕事。ひょんなことから月白理容室に住み込みで働くことになる元美容師の日暮 歩(中島 歩)と店主の月白が、絶えずケンカをしながらも生活を共にし、様々な依頼を引き受けていく。中島 歩と草川拓弥は初共演でダブル主演、ほかに原田琥之佑、吉田美月喜、濱田龍臣/後藤剛範、高良健吾。
2026年1月9日スタート 毎週金曜深夜24時42分~25時13分
放送局/テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
公式HP/ドラマ25「俺たちバッドバーバーズ」
■ お問い合わせ
マッハ55リミテッド 03-5846-9535
メルローズ 03-3464-3891
こちらの記事もいかがですか?














