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2025.12.14

吉井和哉インタビュー。「カメラが回っているからこそ、がんで“死んじゃいました”で終わるのは嫌で頑張れた」

THE YELLOW MONKEYのボーカリスト、吉井和哉がパンデミック後に経験した壮絶な日々と、ロックに魂をささげる生きざまを記録したドキュメンタリー映画『みらいのうた』が完成。その見どころとともに、世代や性別を超えて魅了させるセクシーでパーフェクトな<モテ男>になるための秘訣も探った。

CREDIT :

文/松永尚久 写真/横山マサト スタイリング/Shohei Kashima(W) ヘアメイク/Cana Imai 編集/鎌倉ひよこ、森本 泉(Web LEON)

吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON

ロック・バンド、THE YELLOW MONKEYのボーカリストとして、またソロとしても数多くの心に残る名曲を発表している、吉井和哉。パンデミック後に経験した壮絶な日々、またロックに魂をささげる生きざまを記録したドキュメンタリー映画『みらいのうた』が完成した。


2026年には60代を迎える吉井だが、彼の音楽(ロック)へのエネルギーや愛がさらに高まっていることを感じる内容。その見どころとともに、世代や性別を超えて魅了させるセクシーでパーフェクトな<モテ男>になるための秘訣も探ってみた。

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撮影スタート半年後に僕のがんが発覚。EROさんは脳梗塞で倒れて

── まず、ドキュメンタリー映画『みらいのうた』を制作されることになった経緯を教えていただけますか?


吉井和哉さん(以下、吉井) ツアー中にちょっと喉の調子が悪くなって、急遽それを中止にすることになった時に、事務所の代表が、以前から彼と交流のあるエリザベス宮地監督とドキュメンタリーを撮影してみます? という話になりました。ちょうど次のアルバムも構想していたので、そのサウンドトラックを作るような感覚で新曲を作ることができたらいいなみたいなノリで、着地点を決めずに撮影が始まったんです。


そして、僕を追いかけたドキュメンタリーだけにしてしまったら面白くもないだろうってことで、僕をこの世界に連れてきてくれたEROさんを筆頭に、自分が幼少期から過ごしてきた静岡の人々を撮影してもらおうということになりました。


ただ、撮影をスタートしてから半年後に僕のがんが発覚し、さらにその半年ぐらい前にはEROさんは脳梗塞で倒れていたという事態に。そこで、奇しくも2人が同じステージに立ち、人生のネクスト・ステージを目指す歌を歌うまでを追うドキュメンタリーになったのです。そして結果、映画館で上映されるまでに至ったという。

吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON
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── 闘病生活はとても過酷なものだったと思うのですが、そこにカメラを入れることに抵抗はなかったですか?


吉井 僕的にはカメラを回してもらっている甲斐ができたっていうか。そういうハプニングがないと、ドキュメンタリーって面白くないので。また僕は、病気は治ると信じていたし。確かに、告知を受けた瞬間はショックでしたけどね。でも逆にカメラが回っているから盛り上がったというか、頑張らなきゃと思った。これで“死んじゃいました”って終わるのは嫌だから。


── 病気とポジティブに向き合っている姿が、映画からも伝わってきました。


吉井 この撮影中に同世代のアーティストが何人かお亡くなりになり、コロナ禍もあったので、いろいろ心を痛める出来事が多く耳に入り、また自分自身も60歳手前になり、いつまでも元気じゃないんだなって感じるようになりました。それに若い頃はかなりやんちゃをしてきたし、もう自業自得なんだろうなっていう風に、ある種もう割り切れた。自分が悪いんだと思いましたしね。

── また、脳梗塞の後遺症と戦うEROさんが、ありのままの姿でカメラの前に登場しているのも印象的でした。


吉井 彼には本当に感謝しています。当初、このお話を断るかと思いましたが、昔の曲を一緒に演奏したりすれば、少しは生活の足しになるのではという思いでお願いしたら、快諾いただいて。ご自身からもありがたいと言ってくれて。また、宮地監督は持ち前のキャラクターで相手の心の壁を無くしてくれたので、本当にカッコよく撮影いただいたというか。彼の本質を美しくとらえてくださった。


僕自身もヘアメイクをせず、レンタカーでEROさんを隣に乗せてドライブする姿を撮影することも宮地監督じゃなかったらしなかっただろうし。お互い闘病中に、この撮影・監督に癒されたと思います。EROさんも監督のことをすごく信頼していた様子で、最終的には僕抜きでやり取りして撮影していました。ちょっとやきもちも焼きましたね、僕は(笑)。


── 教会での礼拝シーンなども撮影されていましたよね。


吉井 その教会にもドラマがあって。ちょうど牧師さんが退く、その最後のタイミングでの撮影ということになって。アメリカのロード・ムービーみたいなドラマティックな流れになってきたなと。しかも、それが静岡で展開されていて、そこの良さみたいなものも感じていただけるのかなって。

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吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON

── 個人的にはEROさんのお部屋が印象的でした。思い出を大切に保管しながらも、クラシカルなアメリカの雰囲気を感じさせて、タイムレスなカッコ良さがにじみでています。


吉井 本当、カッコいいですよね。宮地監督の映像はドローンが印象的なのですが、他の撮影に関しても、被写体を俯瞰でとらえていて。そこから、世の中や社会が見えてくる。この作品においても、EROさんみたいな人間が日本で暮らしていて、どういう環境で彼が育まれていったのかというのが、伝わってくるのが面白いなって。結果、ファンの人たちだけではなく、たくさんの方が楽しめる見応えのある仕上がりになったのかなって思います。


── 確かに。どんなハンデを背負ったとしても、ポジティブにそれを受け止めて前に進んでいく姿勢は、あらゆる人の心に響くと思います。また、映画にはTHE YELLOW MONKEYのメンバーの方々はもちろん、吉井さんがラスト・シングルを作詞・作曲・プロデュースしたBiSHのみなさんも登場されていますね。二組とも東京ドーム(THE YELLOW MONKEYは活動休止前公演などで、BiSHは解散公演)とは深い関わりがあるのも<因縁>のような。


吉井 あえてこの作品の中では省いたのですが、コロナも結構重要な要素だった。だけど、もう収束したし、いつまでもそれを取り上げるのも……ということで省きました。ただ、その<因縁>も作品には入っていると思います。

── そうですよね。マスクをつけて会場に足を運ぶ観客の方々の姿、ライブ配信する様子など、ところどころに影響を感じました。そういうこともすべて受け止めて、ラストの教会でのEROさんとのセッションは、とても胸に響くものがありましたね。


吉井 この映画のタイトルを『みらいのうた』に決めたのは、編集が終わった頃。最後の最後にエンドロールで流す曲もないってことになって、サブスクで自分の歌を検索していくなかで、これじゃないかって。EROさんに向けた楽曲にもなっているし。そもそも「みらいのうた」はドキュメンタリーを制作する以前からあるものですし、また「Getting The Fame」(URGH POLICEの楽曲)も栄光を掴むという内容なのですが、それも映画を通じて特別な意味を持ったと思います。


── あのセッションはいかがでしたか? 吉井さんはベースを演奏されていましたが。


吉井 僕はもう緊張していただけで。何せ、久しぶりにベースを弾いたので(笑)。

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吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON

── とても心に残るセッションでした。また、映画で吉井さんは病気をきっかけに音楽との向き合い方が、10代の頃に戻ったとも語っていらっしゃいましたが。


吉井 そうですね。特に歌詞に関しては、一時期はスランプに陥っていたこともあったのですが、今は結構楽しいというか。一度、死と向き合ったことでパッションみたいなものが蘇ってきたような。創作意欲が高まった気がします。もう、くだらない曲を作らなくてもいいという気持ちになってきましたね(笑)。ただ、これって病気になってみないとわからないことだと思いますよ。それはそれで幸せなことだと思いますが。

── 確かに。ちなみに、現在は節制した生活をされているのでしょうか?


吉井 この病気になったのは、喫煙が影響していると言われました。10年以上前から吸っていないんですけどね。やめた年数よりも、吸ってきた本数が問題なんだとお医者さんに言われました(苦笑)。


── そうすると、現在の吉井さんのタバコの代わりになる嗜好品って何になるのでしょう?


吉井 クルマが好きですね。コロナの時は、それくらいしかストレスを発散できる方法がなかったので、いつ死ぬかわからないから、乗りたかったものに全部乗ってやろうと、かなりの台数を所有していたことがあります。管理するのも大変なので、多くを手放しましたけど(笑)。やっぱりドライブはストレス発散になりますね。夜の高速を走らせたりだとか。

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吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON
── お気に入りの一台とかありますか?

吉井 ありますよ。クラシックなものなので、起動させるのにかなり時間がかかるし、音がうるさくて。たまに、うるさいという苦情がくるし、若い人からは白い目で見られることもあります(苦笑)。全然カッコよくないですよね。もうそういうものがカッコいい時代は、終わったのだと思います。

── そんなことはないと思います。では、現在の吉井さんがカッコいいと思うものはありますか?

吉井 僕は釣りも趣味なのですが、釣りの業界で成功した方が一念発起してツール製作会社を立ち上げられたのです。海外の工場に作ってもらって、日本で売るということをやめて、工場を建てて、そこでゼロの状態から作るという。その一匹狼みたいな姿勢が、とてもカッコいいなと思っていて。しかも、すげえいいクルマに乗っているんですよ(笑)。
── 吉井さんのストイックな音楽への姿勢にも通じる部分があるような。

吉井 いや、できませんよ。いま歌をやめて別のことをするなんて。ベーシストにも戻れないし(笑)。

── そのカッコよさをキープさせるためにしていることはありますか?

吉井 最近始めたのが、1日に摂取する脂質を50グラムに制限すること。また、何食かに分けて白米を100グラムずつ摂るとか。でも、お酒は週末に嗜む程度に飲んでいますよ。週に4、5日飲酒して焼肉とかはできませんけどね(笑)。ただ、それで健康でいられるなら、それは素晴らしいと思います。

── 吉井さんは、来年(2026)に60代を迎えられます。50代のうちにやっておきたいことはありますか?

吉井 僕は早く60歳になりたい。その年代になった方々、みんな楽しそうですし。59って中途半端だなって思いますね。そこを頑張って、なんとか乗り越えたい。
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吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON
── 60代になったらやってみたいことはありますか? 郷ひろみさんは以前、本媒体にて50代を機に左利きに変えたということをおっしゃっていましたが。

吉井 うわっ! まさにそれ、 最近の自分のテーマなんです。実は、数日前からマイクの持ち手を変えてみたのですが、最初はとても歌いづらいんですよ。みなさんもぜひカラオケで試してほしいのですが、思い通りの声が出ないと思います。ゴルフでも、飛距離が違うはずですよ。でも、それは長年の身体のクセで、ちょっとずつ軸がズレ(屈曲し)てきているということなんですよ。

矯正するために、不慣れなことをしないと、とトレーナーの方などに言われまして。試していくうちに、自転車に乗れるように自然と慣れていくからと。確かに、続けるうちにとても楽に声が出るようになりまして、これか! と(笑)。だから、ひろみさんのおっしゃることはすごいなって思いました。実は僕は両利きでして、ボールを投げるのは左で、蹴る時は右みたいな。だから、今後は反対でそれを試してみたいと思います。
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吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON

● 吉井和哉(よしい・かずや)

1966年10月8日、東京都生まれ。71年に事故で父が死去し、小学校入学後に母の郷里である静岡へ。10代になるとベーシストとしてバンド、URGH POLICEに加入。89年に現ラインナップにてTHE YELLOW MONKEYを始動。92年にメジャー・デビューを果たす。01年にバンドは活動休止(のちに解散)し、ソロ活動に専念するものの、16年に再集結。現在は、バンドとソロの両面で精力的な活動を続けている。現在、ソロツアー「吉井和哉 TOUR2025/26 IVIVI BLOOD MUSIC」を敢行中。25年12月28日は日本武道館 、 26年1月15日はZepp Hanedaにて公演。

最新情報はこちら

吉井和哉 https://www.yoshiikazuya.com/

THE YELLOW MONKEY https://theyellowmonkeysuper.jp/

吉井和哉 THE YELLOW MONKEY みらいのうた LEON

『みらいのうた』

THE YELLOW MONKEYのボーカリスト/ソロ・ミュージシャンとして活躍する吉井和哉のドキュメンタリー映画。監督は、数々のミュージシャンのドキュメンタリー映像やミュージック・ビデオを手がけ、最近は俳優・東出昌大の狩猟生活に密着した映画『WILL』でも注目を集めた、エリザベス宮地。2022年より取材を開始し、その数カ月後には吉井が初期の喉頭がんを患っていることが発覚、そこからの闘病の日々や、24年に開催された東京ドーム公演「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”」の模様など、濃密な3年間を記録した内容に。それと同時に、吉井の幼少期の思い出やロックとの出会いなども描写。ラストの吉井自身のルーツであるバンド、URGH POLICE(アーグ・ポリス)のボーカリストであるEROと響かせるセッションは、ロックに魅せられた男たち、つまり年齢やハンディキャップを乗り越えて好きなことを追求し続ける人間の熱き魂を感じて、心が震えるはずだ。
全国公開中
公式HP/https://mirainouta-film.jp/
©︎2025「みらいのうた」製作委員会
配給:murmur 配給協力:ティ・ジョイ

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