2025.12.06
注目の女子高生俳優、池端杏慈さんに人生を教わりました!
今回のゲストは、なんと18歳! 現役女子高生モデル・俳優の池端杏慈さんです。「ポカリスエット」や「ゼクシィ」のCMにも抜擢され注目度急上昇中の池端さんが映画『白の花実』に出演。池端さんのフレッシュな魅力に樋口さんが迫ります。
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インタビュー/樋口毅宏 構成/井上真規子 写真/平郡政宏 スタイリング/中澤咲希 ヘアメイク/加勢 翼 編集/森本 泉(Web LEON)

今回のゲストは、モデル、女優の池端杏慈さん。2021年に、中学2年生でティーン誌『ニコラ』の専属モデルとしてデビューし、以来、若手女優としても活動をスタート。次世代俳優として注目度は非常に高く、人気女優の登竜門である「ポカリスエット」のイメージキャラクター、「ゼクシィ」15代目CMガールにも抜擢されています。
そんな新進気鋭の池端さんが出演する新作映画『白の花実』が、12月26日に公開予定。厳格な寄宿学校に転校してきた主人公・杏菜(美絽)が、美人で完璧なルームメイト・莉花(蒼戸虹子)の突然の死に直面し、莉花の幼馴染・栞(池端さん)とともに莉花の日記を通して、生と死、そして現実に向き合っていく不思議なガールズ・ムービー。映画の見どころ、そして池端さんのフレッシュな魅力に樋口さんが迫ります。
「10代の女性のきめ細やかな心理描写が丁寧にすくい取られている」(樋口)
池端杏慈さん(以下、池端) ええ〜(笑)。緊張しないでください〜!
樋口 映画『白の花実』、ひと足先に拝見しました。僕のようなおじさんからしたら、遠い遠い昔のことなんですが、10代の女性のきめ細やかな心理描写が丁寧にすくい取られているなと感じました。うちに秘めた暴力性みたいなものも、巧みに描かれていてとても良かったです。
池端 うれしいです。ありがとうございます。

池端 そうですね。学校帰りに制服のままオーディションへ行って、面接のような形で坂本監督(坂本悠花里)とお会いしました。台本を事前にもらっていたので、「ここのセリフをお願いします」といわれて、お芝居した感じです。
樋口 学校帰りに! あ~……。学業とお仕事を両立させるのは、難しくないですか? 寝る時間ありますか…⁉
池端 大変な部分もあるんですけど、周りの友達が「杏慈、これ見たよ〜!」とか、「楽しみにしてるね!」って言ってくれるので、すごく支えられています。そういう言葉が、自分がお仕事をするひとつの源になっていますね。
池端 そうですね。もともとモデルやお芝居に興味があったんですが、中学2年生の時に『ニコラ』の専属モデルのオーディションを見つけて応募しました。そこでグランプリをいただいて、初めて事務所にも所属して、モデルとしてスタートしたんです。
樋口 しかも池端さんは、すでにポカリスエットやゼクシィなど、名門とも言えるCMのイメージキャラクターにも抜擢されているんですよね。いや〜、すごい……! 反響は、それはそれはすごかったと思いますが、お友達からは何て言われましたか?
池端 ポカリスエットは、電車の車内広告とか、渋谷駅とか、色々なところに掲載されたので、「ここに杏慈いた!」とかみんな写真を送ってきてくれて。ゼクシィは、CMが放映された後に学校へ行ったら「杏慈、おめでとう」って、みんなが見てくれて、すごくうれしかったですね。

池端 いえ、まったくなかったです! そういうの私、全然わからないので……。ただオーディションではよく見せようとしちゃう部分がどうしてもあるから、それはなしにして、そのままの自分らしさを監督に見てもらおうと思ってお芝居しました。
「池端さんは本当にいい作品に出られたと思う」(樋口)
池端 台本を読み終わった後、言葉で表現できないような不思議な感覚に包まれました。美絽さん演じる主人公の杏菜が、大人に対する敵意の目みたいなものを持ちつつも、栞とともに生と死にしっかり向き合う姿が描かれていて、すごくカッコいいと思いました。
樋口 そうですね。作品は静謐なトーンで占められていましたが、撮影はどんな雰囲気で進められたんでしょう?
樋口 撮影はどこで行ったんですか? 作中に出てきた湖もすごく綺麗でしたね。

樋口 なるほど。それは大変な撮影でしたね。坂本監督は、今作が長編デビュー作だし、出演者の皆さんもキャリアがスタートしたばかりの方が多い中で、監督の演出やアドバイスはどんな感じだったんでしょうか。
「杏菜への嫌悪感をもうちょっと出して」「莉花のことを大切に思っている表情で」など、細かく的確に言ってくださるので、すごくお芝居がしやかったです。
樋口 優しい方なんですね。それから教師役の門脇 麦さんは、この対談にも以前出ていただいたことがあって。すっごく個性的な方だったんですが(笑)、実際共演されてみていかがでした?
池端 門脇さんには、沢山元気をいただきました。一緒のシーンを撮った時に、公園にセミの抜け殻がいっぱい落ちていて、門脇さんがその抜け殻を1個ずつ地面に並べていたんです。何してるんですか? って聞いたら、「いっぱいあったから並べてみた」って言ってて、可愛いかったです(笑)。
池端 あと、撮影では門脇さんと先生・生徒の立場だったんですが、坂本監督から「最初はアドリブで」って言われて、私がすごく緊張してしまったんです。そうしたらカットがかった時に、門脇さんが「アドリブ苦手なんだね!」ってとても明るく言ってくださって。私にまで気を遣ってくださって、すごく助けられました。

「普段思っていることを書き留めておくのって大事」(池端)
池端 映画に出てくる3人は中学3年生の設定なんですが、周りの大人に比べてしっかり現実に向き合う姿が描かれていたので、お芝居しながら自分も見習いたいなって思いました。特に、最後に杏菜が言う「あなたたちは何のために生きてるの?」っていうセリフは、すごく考えさせられましたね。
樋口 本当にそうですね。
池端 あと、杏菜は作品の鍵となる莉花の日記から彼女の本当の気持ちを見つけていって、栞も最後には日記を見て分かっていくんですが、普段思っていることを書き留めておくのって大事だなと思いました。
以前、お芝居の先生にも「嫌だったこと、悲しかったこと、なんでもいいから書いといて。後で見返した時に、お芝居につながる何かの手掛かになるから」って言われたことがあって。改めて大事だと思いました。
池端 はい。普段一緒にいる友達や家族も、表面上でしか見れていない部分があるかもしれないなと思います。映画では、莉花が急にいなくなった原因が段々分かってくるけど、現実の世界ではわからないことの方が多いですよね。だからこの映画で、そういう考え方も皆さんに知ってもらえたらいいなって思います。
樋口 演じるうえで悩んだシーンはありましたか?

樋口 非常に緊迫したシーンでしたね。
「モデルの仕事を始めてから、写真を撮るのが好きになった」(池端)
池端 お仕事をする前は恋愛ものや青春系とかをたくさん見ていたんですけど、お仕事を始めてからは小劇場でやるような作品も色々見に行くようになって。ここ最近で一番印象に残っているのは杉咲 花さん主演の映画『市子』。
樋口 そうなんですね。『市子』は本当に素晴らしかったですね。昔から映画やドラマを見て研鑽を積んでいらしたわけですが、実際にお芝居を始めてみて、私ならこうするなとか考えながら見るようになった感じですか?
池端 そうですね。お芝居を始めてからは、映画を見ていて「このシーンはなんでこの画角から撮ったんだろう?」とか、「自分が撮影現場にいたらどうやって感じるかな」っていうことを自然に考えるようになりました。

池端 そうかもしれません。『ニコラ』でモデルのお仕事を始めてから、写真を撮るのが好きになったんですが、SNSの投稿で余白や人物の位置を考えたりするのも楽しいです。些細なことですが。
「慈悲の心を持った優しい人になってほしかった」(池端)
池端 そうですね。小学校ぐらいの時から、親が個人面談で「杏ちゃん先生に褒められてたよ」って言われるのがすごいうれしくて。周りからそう見えてるんだなって思いつつも、自分ではそんなしっかりしているわけじゃないなって思っていました(笑)。
樋口 お姉さんタイプなのかもしれませんね。そして杏慈ってお名前はご本名なんですよね。

樋口 すごく素敵なお名前だと思います。名前の由来ってご両親から伺っていたりしますか?
池端 母から、一番の理由は響きが可愛いと思ったからって聞いていて。あとは男女関係なく、伝わりやすい名前だって思ったみたいです。「慈」にしたのは、慈悲の心をもった優しい人になってほしかったからだって。
樋口 お名前は気に入っていますか?
池端 そうですね。今まで同じ名前の人に会ったことがないので。
池端 それ、言われたことあります!
樋口 泣きのバラードなんですけど、すごい名曲なのでぜひぜひ。今日はありがとうございました。
池端 ありがとうございました。

【対談を終えて】
だってですよ! あんな綺麗な御嬢さんとこんな「なれの果て」みたいなオヤジが一枚のフレームに収まるなんて申し訳ないじゃないですか。
しかし賢明な担当編集者Mさん(私より年上)から、「年齢は関係ないですよ。大人として扱ってあげれば」と嗜められ(さっきから全部言い訳)、当日に備えました。
池端さんと話してみて、あまりにしっかりしているので感嘆というか、心が洗われました。自分が18歳の時は……それどころか池端さんが生まれた2007年、当時の爛れた生活のことを考えると頭のてっぺんから汗が吹き出すのを止められません。
振り返れば自分が池端さんと同じ年頃、上の世代からおおざっぱに、「若い人たち」と何か特別に新しいような、まるですべてを肯定するように正しく扱われることに反感を持ったものです。
池端さんが思案に耽り、誠実にひとつひとつの答えをくれる時、「若い人から教わるとはこのことか」と感じ入りました。年齢は関係なく、一対一の「大人」として接してくれた喜びがあったのだと思います。なんてことはない。馬齢を重ねて、「若い人たち」と一括りにしていたのは自分のようです。
池端さんの3倍長く生きてきましたが、飽きもせず斜に構えた性格は治らないでしょう。育児家事真っ盛りの私ですが、3歳の娘が成長して大人になったらパパを嫌いにならないよう、それからモノを教えてくれるよう頑張りたいと思います。
樋口毅宏

● 池端杏慈(いけはた・あんじ)
2007年生まれ、東京都出身。2021年にファッション誌「ニコラ」のオーディションでグランプリを獲得し、専属モデルを務めた。2023年には、ポカリスエットのCMキャラクター、2025年には、ゼクシィ 15代目CMガールに抜擢される。さらに、高校サッカー選手権21代目応援マネージャーに就任し、注目を集める。ドラマ「オールドルーキー」(22/TBS)で俳優デビューを果たし、映画『矢野くんの普通の日々』(24/新城毅彦監督)で、映画初出演。主人公の親友・高遠麗を演じた『ストロベリームーン』(25)も公開中。
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● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊で初のノンフィクション作品となる『凡夫 寺島和裕。「BUBUKA」を作った男』(清談社)が好評発売中。雑誌『LEON』で連載した小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」も単行本化予定。
X/@byezoushigaya

『白の花実』
第73回サン・セバスティアン国際映画祭New Directors部門のクロージング作品として選出され、現地のワールドプレミア上映後には熱い喝采を浴びた本作。監督を務めたのは、『21世紀の女の子』(19)の一篇「reborn」で注目を集め、中編「レイのために」(19)や短編「木が呼んでいる」(20)など数々の映画賞を受賞した経歴をもつ坂本悠花里。少女たちの繊細な感情を耽美にすくいとった唯一無二の映像感覚で、鮮烈な長編映画デビューを飾る。
【ストーリー】周囲に馴染めず、転校を繰り返す杏菜(美絽)が、新たな寄宿学校で出会ったのは、美しく完璧な少女・莉花(蒼戸虹子)。しかし、莉花は突然、屋上から飛び降りて命を絶ってしまう。残されたのは一冊の≪日記≫。ページをめくるたび、莉花の苦悩や怒り、痛み——そして莉花の幼なじみ・栞(池端杏慈)との記憶と、言葉にできなかった“ある秘密”が浮かび上がる。やがて日記から青白く揺れる“鬼火”のような魂が現れ、杏菜の心に静かに入り込み…杏菜は予想もつかない行動へと踏み出す——。
2025年12月26日(金)より全国順次公開
HP/映画『白の花実』公式サイト
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ビー エディション ニュウマン新宿店︎ 03-3351-3430















