2025.11.18
中島侑子「これからのインフルエンサーは“狭く濃い繋がり”を大事にすべきです」【後編】
元医師で、現在は人気インフルエンサー養成スクールを主宰する中島侑子さんが、「SNS発信」の世界で起業するまでの紆余曲折を語ってくれた前編。後編では、彼女が考えるSNS発信の真のメリットを伺いました。
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写真/岸本咲子 文・編集/アキヤマケイコ
フォロワーの数は重要じゃない。少ない数でも熱狂的なフォロワーを作れば、SNSは成功です

中島侑子(以下 中島) ちょうど日本でInstagramが認知され始めた2017年頃に、手元にあった世界を旅行した時の写真を発信してみたんです。そうしたら反響が大きくて、フォロワーがみるみる増えました。企業からPRの依頼も来るようになり、「芸能人でもない一般人に、こんなに声がかかる世界があるんだ」と感動しました。
漠然とですが「これが航空会社の機内誌の関係者の目にとまって、執筆できればいいな」という夢もあったのですが、それに近づけた気もしました。Instagramの、画像を気軽に投稿できて、共有もしやすいという発信方法も新鮮で楽しかった。そうしたら、ブログの読者の方から「Instagramの発信の仕方を教えてほしい」という希望が出てきたので、トライアルで5人に自分のノウハウを教えてみたんです。そうしたら皆さん、驚くほど早くいい結果が出たて、それにも驚きました。
── どういう方が参加されて、どんな結果が出たのですか?
元バリキャリで今は専業主婦で育児中という方もいらした。その方は、現状の生活にもやもやしていて、自己肯定感が地に落ちていたそうですが、発信をきっかけにフォロワーから共感や励ましのメッセージをもらえるようになった。それが、涙が出るほどうれしかったそうです。
これは、多くの人に結果が出るメソッドだと確信できたので、発展させて自分の仕事の柱にしようと思いました。それが「TOKYO インフルエンサーアカデミー」をスタートさせる第一歩になりました。
ノウハウだけ教えるのではなく、一緒に行動して、結果まで見届ける講座です

中島 そうです。自分なりに試行錯誤しながら、今の4カ月・1クールというスタイルに落ち着きました。実は、最初のトライアルの後、しばらく「1day講座」を開催していたこともあるのですが、それはあまりうまくいかなかった。講座を受けた直後は、受講生は皆「これから頑張ります!」と目を輝かせるのですが、3カ月後に彼らのアカウントを見に行くと、9割5分くらい変わり映えしていない。「人って、なかなか行動しないんだな」と反省しました。
ですから、ノウハウを教えるだけでなく、その人が行動できる環境を整え、一緒に行動して、その人の人生が変わるところまで見届けないといけないと思って、メソッドに落とし込みました。またそれらを集中して学べる最適な期間も、4カ月だと分かりました。
── 講座を聞いただけで満足して終わる……確かに“あるある”ですね(笑)。
中島 今の私の講座では、SNSで発信する前に、「自分の考え」や「自分自身がどうありたいか」「実際にどう行動するか」をしっかり考えます。また実際に発信して振り返りをしたり、受講生同士の意見交換も行っています。発信をきっかけに、今の自分と未来の自分を見つめられる。なので私は「人生を変える講座です」とお伝えしているんです。
身近な人に、自分の本来の姿や思いを理解してもらえる。それもSNSで発信するメリットです
中島 50代のワインの輸入会社の社長の方を例に挙げると、彼は、社会的地位は高く、すでに会社の広報的な発信はやっていらした。でも「もっと自分の思いを自由に発信したい」「世の中にワインへの愛をアピールしたい」とお考えでした。それでInstagramをブラッシュアップされたところ、それが社員の採用にものすごく繋がったそうです。
── 採用目的で始められたわけではないのに?
中島 その目的も少しはあったそうですが、想像以上だったようです。社長のワインに対する熱い思いや、日々、すごく学んでいらっしゃることが、Instagramからしっかり伝わるようになったからでしょうね。
取引先に行くと「いつもインスタ見てますよ」「本物にお会いできるなんてうれしいです」といった反応が返ってくるようになって、今や彼は、“業界のプチアイドル”状態になっているようです。
さらにすごいのが、社長に影響された社員が、自主的にワイン関係の発信するようになり、社内で8人もインフルエンサーが誕生したとか。
中島 他には、50代で「退職金ファイナンシャルプランナー」の肩書きの方を例に挙げると、YouTubeとInstagram をブラッシュアップしたことで、仕事の問い合わせや契約が増えた。でも、一番うれしかったことは、その発信を見て、息子さんが自分の会社に入社されたことだとか。
── 父親の本来の姿をSNSで改めて知って、後に続いてくれたと。「家の中で話せば?」と思うかもしれないですけど身近な人の考えていることって、意外と分からないものかもしれないですね。
中島 そうですよね。私も夫に昔から仕事の話は一切しないです。でも、夫はSNSで私のやっていることを見て、理解してくれているようです。
── SNSって、広範囲の人に何かを広めていくイメージですが、身近な業界の人、家族や友人に対して、自分の思いを伝えるのにも有効なんですね。
中島 私が提唱している「ミニマルインフルエンサー」の考え方は、それに近いものがありますね。SNSって「誰に」「何を」届けるかが大事。多くのインフルエンサーは、その「誰に」を広く求める人が多いんですが、「ミニマルインフルエンサー」は、その人が提供するサービスや考え方を、本当に必要としている人に絞って届けよう、という考え方です。
フォロワーの数や「いいね」の数を増やすことより、フォロワー1人1人との密度の濃い繋がりを大切にする。自分の哲学や人生の物語に共感・共鳴してくれる仲間を増やす。そのほうが夢を確実に叶えてくれるし、また自分の幸せにも繋がると私は思っています。
── SNSの発信って、想像以上にいろいろな可能性がありそうですね。
中島 発信して、フォロワーから反応や質問をもらうことで「こんなニーズがあるんだ」ということもわかる。自分にとって当たり前だと思っていたことが、他の人にとっては知りたいこと、価値のあることだったと気付かされることもある。それを続けていくと、自分の持っているいろいろな可能性が引き出せて、自分をステップアップさせてくれる。だから、SNSでの発信は、誰もが、やった方がいいと思います。
中島 近々の夢は、今、挑戦中の全国47都道府県の講演会・ワークショップを無事終わらせることですね。SNSについて学びたいけれど、東京や県外に遠出しにくい、という地方在住の女性って、まだまだ多い。そういう人たちに、私が実際に会いに行って、背中を押しに行こうという企画です。
同じような思いの参加者同士が、その場で直接繋がれることもメリットで、「ママ友じゃない繋がりが初めてできた」と喜ばれたりするので、Zoomなどを使った講座とはまた違ったやりがいがありますね。
── その先、もっと将来に向かっての夢はありますか?
中島 漠然とですが「ミニマルインフルエンサー」の考え方を、世界に広げられないかなと考えています。「ミニマリスト」とか「余計なものを捨てる」とかって、「禅」の思想みたいに日本っぽい。だから「ミニマルインフルエンサー」も海外でウケるかもしれないですよね。
やりたいと思う気持ちがあり、諦めずにやっていれば、周りも自然に理解してくれるものです

── 周囲の方は、協力的ですか?
中島 そうですね。夫は、最初は私の起業に反対していましたが、諦めずにやっていたら、徐々に応援してくれるようになりました。出産をしたら、家事も育児も私がメインでするのかな、と思っていましたが、今は夫が子どものお弁当を作ってくれたりします。やりたいという気持ちが強くて、誰に何を言われても諦めずにやっていれば、周りも自然に巻き込まれてくれるのかなと思います。
あと、それこそインフルエンサーは、活動する時間を自分で決められるのがメリットですから。子育て中で時間がないと思っている人も、やろうと思えばやれる。自由で夢がめちゃくちゃある世界です。
中島 「美学を持って生きている人」。美学って、人によって違うと思いますが、例えば私の場合だと「人の悪口は言わない」ことですね。
何にせよ、自分の人生で、自分に恥じない生き方、美学を持って生きてる人はカッコいいと思います。

● 中島侑子(なかじま ゆうこ)
インフルエンサー養成スクール「TOKYO インフルエンサーアカデミー」を主宰。多くのインフルエンサーを育成し、卒業生の総フォロワー数は320万人にものぼる。外務省の訪日外国人向けプログラムでのInstagram講座、2020年東京オリンピックに向けた福島観光開発のためのコンサルティング、全国地方創生のためのSNS講座などを担当。全国各地で講演活動もおこなっている。二児の母であり、元救命救急医という顔も持つ。世界52カ国を旅した経験も。インフルエンサーとして夢を叶えるための独自メソッドを記した『ミニマルインフルエンサー主義』(Gakken)も上梓。

『ミニマルインフルエンサー主義』(Gakken) 著:中島侑子
「フォロワーは増えているけれど、売り上げに繋がらない、夢が叶わない」「アカウントを作ったけれど発信が続けられない」……そんなSNS発信に悩む人に向け、人気インフルエンサー養成スクールを主宰する著者が、効率的に最大限の結果を出す方法論を紹介。少数精鋭のフォロワーと質の高い関係性や影響力を構築することを重視する「ミニマルインフルエンサー」という考え方が、夢を叶えるスピードを劇的にアップします!















