2025.09.03
好井まさお「吊り橋効果とギャップを生み出すから、怪談は男女のトークにも使えますよ」【後編】
今大人気のYouTubeチャンネル『好井まさおの怪談を浴びる会』の主宰者・好井まさおさんへのインタビュー。後編ではモテたいおやじさんたち必聴の、怖くてリアルな怪談にまつわるアレコレをお届けします。
BY :
- 文/矢吹紘子
- CREDIT :
写真/トヨダリョウ 編集/森本 泉(Web LEON)

どれもがリアリティがあって中毒性たっぷり、つい過去のエピソードを遡って無限ループをしてしまうのですが、それを支えているのが好井さんのトーク術であることは言うまでもありません。番組に登場する豪華ゲストの方々に気持ちよく話をしてもらう気遣いと、ギャップを引き出だすテクニックは、LEON読者諸兄の永遠のテーマでもある“モテ”にも繋がるのでは? 前編(こちら)に続き、今回はちょっとヨコシマなアングルから、好井さんと一緒に怪談を掘り下げます。
怪談好きは、オシャレでキレイな人が多い
好井まさおさん(以下、好井) そうですね。あと、これは僕の持論なので偏見もあるかもですが、怖い話が好きな女性ってキレイな人が多いんですよ。ライブに来てくれるお客さんも、マジでお洒落な人ばかり。ハイセンスはもちろん、ハイステイタスって意味でも。
── それはLEON読者にも朗報です(笑)。
好井 特にファッション関係者、モデルさんやデザイナーさん、プレスの方。そういう人たちがライブの最前列にずら~っと座ってる。最前列ってガッツを出してチケットを買ってくださった人たちなので、こっちもしっかり見るじゃないですか。
好井 僕は結婚してますし、独身の時もコンパには全然行かなかったんですけど、先輩と飲みに行ったらやっぱり「何か怖い話ある?」って振られるんですよ。そういう時は場所や仕事にまつわる話をするのがよくて、例えばそこが渋谷のバーだったら渋谷で起きた怖い話をする。同じ感じで、女性との飲み会で隣に座った人が有名テーマパークで働いていたら、「あのテーマパークであった事件知ってます?」ってフってみるとか。
乾杯の後、5分くらい「何してる人なんですか?」とか聞きながら、仕事、年齢、家族構成、出身地と自分の検索エンジンをフル稼働させて、ヒットするのを待つだけ。それで全部いけます。

怪談もお笑いも、トークの基本は同じ
好井 そもそも普通の話をするスタンスでいた方がいいと思うんです。流れとしては「どんなYouTube観てるんですか?」から入って、もしその答えに都市伝説、オカルト系、怖い話の3つのどれかが含まれていたら、「そういえば〜」って続ける。
── その質問で見極めると。そこで怖い話OKというラインをクリアしたとしても、やっぱりスキルも磨かなければダメなのかなとも思うのですが。好井さんの怪談の語り口って、すごく自然でスッと入ってきやすいので。
── 共通点を見つけるということでしょうか?
好井 飲みの席で初対面だと最初その人の日常はわからないけど、30分も話せば人となりや趣味趣向って見えてくるじゃないですか。例えば相手も自分もクロームハーツが好きってなったら、クロムハーツの話題を投げればいいし、歯並びがキレイだったら「僕、歯列矯正しようと思ってるんです」って切り出せる。怪談も同じで、話す相手によって一番怖い話は変わるので、まずは対象を決めるのが一番良いと思います。
好井 そうそう。怪談ってできる人とできない人がいるし、そもそも無駄なものじゃないですか。そういうプラスαの引き出し、まだ出してない余白の部分があるって考えると、2回目のデートの時ちょっと楽になりません? 「残りの手札、まだこんなの持ってますよ」っていういいオプションになる。気持ちに余裕がある人ってモテるでしょ。
好井 あとはギャップ? 普通のトークでも、実はそんなに面白くないけど、話す人のイメージとのギャップがあるからむっちゃ受けるっていうパターン、ありますよね。
── この人がこんなことを言うんだ!? みたいなやつの怪談バージョンですね。それに今、ちょうど夏の怪談シーズンですし。
好井 でも実は怪談って、真冬の方が引きがあるんですよ。これはチャンネルの統計でも出てるんですけど、真冬のライブの方がお客さんが入るし、YouTubeも一番回ります。寒い時にアイス食うのと同じ感覚? だから今年は真冬にけっこうな数の公演をする予定なんです。
── つまり怪談って、夏も冬も、季節を問わず使えるってわけですね。年中モテたい読者にはもってこいです(笑)。

日本人には“スピリチュアル”が染み付いている
好井 そう思います。街を歩いていると声をかけられることが増えましたもん。おきれいなマダムが「見てますよ」って話しかけてくださったり(笑)。
── 特にファッションやメディア関係といった業界の人たちって、そういったいわゆる“スピリチュアル”が好きな人が多いイメージもあります。
好井 多いですね~。名前は出せないですけどある知り合いの国民的なスター芸人は、神社で手をあわせて、周囲の人に感謝して、慈善団体に寄付して、って全部やってます。まあ、年に10億稼ぐレベルの人になると、それぐらい気が回らなかったら無理ですよね。
好井 お化けなんて科学的に証明されてないって言う人もいるけど、じゃあ墓参りは何でするの? って話で。命日でもないのに婆ちゃんの墓に手を合わせるのなんて、よくよく考えると激シブですよ。でもそれをみんな普通にやってる。スピリチュアルというものが、日本人には特に染みついてると思うんです。
── 理屈じゃない何かが、生活の中に入り込んでいる。神社に行ってお守りを買うという行為を、みんなが普通にしているのもそうですし。
好井 このあいだ浴びる会の福岡公演に、又吉直樹さんが無理矢理休みをとって出演してくれたんで、翌日僕と又吉さんと「たっくーTVれいでぃお」のたっくーさんと3人で福岡の神社をいろいろ回ってきました。
好井 又吉さんは芸人の先輩ですが、ホンマの友達だし、本当のお兄ちゃんみたいな感じ。一昨日も又吉さんのYouTubeチャンネルの撮影終わりに鉄板焼きに行ったんですけど、あの人が全部もんじゃ作ってくれるんです。本人的には別にスピってはいませんってスタンスかもしれへんけど、そういうのをすごく大切にしていると思います。

モテたいオヤジさんの教訓にもなる(?)鉄板話をひとつ
好井 うーん、「読めばモテる怪談を教えます!」みたいな感じで僕がLEONに載るのは嫌やな(笑)。
── え~、何か鉄板のネタってあるんじゃないですか?
好井 じゃあ、男女の出会いでマッチングアプリってよく使われてるじゃないですか。そこで気をつけてほしい怪談があるんです。実際にあった話なんですが。
具体的にはアプリに登録するんですよ。そしたらひっきりなしに連絡が来る。最初は40歳代半ばの女性とご飯に行って、帰りに3万円とタクシー代をもらう。それで味をしめて、肉体関係を結ぶ人も出てきて。そんな中、ある60歳くらいの女性から回ってきた案件がめっちゃデカくて。
彼女の家で料理を作って欲しい。一緒に食べた後に皿を洗っている間、ダイニングで座っててほしい。最後に添い寝をしてほしい。その4時間で20万円。でも登録の場所は大阪府だったんやけど、実際は福井寄りの京都府。「嘘ついてるやん」ってメッセージしたら、「ごめんなさい、どうしてもあなたに会いたくて」と。それでその男の子は20万のためにはるばる現地に行ったんです。

家に入ったら右手に客室、左手に障子が貼られていない木枠の扉。その先に12畳ぐらいの広間がある。そこが間接照明なのか、室内が若干明るいんですよ。「何やろう?」と思って覗いたら、仏壇。ええメロン、ええフルーツが並んでる中に遺影があるんですけど、その遺影がその男の子なんです。
「なんで俺? こんな写真撮ってないし。似てるというか俺やん、何なのこれ!?」って心の中では混乱しつつも、女性に促されるままリビングに行ってたわいもない話をして、さっそく料理を作る。それを彼女はにこやかに見てるんです。
それで彼女はキッチンへ。ただこれ、当事者にしかわからないそうですが、その話し方がめっちゃ気味悪かったんですって。息子が病死したことをちょっと楽しげにしゃべるのが。だけど不気味やなって思いながらも、ちょっとほろっときたりもしてたから、「そうなんですね」ってごまかしつつ、女性がお皿を洗ってる間にスマホで事故物件サイトの『大島てる』を検索したら、炎のマーク。
4年前、母親が息子をめった刺しで殺害し逮捕。その後精神鑑定により釈放。現在も居住。「うわ!」ってなって、そのまま大急ぎで逃げ帰ったって話。
── 怖っ、ありがとうございました!

● 好井まさお(よしい・まさお)
1984年生まれ。大阪府出身。NSC東京校を卒業後、2007年に井下昌城(現・井下大活躍)とお笑いコンビ「井下好井」を結成。並行して『人志松本のゾッとする話』などに出演するなど、怪談師や俳優としても活躍。2022年12月31日に解散。現在は『好井まさおの怪談を浴びる会』のほか、ファッションに特化した『好井&カナメクト』などのYouTubeチャンネルを運営。初の著書『好井まさおの怪談を浴びる会』(KADOKAWA)が発売中。今後は全国ツアー「劇場版 好井まさおの怪談を浴びる会」公演(9月13日仙台電力ホール、10月18日広島JMSアステールプラザ大ホール)が控えている。
YouiTube/好井まさおの怪談を浴びる会