2025.08.29
臼田あさ美さん=大人になった美少女はみずみずしさがマシマシになっているではないか!
今回のゲストは女優・モデルとして幅広く活躍中の臼田あさ美さんです。8月31日から始まる舞台KOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴―』に出演する臼田さんに、8年ぶりという舞台のことからこれまでのキャリアやプライベートのお話までたっぷり伺いましたよ。
- CREDIT :
インタビュー/樋口毅宏 構成/井上真規子 写真/トヨダリョウ スタイリング/森川雅代 ヘアメイク/廣瀬瑠美 編集/森本 泉(Web LEON)

今回のゲストは、ティーン誌の読者モデルとしてデビュー後、女優に転身、ドラマや映画で数々の作品に出演してきた臼田あさ美さんです。
現在は、新たな挑戦として8年ぶりに舞台の主演を務めます。作品は、8月31日から公演の『サヨナラソング ー帰ってきた鶴―』。劇中では一人二役を演じるという臼田さん。これまでのキャリアや舞台への思い、プライベートのお話までたくさんお話しいただきました。
「脚本を読んで非常に親近感が湧きました」(樋口)
臼田あさ美さん(以下、臼田) そうなんです。
樋口 脚本を読ませていただいたのですが、現代と物語世界を行ったり来たりしてもう大忙しじゃないか! って思いました。
臼田 本当に(笑)。稽古では、衣装を何分でチェンジできるかタイムを測ってみんなで練習しています。ただ私は演劇の経験が少ないので大変さがあまりわからなくて。「でも、やれるんですよね?」とか楽観的な感じで言っちゃってます(笑)。
一同 笑

樋口 「鶴女房」だから、物語世界の方は時代劇になるんですかね? となると服だけでなく髪型もガラッと変わるわけですよね。これは大変です。裏方さんも慌てますね。
臼田 間違えちゃったら出落ちですもんね。そこは本当に皆さん、多分集中してやってくださると思います。
樋口 僕は、脚本を読んで非常に親近感が湧きました。実は小学5年の頃、学芸会で鶴の恩返しを演じたことがあるんです。今作ではヨキチという名前でしたが、僕の舞台ではヨヒョウという役名でした。40年前ですが色々思い出しました。一緒にしちゃいけないんですけども!
臼田 そうなんですね(笑)。
樋口 それから、鴻上さんはやっぱりすごいなと思いました。古典と現代的な要素を織り混ぜながら、ちゃんと普遍的な問題意識をもたれている。鴻上さんが連載していた朝日新聞の「人生相談」を読んで、いつも頭のいい方だなと思っていましたが、今回もさすがだなと。最初に鴻上さんから説明はあったりしたんですか?
臼田 よく“去って終わったら美しい”みたいな美学ってあるじゃないですか。でも、実際に残された人たちはどうなるのか?とか、そういうリアリティを描きたいとおっしゃっていて。
今作のテーマにある「生き延びること」についても、命の問題だけでなく、本当にいろんなことが起こる今の世の中でどうやって人生をサバイブするか? という問いかけを意識されていて。それは私も脚本を読んで感じましたし、物語の中でも表現されていました。

臼田 あと「悲劇と喜劇は常に隣り合わせだから」っていう話もされていましたね。
樋口 チャップリンの名言ですね。
臼田 はい。誰かにとってはおかしいことは、他の誰かにとっては悲しみだったり、悲しい時ほどおかしいいことが起こってしまったり。そういうことがリアルなんだっていうのをすごくおっしゃっています。
「中学校2、3年生ぐらいまではあんまりパッとしないタイプでした」(臼田)
臼田 いやいや、そうですか?(笑)
樋口 そもそもはモデルさんから始まったんですよね。その時はまだ学生だったそうですが、俳優をやることは想像されていましたんですか?
臼田 全然してなかったです。モデルのお仕事も俳優のお仕事も、一度も夢見たことないんです。子供時代はめちゃくちゃ内気で、中学校2〜3年生ぐらいまではあんまりパッとしないタイプでしたから。高校生ぐらいからやっとちょっと明るくなった感じです。
樋口 そんなことはないですよね!(笑)
臼田 いや、本当です、本当です。でも幼馴染の友達が「あんた、ポテンシャルあるよ」って服装や髪型をプロデュースしてくれて、その子に誘われて初めて東京に遊びに行った日にスカウトされました。
樋口 すごい! ドラマのようですね。
臼田 いえいえ。その幼馴染はファッションが好きだったり、流行りのものを追っかけたりするような子で、その子についていってすべてが始まった感じでした。

臼田 渋谷の109前です。
樋口 初めて東京へ行った日に、マルキューの前でスカウトって。やっぱりドラマですよ! それまでは役者もモデルもご興味なかったということは、普段、ドラマとか映画とかもあまり見なかった?
臼田 いえ、映画は好きでしたし、ドラマも見ていました。私が10代の頃って、流行っているものとか、皆が好きなものがちゃんとテレビで見られたんですよね。音楽もみんなで同じCDを貸し合ったりしたり。
今は、みんな好きなものが違うじゃないですか。テレビで流れてくる音楽と、実際世の中で流行ってる音楽も全然違ったり。なんでも検索もできるし、見るものも聞くものが増えすぎてるのかなって思います。
臼田 そう。Tiktokですごい流行ってるんだよって言われても、やってない人からしたら1回も聞いたことない曲で全然ついていけないみたいな。
樋口 わかります、わかります。
臼田 それから高校生の終わり頃に、大槻ケンジさんやみうらじゅんさんの小説とか、サブカルチャーと言われるジャンルに出会って、自分の好きなものができていった感じです。
樋口 みうらじゅんさんの小説が原作の映画『色即ぜねれいしょん』で、臼田さんが演じたオリーブは最高でしたね〜! 当たり役でしたね。
臼田 ありがとうございます(笑)。私の中でもスカウトで声をかけていただいてから、あの作品に出会うまでは「これやってみた、あれやってみた」って流されるままに繋いでいった感じ。でも『色即ぜねれいしょん』で、初めて「この作品に出たい」「この役をやりたい」って思って、そこから俳優業に目覚めました。自分の意識で「この世界でやってくんだ」って。
樋口 そうだったんですね。臼田さんにとっても大事な作品になったんですね。

「臼田さんには全野郎の妄想と理想が詰め合わせされている」(樋口)
主役の妻夫木さんが缶を開けると、生きた人間が出てきてそれが理想の女の子だったっていう物語。その女の子が臼田さんで、もう全野郎の妄想と理想が詰め合わせされている感じで!
臼田 本当ですか⁉(笑)
樋口 ほんとですよ! 先日の再放送は、ご覧になってない?
臼田 見ていないです。恥ずかしくて見られない(笑)。当時20歳だったんですけど、俳優としての意思もなく、宙ぶらりんな状態でオーディションに行った行ったのに決めていただいて……。
臼田 すっごく記憶に残っています。オーディションに行って、誰が監督かもよくわからないまま本を読んで、そしたらすぐ次の日にもう1回来てくださいって言われて。テレビドラマのオーディションで何回もやるってあまりないんですよね。
そうしたらスタッフの人数が増えていて、監督は「本は1回読んでるから読まなくていっか」とか仰って、ただみんなにジロジロ見られて、何しに来たんだろう? みたいな。
樋口 そうなんですね(笑)。
臼田 で、決まりましたって言われて現場に行ったら、監督が「初めて見た時にこの子だって思ったけど全然本が読めなかったから、どうやって説得しようって思ったんだよ」と。私はピンクの服を着ていて、「ピンクの服でオーディション来るか⁉ って思ったけど、ビビっときた」って。
樋口 説得って、監督が?
臼田 プロデューサーとか上の人を説得するってことだったと思います。

臼田 海のシーンがあるんですけど、ト書きだけ書かれていてアドリブでつなぐとか、それまでの感じと全然違ったので良~く覚えてます。妻夫木さんはたくさん経験がある方なので、すごく引っ張ってくださいました。
臼田 そうなんですよ。出てくる人みんなが人間の嫌な部分を持ってるという。
樋口 嫌な部分を抽出して煮詰めたような人たちですよね。ああいう悪女を演じるのは逆に快感だったりしますか?
臼田 『愚行録』はプレッシャーが大きくて、お芝居を楽しむとかは全然なくて。終始必死でしたね。
樋口 そうなんですか!
臼田 主人公はもちろん、登場人物の学生時代とかも出てきて一人一人群像劇のように描かれる作品じゃないですか。だから責任重大で。自分のシーンで観客が冷めるようなことはしちゃいけないって思って、タバコの吸い方や喋るスピード、間とか、テクニカル面で監督とも話しながら、頭で計算しながら演じたのですごく難しかったです。
樋口 うわ〜、すごい経験です。出演者も豪華なメンバーでしたもんね。
臼田 そうですね。本を読んだ時にめちゃくちゃ面白くて、どの役も難しいぞって思ったのを覚えています。あとは監督含めて撮影チームが本当に素晴らしく、現場にいてすごい作品になるなって感じたのがとても印象的でした。

「一緒にやる人のエネルギーをもらって役を演じている」(臼田)
臼田 お手本にしてきた人はいないんです。
樋口 じゃあ自己流というか、自分の中で解釈してやってきた感じですか?
臼田 そうですね。教わるのは現場だけなので、見よう見真似。ただ、私は共演者の方にすごく恵まれてきたと思います。よかったって言ってもらえる作品は、いつも共演した役者さんが素晴らしくて。一緒にやる方からとても影響を受けるので、自分はやっぱり現場次第なんだと思いますね。
樋口 でも、今回は紅一点で観客は臼田さんに目が行くし、引っ張っていくのはどうやっても臼田さんになりますよね。すごく辛い立場の主人公で、観客は「与吉はどうしようもねえな」って思いながら見る中で、心惹かれていくのはやっぱり臼田さんだから。
臼田 いえいえ。でも今作ではわかりやすい感情表現をしない分、小都やおつうのキャラクターをトーンで見せていかなきゃいけない部分があって。後で解釈する余白の部分ももちろんあるんですけど、舞台はその場で伝えなきゃ意味がないので、その瞬間を観客の皆さんも一緒に体感できるよう、今はそれを一生懸命やってます。
樋口 なるほど。ちなみにドラマと舞台では発声も所作も変わりますよね。
臼田 全然違いますね。舞台って普通に会話しているのに急にどっか行っちゃうとか、みんなステージで自由に生きてる感じがするんです。私はそれに慣れていないから、自由でもなくて、でもそれも面白いなって感じていて。
なぜ私は自由じゃない? とか、なぜ違和感を感じる? って考えることで、誰に向けて言いたいのか、どういう風に伝えたいのかがたくさん浮かんでくるんです。それで鴻上さんとも相談しながら1つずつ解決して作っていますが、それらが自分の身になってやっと自由を得られるという感じでしょうか。セリフのやりにくさも込みで、演劇の面白さを学んでいますね。

臼田 優しくて誠実な方ですが、甘い優しさではなくて、演出は的確に言うけど決して決めつけない。今どう思って言ったの? って聞かれて、答えたら「ありがとう、その発想は俺にはなかった。でも確かにそうだよね」って言ってくれるような人ですね。
樋口 素敵です。
臼田 鴻上さんが全部の答えを持っているわけじゃなくて、こちらが思ったことを共有すれば寄り添ってくれる。今、太田(基裕)さんが他の舞台でお稽古は不在なので代役の方がやってくださっているんですが、太田さんとのシーンでわからないことを鴻上さんに聞いたら、太田さんが来てから本人に聞いてくださいって言うんです(笑)。
樋口 なるほど〜。やっぱりこれだけ経験がある方だから、大きなところから見ているのが伝わってきました。
「自然が好きで、今は一番山にハマってます」(臼田)
臼田 登山は山小屋に行くとか本格的なイメージで、ハイキングは平坦な道とか、山でも山頂には行かないイメージ。トレッキングはちょうど間ぐらいなのかな。日帰り登山みたいな感じですかね。
樋口 なるほど〜。
臼田 山頂にも行くし、ちゃんと下山もするんですけど、泊まりでは行かないです。日帰り登山ぐらいの山登りにすごいハマってて、もう行きたいです(笑)。
樋口 結構、アウトドアな方なんですね〜。
臼田 そうですね、運動とかスポーツはあまり好きじゃないんですけど、自然は割と好きです。虫も平気だし、山も海も好きです。その中でも今一番ハマってるのは山ですね。

臼田 山にハマってる友達が何人かいて、誘ってもらったのがきっかけです。最初は高尾山に行ったんですけど、全然楽しめなかったんですよ。気持ちいいし、それなりに達成感はあるけど、階段も多かったり割と整備されていて。
こんな感じかと思ったけど、そのまま小仏城山(こぼとけしろやま)っていう山に行ったら全然整備されてなくて、人も少なくて、ご年配の方ばっかりで、求めてたのはこっちだ! と思って。そこで山の楽しさを知って、平日の人が少ない時に低めの山に行って、おばあちゃんとかおじいちゃんに、こんにちはとか言いながら登ってます。
樋口 僕も昔、水道橋博士という人に高尾山に連れてってもらったことがあるんですけど、すごい穴場の行き方を知っていて、これ崖から落ちたら助からないじゃないですかっていうコースをぐるっと回りました。すごく良かったんですけど、疲れすぎて2度と行かないと思いました。怖いし、危険だし(笑)。
臼田 アハハ(笑)。高尾山はルートが色々あるんですよね。
樋口 僕の場合はもう少し整備されているところに行けばよかったです。今日は色々お話しいただきありがとうございました。
臼田 ありがとうございました。
【対談を終えて】
世の中に現れた時から、臼田さんはただの美少女ではなかった。
童貞をこじらせたりモテなかったりした男たちから、“ちょいワル”のLEONオジさんまで、理想の女性像を総合的に具現化したひとが臼田さんではないだろうか。
臼田さんが微笑むだけで、感情のやわらかい部分を擽られるような、脆い箇所を掬い取られる。
自分のようなモテないオタクを、「彼女ならわかってくれる」と錯覚させてしまう魔力があった。
それから幾星霜、大人の女性に成長した臼田さんと対峙した。
みずみずしさがマシマシになっているではないか!
こちらのやわらかい部分や脆い箇所をひた隠しにしていたのに、お話ししながら心のガードはガラ空きになった。
ボカスカ打ち込まれながら、けれども心は晴れやかに満たされた。臼田さんの微笑みに見惚れていたから。幸せとはこういうことを言うのかもしれない。
樋口毅宏

● 臼田あさ美(うすだ・あさみ)
主な出演作に映画『色即ぜねれいしょん』(2009年)、『南瓜とマヨネーズ』(17年)、映画『架空OL日記』(20年)、『私をくいとめて』(20年)、『雑魚どもよ、大志を抱け!』(22年)、『早乙女カナコの場合は』(24年)、ドラマ「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ)、「柚木さんちの四兄弟」(NHK)、「御上先生」(TBS)などがある。映画『愚行録』(17年)の出演にて第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。
Instagram/@asami_usuda

● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊で初のノンフィクション作品となる『凡夫 寺島和裕。「BUBUKA」を作った男』(清談社)が好評発売中。雑誌『LEON』で連載した小説「クワトロ・フォルマッジ-四人の殺し屋-」も単行本化予定。
X/@byezoushigaya

KOKAMI@network vol.21『サヨナラソング ー帰ってきた鶴―』
本作は、「生きのびること」テーマとして、日本の民話「鶴女房」のその後の世界と、ある家族を中心とした現実の世界が交錯しながら展開されていくオリジナル新作。物語はある売れない作家が残した遺書のような小説から始まり、2つの世界が複雑に絡み合い、重なりながら、それぞれの結論へと進展していく。作・演出は、1981 年に劇団第三舞台を旗揚げし、『朝日のような夕日をつれて』『天使は瞳を閉じて』『トランス』などの多数の代表作をもつ鴻上尚史。出演は小関裕太、臼田あさ美、太田基裕、安西慎太郎、三田一颯・中込佑玖ほか。
紀伊国屋ホール(8/31~9/21)、大阪サンケイホールプリーゼ(9/27,28)
公式HP/舞台『サヨナラソングー帰ってきた鶴ー』
■ お問い合わせ
ON TOKYO SHOWROOM 03-6427-1640