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2023.07.29

DEAN FUJIOKA「人生は肉体と精神を操縦し続けるゲーム(試合)みたいなもの」

日本での音楽活動が10年を迎えたDEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)さん。その軌跡を総括するベスト盤がリリース。国境やジャンルなどの枠を超え、グローバルな視点で楽曲を制作、音楽を通じて描いた世界とは? キャリアを重ねた現在の彼が見据えた、カッコよさの真髄にも迫ります。

CREDIT :

文/松永尚久 写真/トヨダリョウ スタイリング/村田友哉(SMB International) ヘアメイク/森 智聖(VRAI) 編集/菊地奈緒(LEON.JP)

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
アジアを筆頭に世界規模で活躍、また俳優としても圧倒的な存在感を放ち、人気を博しているDEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)さん。自身初となるベスト盤『Stars of the Lid』は、これまでの音楽キャリアを総括する内容であると同時に、ロック、エレクトロからポップまで、あらゆる音楽を取り込み、壮大な宇宙のような風景を届ける、聴きごたえのある仕上がりに。そこからは時代で色褪せることのないDEANさん独特のエレガントなダンディズムが伝わってきます。

活動当初はDIYで制作。自費で楽曲を完成させていました

── 日本で本格的に音楽活動を開始して10年を迎えました。これまでを振り返ってみて、いかがですか?

DEAN FUJIOKAさん(以下DEAN) そうですね。限られた時間の中で、楽曲制作やライヴなど、すべてにおいて体当たりで取り組んでいた感じ。だから、ひとつひとつの作品に重みがあります。

── 俳優や映画プロデュースなど、他にもたくさんのプロジェクトに携わりながらの10年において、何%くらい音楽と関わっていましたか?

DEAN どれくらいだったんだろうな? 自分としてはどの活動も100%の気持ちで向き合っていますが、実質音楽に使えた時間は、半分もなかったと思いますね。3分の1あればよかったかなっていうくらい。

── 例えば、演じる時と音楽パフォーマンスの時とで、頭やモードの切り替えはあるのでしょうか?

DEAN 奏でている時や、ライヴをやっている以外の時間も、音楽のアカウントは常に動いている状態で。実作業にかける時間が本当に限られているぶん、そこは常に動いているという感じですね。
DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
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── その限られた時間の中で紡がれた音楽活動を総括した初のベスト盤が完成しました。この10年で、音楽に対する考えや向き合い方に変化はありましたか?

DEAN 変化の連続でしたね。作る場所の変化もあったし、オペレーション・システムの変化もあるし、自分の経験値も積み上がり、効率よく進められるようになった。それによって、新たな挑戦もできたし。だから、音楽を作り続けたいというモチベーションはどんどん強くなっています。

音楽活動を諦めるという選択肢は最初からないですが、自分が求めるクオリティ、到達したい域にはまだまだ遠い。これからも制作方法とか見せ方だったり、さらなる努力を続けなきゃいけない。

また歌い手としてもそうだし、作家としてもそうだし、音楽ビジネスの中で自分をどう成立させるかっていう感覚も、絶対に必要になりますし。言語や国境を超えてやり続けなくては。今後チャレンジは、ますますタフなものになっていくんだろうなと思います。

── 今回、過去の楽曲を聴いて、その頃を懐かしく振り返る機会もあったのでしょうか?

DEAN もちろん。活動当初はDIYで制作していたので。レーベルとも契約していなかったので、制作環境を整えてくれる人もいませんし。自分でプロデューサーやエンジニア、ミュージシャンなどを探してスタジオに入って、自費で完成させていましたから。効率が悪かったですよね。

1曲を仕上げるのに、今だったら 2、3週間で終わらせられるけれど、当時は2、3年かかっていました。しかも僕は、音楽の学校へ行ったわけじゃないですし、音楽ビジネスを勉強したこともない。圧倒的に不利な状況だった。それを諦めずに乗り越えて、恵まれた環境で音楽を作ることができるようになった現在、さらにチャレンジし続けなくてはいけないって、改めて思いましたね。

── 当時は、どうやってセッションしてくれる人を探したのですか?

DEAN スタジオへ行くじゃないですか。そこにいる人に片っ端から声かけて「いい人いない?」って数珠繋ぎのように紹介してもらって、最終的にこのプロデューサーがよさそうだ、みたいな感じで進めてましたね。

── しかも、日本じゃなくて海外で交渉をしていたわけですよね?

DEAN 逆に当時の自分にとっては、日本が外国みたいな感じで。日本でエンタメの仕事をしていなかったので、シーンになじめるものを作ることができるのか? というところもあって。全部を(当時の拠点・インドネシアの)ジャカルタで制作していました。

日本向けに作るというより、楽曲で使う言語で表現方法は変わります

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
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── やはり、日本に合う音楽と海外のそれとはギャップが?

DEAN いい音楽を作るっていう、究極のゴールは同じなのですが。細かい話をすると、電圧だったり、もちろん言語や文化も違うし、食べ物も違うし宗教も。何もかも違いますからね。

2019年リリースの2ndアルバム『History In The Making』以降は日本を拠点に制作した楽曲になるのですが、例えば「Echo」という楽曲は、インドネシアにいる時に雛形を作って、スイス・チューリッヒのホテルでビートを組んで、東京に持ち帰ってアレンジを広げて仕上げたり。今も海外での撮影中にアレンジを組んで、メロディーをのせて、歌詞を書くという作り方をしているし、結局どこで何をするか? というのは自分の中で関係なくなっています。

── そうすると、日本のマーケット向けに音楽を作るということも考えなくなるのでしょうか?

DEAN 国とか地域で分けるとかではなく、楽曲で使う言語によって合う・合わないがあるので、言語で表現方法が自然に変わりますね。言語特有の母音とか子音とか、それぞれの持つフローやリズムがあるじゃないですか。これまでも同じメロディやリズムで異なる言語のバージョンを制作しているのですが、言葉によって雰囲気が大きく変化するので、それは大変な作業だったりします。

── 確かに。今回の収録曲も、英語と日本語で声の響きやニュアンスがまったく異なりますよね。本作のための新曲でありタイトル・トラックの「Stars of the Lid」も同様。この楽曲ではどんな思いを表現していますか?

DEAN 夜空に輝く星って、科学的には関連性はないのかもしれないですが、人間はさまざまな神話や物語を作ってきた。「Stars of the Lid」では、虚構が生み出す美しさと現実の厳しさというか鋭い部分というのは相反しているように見えながらも、実はメビウスの輪のように繋がっていて。それが生みだす没入・到達できる世界観というか、メタファーの力を表現できたのかなって。

アルバム全体に関しても、ひとつひとつの楽曲がバラバラのようでありながらも、意味を持つものになっていると感じたから、タイトルにぴったりだなと思いました。だから、アルバムのアートワークも、それを連想させるようなものにしたのです。

── 「Stars of the Lid」は全体的にロマンティックな雰囲気ですが、途中でエモーショナルなラップを取り入れるなど、ドラマティックな展開のある楽曲だと感じました。

DEAN この曲は、 ループ・ミュージックという感じですね。ひたすら同じループを繰り返している中で、どんどん進化・変化していく様子を、ヴォーカルやコーラス、メロディなどを駆使してどうクライマックスまで導いていく構造にさせるのか。そこが自分にとってのトライアルでしたし、楽しめた部分です。

── 実験的な要素の高いタイトル曲の一方、「Teleportation」は華やかな印象の仕上がりです。

DEAN これは、自分がJ-POPを作るのならば、こういうことかなっていうのを集約した感じですね。転調を積極的に取り入れた楽曲はこれまで作ってこなかったのですが、自分は日本の歌謡曲が大好きな人間なので、作れないわけでもないというか。作れないと思われるのが嫌だなと思って、自分にとってのJ-POPを表現しておきたかったのです。

── ライヴで一体感が生まれそうな楽曲ですよね。

DEAN でも実は、とても悲しい歌詞なんですよ。ゆっくりなビートに変えて、ピアノで弾き語りをしたら、重く響くはず。そんな歌詞とサウンドのギャップというか、ミスマッチを楽しみながら完成させました。

(ダークなサウンドにすると)ため息が出てしまうようなせつなさに到達できないと思ったんですよね。だから、あえてギャップ、相反するものを駆使して、メビウスの輪を作りたかった。このフォーマットにすることで、楽曲のパズルを完成させようとしたのです。

── 9月には初の日本武道館での単独公演も決定。そのステージも楽しみです。もう内容は考えているのでしょうか?

DEAN そうですね。曲数はそんなに多くしないかな。これまでは20曲とかパフォーマンスしていて、それはそれでよいものになったと思いますが、今回は1曲1曲に磨きをかけたい。1時間半、2時間に及ぶステージで、 物語の文脈をどう作るかに集中したい。だから、披露する1曲1曲がパーツというか、重要なスクリプト(脚本)。そして最後に、会場にいるすべての人と感動を共有できるものにしたいと思っています。

── ライヴでありながら、プラネタリウムを鑑賞しているような壮大な景色が思い浮かびました。

DEAN ただ、生身の身体がちゃんとそこにある感じにはしたい。自分を含め、そこにいる方々が、 身体全体で共鳴し合える空間を作りたいですね。
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今後も破壊的なプロセスが必要なら、腹を括って頑張んなきゃいけない

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
── このベスト盤を通じて、将来のビジョンに変化はありましたか?

DEAN 音楽キャリアを始めた頃の圧倒的に不利な状態っていうのが、よくも悪くも身体に刻まれているので、ここで活動を止めるわけにはいかない。だから、さらに前に進むために、今後も破壊的なプロセスが必要なのであれば、そういう仕組みなんだなと腹を括って、頑張んなきゃいけないなっていう感じです。

とにかく、成長を続けるっていうことですかね。その姿を見て皆さんがポジティブなエネルギーを感じ取ってもらえたら素敵だなと思います。

── DEANさんの楽曲は、年齢とか関係なく、世界にはさまざまな可能性があるということを教えてくれるようです。

DEAN 生きている以上、時が与えるものもあるし、奪うものもある。それは絶対避けられないことだし、ゲーム(試合)みたいな感じ。自分自身と真剣に向き合ってプレイする。そのために、自分の肉体とのシンクロ率を高めて、表現方法を極めていかなくてはいけない。

最近、フィギュアスケーターの方々と全国ツアーを廻ったのですが、技術のことはわかりませんが、彼らの命の燃やし方みたいなところからはビシビシと伝わってくるものがあったし、肉体を楽器のように駆使していると思いました。

目の当たりにして刺激を受けましたし、自分はまだまだこんなところで留まってはいけないなと。これからも、肉体とそれを操縦する自分の魂と勝負し続ける、みたいな感じですかね。
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仕事量やクオリティを下げないよう、動きの無駄を減らせるようになりました

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
── 年齢を重ねて、できないこと・できることに変化があると思います。どう向き合っているのでしょうか?

DEAN 3日間徹夜とかできなくなりましたね。それをやったら、破滅的な結果にしか繋がらないし。自分がどうしてもやりたいことであれば、エネルギーが湧いてくるのかもしれないですけど、継続できない。

仕事量やクオリティを下げるわけにはいかないので、 ひとつひとつの動きの無駄を減らしたりとか、どこまで奥行きを持って、事柄と向き合うかとか。 アプローチがだいぶ変わったなと思いますね。

また、わざわざリスクを取る必要ないなっていう判断も、正確にできるようになった。肉体や精神の操縦方法は、10〜20年前に比べたら確実に精度が高くなっています。

── 経験で物事の判断がしやすくなったと。

DEAN その先に何があるかという予見ができるようになった。現状の選択が正しいのかわからない時も、5〜10年後の伸びしろを考えて、こっちの方が絶対いいっていう判断もできるようになりました。

一瞬負荷がかかるかもしれないけど、それに耐え得る身体や精神力は、LEON読者の皆さんも持っているのでは。
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自己投資しているのは、身体を効果的に使用するシステム構築(筋肉作り)

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』
▲ シャツ5万7200円、パンツ5万600円、靴9万2400円/すべてトーガ ビリリース(トーガ 原宿店) タンクトップ1万450円/ラッド ミュージシャン(ラッド ミュージシャン 新宿)
── 研ぎ澄まされた精神や肉体であるために心がけていることはありますか?

DEAN 体内に摂取するものを大切にしています。人間って口から始まるチューブ状の構造になっている。もちろん、外側のスキンケアも大事なんですけど、 そのチューブの内側のスキンケアが、圧倒的な結果の差を生むと思う。

皆さん、それぞれ自分に合ったアプローチを見つける必要がありますが、僕の場合はアレルギー反応を起こすものは摂取しないとか。どういう順番で物を食べるとかは気をつけています。

また、定期的に人間ドックへ行って、悪いところがあったらすぐに治すのは当たり前だと思いますね。

── 積極的に摂取している食べ物はありますか?

DEAN 身体にとってよい/悪いって、人それぞれ違うので、何を摂るべきだとか言えないんですね。自分で自分の身体をちゃんと研究して、自分に合うメニューを組むべきです。

── 最も自己投資しているものは何ですか?

DEAN 大まかに言えば、筋肉かもしれないですね。でも、闇雲に重いものを持って、ひたすら筋肥大させるみたいなものとは異なっていて。骨格を理解して、それがどう神経と繋がって自分にとってベストな動きができるのか、必要最低限の筋肉の使い方というか。身体をいかに効果的に使用するかのシステムを構築するという意味での筋肉作りです。

骨格の形状って決まってるじゃないですか。でも筋肉の作用のさせ方で骨格としての機能を一時的に停止させたりとか、本来であれば骨格としては動かせないところに骨格があるかのような柔軟性を生みだしてみたりとか。例えば、肋骨1本1本の間にも筋肉があって(肋間筋)、ひとつの塊ではなく、ひとつひとつを分離させて運動ができるはずなんですよ。 それをどうしたらできるのかを探求したりしています。

── 特に気をつけている部位は?

構造で最も大事になってくるのは、肩甲骨と骨盤。そこが歪んていたら、正常にクルマが発進しないという感じですね。詳しいお話は、また別の機会にさせてください(笑)。

── わかりました(笑)。では最後にDEANさんの思う「カッコいい」人物像は?

DEAN 日本人でしたら、高田純次さんじゃないですか。その姿を見ただけで周りはハッピーになる。アニメのキャラクターみたいな感じ(笑)。いつかご一緒できたらうれしいですね。
DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』

『Stars of the Lid』/A-Sketch

自身が出演したドラマの主題歌や、アニメのテーマ・ソング、ライヴでおなじみのナンバーといった代表曲に加え、書き下ろしの新曲も収録された2枚組のベスト・アルバム。初回限定盤には、昨年行ったファンクラブツアー「DEAN FUJIOKA FamBam Exclusive “#Confidential2022”2022.9.20 @LINE CUBE SHIBUYA」の映像を収録したブルーレイ付き。初回限定盤(2CD+BD)8190円、通常盤(2CD)4400円

DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ) 『Stars of the Lid』

● DEAN FUJIOKA(ディーン・フジオカ)

福島県生まれ。2004年に香港にて活動をスタート、06年から台湾に拠点を移し歌手デビュー。09年にはジャカルタへ拠点を移し1stアルバム『Cycle』を自主制作、13年に発表したシングル「My Dimension」より日本で本格的に音楽活動を開始。9月23日(土)には「DEAN FUJIOKA Live 2023 “Stars of the Lid” at 日本武道館」を開催予定。
https://www.a-sketch.com/artist/dean-fujioka-3

衣装協力
トーガ 原宿店 03-6419-8136
ラッド ミュージシャン 新宿 03-6457-7957

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