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2021.10.11

数億円でも落札される「NFT」アートは何がスゴい?

テクノロジーの進化とともに、アートの世界も拡張を続けています。「NFT」や「AR」など、耳にするものの実際よくわからない現代のアートについて、メディアアート研究者・高橋裕行さんに伺いました。

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文/浜野雪江

広がるアートの世界をどう楽しむべきか?

アートと言えば絵画や彫刻といったイメージがあるかもしれません。しかしながら、テクノロジーが進化しつつある現在、アートの世界はより広がっているのです。

立体物に映像を投影するプロジェクションマッピングや、作品の中に入れるような体験型アートは定着しつつありますが、アートはさらに未来の世界を見せてくれるのだとか。

拡張するアートの世界では何が起きているのでしょうか? 文化の土壌を耕す“水やり係”を自認する、メディアアート研究者・高橋裕行さんに、近年注目のアートとその楽しみ方について伺いました。

最近耳にするNFTって何なのか?

── 現代では、一見「これってどこがアートなの?」と思ってしまうような作品が登場しているように思います。技術の進化によって拡張するアートの鑑賞の仕方を教えていただきたいです。

高橋裕行さん(以下、高橋) はい、近年注目されているのは、「NFT」「AR・VR」「スペキュラティブデザイン」でしょう。それぞれ説明していきますね。

まず、仮想通貨で取引される「NFT(Non-Fungible Token)」がとても高額で取引されている、というニュースを目にした方も多いと思います。直訳すると“代替不可能な記録”といった意味ですけど、背後にあるのは、ブロックチェーンという技術です。この技術でデジタル台帳を多数のユーザーで共有し、作品を管理することで、誰から誰にものが渡ったかを追跡することができると同時に、デジタルデータに唯一性を保証することが可能になったわけです。

── それはアートにおいて、どのような意味を持つのでしょうか。
▲ 2011年にYouTubeにアップロードされた「Nyan Cat」は、NFTアートとしてデジタルアート専門オークションサイト「Foundation」に出品され、約4800万円で落札された。 参照元/@NyanCat
高橋 まず、デジタルアートに新たな価値がもたらされました。これまでデジタルアートを市場に流通させるのはすごく難しかったんです。なぜなら、デジタルデータはスクリーンショットをするなど複写ができてしまうので、価値の保証が困難だからです。そこでこれまでは、作品にあえてエディション(限定数)を設けてギャラリーで取引するなどしてきました。しかし、NFTという技術でデジタルアートにも唯一性が保証されるようになったのです。

それともうひとつ、NFTによって、作家が追及権を実装できる土台ができたことも大きいと思います。

── 追及権というのはなんですか?

高橋 著作権のひとつで、作家が自分の作品が転売されるごとに作品の売価の一部を得ることができる権利です。しかし、オークションよりも個人間の取引が多い日本では情報の把握が難しく、この制度は導入されていないんです。一方で、人気になると作品はどんどん高騰し、作家には金銭が入らないのに、資産価値は上がるという不均衡が生じているんです。

それがNFTの仕組みを使えば、何度転売されても、その都度作家に還元することができる。これは多くの作家が夢見ていたシステムで、そうした意味でもNFTというのはものすごい発明なわけです。
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NFTアートが高額で取引される理由

── なるほど。先ほどNFTアートが高額で取引されているというお話がありましたが、海外のオークションで、猫のイラストのNFTが何億円もの高値で落札されていたりするのはなぜですか?

高橋 それは投資家が投機目的で取引しているケースが多いと思いますが、最近より顕著なのが、高値で売れる作品の背景にはコミュニティがあるというケースです。そのコミュニティの中で傑出した動きをしている人が高額を手にしています。
▲  OpenSea上の「Generativemasks」のページ。 参照元/Generativemasks
高橋 例えば最近、「Generativemasks」という作品が、アメリカのNFTマーケットプレイス最大手のOpenSeaで取引され、話題になりました。これはTakawo(高尾俊介)さんという作家が、PCのプログラミングによって1万個のマスク(仮面)のグラフィックを機械的に生成・構築した作品で、1万個発売したら約2時間で完売し、瞬間的に6億円近い取引が発生した(総額3.5億円相当を売り上げた)んです。

── なんと! 機械で作ったグラフィックに6億円ですか。
▲ 参照元/Generativemasks #2673
高橋 PCでコードを書くことでソフトウェアが自律的に生み出すアートのことをジェネラティブアートと呼びます。TakawoさんはProcessingというビジュアルデザイン用のプログラミング言語を用いていて、その言語を使うグループは世界中に存在しています。

彼は、「Generativemasks」はそのユーザーコミュニティを支えるためのプロジェクトであり、販売開始時に売り上げのうち彼の持ち分すべてをProcessingの開発チームやコミュニティ、ジェネラティブアート支援団体などに寄付すると宣言しました。

つまり、「みんながコーディングし、プログラミングをして楽しむ文化が広がると良いな」という思いを掲げ、それに共感した多くの人が作品を買ったわけです。

── 購入者は単にマスクの絵が欲しいからではなく、その意義に価値を感じたのですね。

高橋 そうした作品を持っていることはおしゃれでカッコいいし、そのムーブメントに乗ること自体が楽しいと思ったのでしょう。

こうした動きの背景として、ジェネラティブアートを誰もが作れるようになったことも大きいと思います。昔はPCでプログラミングをして絵を作ることは技術的に難しく、一部の専門家にしかできませんでしたが、ツールが整い、誰もが作れる環境にある今は、かつてとはユーザー数=作家の数が全然違うんです。

もともとプログラミング環境のユーザーコミュニティがあったところにNFTが登場し、環境が整ったことでクリエーションが拡大している、と感じます。
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日本では2022年以降に加速する?

── アートとしての楽しみ方としては、参加と所有の二つを満たせるのがNFTの良さと言えるのでしょうか。

高橋 ええ、参加ができないと面白くないでしょうね。単に投機目的だと、アートの視点からするとあまり楽しめない気がします。NFT の分野は動きが目まぐるしく、情報が十分でないうえにまだほとんどの情報が英語ですが、2022年春には、例えば楽天グループが参入すると言われており、そうすれば日本でも徐々に情報も入りやすくなるのではないでしょうか。

── NFTは、今まさに整えられていく渦中にあるのですね。

高橋 そうだと思います。アート産業全体の市場規模は、世界で6兆円とか7兆円と言われていますが、その中でNFTの市場は2020年10月から2021年3月の半年間だけで500億円にのぼったというデータもあります。今後も拡大する可能性は高いでしょうし、日本でも、この仕組みを使った新しい動きが出てくるかもしれません。

次回は、「AR」と「VR」を用いて現実を拡張するアートを解説します!

● 高橋裕行(たかはし・ひろゆき)

キュレーター。多摩美術大学非常勤講師。1975年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科助手、SKIPシティ映像ミュージアムキュレーターを経て、現在はフリーランスのキュレーター。内外で、さまざまな展覧会やワークショプの企画、制作、運営を行う。2015年〜2020年まで、伊勢丹ココイクでワークショップを主体とした幼児向けの教室のディレクションを行う。2016年、のと里山空港アートナイトでは、アーティスト集団ライゾマティクスとともに、空港滑走路を用いたアートプロジェクトをディレクション。著書に、『コミュニケーションのデザイン史』(フィルムアート社、2015年)がある。

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