2017.06.30
東京・京都の老舗で浴衣をオーダーする
- CREDIT :
写真/鈴木泰之(Studio Log) 文/池田保行(04) 協力/竺仙
一方、京都の粋(すい)は足していく美とも言われ、はんなりした優雅な美しさが良しとされます。そんな粋(いき)と粋(すい)に精通した東京と京都の老舗店で、浴衣のお仕立て(オーダー)を伺いました。
花火の当日にお仕立て(オーダー)上がりを受け取り着付けてもらう、なんてのがオトナの粋の極みといえるでしょう。スーツも浴衣もお仕立てなら、お好みの色柄生地でサイズもぴったりな、自分だけの一着が仕立てられますので、こなしもぐっと引き立ちます。恋も花火も準備万端整ってこそ、ですよ。

確かな老舗でお仕立て浴衣を
たとえばコチラ、日本橋の「竺仙」さんは天保13年、1842年創業という老舗の呉服屋さん。こちらのこだわりはズバリ“江戸”。オリジナルの浴衣生地に描かれる紋様は、江戸の風情あふれるものばかりで、アマン東京のパンフレットにも使われるほど。コチラで五代目当主・小川文男さんに、お仕立の極意を伺いました。
「お端折り(帯下で着丈を調整する折り返し部分)できる女性物と違い、男性物の浴衣はお端折りがございませんので、サイズを気にされたほうがよろしいかと。肩幅、袖丈、着丈の3箇所は、ぞろ引いたり寸足らずですと品位を損ねます。洗うと縮むこともございますので、生地によって採寸もご考慮されたほうがよいでしょう」
「私どもでは色柄の流行というものは、とくにございませんので、お好きなものを選ばれてよろしいのですが、御自身がお好きな色柄と似合う色柄が異なることもございます。お連れ様や店のものに見立ててもらうと、意外な色柄が似合ったりするものです」
どうやら“お仕立て”は“お見立て”と同様に考えたほうが良いようです。応接間に取り揃えられた反物をぐるりと拝見しますと、いろいろな色柄が揃っていました。
「昔は西の浴衣と東の浴衣と、好まれる色柄は違ったようです。いまはそれが曖昧になってきていますが、江戸の浴衣には縞や格子など、スカッとした直線的な柄が多いようです。草木や動植物の柄もございますが、よく見ますと水や秋枯れ、冬草をモチーフにしたものが多い。これは盛夏に少しでも涼を感じたいという想いからのようです」。
ご主人からそんなウンチクを聞きながら反物を選ぶのも、お仕立ての楽しみ。江戸の情緒を味わいながらのお見立ては、どこかスーツをオーダーするときに似ているようです。
1. 江戸っ子らしさを味わうなら直線と格子
直線使いは江戸っ子の人気柄。シンプルで着こなしやすいので、どなたでも似合います。浴衣3万3000(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯1万8000円、下駄1万3000円
やっぱり帯の結び目は、ちょっと寄せてるぐらいがこなれた感じなのです。
襟の抜き具合いは、これが正解。スーツではNGですが、浴衣はOK。
貝の口で締めた、織り目の浮き上がる羅の帯。夏らしく涼感を誘います。
直線使いは江戸っ子の人気柄。シンプルで着こなしやすいので、どなたでも似合います。浴衣3万3000(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯1万8000円、下駄1万3000円
やっぱり帯の結び目は、ちょっと寄せてるぐらいがこなれた感じなのです。
襟の抜き具合いは、これが正解。スーツではNGですが、浴衣はOK。
貝の口で締めた、織り目の浮き上がる羅の帯。夏らしく涼感を誘います。

松の格子
松の格子
引き揃えた松の葉が並ぶ格子柄。縞と格子は江戸で人気の柄使いです。綿100%のコーマ地は、ハリと腰のある生地で、染め抜きが美しく仕上がります。
2. 不良なオトナを楽しむなら大柄使い
大胆な大柄は、身長の高い方、体格のある方にお似合いです。浴衣3万4000円(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯2万3000円、下駄1万3000円
浴衣の大柄に合わせて、帯も柄が引き立つものを合わせています。こういうところのお見立てに、老舗の粋が表れますぞ。
ヘアスタイルは襟足をすっきりさせるのが、美しく浴衣を着こなすポイント。
きゅっと締め上げた貝の口。多色のコントラストある色使いがキメ手
大胆な大柄は、身長の高い方、体格のある方にお似合いです。浴衣3万4000円(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯2万3000円、下駄1万3000円
浴衣の大柄に合わせて、帯も柄が引き立つものを合わせています。こういうところのお見立てに、老舗の粋が表れますぞ。
ヘアスタイルは襟足をすっきりさせるのが、美しく浴衣を着こなすポイント。
きゅっと締め上げた貝の口。多色のコントラストある色使いがキメ手

「吉原つなぎ」
「吉原つなぎ」
四角い鎖の連続柄は、「吉原つなぎ」と呼ばれる柄物。ひとたび吉原遊郭に入ったら、鎖につながれてしまったように外に出られない、というところから名付けられた伝統柄です。
3. 江戸のラッキーモチーフ「判じ物」
ラッキーアイテム3種を染め抜き、地にぼかしの染めをあしらった版重ね。浴衣4万0000円(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯2万3000円、下駄1万3000円
帯の結びは片ばさみ。地にぼかしたオリーブは、格子縞になっていることがわかります。
お仕立した浴衣はサイズがあっているだけに、襟もとのバランスが良好です。スーツとて同じですよね。
さりげなくデニムカラーなところも、カジュアル浴衣として着やすいトコロかと。
ラッキーアイテム3種を染め抜き、地にぼかしの染めをあしらった版重ね。浴衣4万0000円(反物のみ)、半ミシンお仕立代1万2000円、帯2万3000円、下駄1万3000円
帯の結びは片ばさみ。地にぼかしたオリーブは、格子縞になっていることがわかります。
お仕立した浴衣はサイズがあっているだけに、襟もとのバランスが良好です。スーツとて同じですよね。
さりげなくデニムカラーなところも、カジュアル浴衣として着やすいトコロかと。

斧琴菊
斧琴菊
「斧(よき)」と「琴」と「菊」の連続柄は、「善き・事・聞く(ヨキコトキク)」ともじった「判じ物」と呼ばれる和柄のモチーフ。オリーブとネイビーの色使いは、カジュアルを着慣れたオトナの浴衣として着やすそうです。
お仕立て、見立てはコチラでどうぞ
竺仙さんでは、店先ではもちろん、二階奥の応接でもお仕立て、見立てが可能です。こちらで反物を選んだら、採寸していただいて、今の時季なら納期は約1ヶ月ほど。シーズンオフなら、もう少し短縮できるとのこと。今ならまだ、夏の花火に間に合います。

オーダーした浴衣と小物を合わせるのも粋
浴衣のお仕立てに合わせて、小物を購入することもできます。信玄袋と下駄を揃えておけば、お仕立て上がりの受け取りの際、そのまま着替えて花火見物に行くこともできますよ。




竺仙
■ 竺仙
住所/東京都中央区日本橋小舟町2−3
営業時間/9:00〜17:00(平日) 休:土日祝 (4〜7月までは土曜も営業)
URL/www.chikusen.co.jp
問い合わせ/☎03-5202-0991
京都の老舗呉服店で粋な浴衣のオーダーとこなしを拝見
こちらは天正12年(1584年)創業という老舗だけあり、着物に精通したベテランスタッフが勢揃い。そんな着物通がオススメしてくれたのは、肌に張り付かず扱いがラクな麻の生地。
なかでも新潟県小千谷市で生産される伝統的工芸品の「小千谷縮(おぢやちぢみ)」は涼しいうえに、夏の着物としても着られるほどのクオリティなのです。縦糸に強い撚りをかけ織り上げていき、湯もみを行うことでうまれる、独特のシボと呼ばれるシワが特徴です。
今回ご登場いただいた「ゑり善」の社長をはじめとするベテラン勢は、そんな生地でオーダーした浴衣を長襦袢の上に纏い、長襦袢に半襟をつけて、素足に下駄ではなく、あえて足袋を履き、サラリと透け感のある夏羽織を重ねるという京都の老舗スタイルを披露してくれました。
オーダーの方法は、まず浴衣地を選んで、合わせる帯や小物を相談するのがいいでしょう。帯選びがとりわけ重要です。老舗のゑり善だからこそ、とことん相談に乗ってくれますよ。あとは仕立て上がりのご連絡を待つだけです。納期は繁忙期など時期によって前後するので、お店に直接お問い合わせください。
1. 圧倒的な涼やかさを感じさせる小千谷縮を着流し
こんな佇まいなら、ちょっとした料亭に着て行っても堂々としていられますし、実に粋ですよね。こちらは京都に根付く着物文化からの応用スタイルで、舞妓さんも浴衣にお太鼓で帯留めを付けたり、足袋を履いたりしているとのこと。こんな粋な着こなしが学べるのも、老舗で浴衣をオーダーするメリットなのです。
小千谷縮の浴衣姿に、夏羽織を重ねて。「背中の紋は、芸妓さんの紋を刺繍で入れてます。贔屓にしていたおばあさんの芸妓さんで、今となってはいい思い出です」
「羽織紐も夏物に付け替えます。そういうふうに細部まで、涼しい色合いを愉しみます。扇子もこれは短い普段用のものですが、長いものだとよそゆき。TPOに合わせて選びますね」
こんな佇まいなら、ちょっとした料亭に着て行っても堂々としていられますし、実に粋ですよね。こちらは京都に根付く着物文化からの応用スタイルで、舞妓さんも浴衣にお太鼓で帯留めを付けたり、足袋を履いたりしているとのこと。こんな粋な着こなしが学べるのも、老舗で浴衣をオーダーするメリットなのです。
小千谷縮の浴衣姿に、夏羽織を重ねて。「背中の紋は、芸妓さんの紋を刺繍で入れてます。贔屓にしていたおばあさんの芸妓さんで、今となってはいい思い出です」
「羽織紐も夏物に付け替えます。そういうふうに細部まで、涼しい色合いを愉しみます。扇子もこれは短い普段用のものですが、長いものだとよそゆき。TPOに合わせて選びますね」

生成り(染めていない自然のままの色)の麻地に縞が入った小千谷縮。縞柄にトンボ柄の角帯を合わせ、ひと足早く秋の風情も感じられる涼やかな印象に。生成りなどの無地の小千谷縮なら、一層フォーマルな雰囲気が漂います。
2. 定番の浴衣も2寸帯で締めれば粋な印象に
三味線を嗜んでいるという今井謙一さん。今日の浴衣は、白地に紺の「割付文様」に「花菱柄(はなびし)」というクラシックな柄をご愛用。浅草で購入したという珍しい2寸帯をコーディネートし、粋なスタイルに昇華しています。この「2寸帯」は邦楽の師匠などが着物を着る際に使うことが多いという細身の帯で、浴衣に締めると少しフォーマルな雰囲気を演出するのにもってこいなのです。
「男性の浴衣は“振”も“身八つ口”もないので、袖をポケットがわりにもできますね。化粧筆の入れもんがコンパクトでいいからペン入れにしてるんですよ」
「角帯の結び方は、浪人結び、一文字結びなどもありますがどれもほどけやすいんです。やはり貝の口が締まって解けにくいので一番です」
三味線を嗜んでいるという今井謙一さん。今日の浴衣は、白地に紺の「割付文様」に「花菱柄(はなびし)」というクラシックな柄をご愛用。浅草で購入したという珍しい2寸帯をコーディネートし、粋なスタイルに昇華しています。この「2寸帯」は邦楽の師匠などが着物を着る際に使うことが多いという細身の帯で、浴衣に締めると少しフォーマルな雰囲気を演出するのにもってこいなのです。
「男性の浴衣は“振”も“身八つ口”もないので、袖をポケットがわりにもできますね。化粧筆の入れもんがコンパクトでいいからペン入れにしてるんですよ」
「角帯の結び方は、浪人結び、一文字結びなどもありますがどれもほどけやすいんです。やはり貝の口が締まって解けにくいので一番です」

グレーや紺の細縞の小千谷縮に、薄い色合いの博多帯を組み合わせれば、コントラストを効かせた定番コーディネートが完成します。小千谷縮の浴衣はメンテもラクなので、初心者には嬉しい生地。着た後のメンテは霧吹きをかけて新聞などで覆い、上に重いものを置いておくだけでシワが取れるのです。ただし、洗濯は専門家におまかせを。
3. 定番はグレーの縞柄生地×献上模様の博多帯というスタイル
初心者でも挑戦しやすいグレーの縞柄の小千谷縮を愛用するのは井上 隆さん。通年締めることのできる献上模様の博多帯は、どんな色柄の生地にも合う重宝する一本。綿の浴衣や着物などにも使える帯なので、初めて浴衣をオーダーするきっかけに、着道楽に火がついてしまってもフル活用ができるというワケです。
浴衣の定番帯といえば、博多帯の伝統的な文様、江戸時代に黒田藩から将軍家に博多織の帯を献上したことに由来しているそう。
「信玄袋は、リボン結びにした輪っかを持ってもいいし、腰に付けてもいい。あまりこだわらず、ラフに持ってください」
初心者でも挑戦しやすいグレーの縞柄の小千谷縮を愛用するのは井上 隆さん。通年締めることのできる献上模様の博多帯は、どんな色柄の生地にも合う重宝する一本。綿の浴衣や着物などにも使える帯なので、初めて浴衣をオーダーするきっかけに、着道楽に火がついてしまってもフル活用ができるというワケです。
浴衣の定番帯といえば、博多帯の伝統的な文様、江戸時代に黒田藩から将軍家に博多織の帯を献上したことに由来しているそう。
「信玄袋は、リボン結びにした輪っかを持ってもいいし、腰に付けてもいい。あまりこだわらず、ラフに持ってください」

ここ京都でも、綿の浴衣で人気を誇るのが「竺仙」の浴衣。綿コーマの素材に、白地に紺、紺と白を基調としたクラシックな柄を豊富に展開しています。帯は浴衣地に映える、からむし織の苧麻(ちょま)の素材のものなど、使うほどに風合いが増すような生地もオススメです。
覚えておきたいのはクラシックなこの3つ

小物も老舗の呉服店ならではの粋な品揃え



京都の老舗呉服店でオーダーするならこちら

汚れやすい襟の部分を付け替えて使い、色合わせを楽しむことで発展したものです。女性の場合は半襟の色は白が多いですが、今回ご登場いただいた亀井社長の装いのように“涼”を演出するために、小千谷縮にあったさまざまな色合いの半襟を選べるのは男性ならでは。
オトナの浴衣を仕立てるなら「ゑり善」でお楽しみください。

ゑり善
■ ゑり善
住所/京都府京都市下京区四条河原町御旅町49
営業時間/10:00〜19:00
定休日/月曜休
URL/www.erizen.co.jp/
問い合わせ/☎075-221-1618
※アイテムの価格は全て店の方へお問い合わせください。