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2018.07.09

プロ伝授! ちょっとモテそな花火のウンチク【前編】

花火が好きだ!と心の底から思うけれど、どこがどのように、と考えたことはあまりないかも? 花火の美しさ、素晴らしさを見るのに、プロはいったいどこに着目するのでしょうか。知ればちょっと語りたくなる、プロのウンチクご紹介いたします。

CREDIT :

監修・写真/冴木 一馬(ハナビスト) 取材・文/岩佐 史絵

真円の花火は日本独自のものって知ってました?

ひゅるるるるぅ~と闇の中を上昇する音、ぱぁんと気持ちのいい炸裂音が響き渡り、ぱぁっと一面に広がるまん丸の華。花火といえばこうした真円のものが一般的、と思いきや、実はこれ、日本独自の技なのをご存知でしたか?

花火はその昔(海外では今も)筒状をしており、開いたときの形は予想がつかずいびつなものでした。それを世界で初めて丸い形に展開する球状の花火を作ったのが日本なのです。というわけで日本の花火は丸くなければ美しくない!とされています。
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花火の“良し悪し”を見極めるポイントは? 1に綺麗な真円になること。プロはこれを「盆がきれい」と表現する。2に美しい放射を描くこと。「肩の張りがよい」と言う。そして3つ目、いっせいに消えること。「いいねぇ、消え口が揃ってらぃ!」とあいなります。

花火を語るために知っておきたい、3つの呼び名

なるほど、日本の花火の“見どころ”がわかったら、いよいよ語りの時間です。打ち上がる花火を眺めていると、ひゅるひゅると登っていく際にキラキラ輝くものがあったり、さく裂したあと何重かの色の輪を描くもの、そこから色も形も変わっていくものなどがありますよね。

実は、花火はそういった過程で見られる小さな花火や、形状や、変化などすべてに名称があるんです。伝統的にはそれを組み合わせたものが花火の名前になっているそうで、つまり名前を聞けばどんな花火なのか、おおむね想像できるわけです。

ただし、最近ではイメージ風な名付けも増えているそうなので、すべて、とはいかないのですが……。
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打ち上がっていく花火を飾る「昇曲導」

花火が上空へと登っていく時に、軌道をさまざまに彩る花火を「昇曲導(のぼりきょくどう)」と言います。花火本体に小さな部品が取り付けられていて、これが上昇しながら展開しているのです。
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「昇曲導」は総称で、軌道をずっと照らし続けるものや小花を散らしたようなものなど、それぞれに昇小花(のぼりこばな)や昇銀竜(のぼりぎんりゅう)、昇紅竜(のぼりべにりゅう)、昇分花(のぼりぶんか)、電光付(でんこうつき)といった名称がつけられることも。

昇曲導のバリエーション

小花付の曲導(菊)

分花付の曲導(菊)

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花火を華やかに彩る「芯」

ぱっと夜空に花開いたら、単色の丸い玉ではなく二重丸のものを「芯入り」と呼びます。そして三重丸は「八重芯」(やえしん)、四重丸は「三重芯」(みえしん)、五重丸は「四重芯」(よえしん)、六重丸は「五重芯」(いつえしん)と呼びます。これら日本の芯もの花火は世界最高の技術を誇るそう。

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二重の芯がある菊型の花火を「八重芯菊(やえしんぎく)」と呼びますが、二重芯が完成した当時はこれ以上芯を増やすことはできないと思われており、最上級の「八重」という名称がつけられたとか。

幻想的な演出に欠かせない「変化」

さく裂したあとにちらちらと星がまたたくように輝いたり、大きさの違う花火がさらにさく裂したりといった動きを見せる花火のことを「変化(へんか)」と呼びます。さらに色や形状を表す細かな名称が与えられるのが伝統的です。
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これらの名称を組み合わせて花火名がつけられます。たとえば「昇曲導青紅芯変化菊(のぼりきょくどうあおべにしんへんかぎく)」なら、上昇中になにか仕掛けがあり、青と赤に展開したうえさらになにか変化する菊型の花火、と想像できるわけです
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日本の花火の美しさは職人技に裏打ちされているのです。

その昔、花火はさく裂するその一瞬のために命がけで作られる娯楽でした。

中国やヨーロッパに遅れをとったとはいえ、現代において日本がいつでも花火のトップアーティストであり続けるのは、ひとえに進化させることに長けた日本人気質と、観る者を楽しませたいという花火師たちの情熱、そしてなにより江戸期という長い平和な時代があったからこそ。

なにしろ、ただ丸く描くことだけでも難しいとされてきた花火を真円に展開するように作ることに成功したばかりか、さまざまな変化によって人々を飽きさせずに惹きつけるのが日本の花火。

その進化はとどまることなく、毎年のように新しい色や形、見せ方が登場しています。時代とともに人々の好みが変わればそれに応じて変化させ、さらに上をいく花火師が登場する。

驚くべき職人技で、次々と不可能を可能にしています。その美しさは世界に類を見ない、唯一無二の職人たちの情熱のなせる業、と言っても過言ではないでしょう。

さて、次回はさらに日本の花火の基本的な種類と、その呼び名についてご紹介いたします! 

● 冴木 一馬

写真家。世界を股にかけ花火を撮り続けて30年。撮影だけでなく、花火の歴史や民俗文化をも調査・研究し、花火のことならなんでもござれ、花火師の資格まで有する日本唯一の“ハナビスト”。山形県出身。http://www.saekikazuma.com/

写真集『花火』光村推古書院刊

写真集『花火』光村推古書院刊

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A4判 オールカラー96頁
ソフトカバー 本体2400円
ワンシャッター、多重露出をおこなわず、花火本来の姿をとらえることにこだわりぬいたハナビスト冴木一馬による花火写真集。

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