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2025.09.26

【第31回】

「マジか(怒)?」イタリア人が決して許せない海外イタリア料理のタブー10選

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

BY :

文/マッシ
CREDIT :

写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリア人が「えっ! マジか?」と思う海外のイタリア料理とは?

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリア人が「マジか?」って怒りたくなるような、海外のイタリア料理や料理マナーについてお話しします。
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多くの人にとって「海外移住」は人生の大きな決断だけど、決して譲れないことやうんざりすることがある。多くの場合、それは「食」に関わる問題だ。僕も日本に来た当初はどうしても慣れないこともあったし、海外の「イタリアン」を見るたびにイタリアの国民性が文句として嵐のように現れた。今回は、イタリア人を怒らせる世界のイタリア料理の取り扱い10選を紹介しようと思う。
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【1】ピッツァのチーズがモッツァレラじゃない

海外に住んでいるイタリア人が、その国のイタリアンレストランのピッツァを食べる時、まず最初にチェックするのは「使われているチーズ」だ。もしそれがモッツァレラではなかったら、リアクションは二通りに分かれる。北イタリアの人は「まあいっか」って感じで肩をすくめる。だって、もともとピッツァは南イタリアが発祥で、北イタリアではモッツァレラではない、なんちゃってチーズのピッツァを食べてたりするから。

一方、南イタリアの人は違うよ。ナイフを手に取り、ピッツァの表面を切り裂き、そのチーズを持ち上げては、軽蔑の眼差しでウェイターと果てしない議論を始める。ウェイターはもううんざりという顔で、最終的にはサラダ付きのステーキを勧める羽目になる。
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【2】パスタにチキン

どれだけ食に寛容なイタリア人だとしても、「チキン+パルメザン」は受け入れられない。茹ですぎてベチャベチャになったスパゲッティにソースをかけ、その上に揚げた鶏むね肉のスライス、さらにとろけないスライスチーズの切れ端が載ってるのを見ると、思わずため息が出る。これはもはや、美味しい料理に対する冒涜だ! と、その理由を熱く語り始めるイタリア人もいるくらいだ。

【3】同じお皿にいろんな料理を載せる

イタリア人、日本人、イギリス人、アメリカ人が隣合わせのテーブルに座っていたとして、一番「え、マジか……」って顔をして、小声で「まじか……」ってつぶやいているのは誰だと思う? もちろんイタリア人だよ。イタリア人は食事のルールを絶対に譲らない。同じお皿に載せていいのは、相性が良い料理だけだ。アペリティーヴォの時間は別として、ピッツァの上にパスタ、その横に野菜、さらにその近くにデザートなんて、ありえない。こんな食のミックスを見るくらいなら、余計なお皿を洗う手伝いをした方がマシだ、とさえ思う。

【4】食べる時に音を出す

イタリア人は食べる時にペチャペチャと唇を鳴らしたり、クチャクチャと音を立てながら咀嚼したり、麺を啜ったりする音を聞くと、「え? やめてくれ!」と不満げな表情になる。イタリアでは食事中、「食べる時の音」はほとんど出さないのがマナーだ。よく喋る割に、こういった音に厳しいのは意外だよね。
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【5】パスタを無駄にする

海外にいるイタリア人は、パスタが茹で汁の中で泳いでいるのを見ると我慢ならない。イタリア人の友達から聞いたり、僕自身も何度も経験したりしているけど、外国人の友達の家に招かれてパスタを作ってもらった時、鍋の中にパスタが数本残っている光景をよく目にする。

でも、パスタはどれだけ短く少なかったとしても、1本たりとも残してはいけないんだ。これは、日本人の「お米を一粒でも残したらバチがあたる」という考えに似ているよね。

【6】決められたレシピにアレンジを加える

イタリア料理にとってレシピとは、おいしさへの道しるべ。忠実に守ることが、おいしい料理への一番の近道だ。特に、「レシピにない余計なものは加えない」ということを必ず守ってほしい。

でも、良い素材と本物のレシピに則ったものは、たっぷりと使っていい。オリーブオイルやパルミジャーノ・レッジャーノ、良質なトマトなど質の高い材料を惜しみなく使うことが、イタリア料理の味を格段に引き上げるよ。あれもこれもと加えるのではなく、本当に必要なもの、本当に良いものを適切に使うことが大切なんだ。
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【7】テーブルにパンがない!

何年も海外で暮らしても、イタリア人の心と胃袋はほとんど変わらない。食事の時はテーブルにパンが入ったカゴを必ず探すよ。レストランや外国人の友達の家でパンを頼むのは、イタリア人にとっては全然変なことではない。パンがないテーブルは、お米がない定食みたいにぽっかり心に穴が開く。ちなみに、もしローマ出身のイタリア人だったら、テーブルにチーズ入れがないことにも気づいて、本気で怒り出すかもよ?

【8】イタリア料理を少しでも悪く言う

もし、相手が自らイタリア嫌いを公言するイタリア人であったとしても、イタリアの食文化だけは絶対に悪く言ってはいけない。「パスタなんて誰でも作れるよ」「イタリアのピッツァも世界中の他のピッツァと一緒でしょ」「カルボナーラは生クリームで作るんだよ」なんて言おうものなら、死者が出るかも。きっと、マンマやおばあちゃんのレシピを出してきて、一晩かけて料理の説明をし始めるよ。
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【9】ワインがグラスの縁まで並々と注がれるのと、グラスの選び方が適当なこと

イタリア以外の国でワインを頼む時、グラスの縁まで並々注がれて出てくる理由を理解するのに苦労することがある。これでは、ワイン本来の味を深くまで楽しめないし、心が痛くなる。そして、料理や飲み物は見た目からおいしさが始まっているというのに、ワインとグラスの組み合わせがおかしいと文句を言わずにはいられないよ。

【10】コーヒーがまずい

トリノからパレルモ、ローマからナポリ、ヴェネツィアからカリアリまで、海外に住むイタリア人で「まずいコーヒー」を許せる人はいない。イタリア人は一杯のコーヒーを守るためなら、怒り狂うことだって厭わないよ。もし、焦げ付いていたり水っぽかったりするコーヒーに出会ったら、もう完璧に機嫌は最悪だ。
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イタリア人にとって、食は単なる栄養補給ではない。それは文化であり、アイデンティティだ。日本のお米を大切にする心と同じように、僕たちイタリア人もパスタの一本一本に、ピッツァの一枚一枚に魂を込めている。だからこそ、海外の「イタリア料理」を見ると、ついつい口出ししたくなってしまう。

ここまで読んでくれた読者にひとつだけお願いがあるとすれば、イタリア人のことを嫌いにならないでほしい。食事に厳しい理由は、イタリア料理の伝統を守りながらおいしく楽しんでほしい、そして、おいしい料理の喜びや感動を分かち合いたいという気持ちの証拠なんだ。

いつか、この記事で紹介したような文句を言うイタリア人を見かけたら、「イタリア料理を愛している食いしん坊なんだな」と温かい目で見守ってあげてね。
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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