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2025.08.08

【第28回】

パスタ! パスタ‼ パスタ!!! イタリア人の熱狂的パスタ愛の秘密とは?

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

BY :

文/マッシ
CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリア人がパスタ料理を楽しむ際に最もこだわるのは?

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリア人が愛してやまないパスタのあれこれについてお話しします。
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イタリアの食卓に、パスタが並ばない日はない。日本人の食生活にある白米のように、イタリア人にとってパスタは単なる炭水化物ではなく、文化や歴史、そして生き方そのものが凝縮された、魂の食べ物だよ。毎日食べても飽きなくて、それでいて多くのイタリア人がスラリとした体型を保っているのはなぜか。その秘密は、栄養学的な側面を超えた、奥深いパスタとの付き合い方にある。今回はパスタの多様性と完璧な組み合わせへの探求をしてみない?
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パスタとソースが一体になることで最高のハーモニーを奏でる

日本の食卓に並ぶパスタは、スパゲッティやペンネ、フジッリ、ラザニアあたりが主流かもしれない。でも、イタリアのスーパーに足を踏み入れると、そのパスタ売り場のあまりの広さに圧倒されるよ。棚いっぱいに並ぶのは、日本ではほとんど見かけないような多種多様な形状の乾燥パスタ、そしてパック詰めされた色鮮やかな生パスタの数々。リゾーニやマルタイアーティ、ルオーテ、レジネッテ、チェッレンターニなどのパスタを聞いたことないでしょう?
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▲ スーパーの棚に並ぶパスタの種類の多さは日本と大違い。
それぞれのパスタには、合うソースと合わないソースがあって、イタリア人はその「完璧な組み合わせ」を熟知している。面白いのはパスタ売り場にパスタだけではなく、トマトソースも数えきれないほど並べられていること! 数秒でパスタとトマトソースを選んで、家で茹でれば「今日も幸せに生きている」と実感できる。
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細長いパスタには軽いオイルベースや魚介のソース、筒状のパスタにはミートソースや濃厚なクリームソースといった具合に、パスタとソースが一体になることで最高のハーモニーを奏でる。この無限とも言えるバリエーションこそが、毎日パスタを食べても飽きがこない最大の理由だよ。

同じトマトソースでも、合わせるパスタの種類や、そこに加える旬の野菜やハーブ、チーズによって、まったく違うひと皿に生まれ変わる。それはまるで、日本人が白米を炊き込みご飯にしたり、寿司にしたり、丼にしたりと、様々な形で楽しむのと同じ感覚だよね。このような共通点に気がつくと、イタリアと日本はまるで夫婦のように見えてしまう。
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イタリア人が毎日パスタを食べても太りにくい理由とは?

多くの読者が、「イタリア人がパスタを毎日食べても太りにくい理由」を知りたいよね? それは、単にパスタのGI値が低い、つまり血糖値の上昇が緩やかであるという科学的な理由に留まらない。イタリア人の「アルデンテ」への揺るぎないこだわりこそが、その健康的な食習慣を支えているんだ。アルデンテのように芯が残る程度に固く茹でられたパスタは、消化吸収に時間がかかるから満腹感が持続しやすく、食べ過ぎを防ぐという秘密があるよ。
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▲ こちらはトマトソース売り場。トマトソースだけでこんなにあるんだ。
さらに重要なのは、パスタが「地中海式ダイエット」という食文化の一部になっていること。食卓は、新鮮な野菜と果物、良質なオリーブオイル、魚介類、そして適量のワインで彩られている。パスタはあくまで「プリモ・ピアット(第一の皿)」であり、その後に続くメインディッシュ(肉や魚)は少量。日本のようにパスタだけで食事を完結させるのではなく、様々な食材とバランス良く組み合わせることで、栄養の偏りを防ぎ、全体として健康的な食生活になっているよ。
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パスタは日々の生活を豊かに彩る「喜び」の象徴

読者に覚えてもらいたいことがある。僕たちイタリア人は「生きるために食べる」のではなく、「食は喜びであり、人生そのもの」ということだ! LEONのコンセプトである「必要なのはお金じゃなくてセンス」のように、必要なのはパスタじゃなくてその組み合わせのセンスということ。

イタリア人にとってのパスタはただの食材ではなく、日々の生活を豊かに彩る「喜び」の象徴。だから、食べる時も食べない時も、「食べること」についてずっと考えているというのが、イタリア人の可愛い部分でもあるのだと思う。
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▲ マンマの作ってくれたトマトソースのショートパスタ。
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イタリアの家庭では、マンマ(お母さん)やノンナ(おばあちゃん)から受け継がれた秘伝のレシピが、世代から世代へと伝えられているおかげでいつでも最高の味を楽しめる。その一方で、日本の和風パスタようなアレンジはイタリアではなかなか受け入れられにくく、普段慣れている組み合わせや味などから離れると、“文句祭り”が始まるのだ。
例えば、納豆パスタや明太子パスタなどのアレンジは、イタリア人にとって考えられない。知らない組み合わせ、慣れていない味、理解できない食材などの理由で、「パスタに失礼ではないか」とイタリアの友人に言われたことがある。

また、ナポリタンに、ジャンクフードに使われる甘いケチャップをソースとして使うと、その慣れない甘さゆえに、不快に感じるイタリア人が少なくない。確かに僕も最初は「まじか!」と思ったけど、思い切って食べてみたらかなりおいしくて、定期的に食べたくなっている。イタリア人が食文化のシャッターをすぐ閉じることは、本当にもったいないと感じるよ。
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▲ こちらもトマトソースだけどパスタは日本でも親しまれているより少し太めのスパゲッティ。
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パスタがイタリア人の健康を支えて心を豊かにする

イタリア人はやる気がない時でも、ペペロンチーノやシンプルなトマトソースパスタをちゃんと作る。文句が多いイタリア人も、こういう時だけ「えらいね」と褒め合うんだ。「ルールを守らない」「よく遅刻する」「なんでもできる! と口だけ達者」などの行動がよくあるのは認めるけど、パスタを食べる時間になると、真面目で美味しいパスタ作りを約束する。イタリア人は命にかえても、素晴らしいパスタを作るんだ。すごくない? この変化はまるでジキル博士とハイド氏のようだ。
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▲ こちらは平打ちのロングパスタ。
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イタリア人が小麦粉、特にパスタを「やめられない」のではなく、むしろ「やめる必要がない」と感じているのは、そのパスタがイタリア人の健康を支えて心を豊かにするから。そして何よりも、イタリア人のアイデンティティそのものを形作っているからだ。パスタは、イタリアという国が持つ奥深さ、人生を謳歌するイタリア人の精神を、まさに体現している。

イタリア人のように日本人も自分らしい好みのソースを作れば、イタリア料理だろうが日本料理だろうが、その味は幸せの元になるはずだ! 必要なのはパスタじゃなくてその組み合わせのセンスだ!
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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