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2025.09.12

【第30回】

「え? これ本当に食べるの?」 イタリア人が衝撃を受けた日本の料理5選

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

BY :

文/マッシ
CREDIT :

写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリア人が「え? 正気か?」と思う日本の料理とは?

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回は外国人が「冗談だろ?」って叫びたくなるような、でも一度食べたら忘れられない、そんな衝撃の料理たちについてお話しします。
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イタリア人にとって、食事は人生そのもの。マンマの作る手打ちパスタ、新鮮な魚介を使ったアクアパッツァ、ワインとチーズ……。シンプルだけど最高に美味いものが、周りにはたくさんある。だから日本の食文化を知った時は、もう心臓がバクバクだった。「え? これ本当に食べるの?」「冗談だろ?」って叫びたくなるような、でも一度食べたら忘れられない、そんな衝撃の料理たちを紹介しよう。
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【その1】「フグ」

日本に来て一番最初に衝撃を受けたのが、フグだ。初めて「フグを食べに行こう」って誘われた時、僕は笑いながら「冗談だろ?」って聞き返した。イタリアでは「フグ=毒=死」だ。でも、目の前に出されたフグ刺しは、まるで宝石のように美しかった。薄く切られた身は透き通っていて、皿の模様がくっきりと見える。ひと口食べると、まるで噛んでいることを忘れるくらい繊細で、ほんのりとした甘みが口の中に広がった。
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「もし毒があったらどうする?」って尋ねたら、日本の友人は「ちゃんと免許を持った職人が調理してるから大丈夫だよ」って自信満々に言った。フグを捌くには国家資格が必要だなんて、クレイジーすぎる! でも、その命がけの美食こそが、フグを特別な存在にしている。日本人は皆、少しだけスリルを求めているのかもしれない。
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実はヨーロッパではフグをほとんど見かけないんだ。その理由は、ヨーロッパではフグを食べる習慣がなく、EU(欧州連合)の法律でフグの輸入が事実上禁止されているから。日本では国家資格を持つ職人が命がけで調理してくれるけど、ヨーロッパではそんな制度、ないに等しい。だから、もし誰かがフグを食べたいと思っても、イタリアやフランス、ドイツではまず不可能だ。
でも、最近少しずつ状況が変わりつつある。数年前のミラノ万博で、日本の食文化を紹介するイベントがあって、そこで日本のフグ料理が紹介され大きな話題になった。それに、僕らみたいな日本食好きが増えて、寿司やラーメンのようにフグにも興味を持つ人が増えている。
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【その2】「生卵」

日本人の友人がアツアツのご飯に生の卵を落とし、醤油をかけてうれしそうに食べているのを見た時、当時日本に来たばかりの僕はショックで言葉を失った。生卵を食べるなんてイタリア人には考えられない。まるで、病気になるためにご飯を食べているように見えたんだ。

なぜかというと、イタリアの生卵はそこまで新鮮ではなく火を通さず生のまま食べられる品質ではないから。もし、イタリアで「生卵をご飯にかけて食べるよ」と言ったら、「え? 正気か?」と言われるに違いない。
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でも、せっかく日本に来たんだから、試さないわけにはいかない。おそるおそるご飯に卵を落として、ぐるぐると混ぜてみた。すると、ご飯は黄金の輝きを放つ「マジックライス」に変わった。ひと口食べると、信じられないほどまろやかで濃厚な風味が口いっぱいに広がる。まるで、ご飯がクリーミーなリゾットになったみたいだ。

この「TKG(卵かけご飯)」は、僕の日本食ベスト10にランクインするくらい大好きになった。日本の卵は、品質管理が徹底しているから生でも安全に食べられるらしい。食への探求心と安全へのこだわり、その両方が詰まった料理だ。
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【その3】「ハブ酒」

「食の冒険」は、もちろん酒にも言える。沖縄で出会ったハブ酒は、まさに衝撃だった。ガラス瓶の中にウネウネととぐろを巻いた毒蛇がいる。それを眺めながら飲むなんて、どういう神経をしているんだろう? と恐怖で体が震えた。勇気を出してひと口飲んでみると、意外にも味はまろやかで強烈なアルコールの香りがする。友人は「体にいいんだよ」と笑っていたけど、僕は怖くてたくさん飲めなかった。でも、そのボトルに入ったハブの姿はまるで伝説の秘薬みたいで、見るたびにゾクゾクした。
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【その4】「タコとナマコ」

タコも、イタリア人から見るとかなり奇妙な食べ物だ。だって、足が8本もあるんだよ? しかも吸盤がついている。イタリアでもタコの存在を見ないことはないけど、食べる習慣があるのは南イタリアの地域のみだ。僕の故郷北イタリア周辺では、「クラーケン」という海の悪魔に例えられていたから、何となく怖いイメージがある。

でも、日本で初めて食べたタコ焼きの美味しさは、その恐怖のイメージを覆すほどだった! 熱々でフワフワの生地の中にプリッとしたタコが入っていて、ソースとマヨネーズが絡み合う。これはもう芸術だ!

そしてナマコ。初めて見た時、「海のナメクジか?」と思った。ブニョブニョしていて、とても食べ物には見えなかった。でも、酢の物として食べると意外とコリコリした食感で、磯の香りが口の中に広がる。慣れてくるとこの食感が病みつきになるんだ。
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【その5】「モツ」

日本の焼き鳥屋は、僕にとってまるで「驚異の動物園」だった。初めてハツ(心臓)やレバー(肝臓)、砂肝(胃)などのメニューを見た時、「ノー、ノー、ノー!」って叫びたかった。イタリアではこのような部位は捨ててしまうものだから。でも、日本の職人はさまざまな部位を絶妙な火加減で焼いて、最高の美味に仕立てる。レバーはとろけるように柔らかく、砂肝はコリコリとした歯ごたえが楽しい。

一番驚いたのがハツだ。こんな小さな心臓にこんなにも旨味が詰まっているなんて! 日本人は食材を余すことなく、最大限に活かす。命をいただいているという感謝の気持ちが、この料理を生み出しているんだね。
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日本はまさに「食の冒険王国」だ。外国人の常識を覆すような、一見クレイジーで危険に思える素材でさえ、最高の技術と食材への深い敬意から美味しい料理にしてしまう。僕の日本食への探究心は、尽きることのない冒険の旅なんだ。

読者の皆さんはどう思う? 僕がまだ知らないもっとクレイジーな日本の食べ物があったら、ぜひ教えてね。 一緒に「食の冒険」に出かけよう!
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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