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2025.07.25

【第27回】

イタリア人の夏の常識。スイカに塩はありえない。夏でも熱々エスプレッソですが、何か?

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

BY :

文/マッシ
CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリアと日本の「夏の過ごし方」は似て非なるもの?

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリアにおける夏の過ごし方のあれこれについてお話しします。
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イタリアと日本の夏って、どっちも癒される風景がたくさんあるなぁと思いながら、過ごし方はこんなに変わるのか、と同じ地球に生きていると感じられないようなことが何回もあった。今回は僕が12年以上振りにイタリアの夏に一時帰国をすることになったことを活かして、読者が気になるイタリア人家庭の夏の過ごし方や、日本では考えられない夏のライフスタイルなど、現地で調査してきたよ。忘れられなくなるイタリアの夏と出会ってみよう!
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イタリアの夏と言えば、日本では見かけないズッキーニの花

子どもの頃から不思議に思っていた、イタリアの夏を感じさせられる料理はズッキーニの花だ。日本ではあまり見かけないけど、イタリアではスーパーで普通に販売されている。家庭では卵とパン粉をつけて揚げたり、オーブン焼きにしたりするのが一般的な調理法で、ほんのりとした甘みとサクサク感は夏に欠かせないんだ。
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▲ これがズッキーニの花の料理。日本では食べないよね。
ここで、イタリアと日本で似たような料理があるのに改めて気がついた! 「大葉の天ぷら」と「セージのフリット」だ! どちらも葉っぱで、どちらもフライにする。パン粉や小麦粉の衣で揚げるだけで、たまらない食感と自然な味が魅力だ。
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イタリア人の常識、「スイカに塩はありえない!」

イタリアの夏と日本の夏で、共通している存在がある。それは、夏の間は何回も食べる「スイカ」だ。イタリアのスイカは日本と比べかなりデカくて、安い。ちなみに、イタリア人にあの禁断の質問、「スイカに塩をかけて食べる?」と聞いてみたら、その反応は僕をそれほど驚かせなかった。なぜなら、イタリア人は自分たちの食のスタイルを変えることはめったにせず、やっぱり「スイカに塩はありえない」と答えた人がほとんどだったからだ。

「塩っぱさと甘さ」というコンビは確かにそこまで人気がなくて、日本で昔から流行っている塩キャラメルもイタリア人の口にそこまで合わなかった。
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▲ スイカに塩はかけないけど、メロンに塩をかけて食べる習慣はある。
ただし! スイカではないけど、メロンに塩をかけて食べる習慣はある。まさかだよね? でも、たしかにメロンと生ハムの組み合わせがあるんだから、メロンに塩も考えられないことはないよね。イタリアのメロンは日本に比べ控えめでさっぱりとした甘さ。この甘さ控えめのメロンと塩の塩っぱさがちょうど良くて、楽しく味わえる。この話はお母さんが話してくれたんだけど、聞きながら、僕は「ふむふむ」と唸っていた。
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イタリア人は夏でも熱々のエスプレッソ

この連載で何度か出た話だから皆さんはすでにご存知だろうけど、イタリアでは真夏でもアイスコーヒーではなく、熱々のエスプレッソを飲むよ。アイスコーヒーもないことはないけど、「カフェシェケラート(冷たいエスプレッソドリンク)」や南イタリアの「エスプレッソに氷」などになる。いわゆる、日本のアイスコーヒー的なものはほとんどない。
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▲ これが「コッパ・デル・ノンノ」というコーヒー味のアイスクリーム。
自宅では絶対に作らないかわりに、子どもの頃から大好きな「コッパ・デル・ノンノ(おじいちゃんのカップの意味)」というコーヒー味のアイスクリームを必ず冷蔵庫にストックするんだ。食後でもおやつでも、一日に何回も手を出してしまうほど食べる。ジェラートを愛してやまないイタリア人は、冷蔵庫に数種類のアイスクリームを必ずストックしてある。なかでもこのコッパ・デル・ノンノは昔から大人気なんだ。
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昼間の暑さは「ペルシアーナ」で太陽光を遮断する

食文化から離れて日本の独特な文化へ目を向けよう。日本の「夏対策」はイタリアとの共通点がいくつかあるよ。読者も驚くかもしれないけど、知るとイタリアのこともますます好きになるはずだ。

まず、日本の「打ち水」のように、道路や庭に水をまいて気化熱で涼を得るという習慣が、イタリアにもある。特に夏の暑い時期には、建物の周りやテラスなどに水をまくことで、涼しさを感じようとする家庭やお店が多いよ。これは、日本の打ち水と同じく、古くからの生活の知恵として自然に行われているみたいだ。
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▲ 日中は「ペルシアーナ」と呼ばれるブラインドや鎧戸を閉めて、太陽光を遮断する。
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また、日本ではクーラーがない家はほとんどないといえるほど、当たり前の存在になっている。一方、イタリアでは、古い建物が多く建物の外観への規制が厳しいから、クーラーを設置したいと思っていてもできない場合もあるんだ。地域によっては40℃くらいまで気温が上がるイタリアの夏を、どうやって乗り越えるのか気になるよね。

実はイタリアでは赤煉瓦や石でできた家が多いから、扇風機を回せば家の中はそこまで熱がこもらない。それだけではなく、窓の外側に「ペルシアーナ」と呼ばれるブラインドや鎧戸がある。日中の強い日差しが差し込む時間帯にはこれを閉めて、太陽光を遮断する。これで室内の温度上昇を抑えて、朝晩に取り入れた涼しい空気を家の中に保つことができるんだ。日中は家の中が薄暗くなることが多いけど、これがイタリア流の夏の過ごし方だよ。
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▲ イタリアの夏は、夜の9時半〜10時まで明るいんだ。

夏のイタリア人は夜になると活発に動き出す

夏のイタリアの大きなメリットは、夜9時半〜10時まで明るいことだ。日中の暑さを避けて、夜に活動的になるのもイタリアの夏の過ごし方のひとつだ。日が暮れて涼しくなると、人々はテラス席で食事をしたり、散歩をしたり、友人との交流を楽しんだりする。

日本では夜になってもなかなか湿気が落ちないよね。イタリアはカラッとしているから、日が落ち始めると割と涼しくなる。夜は遅くまで明るいから、出かけて誰か相手と楽しめばより涼しく感じるよ。僕が好きな過ごし方は、テラス席や庭、バルコニーなどでの食事だ。日光がなくなれば最高に気持ちいい空間で開放的な食事の時間になる。
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▲ こんなテラスで仲間と談笑する時間がこの上ない幸せなんだ。
最後に、読者もこのイメージを持っているかも。イタリアでは日中の静けさとは打って変わって、日が傾き涼しくなると、街が一気に活気づく。夕食前の時間帯には、多くの人が通りに出て「パッセッジャータ(Passeggiata)」と呼ばれる散歩を楽しむよ。これは単なる散歩ではなく、友人や家族と連れ立って、最新のファッションを身につけ、おしゃべりしながら街をぶらつく社交の場なんだ。美しい夕暮れの中、ジェラートを片手に談笑する人々の姿は、まさにイタリアの夏の象徴といえる。

みなさん、イタリアの夏はいかが? イタリアに行かれた方はより楽しめるし、日本でも似たような過ごし方を試してみては? 暑さに一番効く対策は「相手との楽しい時間」だから、今年は素敵な相手とイタリアの夏を再現をしてみよう!
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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