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2018.01.23

絶対美味しい!究極の炒飯の作り方 第2回/三田「御田町 桃の木」油を感じさせない炒飯の極意

「御田町 桃の木」の名物は干貝柱をふんだんに使う贅沢炒飯。とは言え、派手さはなく、シンプルかつ繊細。素材の旨みと甘さをしっかりと味わえるお店です。

CREDIT :

文/柏木智帆 写真/James Gray

炒飯(チャーハン)、手軽に出来るのにこれほど味に違いの出る料理はめったにありません。美味しい炒飯が作れる男は絶対カッコいい。モテるに違いない。というわけで、本当に美味しい炒飯をつくる極意を求めて「炒飯が絶品」と評判の店を訪ねました。
第2回は東京・三田にある中華料理店「御田町 桃の木」。こちらの炒飯は干貝柱を贅沢に使った炒飯。卵を使っているのに、卵の風味だけ残して卵の姿が見えない。油を使っているのに油っぽさを感じさせない。ごはんはしっとりパラパラ。繊細でありながら、噛めば噛むほど旨みと甘さが感じられる炒飯。その秘密とは?
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噛むほどに旨みと甘さが広がる炒飯は白ワインにもぴったり
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「炒飯はお米料理ではなく卵料理」。その理由は?

白い壁と木の扉の小さな店の前に、オリーブの鉢植え。イタリアンかフレンチのお店のようですが、実は広東料理をベースとした中華料理店。「御田町 桃の木」では、ワイン好きのオーナーシェフ・小林武史さんがワインに合う中華料理を提供しています。

基本のコースは、1万2500円と1万5000円(税・サ別)。そして、フカヒレコース(2万2000円)と季節限定の上海蟹コース(2万5000円)。このいずれのコースでも最後に食べられるのが「干貝柱の炒飯」。北海道産の高級干貝柱をたっぷりと使う炒飯です。「それは美味しいに決まっているでしょう」と思われるかもしれませんが、ただ高級食材を使っているだけではありません。
この店の炒飯は、日本人が食べ慣れている炒飯とは一線を画しています。小林さん曰く、「炒飯はお米料理ではなく、卵料理と考えたほうが良いです」。炒飯なのに卵料理? その言葉の意味は何なのでしょうか?
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ソファ席もあり、ゆったりと食事を楽しめる
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炒めすぎると「焼き飯」になる危険!

「加熱して温めた鉄鍋に卵を入れると、瞬時に火が入ってカステラのような卵の香りがふわ~っと立ち上がってきます。その香りが出ているうちに仕上げなくてはなりません」と小林さん。ありがちな失敗は「焼き飯」にしてしまうこと。「炒めすぎてごはん粒が油を吸い込んでガチガチになってしまい、卵も焦げ色がついた状態。それは炒飯ではなく焼き飯です」。なるほど、卵の状態を見ることで、炒飯の炒め時間のタイミングを判断するのですね。卵あってこその炒飯。炒飯にとって卵がここまで存在価値の大きな食材だったとは……。
卵以外の材料は、炊飯したタイのジャスミンライス、干貝柱、ネギ。それぞれに施された丁寧な下ごしらえも美味しさの秘訣です。卵は濾してなめらかに。干貝柱は水で戻して細かくほぐします。このとき、袋の中に貝柱が吸うギリギリの水量を入れ、空気を抜いた状態で戻すと旨みが逃げません。長ネギは味のシャープさを出すために芯部分を使わず外側だけをみじん切りに。ごはんは炊いた後に送風機で水分を飛ばしながら冷ましてほぐします。
調味料はモンゴル産の岩塩だけ。ただし、「本場の味を食べ慣れている人には塩だけを使いますが、日本人は旨み調味料に慣れているので、少しだけ旨み調味料やチキンパウダーを入れます」と小林さん。「本場にこだわっても日本人の方が美味しいと言ってくれないと、こちらの自己満足になってしまうので……」。どうせならば本場の味をと、今回は塩だけでオーダーしました。
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最後にほんの少量の水を入れる裏技

さっそく小林さんに1人前量の炒飯を作ってもらいます。

まずは、熱した鍋に油をたっぷり投入して鍋肌に油をなじませたら取り出す。この「鍋ならし」を3回繰り返します。調理に使うのは、小さじ2杯ほどの生搾り太白胡麻油。少ないように感じるかもしれませんが、鍋ならしによってすでに油が鍋になじんでいるので、このくらいの量でちょうど良いのだそうです。
200グラムのごはんを入れたらすぐに45cc(Lサイズの3分の2)の卵を回しかけ、お玉で手早く混ぜていきます。塩をひとつまみ入れたら、すぐに刻みねぎ30グラムと干貝柱35グラムを投入。
「卵に火が入ってごはんと混ざったと思ったら完成です。手早く切り上げないと、ごはんの水分が飛んでしまい、卵の香りもなくなってしまいます。炒飯は卵料理ですから卵の香りが大事です」と小林さん。最後に小さじ2杯ほどの水を入れ、さっと混ぜて完成。ごはんを入れてから40秒ほどの出来事でした。
ところで、最後の水は何だったのでしょう?

聞いてみると、「強い火力の鍋底に落ちた水が一瞬で水蒸気になり、食材にくっつきます。すると、食材にまとった油の粒子が、細かい水の粒子によって細かくなります。そのため、舌で感じる油の重さを軽くすることができるのです」と教えてくれました。調理後の鉄鍋の底には油がほぼ見受けられません。
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油を感じさせない軽やかな食べ心地

見た目はシンプルな炒飯ですが、顔を近づけてみると、貝柱の1本1本が透き通ってキラキラと輝いています。一方で、卵の姿がどこにもないような……。とは言え、卵の風味はたしかに感じられます。よく見ると、全体的にごはんが薄黄に色づいています。卵の塊が確認できないほど、ごはんと卵がなじんでいるのです。
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ほろほろと繊細な口当り。素材の甘さが味わえる炒飯
ごはんはパラパラでしっとり柔らか。貝柱は1本1本の繊維がホロホロ。ネギはしっかりと火が入っていながらもシャキシャキとした食感。口に入れた瞬間は若干薄味のように感じますが、噛むほどに甘さと旨みがじわじわと口の中に広がります。素材そのものを味わう、繊細ながらも味の濃い炒飯。白ワインにも合いそうです。
そして、やはり食べても油を感じさせません。食べ終わった後の皿にも、油がほとんど見受けられないのです。この炒飯ならば毎日食べ続けても胃がもたれず飽きが来なそうです。2005年オープン時からのロングセラーメニューというのも納得。「炒飯は油っぽい料理」というイメージは完全に覆りました。
自宅で作る際に「鉄鍋がない」「普段食べているお米で作りたい」という方は、底が広いテフロン加工のフライパンと日本米でも大丈夫。ただし、家庭のガスは火力が弱いため、「1人前ずつ作ること」「炊きたての温かいごはんを使うこと」がポイント。炊飯後に保温状態にするとごはん同士がくっついてしまうため、炊きたてをほぐすのがベスト。コシヒカリなど粘りがある品種の場合は、手に水をつけるとほぐしやすいそうです。

油を感じさせない軽やかな炒飯は女性も喜ぶこと間違いなし。まずは彼女とお店でその味を体験してみてはどうでしょう。
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◆ 御田町 桃の木

住所/東京都港区三田2-17-29オーロラ三田105
営業時間/17:30〜22:00(L.O21:00)
定休日/水曜・第2火曜日・その他臨時休業あり
URL/http://www.mitamachi-momonoki.com/
予約・問い合わせ/☎︎03-5443-1309

●完全予約制。料理はコースのみ。1万2500円・1万5000円・2万2000円(フカヒレコース)・2万3000円(上海蟹コース10月中旬から12月末まで)※いずれも税・サ10%別

●柏木智帆

元神奈川新聞記者。取材を通じてお米とお米文化に興味をもち、「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに執筆活動を続けている。ちなみにお米でできた日本酒も大好き。

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