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2017.10.12

いま、デートやプレゼントで使える! ボジョレ・ヌーヴォーの真実

今年ももうすぐボジョレ・ヌーヴォーの季節がやってきます。一時期は日本で最も有名なワインとも言われたこのワインの本当の魅力をお教えします。

CREDIT :

文/名越 康子

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秋も深まると一斉に店頭に並ぶボジョレ・ヌーヴォー。普段はワインを飲まない人までついつい買ってしまう秋の風物詩のような存在です。でも、あまたあるワインのなかでボジョレ・ヌーヴォーってどんな特徴があるの? 何故この時期だけなの? 彼女にきちんと説明できますか。その素性をしっかりおさえて楽しむべく、ワイン・ジャーナリストの名越康子さんに教えて頂きました。

実はいま、ボジョレが面白い

つい数か月前、ボジョレ地方を訪ねてきました。なぜかというと「いまボジョレは注目すべき産地だ!」と欧米のワイン・ジャーナリストが書いているのを読み、いてもたってもいられなくなったからです。一体何が起こっているのか、現場を取材したいと考えて7月半ばに一路ボジョレへ。
  
細かいことはさておき、とても活気があり確かに興味深い事実がいくつも判明しました。特に多くの若手生産者の勢いがあり、品質もぐんぐんと上がってきているのが印象的でした。それぞれが、その土地や造り手の個性を反映したワインを造ろうと意欲に満ちているのです。
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ボジョレのワイン「Clos du Fief」。真ん中のボトルは昨年のヌーヴォー

あらためてボジョレ・ヌーヴォーとは

皆さんは、ボジョレ・ヌーヴォーについてどのような印象をおもちでしょうか?
「80年代のバブル期の遺産」「初心者の飲み物」「ただの安酒」とか? あまり良い印象ではないかもしれませんね。私は時々「大人のための美味しいブドウジュース」と言うことがあります。でも、それは愛を込めて(笑)。

確かに、ボジョレ・ヌーヴォーが世界市場で一世を風靡したのは70年代から80年代です。日本市場でのピークは、バブル、赤ワインブームなどの影響もあり2004年でした。そして、ヌーヴォーの輸出量の半量以上が日本へ来ているのも、今や日本でも徐々に需要が減りつつあるのも事実です。理由は、ボジョレ・ヌーヴォーの特徴である「フレッシュ」で「フルーティ」で「タンニンの少ない」飲みやすいワインが今では日本市場にも溢れているからだとみています。

じゃあ、ボジョレ・ヌーヴォーはもう時代遅れなのか? というと、そうではありません。でもその話の前に、ちょっとヌーヴォーについておさらいをしておきます。

ヌーヴォーの解禁日が11月第3木曜日に決まったのは1985年から

ボジョレ・ヌーヴォーが造られるようになったのは、1951年からです。この時に、南仏のラングドック地方で開発されたマセラシオン・カルボニック(通称MC法)という醸造方法がボジョレに導入されました。この方法は、赤ワイン用の黒ブドウから色と華やかな香りは得るけれど、渋いタンニンは引き出さないという特徴があります。だから、鮮やかな赤紫色をしてアロマティックな香りが魅力的な、フレッシュ感に溢れたボジョレ・ヌーヴォーができ上がるのです。
  
当時は、ヌーヴォーの出荷開始日は11月13日であったり、11月3日であったりと、しばらく固定されていませんでした。1967年からは11月15日午前0時に解禁されることになったものの、土日の関係で出荷に支障が出る年があるなどして、結局1985年から今のような「11月第3木曜日午前0時」が解禁日と指定されるようになりました。
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ボジョレ・ヌーヴォーを飲む意義とは

ある時、ボジョレ・ヌーヴォーを「初心者用のワインだから」とバカにするワインの売り手に会ったことがあり、顔には出しませんでしたがたいそう立腹した記憶があります。そういう人こそ、ド素人だと思います。なぜかというと、ボジョレ・ヌーヴォーを飲むと、その年がどのようなヴィンテージだったのかがいち早くわかるからです。

「でも、毎年同じような褒め言葉を使っているんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そういうわけでもないのです。 例えば「2015年は我が人生最良のヴィンテージ」と、ボジョレの帝王ジョルジュ・デュブッフが語ったそうです。今年7月に現地で多くの2015年のクリュ・デュ・ボジョレを試飲しましたが、特別な年だったことは明白でした。まるでローヌのワインのような、香りも強くとても凝縮した味わいのワインばかりでした。

ボジョレ・ヌーヴォーを飲めば、ボジョレ地方はもちろんのこと距離的に近い北のブルゴーニュ地方や南のローヌ地方のヴィンテージ状況についてもおよそ想像ができます。ですから貴重なサンプリングでもあり、翌年以降にリリースされるワインを購入する時の目安になるといっても過言ではありません。

ちなみに今年2017年は、春から完璧な気候だったにもかかわらず7月初旬に数カ所がひどい嵐と雹に見舞われて収穫量が減少しました。しかし、その後も乾燥していたため大変健全で小粒なブドウが収穫できたと言っています。「2015年を思わせる、しかしよりエレガントでフレッシュ」ということですから、2015年ほど濃すぎず程よいバランスなのだろうと期待しているところです。
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日本で飲むボジョレ・ヌーヴォーが世界一である理由

加えて、日本で飲むボジョレ・ヌーヴォーは世界一とも言えます。解禁時間のことではなく、バラエティの豊かさが世界一なのです。

お気づきかと思いますが、ボジョレ・ヌーヴォーにも色々な種類があります。同じ造り手でも「ボジョレ」「ボジョレ・ヴィラージュ」と記されているのは、ブドウの出所や品質の違いですから、少し価格の高い後者の方がより優れていることになります。でもそれだけではなく、最近では「ヴィエイユ・ヴィーニュ」「ノン・フィルター」「キュヴェ・プレステージ」など上級キュヴェ(※)が増えています。つまり、こだわりのヌーヴォーが多いので結構飽きることなく、むしろ毎年銘柄探しが楽しくなっているように思います。

今回訪問した造り手さんも言っていました。「うちのプレステージ・キュヴェは、日本にだけヌーヴォーとして出荷している」と。こういうところは何社もあります。少量ながら日本向けに品質の高いブドウで仕立ててくれているのです。
だから、日本は世界一ボジョレ・ヌーヴォーを楽しめる国なのです。
※ キュヴェ 生産者や販売者が独自に選別し樽詰・瓶詰したワインのこと
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ボジョレ・ヌーヴォーの“通な飲み方”とは

ですから、もし「今さらヌーヴォーなんて」と思っているならば、ちょっともったいないように思います。

例えば普通の「ボジョレ・ヌーヴォー」より少し値は張りますが、上級ラインを試してみませんか? 「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー」の記載+「ノン・フィルター」「ヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)」「キュヴェ・プレステージ」という文字が鍵でしょうか。

あるいは、生産者名に「ドメーヌ」と記されているものでちょっとお高いもの。ドメーヌは、自社畑のブドウだけを使っています。そして、自社畑がボジョレ・ヴィラージュより格上の「クリュ(畑)」であっても、ヌーヴォーの場合にはラベルにクリュの名前が記載できないので隠れてしまっています。ですから、ドメーヌでクリュの畑ばかり所有している生産者のものを入手すれば、確実に優れたブドウを使っています。このあたりは、ワイン・ショップの人に確認してみてください。

このクラスになると、力強さもあり味わい深いワインが多いものです。現地でも、2016年と2015年の「ボジョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー キュヴェ・プレステージ」を「飲んでみる?」と開けてくれた人がいました。これまた美味しかったこと。ヌーヴォーは、基本的に早く美味しく飲めるように造られた赤ワインではありますが、プレステージクラスになると、数年置いておいても大丈夫なのです。

ヌーヴォーで気に入った造り手があったら、ぜひヌーヴォーではない通年で飲める銘柄にもトライしてみていただきたい! と強く願います。「クリュ・ド・ボジョレ」を飲み始めると冒頭に述べたボジョレの面白さ、奥深さに触れることになり、ますます楽しいワインライフが送れるに違いありません。

おまけ:ボジョレのブドウ品種ガメイはピノ・ノワールの子供

最後にもうひとつお伝えしておきます。ボジョレはガメイというブドウ品種100%で造られています。この品種は、実はブルゴーニュのピノ・ノワールの家族です。DNA鑑定で、両親は「ピノ・ノワールとグエ・ブラン」だと判明しています。

● 名越 康子(なごし・やすこ) 

ワインの輸入元勤務を経てフリーランスのワイン・ジャーナリストへ。しかし、子育ても落ち着き2年前にワイン&スピリッツの専門誌WANDS(ウォンズ)編集部に入り、再び会社員に。2017年から同社代表を務めている。
URL/http://wandsmagazine.jp

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