アメリカナイズされた欧州チーズという未体験の味わい
“カリフォルニア”と聞いて、皆様は何を思い浮かべますか? サーフィン、ハリウッド、ナパワイン……当地を象徴するものは多数あれど、“チーズ”と答える方は多くないはず。しかしその実、カリフォルニアは欧州諸国に勝るとも劣らないチーズ天国だったのです! そんなチーズの美味さを広めるべく、現地から有名シェフが来日、広尾の「ラ・ビスボッチャ」を舞台にしたプレゼンに参加、カリフォルニア食材の秘密をお知らせする前編です!

「カリフォルニアのチーズは、原料のミルクからして違うのです!」
そう自信たっぷりに話すのは、シェフのバーバラ・アレキサンダーさん。「California Cheese Showcase」と銘打った特別講演のため、はるばる海を越えて来日してくれました。
舞台は広尾「ラ・ビスボッチャ」。イタリアンの名手として鳴らす同店の料理長・井上裕基さんがカリフォルニアチーズを使った料理を参加者にふるまい、バーバラさんとともにそのポテンシャルをお披露目するという趣向です。

▲ シェフのバーバラさん。世界中を飛び回り講演を行うチーズのエキスパートです。

▲ LEONでもお馴染み、「ラ・ビスボッチャ」料理長の井上さん。イタリアンの王道を継承する実力派にして、イノベーティブな料理にもアンテナを張り巡らせる情熱家。

「チーズのお話をする前に、ミルクの特別さをお伝えしましょう。ここに生クリームをご用意しました。ねっとりとしていて、とても濃厚な印象ですよね。一般的な生クリームは時間が経つと水っぽくなってしまいますが、こちらは48時間放置してしっかり固まったまま。それくらいしっかりとしたテクスチャーなんです。
脂肪分は36%と高め。それでいて、実際口に入れてみると大変クリーンな味わいです。これは雑味のないピュアなミルクだからですね。
産地は緑にあふれた場所で、一年の半分は草木が生い茂る大変美しい土地です。色が真っ白なのも特徴で、これはパティシエにとっては非常に重要なポイントですね。さあ、テイスティングしてみてください」
バーバラさんに促されて生クリームを試食すると、確かにこれは未体験! 口当たりまるでクリームチーズ。濃厚でいて不思議とクドくない魅惑的な味わいに衝撃を受けました。これは本題のチーズにも期待がもてそうです。

「カリフォルニアチーズには多くの優れた作り手がいます。まずは『ディ ステファノ』社。創業者はイタリア・プーリアの出身で、北米にブッラータチーズを広めた立役者として有名です。カリフォルニアのミルクとイタリアの伝統的な製法が融合したフレッシュチーズは、まさに絶品ですね。ブッラータに加えてマスカルポーネチーズもおすすめです」
バーバラさんの解説どおり、これは記憶に焼きつく味わい。クラシックなイタリアチーズらしさを感じさせつつ、驚くほどの滑らかさが口内から快楽中枢を刺激します。
ブッラータはピザやカプレーゼだけでなく、マンゴー・ココナッツ・ミント・チャツネと合わせたインディアンスタイルで食べると最高なんだそう。マスカルポーネは、炙ったイチヂクに乗せてバルサミコ酢とともにいただくのがバーバラさんのおすすめ。勉強になりますな〜。
「続いてご紹介するのは『ポイントレイズ』社。3姉妹が経営する会社で、ミルクをもたらす牛、さらには牧草まで自分たちで徹底管理しているこだわりの作り手です。バラエティに富んだチーズを手がけているのも特徴的ですね。
ベイリーフのエッセンスを染み込ませ、スプルースの樹皮でチーズの外側を包んで作ることにより、植物の複雑な香りをまとったソフトチーズ『キンタ』。バターのようなコクを楽しめるイタリア風のセミハードチーズ『トーマ』。
そこに唐辛子のアクセントを加えた『トーマラシ』。4カ月熟成させ、キャラメルのようなニュアンスを帯びた『ゴーダ』。さらにブルーチーズも出色です。
クラシックな『オリジナルブルー』に加え、フェンネルシードでフレーバーをプラスした『フェンネルブルー』もラインナップしています。ブルーチーズはチョコレートと合わせても美味しいんですよ」

▲ 「日本人の方々にとって、特に親しみをもてるのでは」とバーバラさんが紹介してくれた「トウマラシ」。トウガラシのスパイシーな味わいが濃厚なチーズと絡み合います。

▲ 「ゴーダチーズの本場といえばオランダですが、ポイントレイズ社のゴーダもそれと肩を並べられるほどのクオリティです」とバーバラさんも太鼓判。

▲ フェンネルのフレーバーを加えたブルーチーズ「フェンネルブルー」。ガツンとくるチーズ感と独特な甘みがクセになります。
一流イタリアンシェフがカリフォルニアチーズを料理すると……

▲ 「今日はロサンゼルスの大人気レストラン『ベスティア』のシェフをイメージしてバンダナを巻いてきました」と話す井上さん。ハートにはカリフォルニア魂が乗り移っています!
知られざるカリフォルニアチーズの世界にグイグイと引き込まれるバーバラさんの講演に続いては、「ラ・ビスボッチャ」井上シェフによるカリフォルニアチーズ料理を実食。イタリアンの達人がはたしてどう腕を振るうのか、会場の熱気もさらに高まります。

▲ 左が「カチョ・エ・ぺぺ・チップス」、右が「B.L.T.」
まずテーブルに登場したのは、可愛らしい牛が飾られた突き出し。これはバーバラさん考案のひと皿だそうで、いわく「カリフォルニアでは、クリームチーズに自分の好きなフレーバーを加えて、それをポテトチップスにディップして食べるのが定番。その進化形といえるアミューズがこちらです。
名づけて『カチョ・エ・ぺぺ・チップス』。トーマとクリームチーズで作ったクリームにバター・スモークオニオン・塩・コショウを混ぜて、イタリアの定番パスタであるカチョ・エ・ペペ風のクリームに。上にはキャビアを乗せています。牛型のクラッカーにはゴーダチーズを使用しました」
同時に供されたのは、イタリアンでお馴染みのブルスケッタを思わせるフィンガーフード「B.L.T.」。コチラもバーバラさんならではのアレンジが施されていました。
「チップスと同様、イタリアンとアメリカンのミクスチャー的なひと品です。フレッシュトマトの代わりに、スパイシー・インディアン・トマトジャムをバゲットに乗せました。さらに香ばしいメープルベーコンも加え、ジンジャーやマスタードなどをアクセントに。フレッシュなブッラータチーズも添え、ブルスケッタ風に仕上げています」
カチョ・エ・ペペ・チップスはさながら“オトナのおやつ”といったところ。スモーキーかつスパイシーなチーズがインパクト満点です。B.L.T.は一見イタリアンのようで、口に入れるとしっかりアメリカンなテイストなのがとっても新鮮。初手からガツンとやられます。

▲ もっちりした太麺に濃厚な海老の旨みが絡みつく美味しさ!
さて、ここから井上シェフ考案メニューの登場です。まずは「イカ墨のパスタ 海老のソース」。カリフォルニアチーズは使用していませんが、カリフォルニアをイメージしたひと皿だそう。井上シェフは次のように解説します。
「ロサンゼルスの大人気レストラン『ベスティア』で提供されているパスタにインスピレーションを受けて考案しました。イカ墨を混ぜて作った“トンナレッリ”という太麺に、オマール海老をたっぷりと絡ませています。トマトソースにも海老のエキスを染み込ませつつ、魚の出汁やニンニク、そしてアメリケーヌソースも加えて仕上げました」

▲ パスタとメインが一体化したピアットウニコは満足度抜群。
そしてお次に披露されたメインディッシュが息を呑むインパクト! 「こちらは“ピアットウニコ”というスタイルで、メインディッシュとパスタをワンプレートのなかに合わせたものです。
パスタはLA風のカルボナーラ。ベースはパルミジャーノですが、アクセントとしてトウマラシチーズのスライスを加えています。上に乗せたのは土佐赤牛のモモ肉。刻み海苔も添えて、和のテイストもプラスしました」と井上さん。
本格イタリアンシェフが作ったカルボナーラなのに、しっかりアメリカンスタイルにまとめられているのが驚き。井上さん、さすがの手腕です!

▲ コッテリしない甘さがオトナのデザートにぴったりなチーズシュークリーム。
デザートはシュークリーム。コチラもチーズが効いていて、シューの上にはブルーチーズとマスカルポーネチーズ加えたカスタードクリームが添えられています。これが中の生クリームと相性抜群。ほのかな塩気が甘みを引き立て、リッチな後味が口福を呼び込みます。
ヨーロッパの陰に甘んじるにはあまりにも勿体ないカリフォルニアチーズ。知る人ぞ知る存在だけに、いち早く押さえておけばツウぶれること請け合いです。オヤジの教養として、ぜひチェックされたし!ですぞ。
後編では、カリフォルニアのチーズ、ビネガーの味わいにも迫ります!
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